内外政策評論 TheOpinion on Global & Domestic Issues

このブログは、広い視野から内外諸問題を分析し、提言を試みます。
Policy Essayist

シリーズJAL再起への5つの提言

2010-01-28 | Weblog
シリーズJAL再起への5つの提言
 JALの法的整理、再生の方針が決まった。当面の最大の焦点は、8千億円とも言われている債務の圧縮と資金調達だが、その点は企業再生支援機構と新経営陣に委ねるとして、JALが運航を継続しながら「再起」するに当たり、影響を受ける方々にはご同情の意を表明すると共に、次の5点を提案したい。
1、 安全への信頼回復
 航空サービスで最も大切なことは旅客の安全の確保だ。特に日航が過去に不幸な事故を起こしているだけに、“安全”について信頼回復出来るように心を新たにして再出発する必要があろう。それなくしては客は戻らない。誰の責任でもない、役員を含め従業員一人一人の責任であるとの意識と妥協のない努力が大切なのであろう。このことは他のエアーラインも同様だ。
 安全と共に、安定と安価を加えた3Aを達成することが大切だ。安定は、大幅な遅延やキャンセルがない安定した運航で何時も安心して乗れることである。
 2、JALのロゴマークの一新
JALのこれまでのロゴマークは、見方によると朱の文字Jで真ん中を真っ二つに割った形となっている。一新して良いのではないだろうか。運航を継続し、意識やイメージを引きずれば一新されたとは見られない。公募するのも良いだろう。
3、企業のためではなく、「顧客のためのサービス」という意識が必要
航空業も営利企業であるので利益を出さなければならない。それが企業目的だ。しかし事業が拡大し、企業規模が大きくなると自然と企業の論理、都合が優先するようになる。顧客へのサービスは画一化し、マニュアル通りの横並びの均一サービスとなる。サービスに差をつけない、むらのないサービスと言う意味では良いが、企業のための規則やマニュアルとなり、「顧客のためのサービス」という原点が薄れて来る。要するに“規則でございます”的な対応となる。その“規則”は誰のためにあるのか。企業にとって都合の良いサービスは、必ずしも顧客のためのサービスとはならない。
このことは巨大化しているその他の民間企業についても言えるが、特に行政について言える。行政は、国レベルでも地方でも権限を持っているので、禁止行為、罰則を含め規則をつくればそれで済むことが多い。しかし何故違反行為が行われるのだろうか。刑法上の犯罪などは別として、そこに何らかの必要性があることが多い。例えば規則上は良いことではないが、駐車・駐輪違反などがある。止めなければ用を足せないからだ。ところが禁止が10年、20年と続く。違反も続く。一定期間禁止したら、その間に便利な場所に駐車・駐輪場所を設置すれば駐車・駐輪違反は減少するだろう。いろいろの問題があるだろうが、それが「行政」というものではないだろうか。行政がどうしても行政側の都合、論理を優先し、国民のニーズに対応した「行政サービス」という意識に欠けるからなのであろう。行政とはそういうものと言えないこともないが、民主主義社会においては、行政側も「国民のための行政サービス」という意識が不可欠なのであろう。「国民の、国民による、国民のための政府」とは本来そのような政府、行政を目指したものであろう。
民間の事業であれば、顧客、消費者のためのサービスでなければ客は得れない。
4、忘れてはならないのは再起のための公的資金の投入
 今回の法的整理に伴い、多額の公的資金が投入される。また主力銀行は総額3,500億円強の債権の放棄を行うと共に、株式の上場廃止、100%の減資となれば機関投資家はもとより、46万人ほどの個人株主の保有株がゼロになり、納税者、国民に広範な負担を強いることになる。従って日航の再起は日航の社内的な問題にとどまらず、国民的な関心があることであり、国民の理解と支援なくしては困難であるとの認識が必要であろう。
 新生日航の会長として京セラの稲盛会長が就任する見通しだ。その際稲盛会長は、高齢であるので毎日は出勤できないが、無給で仕事する旨述べた。最近これほど高潔な経営者を見たことがない。同時に「ナショナル・キャリアーということではなく、日航従業員の幸せのため努力する」旨述べた。新経営者として従業員の不安を除くためであり理解できるが、納税者、国民に広範な負担を強いる再起であることを忘れるべきではない。
 更に、そもそも顧客が戻らなければ再起は困難であろう。これまで日航を支援していた顧客をつなぎとめ、新たな顧客をつかむ努力と処理の仕方が鍵となろう。従来の日航利用者、納税者、国民の理解と支援が不可欠であろう。
5、株式市場への信頼回復
JAJ株は上場廃止、100%の減資で、株券は紙切れとなる。46万人の個人株主を含め株主は、民営化されたJALを資本面だけでなく、顧客としてもJALを支えて来た。今後再生を図る上でこれらの株主が背を向ける可能性がある。
それ以上に、今回の100%減資は一般投資家の株式市場への信頼性を著しく損なう恐れがある。しかも民営化されたあのJALの株券が紙切れとなるのだから影響は大きいと見られる。
金融機関の破綻の場合、1千万円を限度として預金が保証されるペイオフ制度がある。企業破綻についても、今回のような公的支援に基づく再生おいては、株式も1千万円程度を限度として保証される制度が検討されても良いのかも知れない。(01.10.)
(All Rights Reserved.) (不許無断引用)



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シリーズJAL再起への5つの提言

2010-01-28 | Weblog
シリーズJAL再起への5つの提言
 JALの法的整理、再生の方針が決まった。当面の最大の焦点は、8千億円とも言われている債務の圧縮と資金調達だが、その点は企業再生支援機構と新経営陣に委ねるとして、JALが運航を継続しながら「再起」するに当たり、影響を受ける方々にはご同情の意を表明すると共に、次の5点を提案したい。
1、 安全への信頼回復
 航空サービスで最も大切なことは旅客の安全の確保だ。特に日航が過去に不幸な事故を起こしているだけに、“安全”について信頼回復出来るように心を新たにして再出発する必要があろう。それなくしては客は戻らない。誰の責任でもない、役員を含め従業員一人一人の責任であるとの意識と妥協のない努力が大切なのであろう。このことは他のエアーラインも同様だ。
 安全と共に、安定と安価を加えた3Aを達成することが大切だ。安定は、大幅な遅延やキャンセルがない安定した運航で何時も安心して乗れることである。
 2、JALのロゴマークの一新
JALのこれまでのロゴマークは、見方によると朱の文字Jで真ん中を真っ二つに割った形となっている。一新して良いのではないだろうか。運航を継続し、意識やイメージを引きずれば一新されたとは見られない。公募するのも良いだろう。
3、企業のためではなく、「顧客のためのサービス」という意識が必要
航空業も営利企業であるので利益を出さなければならない。それが企業目的だ。しかし事業が拡大し、企業規模が大きくなると自然と企業の論理、都合が優先するようになる。顧客へのサービスは画一化し、マニュアル通りの横並びの均一サービスとなる。サービスに差をつけない、むらのないサービスと言う意味では良いが、企業のための規則やマニュアルとなり、「顧客のためのサービス」という原点が薄れて来る。要するに“規則でございます”的な対応となる。その“規則”は誰のためにあるのか。企業にとって都合の良いサービスは、必ずしも顧客のためのサービスとはならない。
このことは巨大化しているその他の民間企業についても言えるが、特に行政について言える。行政は、国レベルでも地方でも権限を持っているので、禁止行為、罰則を含め規則をつくればそれで済むことが多い。しかし何故違反行為が行われるのだろうか。刑法上の犯罪などは別として、そこに何らかの必要性があることが多い。例えば規則上は良いことではないが、駐車・駐輪違反などがある。止めなければ用を足せないからだ。ところが禁止が10年、20年と続く。違反も続く。一定期間禁止したら、その間に便利な場所に駐車・駐輪場所を設置すれば駐車・駐輪違反は減少するだろう。いろいろの問題があるだろうが、それが「行政」というものではないだろうか。行政がどうしても行政側の都合、論理を優先し、国民のニーズに対応した「行政サービス」という意識に欠けるからなのであろう。行政とはそういうものと言えないこともないが、民主主義社会においては、行政側も「国民のための行政サービス」という意識が不可欠なのであろう。「国民の、国民による、国民のための政府」とは本来そのような政府、行政を目指したものであろう。
民間の事業であれば、顧客、消費者のためのサービスでなければ客は得れない。
4、忘れてはならないのは再起のための公的資金の投入
 今回の法的整理に伴い、多額の公的資金が投入される。また主力銀行は総額3,500億円強の債権の放棄を行うと共に、株式の上場廃止、100%の減資となれば機関投資家はもとより、46万人ほどの個人株主の保有株がゼロになり、納税者、国民に広範な負担を強いることになる。従って日航の再起は日航の社内的な問題にとどまらず、国民的な関心があることであり、国民の理解と支援なくしては困難であるとの認識が必要であろう。
 新生日航の会長として京セラの稲盛会長が就任する見通しだ。その際稲盛会長は、高齢であるので毎日は出勤できないが、無給で仕事する旨述べた。最近これほど高潔な経営者を見たことがない。同時に「ナショナル・キャリアーということではなく、日航従業員の幸せのため努力する」旨述べた。新経営者として従業員の不安を除くためであり理解できるが、納税者、国民に広範な負担を強いる再起であることを忘れるべきではない。
 更に、そもそも顧客が戻らなければ再起は困難であろう。これまで日航を支援していた顧客をつなぎとめ、新たな顧客をつかむ努力と処理の仕方が鍵となろう。従来の日航利用者、納税者、国民の理解と支援が不可欠であろう。
5、株式市場への信頼回復
JAJ株は上場廃止、100%の減資で、株券は紙切れとなる。46万人の個人株主を含め株主は、民営化されたJALを資本面だけでなく、顧客としてもJALを支えて来た。今後再生を図る上でこれらの株主が背を向ける可能性がある。
それ以上に、今回の100%減資は一般投資家の株式市場への信頼性を著しく損なう恐れがある。しかも民営化されたあのJALの株券が紙切れとなるのだから影響は大きいと見られる。
金融機関の破綻の場合、1千万円を限度として預金が保証されるペイオフ制度がある。企業破綻についても、今回のような公的支援に基づく再生おいては、株式も1千万円程度を限度として保証される制度が検討されても良いのかも知れない。(01.10.)
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 JALの法的整理、再生の方針が決まった。当面の最大の焦点は、8千億円とも言われている債務の圧縮と資金調達だが、その点は企業再生支援機構と新経営陣に委ねるとして、JALが運航を継続しながら「再起」するに当たり、影響を受ける方々にはご同情の意を表明すると共に、次の5点を提案したい。
1、 安全への信頼回復
 航空サービスで最も大切なことは旅客の安全の確保だ。特に日航が過去に不幸な事故を起こしているだけに、“安全”について信頼回復出来るように心を新たにして再出発する必要があろう。それなくしては客は戻らない。誰の責任でもない、役員を含め従業員一人一人の責任であるとの意識と妥協のない努力が大切なのであろう。このことは他のエアーラインも同様だ。
 安全と共に、安定と安価を加えた3Aを達成することが大切だ。安定は、大幅な遅延やキャンセルがない安定した運航で何時も安心して乗れることである。
 2、JALのロゴマークの一新
JALのこれまでのロゴマークは、見方によると朱の文字Jで真ん中を真っ二つに割った形となっている。一新して良いのではないだろうか。運航を継続し、意識やイメージを引きずれば一新されたとは見られない。公募するのも良いだろう。
3、企業のためではなく、「顧客のためのサービス」という意識が必要
航空業も営利企業であるので利益を出さなければならない。それが企業目的だ。しかし事業が拡大し、企業規模が大きくなると自然と企業の論理、都合が優先するようになる。顧客へのサービスは画一化し、マニュアル通りの横並びの均一サービスとなる。サービスに差をつけない、むらのないサービスと言う意味では良いが、企業のための規則やマニュアルとなり、「顧客のためのサービス」という原点が薄れて来る。要するに“規則でございます”的な対応となる。その“規則”は誰のためにあるのか。企業にとって都合の良いサービスは、必ずしも顧客のためのサービスとはならない。
このことは巨大化しているその他の民間企業についても言えるが、特に行政について言える。行政は、国レベルでも地方でも権限を持っているので、禁止行為、罰則を含め規則をつくればそれで済むことが多い。しかし何故違反行為が行われるのだろうか。刑法上の犯罪などは別として、そこに何らかの必要性があることが多い。例えば規則上は良いことではないが、駐車・駐輪違反などがある。止めなければ用を足せないからだ。ところが禁止が10年、20年と続く。違反も続く。一定期間禁止したら、その間に便利な場所に駐車・駐輪場所を設置すれば駐車・駐輪違反は減少するだろう。いろいろの問題があるだろうが、それが「行政」というものではないだろうか。行政がどうしても行政側の都合、論理を優先し、国民のニーズに対応した「行政サービス」という意識に欠けるからなのであろう。行政とはそういうものと言えないこともないが、民主主義社会においては、行政側も「国民のための行政サービス」という意識が不可欠なのであろう。「国民の、国民による、国民のための政府」とは本来そのような政府、行政を目指したものであろう。
民間の事業であれば、顧客、消費者のためのサービスでなければ客は得れない。
4、忘れてはならないのは再起のための公的資金の投入
 今回の法的整理に伴い、多額の公的資金が投入される。また主力銀行は総額3,500億円強の債権の放棄を行うと共に、株式の上場廃止、100%の減資となれば機関投資家はもとより、46万人ほどの個人株主の保有株がゼロになり、納税者、国民に広範な負担を強いることになる。従って日航の再起は日航の社内的な問題にとどまらず、国民的な関心があることであり、国民の理解と支援なくしては困難であるとの認識が必要であろう。
 新生日航の会長として京セラの稲盛会長が就任する見通しだ。その際稲盛会長は、高齢であるので毎日は出勤できないが、無給で仕事する旨述べた。最近これほど高潔な経営者を見たことがない。同時に「ナショナル・キャリアーということではなく、日航従業員の幸せのため努力する」旨述べた。新経営者として従業員の不安を除くためであり理解できるが、納税者、国民に広範な負担を強いる再起であることを忘れるべきではない。
 更に、そもそも顧客が戻らなければ再起は困難であろう。これまで日航を支援していた顧客をつなぎとめ、新たな顧客をつかむ努力と処理の仕方が鍵となろう。従来の日航利用者、納税者、国民の理解と支援が不可欠であろう。
5、株式市場への信頼回復
JAJ株は上場廃止、100%の減資で、株券は紙切れとなる。46万人の個人株主を含め株主は、民営化されたJALを資本面だけでなく、顧客としてもJALを支えて来た。今後再生を図る上でこれらの株主が背を向ける可能性がある。
それ以上に、今回の100%減資は一般投資家の株式市場への信頼性を著しく損なう恐れがある。しかも民営化されたあのJALの株券が紙切れとなるのだから影響は大きいと見られる。
金融機関の破綻の場合、1千万円を限度として預金が保証されるペイオフ制度がある。企業破綻についても、今回のような公的支援に基づく再生おいては、株式も1千万円程度を限度として保証される制度が検討されても良いのかも知れない。(01.10.)
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 JALの法的整理、再生の方針が決まった。当面の最大の焦点は、8千億円とも言われている債務の圧縮と資金調達だが、その点は企業再生支援機構と新経営陣に委ねるとして、JALが運航を継続しながら「再起」するに当たり、影響を受ける方々にはご同情の意を表明すると共に、次の5点を提案したい。
1、 安全への信頼回復
 航空サービスで最も大切なことは旅客の安全の確保だ。特に日航が過去に不幸な事故を起こしているだけに、“安全”について信頼回復出来るように心を新たにして再出発する必要があろう。それなくしては客は戻らない。誰の責任でもない、役員を含め従業員一人一人の責任であるとの意識と妥協のない努力が大切なのであろう。このことは他のエアーラインも同様だ。
 安全と共に、安定と安価を加えた3Aを達成することが大切だ。安定は、大幅な遅延やキャンセルがない安定した運航で何時も安心して乗れることである。
 2、JALのロゴマークの一新
JALのこれまでのロゴマークは、見方によると朱の文字Jで真ん中を真っ二つに割った形となっている。一新して良いのではないだろうか。運航を継続し、意識やイメージを引きずれば一新されたとは見られない。公募するのも良いだろう。
3、企業のためではなく、「顧客のためのサービス」という意識が必要
航空業も営利企業であるので利益を出さなければならない。それが企業目的だ。しかし事業が拡大し、企業規模が大きくなると自然と企業の論理、都合が優先するようになる。顧客へのサービスは画一化し、マニュアル通りの横並びの均一サービスとなる。サービスに差をつけない、むらのないサービスと言う意味では良いが、企業のための規則やマニュアルとなり、「顧客のためのサービス」という原点が薄れて来る。要するに“規則でございます”的な対応となる。その“規則”は誰のためにあるのか。企業にとって都合の良いサービスは、必ずしも顧客のためのサービスとはならない。
このことは巨大化しているその他の民間企業についても言えるが、特に行政について言える。行政は、国レベルでも地方でも権限を持っているので、禁止行為、罰則を含め規則をつくればそれで済むことが多い。しかし何故違反行為が行われるのだろうか。刑法上の犯罪などは別として、そこに何らかの必要性があることが多い。例えば規則上は良いことではないが、駐車・駐輪違反などがある。止めなければ用を足せないからだ。ところが禁止が10年、20年と続く。違反も続く。一定期間禁止したら、その間に便利な場所に駐車・駐輪場所を設置すれば駐車・駐輪違反は減少するだろう。いろいろの問題があるだろうが、それが「行政」というものではないだろうか。行政がどうしても行政側の都合、論理を優先し、国民のニーズに対応した「行政サービス」という意識に欠けるからなのであろう。行政とはそういうものと言えないこともないが、民主主義社会においては、行政側も「国民のための行政サービス」という意識が不可欠なのであろう。「国民の、国民による、国民のための政府」とは本来そのような政府、行政を目指したものであろう。
民間の事業であれば、顧客、消費者のためのサービスでなければ客は得れない。
4、忘れてはならないのは再起のための公的資金の投入
 今回の法的整理に伴い、多額の公的資金が投入される。また主力銀行は総額3,500億円強の債権の放棄を行うと共に、株式の上場廃止、100%の減資となれば機関投資家はもとより、46万人ほどの個人株主の保有株がゼロになり、納税者、国民に広範な負担を強いることになる。従って日航の再起は日航の社内的な問題にとどまらず、国民的な関心があることであり、国民の理解と支援なくしては困難であるとの認識が必要であろう。
 新生日航の会長として京セラの稲盛会長が就任する見通しだ。その際稲盛会長は、高齢であるので毎日は出勤できないが、無給で仕事する旨述べた。最近これほど高潔な経営者を見たことがない。同時に「ナショナル・キャリアーということではなく、日航従業員の幸せのため努力する」旨述べた。新経営者として従業員の不安を除くためであり理解できるが、納税者、国民に広範な負担を強いる再起であることを忘れるべきではない。
 更に、そもそも顧客が戻らなければ再起は困難であろう。これまで日航を支援していた顧客をつなぎとめ、新たな顧客をつかむ努力と処理の仕方が鍵となろう。従来の日航利用者、納税者、国民の理解と支援が不可欠であろう。
5、株式市場への信頼回復
JAJ株は上場廃止、100%の減資で、株券は紙切れとなる。46万人の個人株主を含め株主は、民営化されたJALを資本面だけでなく、顧客としてもJALを支えて来た。今後再生を図る上でこれらの株主が背を向ける可能性がある。
それ以上に、今回の100%減資は一般投資家の株式市場への信頼性を著しく損なう恐れがある。しかも民営化されたあのJALの株券が紙切れとなるのだから影響は大きいと見られる。
金融機関の破綻の場合、1千万円を限度として預金が保証されるペイオフ制度がある。企業破綻についても、今回のような公的支援に基づく再生おいては、株式も1千万円程度を限度として保証される制度が検討されても良いのかも知れない。(01.10.)
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 JALの法的整理、再生の方針が決まった。当面の最大の焦点は、8千億円とも言われている債務の圧縮と資金調達だが、その点は企業再生支援機構と新経営陣に委ねるとして、JALが運航を継続しながら「再起」するに当たり、影響を受ける方々にはご同情の意を表明すると共に、次の5点を提案したい。
1、 安全への信頼回復
 航空サービスで最も大切なことは旅客の安全の確保だ。特に日航が過去に不幸な事故を起こしているだけに、“安全”について信頼回復出来るように心を新たにして再出発する必要があろう。それなくしては客は戻らない。誰の責任でもない、役員を含め従業員一人一人の責任であるとの意識と妥協のない努力が大切なのであろう。このことは他のエアーラインも同様だ。
 安全と共に、安定と安価を加えた3Aを達成することが大切だ。安定は、大幅な遅延やキャンセルがない安定した運航で何時も安心して乗れることである。
 2、JALのロゴマークの一新
JALのこれまでのロゴマークは、見方によると朱の文字Jで真ん中を真っ二つに割った形となっている。一新して良いのではないだろうか。運航を継続し、意識やイメージを引きずれば一新されたとは見られない。公募するのも良いだろう。
3、企業のためではなく、「顧客のためのサービス」という意識が必要
航空業も営利企業であるので利益を出さなければならない。それが企業目的だ。しかし事業が拡大し、企業規模が大きくなると自然と企業の論理、都合が優先するようになる。顧客へのサービスは画一化し、マニュアル通りの横並びの均一サービスとなる。サービスに差をつけない、むらのないサービスと言う意味では良いが、企業のための規則やマニュアルとなり、「顧客のためのサービス」という原点が薄れて来る。要するに“規則でございます”的な対応となる。その“規則”は誰のためにあるのか。企業にとって都合の良いサービスは、必ずしも顧客のためのサービスとはならない。
このことは巨大化しているその他の民間企業についても言えるが、特に行政について言える。行政は、国レベルでも地方でも権限を持っているので、禁止行為、罰則を含め規則をつくればそれで済むことが多い。しかし何故違反行為が行われるのだろうか。刑法上の犯罪などは別として、そこに何らかの必要性があることが多い。例えば規則上は良いことではないが、駐車・駐輪違反などがある。止めなければ用を足せないからだ。ところが禁止が10年、20年と続く。違反も続く。一定期間禁止したら、その間に便利な場所に駐車・駐輪場所を設置すれば駐車・駐輪違反は減少するだろう。いろいろの問題があるだろうが、それが「行政」というものではないだろうか。行政がどうしても行政側の都合、論理を優先し、国民のニーズに対応した「行政サービス」という意識に欠けるからなのであろう。行政とはそういうものと言えないこともないが、民主主義社会においては、行政側も「国民のための行政サービス」という意識が不可欠なのであろう。「国民の、国民による、国民のための政府」とは本来そのような政府、行政を目指したものであろう。
民間の事業であれば、顧客、消費者のためのサービスでなければ客は得れない。
4、忘れてはならないのは再起のための公的資金の投入
 今回の法的整理に伴い、多額の公的資金が投入される。また主力銀行は総額3,500億円強の債権の放棄を行うと共に、株式の上場廃止、100%の減資となれば機関投資家はもとより、46万人ほどの個人株主の保有株がゼロになり、納税者、国民に広範な負担を強いることになる。従って日航の再起は日航の社内的な問題にとどまらず、国民的な関心があることであり、国民の理解と支援なくしては困難であるとの認識が必要であろう。
 新生日航の会長として京セラの稲盛会長が就任する見通しだ。その際稲盛会長は、高齢であるので毎日は出勤できないが、無給で仕事する旨述べた。最近これほど高潔な経営者を見たことがない。同時に「ナショナル・キャリアーということではなく、日航従業員の幸せのため努力する」旨述べた。新経営者として従業員の不安を除くためであり理解できるが、納税者、国民に広範な負担を強いる再起であることを忘れるべきではない。
 更に、そもそも顧客が戻らなければ再起は困難であろう。これまで日航を支援していた顧客をつなぎとめ、新たな顧客をつかむ努力と処理の仕方が鍵となろう。従来の日航利用者、納税者、国民の理解と支援が不可欠であろう。
5、株式市場への信頼回復
JAJ株は上場廃止、100%の減資で、株券は紙切れとなる。46万人の個人株主を含め株主は、民営化されたJALを資本面だけでなく、顧客としてもJALを支えて来た。今後再生を図る上でこれらの株主が背を向ける可能性がある。
それ以上に、今回の100%減資は一般投資家の株式市場への信頼性を著しく損なう恐れがある。しかも民営化されたあのJALの株券が紙切れとなるのだから影響は大きいと見られる。
金融機関の破綻の場合、1千万円を限度として預金が保証されるペイオフ制度がある。企業破綻についても、今回のような公的支援に基づく再生おいては、株式も1千万円程度を限度として保証される制度が検討されても良いのかも知れない。(01.10.)
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 JALの法的整理、再生の方針が決まった。当面の最大の焦点は、8千億円とも言われている債務の圧縮と資金調達だが、その点は企業再生支援機構と新経営陣に委ねるとして、JALが運航を継続しながら「再起」するに当たり、影響を受ける方々にはご同情の意を表明すると共に、次の5点を提案したい。
1、 安全への信頼回復
 航空サービスで最も大切なことは旅客の安全の確保だ。特に日航が過去に不幸な事故を起こしているだけに、“安全”について信頼回復出来るように心を新たにして再出発する必要があろう。それなくしては客は戻らない。誰の責任でもない、役員を含め従業員一人一人の責任であるとの意識と妥協のない努力が大切なのであろう。このことは他のエアーラインも同様だ。
 安全と共に、安定と安価を加えた3Aを達成することが大切だ。安定は、大幅な遅延やキャンセルがない安定した運航で何時も安心して乗れることである。
 2、JALのロゴマークの一新
JALのこれまでのロゴマークは、見方によると朱の文字Jで真ん中を真っ二つに割った形となっている。一新して良いのではないだろうか。運航を継続し、意識やイメージを引きずれば一新されたとは見られない。公募するのも良いだろう。
3、企業のためではなく、「顧客のためのサービス」という意識が必要
航空業も営利企業であるので利益を出さなければならない。それが企業目的だ。しかし事業が拡大し、企業規模が大きくなると自然と企業の論理、都合が優先するようになる。顧客へのサービスは画一化し、マニュアル通りの横並びの均一サービスとなる。サービスに差をつけない、むらのないサービスと言う意味では良いが、企業のための規則やマニュアルとなり、「顧客のためのサービス」という原点が薄れて来る。要するに“規則でございます”的な対応となる。その“規則”は誰のためにあるのか。企業にとって都合の良いサービスは、必ずしも顧客のためのサービスとはならない。
このことは巨大化しているその他の民間企業についても言えるが、特に行政について言える。行政は、国レベルでも地方でも権限を持っているので、禁止行為、罰則を含め規則をつくればそれで済むことが多い。しかし何故違反行為が行われるのだろうか。刑法上の犯罪などは別として、そこに何らかの必要性があることが多い。例えば規則上は良いことではないが、駐車・駐輪違反などがある。止めなければ用を足せないからだ。ところが禁止が10年、20年と続く。違反も続く。一定期間禁止したら、その間に便利な場所に駐車・駐輪場所を設置すれば駐車・駐輪違反は減少するだろう。いろいろの問題があるだろうが、それが「行政」というものではないだろうか。行政がどうしても行政側の都合、論理を優先し、国民のニーズに対応した「行政サービス」という意識に欠けるからなのであろう。行政とはそういうものと言えないこともないが、民主主義社会においては、行政側も「国民のための行政サービス」という意識が不可欠なのであろう。「国民の、国民による、国民のための政府」とは本来そのような政府、行政を目指したものであろう。
民間の事業であれば、顧客、消費者のためのサービスでなければ客は得れない。
4、忘れてはならないのは再起のための公的資金の投入
 今回の法的整理に伴い、多額の公的資金が投入される。また主力銀行は総額3,500億円強の債権の放棄を行うと共に、株式の上場廃止、100%の減資となれば機関投資家はもとより、46万人ほどの個人株主の保有株がゼロになり、納税者、国民に広範な負担を強いることになる。従って日航の再起は日航の社内的な問題にとどまらず、国民的な関心があることであり、国民の理解と支援なくしては困難であるとの認識が必要であろう。
 新生日航の会長として京セラの稲盛会長が就任する見通しだ。その際稲盛会長は、高齢であるので毎日は出勤できないが、無給で仕事する旨述べた。最近これほど高潔な経営者を見たことがない。同時に「ナショナル・キャリアーということではなく、日航従業員の幸せのため努力する」旨述べた。新経営者として従業員の不安を除くためであり理解できるが、納税者、国民に広範な負担を強いる再起であることを忘れるべきではない。
 更に、そもそも顧客が戻らなければ再起は困難であろう。これまで日航を支援していた顧客をつなぎとめ、新たな顧客をつかむ努力と処理の仕方が鍵となろう。従来の日航利用者、納税者、国民の理解と支援が不可欠であろう。
5、株式市場への信頼回復
JAJ株は上場廃止、100%の減資で、株券は紙切れとなる。46万人の個人株主を含め株主は、民営化されたJALを資本面だけでなく、顧客としてもJALを支えて来た。今後再生を図る上でこれらの株主が背を向ける可能性がある。
それ以上に、今回の100%減資は一般投資家の株式市場への信頼性を著しく損なう恐れがある。しかも民営化されたあのJALの株券が紙切れとなるのだから影響は大きいと見られる。
金融機関の破綻の場合、1千万円を限度として預金が保証されるペイオフ制度がある。企業破綻についても、今回のような公的支援に基づく再生おいては、株式も1千万円程度を限度として保証される制度が検討されても良いのかも知れない。(01.10.)
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不正規就労者問題に光をー職能制採用の拡大が鍵―(その1)

2010-01-27 | Weblog
不正規就労者問題に光をー職能制採用の拡大が鍵―(その1)
 2010年3月の大学新卒予定者の内、就職出来ない学生が10万人を超える見通しと文部科学省が新年早々明らかにした。大学院などへの進学予定者は含まれていないので、一部留年するとしても、就職出来ない学生が10万人を超えるのは2004年以降初めてとされており、改革成長路線の恩恵が2010年でほぼ消えることになる。1月の厚労省発表では、本年3月の大学新卒予定者の就職内定率は73%強に止まっているが、高校では68%と就職難であるので、中学、高校・専門学校を含めると、正規に就職できない新卒者は10万人を大きく上回ることになる。
 これは新卒者にとって大きな問題であるが、その社会・経済的な意味合いはもっと深刻だ。10万人を上回る新卒者がアルバイトや派遣労働者など、新たに「不正規雇用者」となる。日本の就職制度は、基本的には新卒者の終身雇用を前提にしているので、若干の中間採用はあるが、一旦「不正規雇用者」に組み込まれるとほぼ生涯不正規就業者として生活して行かなくてはならないことになる。不正規雇用者は、労働力調査では09年に総就労者5千万人強(農業を除く)の約33%、約1,680万人にも達している。2010年にはその比率が34、5%に増加し、総就労者の3人に1人が「不正規雇用者」となり、将来景気が顕著に回復しない限りその状態が続くことになる。
 不正規就労者はバブル崩壊の影響が顕著となった90年代半ば頃より急速に増加し、2004年まで年間10万人を越え、30%台となった。その後年間10万人を下回るなだらかな増加に転じつつあったが、今年10万人を越える増加に再び転じる。このことは、2001年以降の小泉改革成長路線は“格差”を広げたと言われているが、アルバイトや派遣などの不正規労働者は90年代半ば頃より急速に増加し、正規、不正規という労働市場の2重構造、格差が改革成長路線以前に造られており、適切な経済対策、雇用対策が採られなかったことを物語っている。そして、改革成長路線の成果が現れ始めた05年以降やや改善していたものの十分ではなかったことを示している。しかしその成果も残念ながら本年で消える見通しだ。
 終身雇用制は、就労者にとっても、雇用者側にとっても安定的な雇用関係が維持できるという利点があり、それ自体に問題があるわけではないが、総就労者の3人に1人以上が「不正規雇用者」であることは、就労形態としてはもはや例外的ではなく、構造的な問題となって来ており、格差の温床となっている。「不正規雇用者」の常態化の最大の問題は、新卒者として社会人なる出発点で「不正規就労者市場」に組み込まれ、ほぼ一生正規就労者となる機会を失ってしまうことだ。無論、フリーターなど自由な生活スタイルを希望する者もいるが、多くの人は安定した職業、所得を望んでいる一方、失職すれば失業保険の増加の他、ホームレスや生活保護、自殺などの社会問題を起こし易く、社会コストを増加させる結果となっている。従って、これらの人々がもっと安定的な形で就労する機会が与えられるような雇用形態、制度として行くことが望まれる。
 1、鍵となる職能制雇用形態の拡大
 不正規雇用者の比率は、バブル経済崩壊前夜の1990年の20.0%から徐々に増加し、2003年には30%を超え、06年には33.2%に達したものの、なだらかな増加となっていた。しかし、米国の低所得者向け住宅ローン(サブ・プライムローン)の破綻に端を発した金融不安から、08年9月に米国の5大証券の一つのリーマン・ブラザースが倒産し、金融危機が深刻化すると共に世界に波及し、日本の輸出産業の業績悪化から派遣従業員の大量解雇などが行われたことから、08年の不正規雇用者は33.9%に達した。
 今後の米国をはじめとする世界経済の回復状況にもよるが、不正規雇用者の比率は当面30%台で推移するものと予想される。当分の間劇的な改善は予想されない。
 日本の終身雇用制の問題は、原則として新卒者を新規雇用の対象としていることで、たまたま就職の年が不況であったり、希望する企業等への就職を逃すと中間採用で救済されることはほとんどなくなり、余程強い志を持っている場合を除き、多くの人は卒業、就職でほぼ将来が決まってしまい、制度として再チャレンジややり直しの道はほとんどないということである。
 新卒者の採用数を減らし、その分中間採用を増やすようになればこの面での硬直性はある程度改善して行くであろう。しかし、それが定着するまでは、企業としては賃金コストが上がると共に、ポストの問題や企業機密の流失などの問題がありメリットは少ない。他方業績不振でも解雇は困難で、労働組合との調整がつかなければ倒産の道を選ばざるを得なくなるなどのデメリットがある。しかし通常は事業継続が前提であるので、パートや派遣従業員などで補う方が現実的だ。
 抜本的に新卒至上主義を改め、適材適所でやる気のある人材を広く求められる雇用制度は職能制雇用の拡大にあるのではないだろうか。
 製造産業については、それぞれの産業において産業別か、旋盤、プレス、仕上げ加工、ロウ付け、組み立て、塗装、検査など職種による職能別給与区分とする。その上で、各職種について、例えば経験0-5年未満、5-10年未満、10-15年未満、15-20年未満、20年以上などとして経験年数別の給与の幅を設け、職能別、経験年数別で経験年数・技能レベルに基づく給与表を作成する。65歳以上(役員は除く)については給与レベルは逓減することになろうが、特に年齢制限を設けず、職種、経験年数区分の中で採用時に格付けする。事務職、技術職についても同様に産業別に庶務職、会計職、コンピューター技術職、営業職、一般総合職、課長職、部長職など、職能別、経験年数別の給与表を作成する。
 これにより求職者は、新卒者は新卒者として、また新卒者以外でもそれぞれの経験や技能・技術に応じて志望産業の職能別に応募し、経験年数に応じた給与を得ることになる。異なる職能を希望する場合は改めて応募すればよいので、年齢を問わず、経験年数に応じて産業、職種を選べることになる。求人側も、職能、経験に応じた人材を得易くなり、弾力的な雇用関係が形成されることになろう。
 このような職能制雇用が制度化して行けば、バブル崩壊後の不況期にぶつかった新卒者で不正規就業者となった者も常に職能別の雇用の機会が得られる上、景気の回復に従って各自の希望する産業、職種への就職がより容易になると予想される。また今後の少子化、新卒者の減少と退職年齢層の増加を考えると、景気が大幅に回復した場合、新卒者の大量雇用、労働力補充が困難になると見られるので、年齢を問わず職能別に広く人材を求める職能制雇用制度はメリットとなろう。
 派遣法を改正し、製造業への「派遣」を禁止するとの動きがある。それ自体は良いとしても、それにより企業はアルバイトや日雇いなどの不正規労働者に切り替えるなどの対応をし、正規社員の中途採用に転換する企業は極めて限定的となる可能性が強い。
 職能制求人は、各企業が行うことであるが、経産省と厚労省が中心となり職能制の模範形を作成し、奨励すれば促進効果が期待される。ハローワークなどで職業訓練が行われているものの、就職にはなかなか結びつかないなど実効が上がっていないのが実情だが、職能制が拡大すれば職業訓練も生きてこよう。(2010.01.)        (不許無断転載)(All Rights Reserved.)
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不正規就労者問題に光をー職能制採用の拡大が鍵―(その1)
 2010年3月の大学新卒予定者の内、就職出来ない学生が10万人を超える見通しと文部科学省が新年早々明らかにした。大学院などへの進学予定者は含まれていないので、一部留年するとしても、就職出来ない学生が10万人を超えるのは2004年以降初めてとされており、改革成長路線の恩恵が2010年でほぼ消えることになる。1月の厚労省発表では、本年3月の大学新卒予定者の就職内定率は73%強に止まっているが、高校では68%と就職難であるので、中学、高校・専門学校を含めると、正規に就職できない新卒者は10万人を大きく上回ることになる。
 これは新卒者にとって大きな問題であるが、その社会・経済的な意味合いはもっと深刻だ。10万人を上回る新卒者がアルバイトや派遣労働者など、新たに「不正規雇用者」となる。日本の就職制度は、基本的には新卒者の終身雇用を前提にしているので、若干の中間採用はあるが、一旦「不正規雇用者」に組み込まれるとほぼ生涯不正規就業者として生活して行かなくてはならないことになる。不正規雇用者は、労働力調査では09年に総就労者5千万人強(農業を除く)の約33%、約1,680万人にも達している。2010年にはその比率が34、5%に増加し、総就労者の3人に1人が「不正規雇用者」となり、将来景気が顕著に回復しない限りその状態が続くことになる。
 不正規就労者はバブル崩壊の影響が顕著となった90年代半ば頃より急速に増加し、2004年まで年間10万人を越え、30%台となった。その後年間10万人を下回るなだらかな増加に転じつつあったが、今年10万人を越える増加に再び転じる。このことは、2001年以降の小泉改革成長路線は“格差”を広げたと言われているが、アルバイトや派遣などの不正規労働者は90年代半ば頃より急速に増加し、正規、不正規という労働市場の2重構造、格差が改革成長路線以前に造られており、適切な経済対策、雇用対策が採られなかったことを物語っている。そして、改革成長路線の成果が現れ始めた05年以降やや改善していたものの十分ではなかったことを示している。しかしその成果も残念ながら本年で消える見通しだ。
 終身雇用制は、就労者にとっても、雇用者側にとっても安定的な雇用関係が維持できるという利点があり、それ自体に問題があるわけではないが、総就労者の3人に1人以上が「不正規雇用者」であることは、就労形態としてはもはや例外的ではなく、構造的な問題となって来ており、格差の温床となっている。「不正規雇用者」の常態化の最大の問題は、新卒者として社会人なる出発点で「不正規就労者市場」に組み込まれ、ほぼ一生正規就労者となる機会を失ってしまうことだ。無論、フリーターなど自由な生活スタイルを希望する者もいるが、多くの人は安定した職業、所得を望んでいる一方、失職すれば失業保険の増加の他、ホームレスや生活保護、自殺などの社会問題を起こし易く、社会コストを増加させる結果となっている。従って、これらの人々がもっと安定的な形で就労する機会が与えられるような雇用形態、制度として行くことが望まれる。
 1、鍵となる職能制雇用形態の拡大
 不正規雇用者の比率は、バブル経済崩壊前夜の1990年の20.0%から徐々に増加し、2003年には30%を超え、06年には33.2%に達したものの、なだらかな増加となっていた。しかし、米国の低所得者向け住宅ローン(サブ・プライムローン)の破綻に端を発した金融不安から、08年9月に米国の5大証券の一つのリーマン・ブラザースが倒産し、金融危機が深刻化すると共に世界に波及し、日本の輸出産業の業績悪化から派遣従業員の大量解雇などが行われたことから、08年の不正規雇用者は33.9%に達した。
 今後の米国をはじめとする世界経済の回復状況にもよるが、不正規雇用者の比率は当面30%台で推移するものと予想される。当分の間劇的な改善は予想されない。
 日本の終身雇用制の問題は、原則として新卒者を新規雇用の対象としていることで、たまたま就職の年が不況であったり、希望する企業等への就職を逃すと中間採用で救済されることはほとんどなくなり、余程強い志を持っている場合を除き、多くの人は卒業、就職でほぼ将来が決まってしまい、制度として再チャレンジややり直しの道はほとんどないということである。
 新卒者の採用数を減らし、その分中間採用を増やすようになればこの面での硬直性はある程度改善して行くであろう。しかし、それが定着するまでは、企業としては賃金コストが上がると共に、ポストの問題や企業機密の流失などの問題がありメリットは少ない。他方業績不振でも解雇は困難で、労働組合との調整がつかなければ倒産の道を選ばざるを得なくなるなどのデメリットがある。しかし通常は事業継続が前提であるので、パートや派遣従業員などで補う方が現実的だ。
 新卒至上主義を改め、適材適所でやる気のある人材を広く求められる雇用制度は職能制雇用の拡大にあるのではないだろうか。
 製造産業については、それぞれの産業において産業別か、旋盤、プレス、仕上げ加工、ロウ付け、組み立て、塗装、検査など職種による職能別給与区分とする。その上で、各職種について、例えば経験0-5年未満、5-10年未満、10-15年未満、15-20年未満、20年以上などとして経験年数別の給与の幅を設け、職能別、経験年数別で経験年数・技能レベルに基づく給与表を作成する。65歳以上(役員は除く)については給与レベルは逓減することになろうが、特に年齢制限を設けず、職種、経験年数区分の中で採用時に格付けする。事務職、技術職についても同様に産業別に庶務職、会計職、コンピューター技術職、営業職、一般総合職、課長職、部長職など、職能別、経験年数別の給与表を作成する。
 これにより求職者は、新卒者は新卒者として、また新卒者以外でもそれぞれの経験や技能・技術に応じて志望産業の職能別に応募し、経験年数に応じた給与を得ることになる。異なる職能を希望する場合は改めて応募すればよいので、年齢を問わず、経験年数に応じて産業、職種を選べることになる。求人側も、職能、経験に応じた人材を得易くなり、弾力的な雇用関係が形成されることになろう。
 このような職能制雇用が制度化して行けば、バブル崩壊後の不況期にぶつかった新卒者で不正規就業者となった者も常に職能別の雇用の機会が得られる上、景気の回復に従って各自の希望する産業、職種への就職がより容易になると予想される。また今後の少子化、新卒者の減少と退職年齢層の増加を考えると、景気が大幅に回復した場合、新卒者の大量雇用、労働力補充が困難になると見られるので、年齢を問わず職能別に広く人材を求める職能制雇用制度はメリットとなろう。
 派遣法を改正し、製造業への「派遣」を禁止するとの動きがある。それ自体は良いとしても、それにより企業はアルバイトや日雇いなどの不正規労働者に切り替えるなどの対応をし、正規社員の中途採用に転換する企業は極めて限定的となる可能性が強い。
 職能制求人は、各企業が行うことであるが、経産省と厚労省が中心となり職能制の模範形を作成し、奨励すれば促進効果が期待される。ハローワークなどで職業訓練が行われているものの、就職にはなかなか結びつかないなど実効が上がっていないのが実情だが、職能制が拡大すれば職業訓練も生きてこよう。(2010.01.)        (不許無断転載)(All Rights Reserved.)
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 2010年3月の大学新卒予定者の内、就職出来ない学生が10万人を超える見通しと文部科学省が新年早々明らかにした。大学院などへの進学予定者は含まれていないので、一部留年するとしても、就職出来ない学生が10万人を超えるのは2004年以降初めてとされており、改革成長路線の恩恵が2010年でほぼ消えることになる。1月の厚労省発表では、本年3月の大学新卒予定者の就職内定率は73%強に止まっているが、高校では68%と就職難であるので、中学、高校・専門学校を含めると、正規に就職できない新卒者は10万人を大きく上回ることになる。
 これは新卒者にとって大きな問題であるが、その社会・経済的な意味合いはもっと深刻だ。10万人を上回る新卒者がアルバイトや派遣労働者など、新たに「不正規雇用者」となる。日本の就職制度は、基本的には新卒者の終身雇用を前提にしているので、若干の中間採用はあるが、一旦「不正規雇用者」に組み込まれるとほぼ生涯不正規就業者として生活して行かなくてはならないことになる。不正規雇用者は、労働力調査では09年に総就労者5千万人強(農業を除く)の約33%、約1,680万人にも達している。2010年にはその比率が34、5%に増加し、総就労者の3人に1人が「不正規雇用者」となり、将来景気が顕著に回復しない限りその状態が続くことになる。
 不正規就労者はバブル崩壊の影響が顕著となった90年代半ば頃より急速に増加し、2004年まで年間10万人を越え、30%台となった。その後年間10万人を下回るなだらかな増加に転じつつあったが、今年10万人を越える増加に再び転じる。このことは、2001年以降の小泉改革成長路線は“格差”を広げたと言われているが、アルバイトや派遣などの不正規労働者は90年代半ば頃より急速に増加し、正規、不正規という労働市場の2重構造、格差が改革成長路線以前に造られており、適切な経済対策、雇用対策が採られなかったことを物語っている。そして、改革成長路線の成果が現れ始めた05年以降やや改善していたものの十分ではなかったことを示している。しかしその成果も残念ながら本年で消える見通しだ。
 終身雇用制は、就労者にとっても、雇用者側にとっても安定的な雇用関係が維持できるという利点があり、それ自体に問題があるわけではないが、総就労者の3人に1人以上が「不正規雇用者」であることは、就労形態としてはもはや例外的ではなく、構造的な問題となって来ており、格差の温床となっている。「不正規雇用者」の常態化の最大の問題は、新卒者として社会人なる出発点で「不正規就労者市場」に組み込まれ、ほぼ一生正規就労者となる機会を失ってしまうことだ。無論、フリーターなど自由な生活スタイルを希望する者もいるが、多くの人は安定した職業、所得を望んでいる一方、失職すれば失業保険の増加の他、ホームレスや生活保護、自殺などの社会問題を起こし易く、社会コストを増加させる結果となっている。従って、これらの人々がもっと安定的な形で就労する機会が与えられるような雇用形態、制度として行くことが望まれる。
 1、鍵となる職能制雇用形態の拡大
 不正規雇用者の比率は、バブル経済崩壊前夜の1990年の20.0%から徐々に増加し、2003年には30%を超え、06年には33.2%に達したものの、なだらかな増加となっていた。しかし、米国の低所得者向け住宅ローン(サブ・プライムローン)の破綻に端を発した金融不安から、08年9月に米国の5大証券の一つのリーマン・ブラザースが倒産し、金融危機が深刻化すると共に世界に波及し、日本の輸出産業の業績悪化から派遣従業員の大量解雇などが行われたことから、08年の不正規雇用者は33.9%に達した。
 今後の米国をはじめとする世界経済の回復状況にもよるが、不正規雇用者の比率は当面30%台で推移するものと予想される。当分の間劇的な改善は予想されない。
 日本の終身雇用制の問題は、原則として新卒者を新規雇用の対象としていることで、たまたま就職の年が不況であったり、希望する企業等への就職を逃すと中間採用で救済されることはほとんどなくなり、余程強い志を持っている場合を除き、多くの人は卒業、就職でほぼ将来が決まってしまい、制度として再チャレンジややり直しの道はほとんどないということである。
 新卒者の採用数を減らし、その分中間採用を増やすようになればこの面での硬直性はある程度改善して行くであろう。しかし、それが定着するまでは、企業としては賃金コストが上がると共に、ポストの問題や企業機密の流失などの問題がありメリットは少ない。他方業績不振でも解雇は困難で、労働組合との調整がつかなければ倒産の道を選ばざるを得なくなるなどのデメリットがある。しかし通常は事業継続が前提であるので、パートや派遣従業員などで補う方が現実的だ。
 新卒至上主義を改め、適材適所でやる気のある人材を広く求められる雇用制度は職能制雇用の拡大にあるのではないだろうか。
 製造産業については、それぞれの産業において産業別か、旋盤、プレス、仕上げ加工、ロウ付け、組み立て、塗装、検査など職種による職能別給与区分とする。その上で、各職種について、例えば経験0-5年未満、5-10年未満、10-15年未満、15-20年未満、20年以上などとして経験年数別の給与の幅を設け、職能別、経験年数別で経験年数・技能レベルに基づく給与表を作成する。65歳以上(役員は除く)については給与レベルは逓減することになろうが、特に年齢制限を設けず、職種、経験年数区分の中で採用時に格付けする。事務職、技術職についても同様に産業別に庶務職、会計職、コンピューター技術職、営業職、一般総合職、課長職、部長職など、職能別、経験年数別の給与表を作成する。
 これにより求職者は、新卒者は新卒者として、また新卒者以外でもそれぞれの経験や技能・技術に応じて志望産業の職能別に応募し、経験年数に応じた給与を得ることになる。異なる職能を希望する場合は改めて応募すればよいので、年齢を問わず、経験年数に応じて産業、職種を選べることになる。求人側も、職能、経験に応じた人材を得易くなり、弾力的な雇用関係が形成されることになろう。
 このような職能制雇用が制度化して行けば、バブル崩壊後の不況期にぶつかった新卒者で不正規就業者となった者も常に職能別の雇用の機会が得られる上、景気の回復に従って各自の希望する産業、職種への就職がより容易になると予想される。また今後の少子化、新卒者の減少と退職年齢層の増加を考えると、景気が大幅に回復した場合、新卒者の大量雇用、労働力補充が困難になると見られるので、年齢を問わず職能別に広く人材を求める職能制雇用制度はメリットとなろう。
 派遣法を改正し、製造業への「派遣」を禁止するとの動きがある。それ自体は良いとしても、それにより企業はアルバイトや日雇いなどの不正規労働者に切り替えるなどの対応をし、正規社員の中途採用に転換する企業は極めて限定的となる可能性が強い。
 職能制求人は、各企業が行うことであるが、経産省と厚労省が中心となり職能制の模範形を作成し、奨励すれば促進効果が期待される。ハローワークなどで職業訓練が行われているものの、就職にはなかなか結びつかないなど実効が上がっていないのが実情だが、職能制が拡大すれば職業訓練も生きてこよう。(2010.01.)        (不許無断転載)(All Rights Reserved.)
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 2010年3月の大学新卒予定者の内、就職出来ない学生が10万人を超える見通しと文部科学省が新年早々明らかにした。大学院などへの進学予定者は含まれていないので、一部留年するとしても、就職出来ない学生が10万人を超えるのは2004年以降初めてとされており、改革成長路線の恩恵が2010年でほぼ消えることになる。1月の厚労省発表では、本年3月の大学新卒予定者の就職内定率は73%強に止まっているが、高校では68%と就職難であるので、中学、高校・専門学校を含めると、正規に就職できない新卒者は10万人を大きく上回ることになる。
 これは新卒者にとって大きな問題であるが、その社会・経済的な意味合いはもっと深刻だ。10万人を上回る新卒者がアルバイトや派遣労働者など、新たに「不正規雇用者」となる。日本の就職制度は、基本的には新卒者の終身雇用を前提にしているので、若干の中間採用はあるが、一旦「不正規雇用者」に組み込まれるとほぼ生涯不正規就業者として生活して行かなくてはならないことになる。不正規雇用者は、労働力調査では09年に総就労者5千万人強(農業を除く)の約33%、約1,680万人にも達している。2010年にはその比率が34、5%に増加し、総就労者の3人に1人が「不正規雇用者」となり、将来景気が顕著に回復しない限りその状態が続くことになる。
 不正規就労者はバブル崩壊の影響が顕著となった90年代半ば頃より急速に増加し、2004年まで年間10万人を越え、30%台となった。その後年間10万人を下回るなだらかな増加に転じつつあったが、今年10万人を越える増加に再び転じる。このことは、2001年以降の小泉改革成長路線は“格差”を広げたと言われているが、アルバイトや派遣などの不正規労働者は90年代半ば頃より急速に増加し、正規、不正規という労働市場の2重構造、格差が改革成長路線以前に造られており、適切な経済対策、雇用対策が採られなかったことを物語っている。そして、改革成長路線の成果が現れ始めた05年以降やや改善していたものの十分ではなかったことを示している。しかしその成果も残念ながら本年で消える見通しだ。
 終身雇用制は、就労者にとっても、雇用者側にとっても安定的な雇用関係が維持できるという利点があり、それ自体に問題があるわけではないが、総就労者の3人に1人以上が「不正規雇用者」であることは、就労形態としてはもはや例外的ではなく、構造的な問題となって来ており、格差の温床となっている。「不正規雇用者」の常態化の最大の問題は、新卒者として社会人なる出発点で「不正規就労者市場」に組み込まれ、ほぼ一生正規就労者となる機会を失ってしまうことだ。無論、フリーターなど自由な生活スタイルを希望する者もいるが、多くの人は安定した職業、所得を望んでいる一方、失職すれば失業保険の増加の他、ホームレスや生活保護、自殺などの社会問題を起こし易く、社会コストを増加させる結果となっている。従って、これらの人々がもっと安定的な形で就労する機会が与えられるような雇用形態、制度として行くことが望まれる。
 1、鍵となる職能制雇用形態の拡大
 不正規雇用者の比率は、バブル経済崩壊前夜の1990年の20.0%から徐々に増加し、2003年には30%を超え、06年には33.2%に達したものの、なだらかな増加となっていた。しかし、米国の低所得者向け住宅ローン(サブ・プライムローン)の破綻に端を発した金融不安から、08年9月に米国の5大証券の一つのリーマン・ブラザースが倒産し、金融危機が深刻化すると共に世界に波及し、日本の輸出産業の業績悪化から派遣従業員の大量解雇などが行われたことから、08年の不正規雇用者は33.9%に達した。
 今後の米国をはじめとする世界経済の回復状況にもよるが、不正規雇用者の比率は当面30%台で推移するものと予想される。当分の間劇的な改善は予想されない。
 日本の終身雇用制の問題は、原則として新卒者を新規雇用の対象としていることで、たまたま就職の年が不況であったり、希望する企業等への就職を逃すと中間採用で救済されることはほとんどなくなり、余程強い志を持っている場合を除き、多くの人は卒業、就職でほぼ将来が決まってしまい、制度として再チャレンジややり直しの道はほとんどないということである。
 新卒者の採用数を減らし、その分中間採用を増やすようになればこの面での硬直性はある程度改善して行くであろう。しかし、それが定着するまでは、企業としては賃金コストが上がると共に、ポストの問題や企業機密の流失などの問題がありメリットは少ない。他方業績不振でも解雇は困難で、労働組合との調整がつかなければ倒産の道を選ばざるを得なくなるなどのデメリットがある。しかし通常は事業継続が前提であるので、パートや派遣従業員などで補う方が現実的だ。
 新卒至上主義を改め、適材適所でやる気のある人材を広く求められる雇用制度は職能制雇用の拡大にあるのではないだろうか。
 製造産業については、それぞれの産業において産業別か、旋盤、プレス、仕上げ加工、ロウ付け、組み立て、塗装、検査など職種による職能別給与区分とする。その上で、各職種について、例えば経験0-5年未満、5-10年未満、10-15年未満、15-20年未満、20年以上などとして経験年数別の給与の幅を設け、職能別、経験年数別で経験年数・技能レベルに基づく給与表を作成する。65歳以上(役員は除く)については給与レベルは逓減することになろうが、特に年齢制限を設けず、職種、経験年数区分の中で採用時に格付けする。事務職、技術職についても同様に産業別に庶務職、会計職、コンピューター技術職、営業職、一般総合職、課長職、部長職など、職能別、経験年数別の給与表を作成する。
 これにより求職者は、新卒者は新卒者として、また新卒者以外でもそれぞれの経験や技能・技術に応じて志望産業の職能別に応募し、経験年数に応じた給与を得ることになる。異なる職能を希望する場合は改めて応募すればよいので、年齢を問わず、経験年数に応じて産業、職種を選べることになる。求人側も、職能、経験に応じた人材を得易くなり、弾力的な雇用関係が形成されることになろう。
 このような職能制雇用が制度化して行けば、バブル崩壊後の不況期にぶつかった新卒者で不正規就業者となった者も常に職能別の雇用の機会が得られる上、景気の回復に従って各自の希望する産業、職種への就職がより容易になると予想される。また今後の少子化、新卒者の減少と退職年齢層の増加を考えると、景気が大幅に回復した場合、新卒者の大量雇用、労働力補充が困難になると見られるので、年齢を問わず職能別に広く人材を求める職能制雇用制度はメリットとなろう。
 派遣法を改正し、製造業への「派遣」を禁止するとの動きがある。それ自体は良いとしても、それにより企業はアルバイトや日雇いなどの不正規労働者に切り替えるなどの対応をし、正規社員の中途採用に転換する企業は極めて限定的となる可能性が強い。
 職能制求人は、各企業が行うことであるが、経産省と厚労省が中心となり職能制の模範形を作成し、奨励すれば促進効果が期待される。ハローワークなどで職業訓練が行われているものの、就職にはなかなか結びつかないなど実効が上がっていないのが実情だが、職能制が拡大すれば職業訓練も生きてこよう。(2010.01.)        (不許無断転載)(All Rights Reserved.)
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2010-01-27 | Weblog
不正規就労者問題に光をー職能制採用の拡大が鍵―(その1)
 2010年3月の大学新卒予定者の内、就職出来ない学生が10万人を超える見通しと文部科学省が新年早々明らかにした。大学院などへの進学予定者は含まれていないので、一部留年するとしても、就職出来ない学生が10万人を超えるのは2004年以降初めてとされており、改革成長路線の恩恵が2010年でほぼ消えることになる。1月の厚労省発表では、本年3月の大学新卒予定者の就職内定率は73%強に止まっているが、高校では68%と就職難であるので、中学、高校・専門学校を含めると、正規に就職できない新卒者は10万人を大きく上回ることになる。
 これは新卒者にとって大きな問題であるが、その社会・経済的な意味合いはもっと深刻だ。10万人を上回る新卒者がアルバイトや派遣労働者など、新たに「不正規雇用者」となる。日本の就職制度は、基本的には新卒者の終身雇用を前提にしているので、若干の中間採用はあるが、一旦「不正規雇用者」に組み込まれるとほぼ生涯不正規就業者として生活して行かなくてはならないことになる。不正規雇用者は、労働力調査では09年に総就労者5千万人強(農業を除く)の約33%、約1,680万人にも達している。2010年にはその比率が34、5%に増加し、総就労者の3人に1人が「不正規雇用者」となり、将来景気が顕著に回復しない限りその状態が続くことになる。
 不正規就労者はバブル崩壊の影響が顕著となった90年代半ば頃より急速に増加し、2004年まで年間10万人を越え、30%台となった。その後年間10万人を下回るなだらかな増加に転じつつあったが、今年10万人を越える増加に再び転じる。このことは、2001年以降の小泉改革成長路線は“格差”を広げたと言われているが、アルバイトや派遣などの不正規労働者は90年代半ば頃より急速に増加し、正規、不正規という労働市場の2重構造、格差が改革成長路線以前に造られており、適切な経済対策、雇用対策が採られなかったことを物語っている。そして、改革成長路線の成果が現れ始めた05年以降やや改善していたものの十分ではなかったことを示している。しかしその成果も残念ながら本年で消える見通しだ。
 終身雇用制は、就労者にとっても、雇用者側にとっても安定的な雇用関係が維持できるという利点があり、それ自体に問題があるわけではないが、総就労者の3人に1人以上が「不正規雇用者」であることは、就労形態としてはもはや例外的ではなく、構造的な問題となって来ており、格差の温床となっている。「不正規雇用者」の常態化の最大の問題は、新卒者として社会人なる出発点で「不正規就労者市場」に組み込まれ、ほぼ一生正規就労者となる機会を失ってしまうことだ。無論、フリーターなど自由な生活スタイルを希望する者もいるが、多くの人は安定した職業、所得を望んでいる一方、失職すれば失業保険の増加の他、ホームレスや生活保護、自殺などの社会問題を起こし易く、社会コストを増加させる結果となっている。従って、これらの人々がもっと安定的な形で就労する機会が与えられるような雇用形態、制度として行くことが望まれる。
 1、鍵となる職能制雇用形態の拡大
 不正規雇用者の比率は、バブル経済崩壊前夜の1990年の20.0%から徐々に増加し、2003年には30%を超え、06年には33.2%に達したものの、なだらかな増加となっていた。しかし、米国の低所得者向け住宅ローン(サブ・プライムローン)の破綻に端を発した金融不安から、08年9月に米国の5大証券の一つのリーマン・ブラザースが倒産し、金融危機が深刻化すると共に世界に波及し、日本の輸出産業の業績悪化から派遣従業員の大量解雇などが行われたことから、08年の不正規雇用者は33.9%に達した。
 今後の米国をはじめとする世界経済の回復状況にもよるが、不正規雇用者の比率は当面30%台で推移するものと予想される。当分の間劇的な改善は予想されない。
 日本の終身雇用制の問題は、原則として新卒者を新規雇用の対象としていることで、たまたま就職の年が不況であったり、希望する企業等への就職を逃すと中間採用で救済されることはほとんどなくなり、余程強い志を持っている場合を除き、多くの人は卒業、就職でほぼ将来が決まってしまい、制度として再チャレンジややり直しの道はほとんどないということである。
 新卒者の採用数を減らし、その分中間採用を増やすようになればこの面での硬直性はある程度改善して行くであろう。しかし、それが定着するまでは、企業としては賃金コストが上がると共に、ポストの問題や企業機密の流失などの問題がありメリットは少ない。他方業績不振でも解雇は困難で、労働組合との調整がつかなければ倒産の道を選ばざるを得なくなるなどのデメリットがある。しかし通常は事業継続が前提であるので、パートや派遣従業員などで補う方が現実的だ。
 新卒至上主義を改め、適材適所でやる気のある人材を広く求められる雇用制度は職能制雇用の拡大にあるのではないだろうか。
 製造産業については、それぞれの産業において産業別か、旋盤、プレス、仕上げ加工、ロウ付け、組み立て、塗装、検査など職種による職能別給与区分とする。その上で、各職種について、例えば経験0-5年未満、5-10年未満、10-15年未満、15-20年未満、20年以上などとして経験年数別の給与の幅を設け、職能別、経験年数別で経験年数・技能レベルに基づく給与表を作成する。65歳以上(役員は除く)については給与レベルは逓減することになろうが、特に年齢制限を設けず、職種、経験年数区分の中で採用時に格付けする。事務職、技術職についても同様に産業別に庶務職、会計職、コンピューター技術職、営業職、一般総合職、課長職、部長職など、職能別、経験年数別の給与表を作成する。
 これにより求職者は、新卒者は新卒者として、また新卒者以外でもそれぞれの経験や技能・技術に応じて志望産業の職能別に応募し、経験年数に応じた給与を得ることになる。異なる職能を希望する場合は改めて応募すればよいので、年齢を問わず、経験年数に応じて産業、職種を選べることになる。求人側も、職能、経験に応じた人材を得易くなり、弾力的な雇用関係が形成されることになろう。
 このような職能制雇用が制度化して行けば、バブル崩壊後の不況期にぶつかった新卒者で不正規就業者となった者も常に職能別の雇用の機会が得られる上、景気の回復に従って各自の希望する産業、職種への就職がより容易になると予想される。また今後の少子化、新卒者の減少と退職年齢層の増加を考えると、景気が大幅に回復した場合、新卒者の大量雇用、労働力補充が困難になると見られるので、年齢を問わず職能別に広く人材を求める職能制雇用制度はメリットとなろう。
 派遣法を改正し、製造業への「派遣」を禁止するとの動きがある。それ自体は良いとしても、それにより企業はアルバイトや日雇いなどの不正規労働者に切り替えるなどの対応をし、正規社員の中途採用に転換する企業は極めて限定的となる可能性が強い。
 職能制求人は、各企業が行うことであるが、経産省と厚労省が中心となり職能制の模範形を作成し、奨励すれば促進効果が期待される。ハローワークなどで職業訓練が行われているものの、就職にはなかなか結びつかないなど実効が上がっていないのが実情だが、職能制が拡大すれば職業訓練も生きてこよう。(2010.01.)        (不許無断転載)(All Rights Reserved.)
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シリーズJAL再起への5つの提言

2010-01-27 | Weblog
シリーズJAL再起への5つの提言
 JALの法的整理、再生の方針が決まった。当面の最大の焦点は、8千億円とも言われている債務の圧縮と資金調達だが、その点は企業再生支援機構と新経営陣に委ねるとして、JALが運航を継続しながら「再起」するに当たり、影響を受ける方々にはご同情の意を表明すると共に、次の5点を提案したい。
1、 安全への信頼回復
 航空サービスで最も大切なことは旅客の安全の確保だ。特に日航が過去に不幸な事故を起こしているだけに、“安全”について信頼回復出来るように心を新たにして再出発する必要があろう。それなくしては客は戻らない。誰の責任でもない、役員を含め従業員一人一人の責任であるとの意識と妥協のない努力が大切なのであろう。このことは他のエアーラインも同様だ。
 安全と共に、安定と安価を加えた3Aを達成することが大切だ。安定は、大幅な遅延やキャンセルがない安定した運航で何時も安心して乗れることである。
 2、JALのロゴマークの一新
JALのこれまでのロゴマークは、見方によると朱の文字Jで真ん中を真っ二つに割った形となっている。一新して良いのではないだろうか。運航を継続し、意識やイメージを引きずれば一新されたとは見られない。公募するのも良いだろう。
3、企業のためではなく、「顧客のためのサービス」という意識が必要
航空業も営利企業であるので利益を出さなければならない。それが企業目的だ。しかし事業が拡大し、企業規模が大きくなると自然と企業の論理、都合が優先するようになる。顧客へのサービスは画一化し、マニュアル通りの横並びの均一サービスとなる。サービスに差をつけない、むらのないサービスと言う意味では良いが、企業のための規則やマニュアルとなり、「顧客のためのサービス」という原点が薄れて来る。要するに“規則でございます”的な対応となる。その“規則”は誰のためにあるのか。企業にとって都合の良いサービスは、必ずしも顧客のためのサービスとはならない。
このことは巨大化しているその他の民間企業についても言えるが、特に行政について言える。行政は、国レベルでも地方でも権限を持っているので、禁止行為、罰則を含め規則をつくればそれで済むことが多い。しかし何故違反行為が行われるのだろうか。刑法上の犯罪などは別として、そこに何らかの必要性があることが多い。例えば規則上は良いことではないが、駐車・駐輪違反などがある。止めなければ用を足せないからだ。ところが禁止が10年、20年と続く。違反も続く。一定期間禁止したら、その間に便利な場所に駐車・駐輪場所を設置すれば駐車・駐輪違反は減少するだろう。いろいろの問題があるだろうが、それが「行政」というものではないだろうか。行政がどうしても行政側の都合、論理を優先し、国民のニーズに対応した「行政サービス」という意識に欠けるからなのであろう。行政とはそういうものと言えないこともないが、民主主義社会においては、行政側も「国民のための行政サービス」という意識が不可欠なのであろう。「国民の、国民による、国民のための政府」とは本来そのような政府、行政を目指したものであろう。
民間の事業であれば、顧客、消費者のためのサービスでなければ客は得れない。
4、忘れてはならないのは再起のための公的資金の投入
 今回の法的整理に伴い、多額の公的資金が投入される。また主力銀行は総額3,500億円強の債権の放棄を行うと共に、株式の上場廃止、100%の減資となれば機関投資家はもとより、46万人ほどの個人株主の保有株がゼロになり、納税者、国民に広範な負担を強いることになる。従って日航の再起は日航の社内的な問題にとどまらず、国民的な関心があることであり、国民の理解と支援なくしては困難であるとの認識が必要であろう。
 新生日航の会長として京セラの稲盛会長が就任する見通しだ。その際稲盛会長は、高齢であるので毎日は出勤できないが、無給で仕事する旨述べた。最近これほど高潔な経営者を見たことがない。同時に「ナショナル・キャリアーということではなく、日航従業員の幸せのため努力する」旨述べた。新経営者として従業員の不安を除くためであり理解できるが、納税者、国民に広範な負担を強いる再起であることを忘れるべきではない。
 更に、そもそも顧客が戻らなければ再起は困難であろう。これまで日航を支援していた顧客をつなぎとめ、新たな顧客をつかむ努力と処理の仕方が鍵となろう。従来の日航利用者、納税者、国民の理解と支援が不可欠であろう。
5、株式市場への信頼回復
JAJ株は上場廃止、100%の減資で、株券は紙切れとなる。46万人の個人株主を含め株主は、民営化されたJALを資本面だけでなく、顧客としてもJALを支えて来た。今後再生を図る上でこれらの株主が背を向ける可能性がある。
それ以上に、今回の100%減資は一般投資家の株式市場への信頼性を著しく損なう恐れがある。しかも民営化されたあのJALの株券が紙切れとなるのだから影響は大きいと見られる。
金融機関の破綻の場合、1千万円を限度として預金が保証されるペイオフ制度がある。企業破綻についても、今回のような公的支援に基づく再生おいては、株式も1千万円程度を限度として保証される制度が検討されても良いのかも知れない。(01.10.)
(All Rights Reserved.) (不許無断引用)
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シリーズJAL再起への5つの提言

2010-01-27 | Weblog
シリーズJAL再起への5つの提言
 JALの法的整理、再生の方針が決まった。当面の最大の焦点は、8千億円とも言われている債務の圧縮と資金調達だが、その点は企業再生支援機構と新経営陣に委ねるとして、JALが運航を継続しながら「再起」するに当たり、影響を受ける方々にはご同情の意を表明すると共に、次の5点を提案したい。
1、 安全への信頼回復
 航空サービスで最も大切なことは旅客の安全の確保だ。特に日航が過去に不幸な事故を起こしているだけに、“安全”について信頼回復出来るように心を新たにして再出発する必要があろう。それなくしては客は戻らない。誰の責任でもない、役員を含め従業員一人一人の責任であるとの意識と妥協のない努力が大切なのであろう。このことは他のエアーラインも同様だ。
 安全と共に、安定と安価を加えた3Aを達成することが大切だ。安定は、大幅な遅延やキャンセルがない安定した運航で何時も安心して乗れることである。
 2、JALのロゴマークの一新
JALのこれまでのロゴマークは、見方によると朱の文字Jで真ん中を真っ二つに割った形となっている。一新して良いのではないだろうか。運航を継続し、意識やイメージを引きずれば一新されたとは見られない。公募するのも良いだろう。
3、企業のためではなく、「顧客のためのサービス」という意識が必要
航空業も営利企業であるので利益を出さなければならない。それが企業目的だ。しかし事業が拡大し、企業規模が大きくなると自然と企業の論理、都合が優先するようになる。顧客へのサービスは画一化し、マニュアル通りの横並びの均一サービスとなる。サービスに差をつけない、むらのないサービスと言う意味では良いが、企業のための規則やマニュアルとなり、「顧客のためのサービス」という原点が薄れて来る。要するに“規則でございます”的な対応となる。その“規則”は誰のためにあるのか。企業にとって都合の良いサービスは、必ずしも顧客のためのサービスとはならない。
このことは巨大化しているその他の民間企業についても言えるが、特に行政について言える。行政は、国レベルでも地方でも権限を持っているので、禁止行為、罰則を含め規則をつくればそれで済むことが多い。しかし何故違反行為が行われるのだろうか。刑法上の犯罪などは別として、そこに何らかの必要性があることが多い。例えば規則上は良いことではないが、駐車・駐輪違反などがある。止めなければ用を足せないからだ。ところが禁止が10年、20年と続く。違反も続く。一定期間禁止したら、その間に便利な場所に駐車・駐輪場所を設置すれば駐車・駐輪違反は減少するだろう。いろいろの問題があるだろうが、それが「行政」というものではないだろうか。行政がどうしても行政側の都合、論理を優先し、国民のニーズに対応した「行政サービス」という意識に欠けるからなのであろう。行政とはそういうものと言えないこともないが、民主主義社会においては、行政側も「国民のための行政サービス」という意識が不可欠なのであろう。「国民の、国民による、国民のための政府」とは本来そのような政府、行政を目指したものであろう。
民間の事業であれば、顧客、消費者のためのサービスでなければ客は得れない。
4、忘れてはならないのは再起のための公的資金の投入
 今回の法的整理に伴い、多額の公的資金が投入される。また主力銀行は総額3,500億円強の債権の放棄を行うと共に、株式の上場廃止、100%の減資となれば機関投資家はもとより、46万人ほどの個人株主の保有株がゼロになり、納税者、国民に広範な負担を強いることになる。従って日航の再起は日航の社内的な問題にとどまらず、国民的な関心があることであり、国民の理解と支援なくしては困難であるとの認識が必要であろう。
 新生日航の会長として京セラの稲盛会長が就任する見通しだ。その際稲盛会長は、高齢であるので毎日は出勤できないが、無給で仕事する旨述べた。最近これほど高潔な経営者を見たことがない。同時に「ナショナル・キャリアーということではなく、日航従業員の幸せのため努力する」旨述べた。新経営者として従業員の不安を除くためであり理解できるが、納税者、国民に広範な負担を強いる再起であることを忘れるべきではない。
 更に、そもそも顧客が戻らなければ再起は困難であろう。これまで日航を支援していた顧客をつなぎとめ、新たな顧客をつかむ努力と処理の仕方が鍵となろう。従来の日航利用者、納税者、国民の理解と支援が不可欠であろう。
5、株式市場への信頼回復
JAJ株は上場廃止、100%の減資で、株券は紙切れとなる。46万人の個人株主を含め株主は、民営化されたJALを資本面だけでなく、顧客としてもJALを支えて来た。今後再生を図る上でこれらの株主が背を向ける可能性がある。
それ以上に、今回の100%減資は一般投資家の株式市場への信頼性を著しく損なう恐れがある。しかも民営化されたあのJALの株券が紙切れとなるのだから影響は大きいと見られる。
金融機関の破綻の場合、1千万円を限度として預金が保証されるペイオフ制度がある。企業破綻についても、今回のような公的支援に基づく再生おいては、株式も1千万円程度を限度として保証される制度が検討されても良いのかも知れない。(01.10.)
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シリーズJAL再起への5つの提言

2010-01-27 | Weblog
シリーズJAL再起への5つの提言
 JALの法的整理、再生の方針が決まった。当面の最大の焦点は、8千億円とも言われている債務の圧縮と資金調達だが、その点は企業再生支援機構と新経営陣に委ねるとして、JALが運航を継続しながら「再起」するに当たり、影響を受ける方々にはご同情の意を表明すると共に、次の5点を提案したい。
1、 安全への信頼回復
 航空サービスで最も大切なことは旅客の安全の確保だ。特に日航が過去に不幸な事故を起こしているだけに、“安全”について信頼回復出来るように心を新たにして再出発する必要があろう。それなくしては客は戻らない。誰の責任でもない、役員を含め従業員一人一人の責任であるとの意識と妥協のない努力が大切なのであろう。このことは他のエアーラインも同様だ。
 安全と共に、安定と安価を加えた3Aを達成することが大切だ。安定は、大幅な遅延やキャンセルがない安定した運航で何時も安心して乗れることである。
 2、JALのロゴマークの一新
JALのこれまでのロゴマークは、見方によると朱の文字Jで真ん中を真っ二つに割った形となっている。一新して良いのではないだろうか。運航を継続し、意識やイメージを引きずれば一新されたとは見られない。公募するのも良いだろう。
3、企業のためではなく、「顧客のためのサービス」という意識が必要
航空業も営利企業であるので利益を出さなければならない。それが企業目的だ。しかし事業が拡大し、企業規模が大きくなると自然と企業の論理、都合が優先するようになる。顧客へのサービスは画一化し、マニュアル通りの横並びの均一サービスとなる。サービスに差をつけない、むらのないサービスと言う意味では良いが、企業のための規則やマニュアルとなり、「顧客のためのサービス」という原点が薄れて来る。要するに“規則でございます”的な対応となる。その“規則”は誰のためにあるのか。企業にとって都合の良いサービスは、必ずしも顧客のためのサービスとはならない。
このことは巨大化しているその他の民間企業についても言えるが、特に行政について言える。行政は、国レベルでも地方でも権限を持っているので、禁止行為、罰則を含め規則をつくればそれで済むことが多い。しかし何故違反行為が行われるのだろうか。刑法上の犯罪などは別として、そこに何らかの必要性があることが多い。例えば規則上は良いことではないが、駐車・駐輪違反などがある。止めなければ用を足せないからだ。ところが禁止が10年、20年と続く。違反も続く。一定期間禁止したら、その間に便利な場所に駐車・駐輪場所を設置すれば駐車・駐輪違反は減少するだろう。いろいろの問題があるだろうが、それが「行政」というものではないだろうか。行政がどうしても行政側の都合、論理を優先し、国民のニーズに対応した「行政サービス」という意識に欠けるからなのであろう。行政とはそういうものと言えないこともないが、民主主義社会においては、行政側も「国民のための行政サービス」という意識が不可欠なのであろう。「国民の、国民による、国民のための政府」とは本来そのような政府、行政を目指したものであろう。
民間の事業であれば、顧客、消費者のためのサービスでなければ客は得れない。
4、忘れてはならないのは再起のための公的資金の投入
 今回の法的整理に伴い、多額の公的資金が投入される。また主力銀行は総額3,500億円強の債権の放棄を行うと共に、株式の上場廃止、100%の減資となれば機関投資家はもとより、46万人ほどの個人株主の保有株がゼロになり、納税者、国民に広範な負担を強いることになる。従って日航の再起は日航の社内的な問題にとどまらず、国民的な関心があることであり、国民の理解と支援なくしては困難であるとの認識が必要であろう。
 新生日航の会長として京セラの稲盛会長が就任する見通しだ。その際稲盛会長は、高齢であるので毎日は出勤できないが、無給で仕事する旨述べた。最近これほど高潔な経営者を見たことがない。同時に「ナショナル・キャリアーということではなく、日航従業員の幸せのため努力する」旨述べた。新経営者として従業員の不安を除くためであり理解できるが、納税者、国民に広範な負担を強いる再起であることを忘れるべきではない。
 更に、そもそも顧客が戻らなければ再起は困難であろう。これまで日航を支援していた顧客をつなぎとめ、新たな顧客をつかむ努力と処理の仕方が鍵となろう。従来の日航利用者、納税者、国民の理解と支援が不可欠であろう。
5、株式市場への信頼回復
JAJ株は上場廃止、100%の減資で、株券は紙切れとなる。46万人の個人株主を含め株主は、民営化されたJALを資本面だけでなく、顧客としてもJALを支えて来た。今後再生を図る上でこれらの株主が背を向ける可能性がある。
それ以上に、今回の100%減資は一般投資家の株式市場への信頼性を著しく損なう恐れがある。しかも民営化されたあのJALの株券が紙切れとなるのだから影響は大きいと見られる。
金融機関の破綻の場合、1千万円を限度として預金が保証されるペイオフ制度がある。企業破綻についても、今回のような公的支援に基づく再生おいては、株式も1千万円程度を限度として保証される制度が検討されても良いのかも知れない。(01.10.)
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 JALの法的整理、再生の方針が決まった。当面の最大の焦点は、8千億円とも言われている債務の圧縮と資金調達だが、その点は企業再生支援機構と新経営陣に委ねるとして、JALが運航を継続しながら「再起」するに当たり、影響を受ける方々にはご同情の意を表明すると共に、次の5点を提案したい。
1、 安全への信頼回復
 航空サービスで最も大切なことは旅客の安全の確保だ。特に日航が過去に不幸な事故を起こしているだけに、“安全”について信頼回復出来るように心を新たにして再出発する必要があろう。それなくしては客は戻らない。誰の責任でもない、役員を含め従業員一人一人の責任であるとの意識と妥協のない努力が大切なのであろう。このことは他のエアーラインも同様だ。
 安全と共に、安定と安価を加えた3Aを達成することが大切だ。安定は、大幅な遅延やキャンセルがない安定した運航で何時も安心して乗れることである。
 2、JALのロゴマークの一新
JALのこれまでのロゴマークは、見方によると朱の文字Jで真ん中を真っ二つに割った形となっている。一新して良いのではないだろうか。運航を継続し、意識やイメージを引きずれば一新されたとは見られない。公募するのも良いだろう。
3、企業のためではなく、「顧客のためのサービス」という意識が必要
航空業も営利企業であるので利益を出さなければならない。それが企業目的だ。しかし事業が拡大し、企業規模が大きくなると自然と企業の論理、都合が優先するようになる。顧客へのサービスは画一化し、マニュアル通りの横並びの均一サービスとなる。サービスに差をつけない、むらのないサービスと言う意味では良いが、企業のための規則やマニュアルとなり、「顧客のためのサービス」という原点が薄れて来る。要するに“規則でございます”的な対応となる。その“規則”は誰のためにあるのか。企業にとって都合の良いサービスは、必ずしも顧客のためのサービスとはならない。
このことは巨大化しているその他の民間企業についても言えるが、特に行政について言える。行政は、国レベルでも地方でも権限を持っているので、禁止行為、罰則を含め規則をつくればそれで済むことが多い。しかし何故違反行為が行われるのだろうか。刑法上の犯罪などは別として、そこに何らかの必要性があることが多い。例えば規則上は良いことではないが、駐車・駐輪違反などがある。止めなければ用を足せないからだ。ところが禁止が10年、20年と続く。違反も続く。一定期間禁止したら、その間に便利な場所に駐車・駐輪場所を設置すれば駐車・駐輪違反は減少するだろう。いろいろの問題があるだろうが、それが「行政」というものではないだろうか。行政がどうしても行政側の都合、論理を優先し、国民のニーズに対応した「行政サービス」という意識に欠けるからなのであろう。行政とはそういうものと言えないこともないが、民主主義社会においては、行政側も「国民のための行政サービス」という意識が不可欠なのであろう。「国民の、国民による、国民のための政府」とは本来そのような政府、行政を目指したものであろう。
民間の事業であれば、顧客、消費者のためのサービスでなければ客は得れない。
4、忘れてはならないのは再起のための公的資金の投入
 今回の法的整理に伴い、多額の公的資金が投入される。また主力銀行は総額3,500億円強の債権の放棄を行うと共に、株式の上場廃止、100%の減資となれば機関投資家はもとより、46万人ほどの個人株主の保有株がゼロになり、納税者、国民に広範な負担を強いることになる。従って日航の再起は日航の社内的な問題にとどまらず、国民的な関心があることであり、国民の理解と支援なくしては困難であるとの認識が必要であろう。
 新生日航の会長として京セラの稲盛会長が就任する見通しだ。その際稲盛会長は、高齢であるので毎日は出勤できないが、無給で仕事する旨述べた。最近これほど高潔な経営者を見たことがない。同時に「ナショナル・キャリアーということではなく、日航従業員の幸せのため努力する」旨述べた。新経営者として従業員の不安を除くためであり理解できるが、納税者、国民に広範な負担を強いる再起であることを忘れるべきではない。
 更に、そもそも顧客が戻らなければ再起は困難であろう。これまで日航を支援していた顧客をつなぎとめ、新たな顧客をつかむ努力と処理の仕方が鍵となろう。従来の日航利用者、納税者、国民の理解と支援が不可欠であろう。
5、株式市場への信頼回復
JAJ株は上場廃止、100%の減資で、株券は紙切れとなる。46万人の個人株主を含め株主は、民営化されたJALを資本面だけでなく、顧客としてもJALを支えて来た。今後再生を図る上でこれらの株主が背を向ける可能性がある。
それ以上に、今回の100%減資は一般投資家の株式市場への信頼性を著しく損なう恐れがある。しかも民営化されたあのJALの株券が紙切れとなるのだから影響は大きいと見られる。
金融機関の破綻の場合、1千万円を限度として預金が保証されるペイオフ制度がある。企業破綻についても、今回のような公的支援に基づく再生おいては、株式も1千万円程度を限度として保証される制度が検討されても良いのかも知れない。(01.10.)
(All Rights Reserved.) (不許無断引用)
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