内外政策評論 TheOpinion on Global & Domestic Issues

このブログは、広い視野から内外諸問題を分析し、提言を試みます。
Policy Essayist

北極海に広がるビジネス・チャンス -温暖化の恩恵か、警鐘かー (その2)

2009-11-30 | Weblog
北極海に広がるビジネス・チャンス -温暖化の恩恵か、警鐘かー (その2)
 1、期待される北極海航路 (その1で掲載)
  2、豊富な天然ガス・石油、その他鉱物資源
 北極圏は、圏内の陸地はもとより、大陸棚も天然ガス、石油資源や金、銀、鉄、亜鉛、錫、ダイアモンドなど貴重な鉱物資源に富んでいる。
 石油については、世界の石油生産の約10%、天然ガスについては25%の供給源になっており、現在ロシアが最大の生産者だ。更に、米国地質サーベイの調査結果(08年6月23日公表)によると、未開発埋蔵量では石油が約13%、天然ガスでは約30%に相当する。そして、特にボーフォート海盆やロシアの大陸棚など、北極圏には世界のこれら未開発資源の約22%が眠っていると見られている。
 現在、北極海の大陸棚への沿岸諸国の関心は高まっており、カナダ、デンマーク、ロシア、及びノルウエーが国連海洋法条約に基づき大陸棚の線引きを行っていると伝えられている。最終的な線引きにはなお時間が掛かろうが、ロシアはロモノソフ海嶺をシベリア大陸の自然の延長としている。ロシアの専門家は、この海嶺周辺に北極圏の炭化水素資源の約3分の2が存在すると推定している。 (09.09.)                      (All Rights Reserved.)
                   (不許無断掲載)
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北極海に広がるビジネス・チャンス -温暖化の恩恵か、警鐘かー (その2)

2009-11-30 | Weblog
北極海に広がるビジネス・チャンス -温暖化の恩恵か、警鐘かー (その2)
 1、期待される北極海航路 (その1で掲載)
  2、豊富な天然ガス・石油、その他鉱物資源
 北極圏は、圏内の陸地はもとより、大陸棚も天然ガス、石油資源や金、銀、鉄、亜鉛、錫、ダイアモンドなど貴重な鉱物資源に富んでいる。
 石油については、世界の石油生産の約10%、天然ガスについては25%の供給源になっており、現在ロシアが最大の生産者だ。更に、米国地質サーベイの調査結果(08年6月23日公表)によると、未開発埋蔵量では石油が約13%、天然ガスでは約30%に相当する。そして、特にボーフォート海盆やロシアの大陸棚など、北極圏には世界のこれら未開発資源の約22%が眠っていると見られている。
 現在、北極海の大陸棚への沿岸諸国の関心は高まっており、カナダ、デンマーク、ロシア、及びノルウエーが国連海洋法条約に基づき大陸棚の線引きを行っていると伝えられている。最終的な線引きにはなお時間が掛かろうが、ロシアはロモノソフ海嶺をシベリア大陸の自然の延長としている。ロシアの専門家は、この海嶺周辺に北極圏の炭化水素資源の約3分の2が存在すると推定している。 (09.09.)                      (All Rights Reserved.)
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北極海に広がるビジネス・チャンス -温暖化の恩恵か、警鐘かー (その2)
 1、期待される北極海航路 (その1で掲載)
  2、豊富な天然ガス・石油、その他鉱物資源
 北極圏は、圏内の陸地はもとより、大陸棚も天然ガス、石油資源や金、銀、鉄、亜鉛、錫、ダイアモンドなど貴重な鉱物資源に富んでいる。
 石油については、世界の石油生産の約10%、天然ガスについては25%の供給源になっており、現在ロシアが最大の生産者だ。更に、米国地質サーベイの調査結果(08年6月23日公表)によると、未開発埋蔵量では石油が約13%、天然ガスでは約30%に相当する。そして、特にボーフォート海盆やロシアの大陸棚など、北極圏には世界のこれら未開発資源の約22%が眠っていると見られている。
 現在、北極海の大陸棚への沿岸諸国の関心は高まっており、カナダ、デンマーク、ロシア、及びノルウエーが国連海洋法条約に基づき大陸棚の線引きを行っていると伝えられている。最終的な線引きにはなお時間が掛かろうが、ロシアはロモノソフ海嶺をシベリア大陸の自然の延長としている。ロシアの専門家は、この海嶺周辺に北極圏の炭化水素資源の約3分の2が存在すると推定している。 (09.09.)                      (All Rights Reserved.)
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北極海に広がるビジネス・チャンス -温暖化の恩恵か、警鐘かー (その2)
 1、期待される北極海航路 (その1で掲載)
  2、豊富な天然ガス・石油、その他鉱物資源
 北極圏は、圏内の陸地はもとより、大陸棚も天然ガス、石油資源や金、銀、鉄、亜鉛、錫、ダイアモンドなど貴重な鉱物資源に富んでいる。
 石油については、世界の石油生産の約10%、天然ガスについては25%の供給源になっており、現在ロシアが最大の生産者だ。更に、米国地質サーベイの調査結果(08年6月23日公表)によると、未開発埋蔵量では石油が約13%、天然ガスでは約30%に相当する。そして、特にボーフォート海盆やロシアの大陸棚など、北極圏には世界のこれら未開発資源の約22%が眠っていると見られている。
 現在、北極海の大陸棚への沿岸諸国の関心は高まっており、カナダ、デンマーク、ロシア、及びノルウエーが国連海洋法条約に基づき大陸棚の線引きを行っていると伝えられている。最終的な線引きにはなお時間が掛かろうが、ロシアはロモノソフ海嶺をシベリア大陸の自然の延長としている。ロシアの専門家は、この海嶺周辺に北極圏の炭化水素資源の約3分の2が存在すると推定している。 (09.09.)                      (All Rights Reserved.)
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北極海に広がるビジネス・チャンス-温暖化の恩恵か、警鐘かー (その1)

2009-11-30 | Weblog
北極海に広がるビジネス・チャンス-温暖化の恩恵か、警鐘かー (その1)
 北極海は、温暖化の影響で陸地まで連なっている氷海が収縮し、最近では夏期を迎えると陸に近い海域に航路が開け始めている。このため、船舶による航行や海底開発などが行い易くなり、ビジネス・チャンスも開け始めている。一方、北極圏での経済活動を中・長期に持続可能にするためには、地球温暖化への影響を十分に考慮しなくてはならない。
 このような状況を背景として、4月29日、ノルウエーのトロムソにおいて北極評議会が閣僚レベルで開催された。同評議会は、正式には1996年に設立され、本部はノルウエーにあり、北極圏に領土を持つ米、加、露、ノルウェー、デンマークの5か国とアイスランド、フィンランド、及びスエーデンの8カ国で構成されている。北極評議会の目的は、北極海が直面する問題、特に、北極海開発の側面と環境保護についての共通の認識と協力を促進することである。開発の側面は、北極海航行や大陸棚の開発など、沿岸国だけでなくその他の諸国にもビジネス・チャンスを提供する。環境の側面は、北極海の広大な氷原が縮小している問題であり、それは北極点周辺の気流や海流への冷却効果を低下させ、地球温暖化を早める恐れがあることである。同評議会にはオブザーバー資格での参加が可能であり、中国や韓国が既に申請していると伝えられており、日本も申請するなど、各国においてビジネス・チャンスに熱い期待が寄せられている。
 北極評議会は、2050年までには北極海が夏期には砕氷船なしで航行が可能になるとしつつ、北極海での運航ガイドラインの必要性、経済活動・インフラ開発面での安全基準の必要性、最低限の基準を含む石油・ガス開発ガイドラインの改定などに関する「宣言」を採択すると共に、北極海の氷海の融解に関する検討作業に協力し、気候変動に影響する炭酸ガス排出削減への努力を促している。
1、 期待される北極海航路
これまで北極海は、温暖化の影響で氷海が融け縮小し続けている。衛星写真でも、
2008年においては、6月末頃までは陸地まで氷海で覆われているが、8月20日頃前後から氷海は陸地を離れ、海路が開け、砕氷船を使用すれば年間5ヶ月内外は航行可能であり、その期間は毎年伸びている。8月中旬には2-3週間程度砕氷船無しでも航行可能のようだ。5年前には、氷海が最も小さくなる8月下旬でも氷海は陸まで張り出ていた。
 北極航路には2つある。一つは、太平洋北端のベーリング海からシベリア・ユーラシア大陸に沿ってバレンツ海、ノルウエー海方面に向けての「北方海路(Northern sea route)」である。衛星写真の画像でも夏の一時期(8月20日前後頃より9月末頃まで)には航行可能になる。この航路は主にロシアが使用しており、航行の安全と航行可能期間を延長するため砕氷船の建造を増やしており、原子力砕氷船の建造計画もある。将来更に海路が開ければ、東アジアと欧州を結ぶ有力な国際海路となることが期待される。
 もう一つは、ベーリング海から米国アラスカ州、カナダの北方領沖の北極圏諸島をぬって大西洋に出る「北西航路(Northwest passage)」である。夏でも島と島の間の氷で覆われている海域が一部残っており、砕氷船を使用し年間7週間程度の航行が可能とされている。8月20日前後から9月中頃位までは航路が開ける。ところがこれらの諸島はカナダ領であるので、カナダは、これらの島の間の海路は「内水」であり、同国の管轄下にあると主張している。一方米国は、自由に航行できる「国際水路」であると主張しており、航路の設定など今後の取り扱いが注目される。
 今後15年程度は年間を通じての使用は困難とする見方もあるが、それよりも早く氷海の融解が進むとの見方もある。「北方海路」を使用できるようになれば、日本を含む極東から欧州等への航行が大幅に短縮され、また、「北西航路」が使用可能になれば北米の東海岸地域、大西洋への航路が短縮される。嘗て、北極海が氷と厳しい気候条件で航行が出来ず、大西洋と太平洋とを結ぶためパナマ運河が建設(1914年開通)されたが、パナマ運河の通行料は1トンにつき1.39ドル、5万トン級の船舶で約7百万円掛かる。従って、「北西航路」を使用して大西洋に抜けられるようになれば顕著なコスト減となる。
 欧州とアジアを結ぶスエズ運河(1869年開通)についても、通行料は1隻平均約1,500万円内外と見られており、北極海の「北方海路」が使えるようになれば、大幅なコスト減と時間短縮が可能になる。特に現在、ソマリア沖の海賊問題が深刻であり、スエズ運河を避け、アフリカ南端の喜望峰を迂回して運行する船舶も出ているので、「北方海路」の有用性は高い。
 北極海での航行が可能となると、観光を含む運航だけでなく、大陸棚の資源開発も容易になり、経済的意義は大きい。 (09.09.)    (All Rights Reserved.)
                         (不許無断転載)
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北極海に広がるビジネス・チャンス-温暖化の恩恵か、警鐘かー (その1)
 北極海は、温暖化の影響で陸地まで連なっている氷海が収縮し、最近では夏期を迎えると陸に近い海域に航路が開け始めている。このため、船舶による航行や海底開発などが行い易くなり、ビジネス・チャンスも開け始めている。一方、北極圏での経済活動を中・長期に持続可能にするためには、地球温暖化への影響を十分に考慮しなくてはならない。
 このような状況を背景として、4月29日、ノルウエーのトロムソにおいて北極評議会が閣僚レベルで開催された。同評議会は、正式には1996年に設立され、本部はノルウエーにあり、北極圏に領土を持つ米、加、露、ノルウェー、デンマークの5か国とアイスランド、フィンランド、及びスエーデンの8カ国で構成されている。北極評議会の目的は、北極海が直面する問題、特に、北極海開発の側面と環境保護についての共通の認識と協力を促進することである。開発の側面は、北極海航行や大陸棚の開発など、沿岸国だけでなくその他の諸国にもビジネス・チャンスを提供する。環境の側面は、北極海の広大な氷原が縮小している問題であり、それは北極点周辺の気流や海流への冷却効果を低下させ、地球温暖化を早める恐れがあることである。同評議会にはオブザーバー資格での参加が可能であり、中国や韓国が既に申請していると伝えられており、日本も申請するなど、各国においてビジネス・チャンスに熱い期待が寄せられている。
 北極評議会は、2050年までには北極海が夏期には砕氷船なしで航行が可能になるとしつつ、北極海での運航ガイドラインの必要性、経済活動・インフラ開発面での安全基準の必要性、最低限の基準を含む石油・ガス開発ガイドラインの改定などに関する「宣言」を採択すると共に、北極海の氷海の融解に関する検討作業に協力し、気候変動に影響する炭酸ガス排出削減への努力を促している。
1、 期待される北極海航路
これまで北極海は、温暖化の影響で氷海が融け縮小し続けている。衛星写真でも、
2008年においては、6月末頃までは陸地まで氷海で覆われているが、8月20日頃前後から氷海は陸地を離れ、海路が開け、砕氷船を使用すれば年間5ヶ月内外は航行可能であり、その期間は毎年伸びている。8月中旬には2-3週間程度砕氷船無しでも航行可能のようだ。5年前には、氷海が最も小さくなる8月下旬でも氷海は陸まで張り出ていた。
 北極航路には2つある。一つは、太平洋北端のベーリング海からシベリア・ユーラシア大陸に沿ってバレンツ海、ノルウエー海方面に向けての「北方海路(Northern sea route)」である。衛星写真の画像でも夏の一時期(8月20日前後頃より9月末頃まで)には航行可能になる。この航路は主にロシアが使用しており、航行の安全と航行可能期間を延長するため砕氷船の建造を増やしており、原子力砕氷船の建造計画もある。将来更に海路が開ければ、東アジアと欧州を結ぶ有力な国際海路となることが期待される。
 もう一つは、ベーリング海から米国アラスカ州、カナダの北方領沖の北極圏諸島をぬって大西洋に出る「北西航路(Northwest passage)」である。夏でも島と島の間の氷で覆われている海域が一部残っており、砕氷船を使用し年間7週間程度の航行が可能とされている。8月20日前後から9月中頃位までは航路が開ける。ところがこれらの諸島はカナダ領であるので、カナダは、これらの島の間の海路は「内水」であり、同国の管轄下にあると主張している。一方米国は、自由に航行できる「国際水路」であると主張しており、航路の設定など今後の取り扱いが注目される。
 今後15年程度は年間を通じての使用は困難とする見方もあるが、それよりも早く氷海の融解が進むとの見方もある。「北方海路」を使用できるようになれば、日本を含む極東から欧州等への航行が大幅に短縮され、また、「北西航路」が使用可能になれば北米の東海岸地域、大西洋への航路が短縮される。嘗て、北極海が氷と厳しい気候条件で航行が出来ず、大西洋と太平洋とを結ぶためパナマ運河が建設(1914年開通)されたが、パナマ運河の通行料は1トンにつき1.39ドル、5万トン級の船舶で約7百万円掛かる。従って、「北西航路」を使用して大西洋に抜けられるようになれば顕著なコスト減となる。
 欧州とアジアを結ぶスエズ運河(1869年開通)についても、通行料は1隻平均約1,500万円内外と見られており、北極海の「北方海路」が使えるようになれば、大幅なコスト減と時間短縮が可能になる。特に現在、ソマリア沖の海賊問題が深刻であり、スエズ運河を避け、アフリカ南端の喜望峰を迂回して運行する船舶も出ているので、「北方海路」の有用性は高い。
 北極海での航行が可能となると、観光を含む運航だけでなく、大陸棚の資源開発も容易になり、経済的意義は大きい。 (09.09.)    (All Rights Reserved.)
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北極海に広がるビジネス・チャンス-温暖化の恩恵か、警鐘かー (その1)
 北極海は、温暖化の影響で陸地まで連なっている氷海が収縮し、最近では夏期を迎えると陸に近い海域に航路が開け始めている。このため、船舶による航行や海底開発などが行い易くなり、ビジネス・チャンスも開け始めている。一方、北極圏での経済活動を中・長期に持続可能にするためには、地球温暖化への影響を十分に考慮しなくてはならない。
 このような状況を背景として、4月29日、ノルウエーのトロムソにおいて北極評議会が閣僚レベルで開催された。同評議会は、正式には1996年に設立され、本部はノルウエーにあり、北極圏に領土を持つ米、加、露、ノルウェー、デンマークの5か国とアイスランド、フィンランド、及びスエーデンの8カ国で構成されている。北極評議会の目的は、北極海が直面する問題、特に、北極海開発の側面と環境保護についての共通の認識と協力を促進することである。開発の側面は、北極海航行や大陸棚の開発など、沿岸国だけでなくその他の諸国にもビジネス・チャンスを提供する。環境の側面は、北極海の広大な氷原が縮小している問題であり、それは北極点周辺の気流や海流への冷却効果を低下させ、地球温暖化を早める恐れがあることである。同評議会にはオブザーバー資格での参加が可能であり、中国や韓国が既に申請していると伝えられており、日本も申請するなど、各国においてビジネス・チャンスに熱い期待が寄せられている。
 北極評議会は、2050年までには北極海が夏期には砕氷船なしで航行が可能になるとしつつ、北極海での運航ガイドラインの必要性、経済活動・インフラ開発面での安全基準の必要性、最低限の基準を含む石油・ガス開発ガイドラインの改定などに関する「宣言」を採択すると共に、北極海の氷海の融解に関する検討作業に協力し、気候変動に影響する炭酸ガス排出削減への努力を促している。
1、 期待される北極海航路
これまで北極海は、温暖化の影響で氷海が融け縮小し続けている。衛星写真でも、
2008年においては、6月末頃までは陸地まで氷海で覆われているが、8月20日頃前後から氷海は陸地を離れ、海路が開け、砕氷船を使用すれば年間5ヶ月内外は航行可能であり、その期間は毎年伸びている。8月中旬には2-3週間程度砕氷船無しでも航行可能のようだ。5年前には、氷海が最も小さくなる8月下旬でも氷海は陸まで張り出ていた。
 北極航路には2つある。一つは、太平洋北端のベーリング海からシベリア・ユーラシア大陸に沿ってバレンツ海、ノルウエー海方面に向けての「北方海路(Northern sea route)」である。衛星写真の画像でも夏の一時期(8月20日前後頃より9月末頃まで)には航行可能になる。この航路は主にロシアが使用しており、航行の安全と航行可能期間を延長するため砕氷船の建造を増やしており、原子力砕氷船の建造計画もある。将来更に海路が開ければ、東アジアと欧州を結ぶ有力な国際海路となることが期待される。
 もう一つは、ベーリング海から米国アラスカ州、カナダの北方領沖の北極圏諸島をぬって大西洋に出る「北西航路(Northwest passage)」である。夏でも島と島の間の氷で覆われている海域が一部残っており、砕氷船を使用し年間7週間程度の航行が可能とされている。8月20日前後から9月中頃位までは航路が開ける。ところがこれらの諸島はカナダ領であるので、カナダは、これらの島の間の海路は「内水」であり、同国の管轄下にあると主張している。一方米国は、自由に航行できる「国際水路」であると主張しており、航路の設定など今後の取り扱いが注目される。
 今後15年程度は年間を通じての使用は困難とする見方もあるが、それよりも早く氷海の融解が進むとの見方もある。「北方海路」を使用できるようになれば、日本を含む極東から欧州等への航行が大幅に短縮され、また、「北西航路」が使用可能になれば北米の東海岸地域、大西洋への航路が短縮される。嘗て、北極海が氷と厳しい気候条件で航行が出来ず、大西洋と太平洋とを結ぶためパナマ運河が建設(1914年開通)されたが、パナマ運河の通行料は1トンにつき1.39ドル、5万トン級の船舶で約7百万円掛かる。従って、「北西航路」を使用して大西洋に抜けられるようになれば顕著なコスト減となる。
 欧州とアジアを結ぶスエズ運河(1869年開通)についても、通行料は1隻平均約1,500万円内外と見られており、北極海の「北方海路」が使えるようになれば、大幅なコスト減と時間短縮が可能になる。特に現在、ソマリア沖の海賊問題が深刻であり、スエズ運河を避け、アフリカ南端の喜望峰を迂回して運行する船舶も出ているので、「北方海路」の有用性は高い。
 北極海での航行が可能となると、観光を含む運航だけでなく、大陸棚の資源開発も容易になり、経済的意義は大きい。 (09.09.)    (All Rights Reserved.)
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 北極海は、温暖化の影響で陸地まで連なっている氷海が収縮し、最近では夏期を迎えると陸に近い海域に航路が開け始めている。このため、船舶による航行や海底開発などが行い易くなり、ビジネス・チャンスも開け始めている。一方、北極圏での経済活動を中・長期に持続可能にするためには、地球温暖化への影響を十分に考慮しなくてはならない。
 このような状況を背景として、4月29日、ノルウエーのトロムソにおいて北極評議会が閣僚レベルで開催された。同評議会は、正式には1996年に設立され、本部はノルウエーにあり、北極圏に領土を持つ米、加、露、ノルウェー、デンマークの5か国とアイスランド、フィンランド、及びスエーデンの8カ国で構成されている。北極評議会の目的は、北極海が直面する問題、特に、北極海開発の側面と環境保護についての共通の認識と協力を促進することである。開発の側面は、北極海航行や大陸棚の開発など、沿岸国だけでなくその他の諸国にもビジネス・チャンスを提供する。環境の側面は、北極海の広大な氷原が縮小している問題であり、それは北極点周辺の気流や海流への冷却効果を低下させ、地球温暖化を早める恐れがあることである。同評議会にはオブザーバー資格での参加が可能であり、中国や韓国が既に申請していると伝えられており、日本も申請するなど、各国においてビジネス・チャンスに熱い期待が寄せられている。
 北極評議会は、2050年までには北極海が夏期には砕氷船なしで航行が可能になるとしつつ、北極海での運航ガイドラインの必要性、経済活動・インフラ開発面での安全基準の必要性、最低限の基準を含む石油・ガス開発ガイドラインの改定などに関する「宣言」を採択すると共に、北極海の氷海の融解に関する検討作業に協力し、気候変動に影響する炭酸ガス排出削減への努力を促している。
1、 期待される北極海航路
これまで北極海は、温暖化の影響で氷海が融け縮小し続けている。衛星写真でも、
2008年においては、6月末頃までは陸地まで氷海で覆われているが、8月20日頃前後から氷海は陸地を離れ、海路が開け、砕氷船を使用すれば年間5ヶ月内外は航行可能であり、その期間は毎年伸びている。8月中旬には2-3週間程度砕氷船無しでも航行可能のようだ。5年前には、氷海が最も小さくなる8月下旬でも氷海は陸まで張り出ていた。
 北極航路には2つある。一つは、太平洋北端のベーリング海からシベリア・ユーラシア大陸に沿ってバレンツ海、ノルウエー海方面に向けての「北方海路(Northern sea route)」である。衛星写真の画像でも夏の一時期(8月20日前後頃より9月末頃まで)には航行可能になる。この航路は主にロシアが使用しており、航行の安全と航行可能期間を延長するため砕氷船の建造を増やしており、原子力砕氷船の建造計画もある。将来更に海路が開ければ、東アジアと欧州を結ぶ有力な国際海路となることが期待される。
 もう一つは、ベーリング海から米国アラスカ州、カナダの北方領沖の北極圏諸島をぬって大西洋に出る「北西航路(Northwest passage)」である。夏でも島と島の間の氷で覆われている海域が一部残っており、砕氷船を使用し年間7週間程度の航行が可能とされている。8月20日前後から9月中頃位までは航路が開ける。ところがこれらの諸島はカナダ領であるので、カナダは、これらの島の間の海路は「内水」であり、同国の管轄下にあると主張している。一方米国は、自由に航行できる「国際水路」であると主張しており、航路の設定など今後の取り扱いが注目される。
 今後15年程度は年間を通じての使用は困難とする見方もあるが、それよりも早く氷海の融解が進むとの見方もある。「北方海路」を使用できるようになれば、日本を含む極東から欧州等への航行が大幅に短縮され、また、「北西航路」が使用可能になれば北米の東海岸地域、大西洋への航路が短縮される。嘗て、北極海が氷と厳しい気候条件で航行が出来ず、大西洋と太平洋とを結ぶためパナマ運河が建設(1914年開通)されたが、パナマ運河の通行料は1トンにつき1.39ドル、5万トン級の船舶で約7百万円掛かる。従って、「北西航路」を使用して大西洋に抜けられるようになれば顕著なコスト減となる。
 欧州とアジアを結ぶスエズ運河(1869年開通)についても、通行料は1隻平均約1,500万円内外と見られており、北極海の「北方海路」が使えるようになれば、大幅なコスト減と時間短縮が可能になる。特に現在、ソマリア沖の海賊問題が深刻であり、スエズ運河を避け、アフリカ南端の喜望峰を迂回して運行する船舶も出ているので、「北方海路」の有用性は高い。
 北極海での航行が可能となると、観光を含む運航だけでなく、大陸棚の資源開発も容易になり、経済的意義は大きい。 (09.09.)    (All Rights Reserved.)
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 北極海は、温暖化の影響で陸地まで連なっている氷海が収縮し、最近では夏期を迎えると陸に近い海域に航路が開け始めている。このため、船舶による航行や海底開発などが行い易くなり、ビジネス・チャンスも開け始めている。一方、北極圏での経済活動を中・長期に持続可能にするためには、地球温暖化への影響を十分に考慮しなくてはならない。
 このような状況を背景として、4月29日、ノルウエーのトロムソにおいて北極評議会が閣僚レベルで開催された。同評議会は、正式には1996年に設立され、本部はノルウエーにあり、北極圏に領土を持つ米、加、露、ノルウェー、デンマークの5か国とアイスランド、フィンランド、及びスエーデンの8カ国で構成されている。北極評議会の目的は、北極海が直面する問題、特に、北極海開発の側面と環境保護についての共通の認識と協力を促進することである。開発の側面は、北極海航行や大陸棚の開発など、沿岸国だけでなくその他の諸国にもビジネス・チャンスを提供する。環境の側面は、北極海の広大な氷原が縮小している問題であり、それは北極点周辺の気流や海流への冷却効果を低下させ、地球温暖化を早める恐れがあることである。同評議会にはオブザーバー資格での参加が可能であり、中国や韓国が既に申請していると伝えられており、日本も申請するなど、各国においてビジネス・チャンスに熱い期待が寄せられている。
 北極評議会は、2050年までには北極海が夏期には砕氷船なしで航行が可能になるとしつつ、北極海での運航ガイドラインの必要性、経済活動・インフラ開発面での安全基準の必要性、最低限の基準を含む石油・ガス開発ガイドラインの改定などに関する「宣言」を採択すると共に、北極海の氷海の融解に関する検討作業に協力し、気候変動に影響する炭酸ガス排出削減への努力を促している。
1、 期待される北極海航路
これまで北極海は、温暖化の影響で氷海が融け縮小し続けている。衛星写真でも、
2008年においては、6月末頃までは陸地まで氷海で覆われているが、8月20日頃前後から氷海は陸地を離れ、海路が開け、砕氷船を使用すれば年間5ヶ月内外は航行可能であり、その期間は毎年伸びている。8月中旬には2-3週間程度砕氷船無しでも航行可能のようだ。5年前には、氷海が最も小さくなる8月下旬でも氷海は陸まで張り出ていた。
 北極航路には2つある。一つは、太平洋北端のベーリング海からシベリア・ユーラシア大陸に沿ってバレンツ海、ノルウエー海方面に向けての「北方海路(Northern sea route)」である。衛星写真の画像でも夏の一時期(8月20日前後頃より9月末頃まで)には航行可能になる。この航路は主にロシアが使用しており、航行の安全と航行可能期間を延長するため砕氷船の建造を増やしており、原子力砕氷船の建造計画もある。将来更に海路が開ければ、東アジアと欧州を結ぶ有力な国際海路となることが期待される。
 もう一つは、ベーリング海から米国アラスカ州、カナダの北方領沖の北極圏諸島をぬって大西洋に出る「北西航路(Northwest passage)」である。夏でも島と島の間の氷で覆われている海域が一部残っており、砕氷船を使用し年間7週間程度の航行が可能とされている。8月20日前後から9月中頃位までは航路が開ける。ところがこれらの諸島はカナダ領であるので、カナダは、これらの島の間の海路は「内水」であり、同国の管轄下にあると主張している。一方米国は、自由に航行できる「国際水路」であると主張しており、航路の設定など今後の取り扱いが注目される。
 今後15年程度は年間を通じての使用は困難とする見方もあるが、それよりも早く氷海の融解が進むとの見方もある。「北方海路」を使用できるようになれば、日本を含む極東から欧州等への航行が大幅に短縮され、また、「北西航路」が使用可能になれば北米の東海岸地域、大西洋への航路が短縮される。嘗て、北極海が氷と厳しい気候条件で航行が出来ず、大西洋と太平洋とを結ぶためパナマ運河が建設(1914年開通)されたが、パナマ運河の通行料は1トンにつき1.39ドル、5万トン級の船舶で約7百万円掛かる。従って、「北西航路」を使用して大西洋に抜けられるようになれば顕著なコスト減となる。
 欧州とアジアを結ぶスエズ運河(1869年開通)についても、通行料は1隻平均約1,500万円内外と見られており、北極海の「北方海路」が使えるようになれば、大幅なコスト減と時間短縮が可能になる。特に現在、ソマリア沖の海賊問題が深刻であり、スエズ運河を避け、アフリカ南端の喜望峰を迂回して運行する船舶も出ているので、「北方海路」の有用性は高い。
 北極海での航行が可能となると、観光を含む運航だけでなく、大陸棚の資源開発も容易になり、経済的意義は大きい。 (09.09.)    (All Rights Reserved.)
                         (不許無断転載)
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北極海に広がるビジネス・チャンス-温暖化の恩恵か、警鐘かー (その1)

2009-11-30 | Weblog
北極海に広がるビジネス・チャンス-温暖化の恩恵か、警鐘かー (その1)
 北極海は、温暖化の影響で陸地まで連なっている氷海が収縮し、最近では夏期を迎えると陸に近い海域に航路が開け始めている。このため、船舶による航行や海底開発などが行い易くなり、ビジネス・チャンスも開け始めている。一方、北極圏での経済活動を中・長期に持続可能にするためには、地球温暖化への影響を十分に考慮しなくてはならない。
 このような状況を背景として、4月29日、ノルウエーのトロムソにおいて北極評議会が閣僚レベルで開催された。同評議会は、正式には1996年に設立され、本部はノルウエーにあり、北極圏に領土を持つ米、加、露、ノルウェー、デンマークの5か国とアイスランド、フィンランド、及びスエーデンの8カ国で構成されている。北極評議会の目的は、北極海が直面する問題、特に、北極海開発の側面と環境保護についての共通の認識と協力を促進することである。開発の側面は、北極海航行や大陸棚の開発など、沿岸国だけでなくその他の諸国にもビジネス・チャンスを提供する。環境の側面は、北極海の広大な氷原が縮小している問題であり、それは北極点周辺の気流や海流への冷却効果を低下させ、地球温暖化を早める恐れがあることである。同評議会にはオブザーバー資格での参加が可能であり、中国や韓国が既に申請していると伝えられており、日本も申請するなど、各国においてビジネス・チャンスに熱い期待が寄せられている。
 北極評議会は、2050年までには北極海が夏期には砕氷船なしで航行が可能になるとしつつ、北極海での運航ガイドラインの必要性、経済活動・インフラ開発面での安全基準の必要性、最低限の基準を含む石油・ガス開発ガイドラインの改定などに関する「宣言」を採択すると共に、北極海の氷海の融解に関する検討作業に協力し、気候変動に影響する炭酸ガス排出削減への努力を促している。
1、 期待される北極海航路
これまで北極海は、温暖化の影響で氷海が融け縮小し続けている。衛星写真でも、
2008年においては、6月末頃までは陸地まで氷海で覆われているが、8月20日頃前後から氷海は陸地を離れ、海路が開け、砕氷船を使用すれば年間5ヶ月内外は航行可能であり、その期間は毎年伸びている。8月中旬には2-3週間程度砕氷船無しでも航行可能のようだ。5年前には、氷海が最も小さくなる8月下旬でも氷海は陸まで張り出ていた。
 北極航路には2つある。一つは、太平洋北端のベーリング海からシベリア・ユーラシア大陸に沿ってバレンツ海、ノルウエー海方面に向けての「北方海路(Northern sea route)」である。衛星写真の画像でも夏の一時期(8月20日前後頃より9月末頃まで)には航行可能になる。この航路は主にロシアが使用しており、航行の安全と航行可能期間を延長するため砕氷船の建造を増やしており、原子力砕氷船の建造計画もある。将来更に海路が開ければ、東アジアと欧州を結ぶ有力な国際海路となることが期待される。
 もう一つは、ベーリング海から米国アラスカ州、カナダの北方領沖の北極圏諸島をぬって大西洋に出る「北西航路(Northwest passage)」である。夏でも島と島の間の氷で覆われている海域が一部残っており、砕氷船を使用し年間7週間程度の航行が可能とされている。8月20日前後から9月中頃位までは航路が開ける。ところがこれらの諸島はカナダ領であるので、カナダは、これらの島の間の海路は「内水」であり、同国の管轄下にあると主張している。一方米国は、自由に航行できる「国際水路」であると主張しており、航路の設定など今後の取り扱いが注目される。
 今後15年程度は年間を通じての使用は困難とする見方もあるが、それよりも早く氷海の融解が進むとの見方もある。「北方海路」を使用できるようになれば、日本を含む極東から欧州等への航行が大幅に短縮され、また、「北西航路」が使用可能になれば北米の東海岸地域、大西洋への航路が短縮される。嘗て、北極海が氷と厳しい気候条件で航行が出来ず、大西洋と太平洋とを結ぶためパナマ運河が建設(1914年開通)されたが、パナマ運河の通行料は1トンにつき1.39ドル、5万トン級の船舶で約7百万円掛かる。従って、「北西航路」を使用して大西洋に抜けられるようになれば顕著なコスト減となる。
 欧州とアジアを結ぶスエズ運河(1869年開通)についても、通行料は1隻平均約1,500万円内外と見られており、北極海の「北方海路」が使えるようになれば、大幅なコスト減と時間短縮が可能になる。特に現在、ソマリア沖の海賊問題が深刻であり、スエズ運河を避け、アフリカ南端の喜望峰を迂回して運行する船舶も出ているので、「北方海路」の有用性は高い。
 北極海での航行が可能となると、観光を含む運航だけでなく、大陸棚の資源開発も容易になり、経済的意義は大きい。 (09.09.)    (All Rights Reserved.)
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北極海に広がるビジネス・チャンス-温暖化の恩恵か、警鐘かー (その1)

2009-11-30 | Weblog
北極海に広がるビジネス・チャンス-温暖化の恩恵か、警鐘かー (その1)
 北極海は、温暖化の影響で陸地まで連なっている氷海が収縮し、最近では夏期を迎えると陸に近い海域に航路が開け始めている。このため、船舶による航行や海底開発などが行い易くなり、ビジネス・チャンスも開け始めている。一方、北極圏での経済活動を中・長期に持続可能にするためには、地球温暖化への影響を十分に考慮しなくてはならない。
 このような状況を背景として、4月29日、ノルウエーのトロムソにおいて北極評議会が閣僚レベルで開催された。同評議会は、正式には1996年に設立され、本部はノルウエーにあり、北極圏に領土を持つ米、加、露、ノルウェー、デンマークの5か国とアイスランド、フィンランド、及びスエーデンの8カ国で構成されている。北極評議会の目的は、北極海が直面する問題、特に、北極海開発の側面と環境保護についての共通の認識と協力を促進することである。開発の側面は、北極海航行や大陸棚の開発など、沿岸国だけでなくその他の諸国にもビジネス・チャンスを提供する。環境の側面は、北極海の広大な氷原が縮小している問題であり、それは北極点周辺の気流や海流への冷却効果を低下させ、地球温暖化を早める恐れがあることである。同評議会にはオブザーバー資格での参加が可能であり、中国や韓国が既に申請していると伝えられており、日本も申請するなど、各国においてビジネス・チャンスに熱い期待が寄せられている。
 北極評議会は、2050年までには北極海が夏期には砕氷船なしで航行が可能になるとしつつ、北極海での運航ガイドラインの必要性、経済活動・インフラ開発面での安全基準の必要性、最低限の基準を含む石油・ガス開発ガイドラインの改定などに関する「宣言」を採択すると共に、北極海の氷海の融解に関する検討作業に協力し、気候変動に影響する炭酸ガス排出削減への努力を促している。
1、 期待される北極海航路
これまで北極海は、温暖化の影響で氷海が融け縮小し続けている。衛星写真でも、
2008年においては、6月末頃までは陸地まで氷海で覆われているが、8月20日頃前後から氷海は陸地を離れ、海路が開け、砕氷船を使用すれば年間5ヶ月内外は航行可能であり、その期間は毎年伸びている。8月中旬には2-3週間程度砕氷船無しでも航行可能のようだ。5年前には、氷海が最も小さくなる8月下旬でも氷海は陸まで張り出ていた。
 北極航路には2つある。一つは、太平洋北端のベーリング海からシベリア・ユーラシア大陸に沿ってバレンツ海、ノルウエー海方面に向けての「北方海路(Northern sea route)」である。衛星写真の画像でも夏の一時期(8月20日前後頃より9月末頃まで)には航行可能になる。この航路は主にロシアが使用しており、航行の安全と航行可能期間を延長するため砕氷船の建造を増やしており、原子力砕氷船の建造計画もある。将来更に海路が開ければ、東アジアと欧州を結ぶ有力な国際海路となることが期待される。
 もう一つは、ベーリング海から米国アラスカ州、カナダの北方領沖の北極圏諸島をぬって大西洋に出る「北西航路(Northwest passage)」である。夏でも島と島の間の氷で覆われている海域が一部残っており、砕氷船を使用し年間7週間程度の航行が可能とされている。8月20日前後から9月中頃位までは航路が開ける。ところがこれらの諸島はカナダ領であるので、カナダは、これらの島の間の海路は「内水」であり、同国の管轄下にあると主張している。一方米国は、自由に航行できる「国際水路」であると主張しており、航路の設定など今後の取り扱いが注目される。
 今後15年程度は年間を通じての使用は困難とする見方もあるが、それよりも早く氷海の融解が進むとの見方もある。「北方海路」を使用できるようになれば、日本を含む極東から欧州等への航行が大幅に短縮され、また、「北西航路」が使用可能になれば北米の東海岸地域、大西洋への航路が短縮される。嘗て、北極海が氷と厳しい気候条件で航行が出来ず、大西洋と太平洋とを結ぶためパナマ運河が建設(1914年開通)されたが、パナマ運河の通行料は1トンにつき1.39ドル、5万トン級の船舶で約7百万円掛かる。従って、「北西航路」を使用して大西洋に抜けられるようになれば顕著なコスト減となる。
 欧州とアジアを結ぶスエズ運河(1869年開通)についても、通行料は1隻平均約1,500万円内外と見られており、北極海の「北方海路」が使えるようになれば、大幅なコスト減と時間短縮が可能になる。特に現在、ソマリア沖の海賊問題が深刻であり、スエズ運河を避け、アフリカ南端の喜望峰を迂回して運行する船舶も出ているので、「北方海路」の有用性は高い。
 北極海での航行が可能となると、観光を含む運航だけでなく、大陸棚の資源開発も容易になり、経済的意義は大きい。 (09.09.)    (All Rights Reserved.)
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北極海に広がるビジネス・チャンス-温暖化の恩恵か、警鐘かー (その1)

2009-11-30 | Weblog
北極海に広がるビジネス・チャンス-温暖化の恩恵か、警鐘かー (その1)
 北極海は、温暖化の影響で陸地まで連なっている氷海が収縮し、最近では夏期を迎えると陸に近い海域に航路が開け始めている。このため、船舶による航行や海底開発などが行い易くなり、ビジネス・チャンスも開け始めている。一方、北極圏での経済活動を中・長期に持続可能にするためには、地球温暖化への影響を十分に考慮しなくてはならない。
 このような状況を背景として、4月29日、ノルウエーのトロムソにおいて北極評議会が閣僚レベルで開催された。同評議会は、正式には1996年に設立され、本部はノルウエーにあり、北極圏に領土を持つ米、加、露、ノルウェー、デンマークの5か国とアイスランド、フィンランド、及びスエーデンの8カ国で構成されている。北極評議会の目的は、北極海が直面する問題、特に、北極海開発の側面と環境保護についての共通の認識と協力を促進することである。開発の側面は、北極海航行や大陸棚の開発など、沿岸国だけでなくその他の諸国にもビジネス・チャンスを提供する。環境の側面は、北極海の広大な氷原が縮小している問題であり、それは北極点周辺の気流や海流への冷却効果を低下させ、地球温暖化を早める恐れがあることである。同評議会にはオブザーバー資格での参加が可能であり、中国や韓国が既に申請していると伝えられており、日本も申請するなど、各国においてビジネス・チャンスに熱い期待が寄せられている。
 北極評議会は、2050年までには北極海が夏期には砕氷船なしで航行が可能になるとしつつ、北極海での運航ガイドラインの必要性、経済活動・インフラ開発面での安全基準の必要性、最低限の基準を含む石油・ガス開発ガイドラインの改定などに関する「宣言」を採択すると共に、北極海の氷海の融解に関する検討作業に協力し、気候変動に影響する炭酸ガス排出削減への努力を促している。
1、 期待される北極海航路
これまで北極海は、温暖化の影響で氷海が融け縮小し続けている。衛星写真でも、
2008年においては、6月末頃までは陸地まで氷海で覆われているが、8月20日頃前後から氷海は陸地を離れ、海路が開け、砕氷船を使用すれば年間5ヶ月内外は航行可能であり、その期間は毎年伸びている。8月中旬には2-3週間程度砕氷船無しでも航行可能のようだ。5年前には、氷海が最も小さくなる8月下旬でも氷海は陸まで張り出ていた。
 北極航路には2つある。一つは、太平洋北端のベーリング海からシベリア・ユーラシア大陸に沿ってバレンツ海、ノルウエー海方面に向けての「北方海路(Northern sea route)」である。衛星写真の画像でも夏の一時期(8月20日前後頃より9月末頃まで)には航行可能になる。この航路は主にロシアが使用しており、航行の安全と航行可能期間を延長するため砕氷船の建造を増やしており、原子力砕氷船の建造計画もある。将来更に海路が開ければ、東アジアと欧州を結ぶ有力な国際海路となることが期待される。
 もう一つは、ベーリング海から米国アラスカ州、カナダの北方領沖の北極圏諸島をぬって大西洋に出る「北西航路(Northwest passage)」である。夏でも島と島の間の氷で覆われている海域が一部残っており、砕氷船を使用し年間7週間程度の航行が可能とされている。8月20日前後から9月中頃位までは航路が開ける。ところがこれらの諸島はカナダ領であるので、カナダは、これらの島の間の海路は「内水」であり、同国の管轄下にあると主張している。一方米国は、自由に航行できる「国際水路」であると主張しており、航路の設定など今後の取り扱いが注目される。
 今後15年程度は年間を通じての使用は困難とする見方もあるが、それよりも早く氷海の融解が進むとの見方もある。「北方海路」を使用できるようになれば、日本を含む極東から欧州等への航行が大幅に短縮され、また、「北西航路」が使用可能になれば北米の東海岸地域、大西洋への航路が短縮される。嘗て、北極海が氷と厳しい気候条件で航行が出来ず、大西洋と太平洋とを結ぶためパナマ運河が建設(1914年開通)されたが、パナマ運河の通行料は1トンにつき1.39ドル、5万トン級の船舶で約7百万円掛かる。従って、「北西航路」を使用して大西洋に抜けられるようになれば顕著なコスト減となる。
 欧州とアジアを結ぶスエズ運河(1869年開通)についても、通行料は1隻平均約1,500万円内外と見られており、北極海の「北方海路」が使えるようになれば、大幅なコスト減と時間短縮が可能になる。特に現在、ソマリア沖の海賊問題が深刻であり、スエズ運河を避け、アフリカ南端の喜望峰を迂回して運行する船舶も出ているので、「北方海路」の有用性は高い。
 北極海での航行が可能となると、観光を含む運航だけでなく、大陸棚の資源開発も容易になり、経済的意義は大きい。 (09.09.)    (All Rights Reserved.)
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北極海に広がるビジネス・チャンス -温暖化の恩恵か、警鐘かー (その2)

2009-11-29 | Weblog
北極海に広がるビジネス・チャンス -温暖化の恩恵か、警鐘かー (その2)
 1、期待される北極海航路 (その1で掲載)
  2、豊富な天然ガス・石油、その他鉱物資源
 北極圏は、圏内の陸地はもとより、大陸棚も天然ガス、石油資源や金、銀、鉄、亜鉛、錫、ダイアモンドなど貴重な鉱物資源に富んでいる。
 石油については、世界の石油生産の約10%、天然ガスについては25%の供給源になっており、現在ロシアが最大の生産者だ。更に、米国地質サーベイの調査結果(08年6月23日公表)によると、未開発埋蔵量では石油が約13%、天然ガスでは約30%に相当する。そして、特にボーフォート海盆やロシアの大陸棚など、北極圏には世界のこれら未開発資源の約22%が眠っていると見られている。
 現在、北極海の大陸棚への沿岸諸国の関心は高まっており、カナダ、デンマーク、ロシア、及びノルウエーが国連海洋法条約に基づき大陸棚の線引きを行っていると伝えられている。最終的な線引きにはなお時間が掛かろうが、ロシアはロモノソフ海嶺をシベリア大陸の自然の延長としている。ロシアの専門家は、この海嶺周辺に北極圏の炭化水素資源の約3分の2が存在すると推定している。 (09.09.)                      (All Rights Reserved.)
                   (不許無断掲載)
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北極海に広がるビジネス・チャンス -温暖化の恩恵か、警鐘かー (その2)

2009-11-29 | Weblog
北極海に広がるビジネス・チャンス -温暖化の恩恵か、警鐘かー (その2)
 1、期待される北極海航路 (その1で掲載)
  2、豊富な天然ガス・石油、その他鉱物資源
 北極圏は、圏内の陸地はもとより、大陸棚も天然ガス、石油資源や金、銀、鉄、亜鉛、錫、ダイアモンドなど貴重な鉱物資源に富んでいる。
 石油については、世界の石油生産の約10%、天然ガスについては25%の供給源になっており、現在ロシアが最大の生産者だ。更に、米国地質サーベイの調査結果(08年6月23日公表)によると、未開発埋蔵量では石油が約13%、天然ガスでは約30%に相当する。そして、特にボーフォート海盆やロシアの大陸棚など、北極圏には世界のこれら未開発資源の約22%が眠っていると見られている。
 現在、北極海の大陸棚への沿岸諸国の関心は高まっており、カナダ、デンマーク、ロシア、及びノルウエーが国連海洋法条約に基づき大陸棚の線引きを行っていると伝えられている。最終的な線引きにはなお時間が掛かろうが、ロシアはロモノソフ海嶺をシベリア大陸の自然の延長としている。ロシアの専門家は、この海嶺周辺に北極圏の炭化水素資源の約3分の2が存在すると推定している。 (09.09.)                      (All Rights Reserved.)
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2009-11-29 | Weblog
北極海に広がるビジネス・チャンス -温暖化の恩恵か、警鐘かー (その2)
 1、期待される北極海航路 (その1で掲載)
  2、豊富な天然ガス・石油、その他鉱物資源
 北極圏は、圏内の陸地はもとより、大陸棚も天然ガス、石油資源や金、銀、鉄、亜鉛、錫、ダイアモンドなど貴重な鉱物資源に富んでいる。
 石油については、世界の石油生産の約10%、天然ガスについては25%の供給源になっており、現在ロシアが最大の生産者だ。更に、米国地質サーベイの調査結果(08年6月23日公表)によると、未開発埋蔵量では石油が約13%、天然ガスでは約30%に相当する。そして、特にボーフォート海盆やロシアの大陸棚など、北極圏には世界のこれら未開発資源の約22%が眠っていると見られている。
 現在、北極海の大陸棚への沿岸諸国の関心は高まっており、カナダ、デンマーク、ロシア、及びノルウエーが国連海洋法条約に基づき大陸棚の線引きを行っていると伝えられている。最終的な線引きにはなお時間が掛かろうが、ロシアはロモノソフ海嶺をシベリア大陸の自然の延長としている。ロシアの専門家は、この海嶺周辺に北極圏の炭化水素資源の約3分の2が存在すると推定している。 (09.09.)                      (All Rights Reserved.)
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