内外政策評論 TheOpinion on Global & Domestic Issues

このブログは、広い視野から内外諸問題を分析し、提言を試みます。
Policy Essayist

国際オリンピック委(IOC)に望まれる中止の決断

2021-06-30 | Weblog

 国際オリンピック委(IOC)に望まれる中止の決断

 6月1日より6月20日まで、日本においてコロナウイルス拡大防止のため、東京など9道府県に一部対象地域を拡大して緊急事態宣言が延長されることになった。2021年1月より第3波の感染拡大が起こり、社会経済活動の自粛、抑制を要請する緊急事態宣言が実施されたが、顕著な減少はみられず、宣言は短期間解除されたものの、半年に及ぶ緊急事態宣言となる。

 緊急事態宣言が予定通り6月20日で解除されても、東京オリンピック開催まで約1か月しか残されていない。新規感染の顕著な減少が期待される。しかし大型商業施設や映画館、スポーツ施設等については制限が緩和されたこと、及び、イギリス変異種に次いで新たにインド変異種への転換、拡大が見られることを考慮すると、ワクチン接種が進んではいるものの、1日100万回の接種が実現したとしても、8月には新たなピークが来るとの予想もある。

 1、国際オリンピック委員会(IOC)が行える開催中止の決断

 世界に目を転じると、米、英などワクチン接種が進み制限解除の動きが見られるが、世界全体として未だに感染拡大は止まっていない。

 特に3月、4月頃よりインドにおける爆発的な感染拡大によりインド変異種が国外に飛び火し、ネパールやマレイシアなどで感染が拡大し、5月にロックダウンが実施、決定されている。更にベトナムでは、イギリス変異種とインド変異種が結合し、感染力が更に強いウイルスに変異しており、空気感染の恐れもあると伝えられている。

 武漢発の新型コロナウイルスで注意を要するのは、全世界の諸国・地域に感染が拡大することに加え、感染力や重症化率を強めながら次々と変異していることだ。今後、一定地域、諸国で沈静化しても、また世界のどこから新たな変異種が広がるか分からない。グローバリゼーションは、世界の運輸・交通や物流、人流などに大きな恩恵をもたらしたが、新型コロナウイルスというパンデミックの出現により、今後国境を越えた人の往来には特別の注意を要することになった。

 日本だけでなく、世界がこのような状況の時に、世界200か国・地域からオリンピック選手約1.5万人、及び競技関係者、IOC関係者及び報道関係者7万人前後が7月23日の開会式に向けて訪日する。未だ具体的な参加国・地域数、参加者数が公表されておらず、また入国管理措置、国内での行動制限や監視体制などの「安全、安心な開催」に向けての全容は明らかにされていないが、どのような措置をとっても漏れが出る可能性がある。また措置を厳しくすればするほど、参加選手や来日者の不満、批判もつのるだろう。

 このような状態でオリンピックを開催することについては、各国で警鐘が鳴らされ初めている。

 オリンピックの実施や中止についての決定権決はIOCにある。開催都市である東京都も、その下部組織ではあるが政府の影響が大きい組織委員会も全体を支援する政府も、中止を求めれば違約金等の問題があるので言い出しにくい。

 現在日本を含め世界が直面しているのは、世界70億人の健康と命にかかわるパンデミックという例外的な事態である。国際オリンピック委員会(IOC)としても、例外的な対応として、違約金等を求めることなく中止を決定しても良いのではなかろうか。またIOC側も、米国のテレビ局等との関係で違約金や補償金の問題が生ずるだろうが、互に求めないことで調整すべきであろう。

 IOCは、開催国に実施を求める以上、各国の選手、競技関係者だけではなく、開催国日本を含め世界の全ての人々の健康と命を守る義務がある。

 

 2、日本の世論を理解していないのだろうか、IOC

 東京オリンピック7月開催についての世論調査では、2021年1月以来、一貫して70%以上が「中止、又は延期」であり、6月の時点でもその状態に変化はない。3年後にはパリ・オリンピックがあるので、再延期の可能性はないとすると、

70%以上が本年7月の開催に反対していることになる。その背景には、若い世代についても、2020年4月に大学等に進学してもキャンパス生活を送ることも出来ず、アルバイト先もなく、また解雇や雇い止めなども一般化し、学校を卒業しても就職機会は限られており、将来不安や孤独感が募っている状況がある。産業面でも、飲食業から娯楽・イベント、観光などが大打撃を受けており、1日も早い感染収束を願っている。誰しもオリンピック・パラリンピックが開催できれば良いと思っているが、今はそれどころではなく、行動制限の解除であり、日常の生活や日常の健康を取り戻したいという意識が反映されていると言えよう。世論の70%以上が1月以来一貫してオリンピック7月開催に不安を抱いている事実を理解して欲しいものだ。

 各国選手の事前合宿を受け入れ予定であった地方自治体も、ワクチン接種促進のための業務に忙殺され、また地元住民の懸念などを配慮して、既に105の自治体が辞退(6月1日現在)している。

 地方自治体が各国選手の事前合宿受け入れを辞退している理由が一つある。それは受け入れても、宿舎と競技場の間以外は行動が制限され、選手にストレスを与えるおそれがある上、地方を見たり食事を楽しんで頂くことも出来ないからだ。受け入れても、地方との交流も「お・も・て・な・し」も出来ない。

 この状況は、オリンピック本番にも当てはまる。海外からの選手他来訪者は、マスコミを含め、原則として宿舎と競技場の間のみに行動制限され、交通手段も専用バス等に限定され、市中には出られない。「お・も・て・な・し」も宿舎内だけに限定される。オリンピック参加者と開催国との交流がなくなれば、それだけオリンピックの意義は薄れてしまう。

 その上心配は尽きない。来日する選手、競技関係者はワクチンを受けてくるとしているが、マスコミ関係者を含め、一部は受けていないであろう。入国に際し厳格な検査を受け、またその後も頻繁に検査を受けることになろうが、検査が最大のおもてなしになってしまいそうだ。

 その上、行動制限を完全に実施することは難しい。世界の200近い国や地域から7万~8万人内外の来訪者があるので、言葉や慣習、価値観等の差もあり、ルールブックに従って行動制限することは難しいのではないか。そうなると相互に感染が発生し、コロナウイルス・パンデミックの大実験場となる恐れがある。それが杞憂に終われば良いが、そうなった場合に誰が責任を取るのだろうか。(2012.6.2.)

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台湾の独立実現に転換すべき時   (再掲)

2021-06-28 | Weblog

台湾の独立実現に転換すべき時   (再掲)


 1月末以来、中国武漢から世界に拡大したコロナウイルスは、既に680万人以上の感染者、40万人近くの死者を出し、世界レベルでの感染は未だに収まっていない。
 このような中、5月18日、世界保健機関(WHO)の年次総会を開かれ、焦点に1つであった非加盟の台湾のオブザーバー参加について、中国が「1つに中国」を主張して反対したため、見送りとなり、年内にも開かれる次回総会で協議されることになった。
 米国は、台湾のオブザーバー参加を支持する一方、WHOは中国寄りであり、改革を求めると共に、改革されなければ脱退も辞さないとした。
1、コロナウイルス問題は世界77億人の健康、存続に関する問題
コロナウイルス問題は、単に2,700万人の台湾の人々の健康、安全の問題ではなく、世界の77億人の健康、安全の問題であると共に、世界の健全な経済・社会・文化活動の回復、維持に影響する問題であり、いわば人類全体の健全な存続に関する問題である。
 武漢型コロナウイルスは、その発生源については別として、武漢から世界に拡散し、40万人を超える死者を出す拡散源となったことは確かである。習近平中国主席は、武漢を中心とする中国国内で感染が拡大したことを詫びたが、世界に対してはそのようなお詫びをしていない。確かに中国も新型コロナウイルスの被害者であるが、世界に拡散させた責任の一端はあり、世界に何らかの言葉があっても良いのではなかろうか。それどころか、世界が密接に協力してコロナウイルスを克服していかなくてはならない時期にWHO年次総会への台湾のオブザーバー参加を阻み、コロナウイルス克服へ向けての世界的努力から除外し、空白地帯を造っているに等しい。世界のどこかに空白地帯があれば、この問題の中・長期的な解決は難しい。
 2、台湾の独立を推進する時
 次のWHO総会でも、中国はかたくなに台湾が中国に帰属するとの原則を主張し、台湾の参加に反対するか、厳しい条件を課すであろう。台湾について中国が何かできるわけでもなく、台湾は国際的なコロナウイルス撲滅努力の外に置かれる。
 領土問題については、香港の問題がある。1997年6月に英国の99年間香港租借が終了し、50年間は香港の「高度の自治」が認められる1国2制度に移った。領土としては中国であり、香港での民主化運動の激化に対し、中国は香港に「国家安全法」を適用することを2020年5月の全人代で決めた。
米国等は香港の自由と民主主義を抑圧するものとして強く反発している。しかし中国は、香港は中国の一部であり、内政干渉として取り合う姿勢を示していない。中国は「領土」という原則は曲げないであろう。現在の国境を前提とする国家関係ではやむを得ないことだろう。そのことは香港を去った英国が一番よく知っている。
台湾については、戦後中華民国として中国共産党下の中華人民共和国とそれぞれが中国を代表するものとして対峙していたが、東西冷戦下の1971年に、アメリカ合衆国をはじめとする西側諸国と、ソビエト連邦(当時)をはじめとする東側諸国との間で政治的妥協が計られた結果、国際連合における「中国代表権」が中華人民共和国に移され、中華民国(台湾)は国連とその関連機関から脱退を余儀なくされ、「地域」として扱われてきた。
 台湾と外交関係を有する国も現在中南米、カリブ諸国を中心として15カ国に減少している。日本も外交関係を持っていない。
 台湾が国連を脱退して50年ほどになるが、中国は「1つの中国」を主張し、台湾をその1地域としている。台湾においては、台湾独立派と中国大陸派とが存在するが、自由と民主主義は根付いており、同じ中華系も多いが、高雄系などの台湾独自の人口も多いので、中国共産党とは相容れない社会経済体制となっている。双方とも、それぞれが中心となって中国統一を願っているようであり、それが双方国民の選択であれば良いが、差が縮まるどころか広がっている。
 これ以上待っても物事は動かないし、武漢型コロナウイルス問題など地球規模の問題への対応、健全な人類の存続を考えると、台湾を国連の外に置いておくことは望ましくない。今や東西冷戦はなくなっており、その時の東西両陣営の妥協の産物である中国の代表権問題はその役割を終えたと考えられるので、今や台湾の独立を推進すべき時代になっていると言えよう。台湾独立後、双方の国民が統一中国を希望するのであれば、それは双方の国民の選択に委ねれば良いことであろう。
(2020.6.8.All Rights Reserved.)

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新型コロナウイルス、中国の国際社会での姿勢が問われる

2021-06-28 | Weblog

新型コロナウイルス、中国の国際社会での姿勢が問われる

                                                                  2021年1月15日

 中国武漢を発生源とするコロナウイルス伝染病が世界に拡大する中、国連保健機関(WHO)は、発生源である武漢への調査団を中国政府に再三に亘り求めていたところ、1月11日になってやっと中国国家衛生健康委員会が、「WHOのコロナウイルス発生源専門家チームが同月14日に訪中して調査を行う」旨公表した。調査団は同日武漢に到着し、やっと武漢での調査が中国側と協力して進められるようだ。

 WHO調査団は、その前の週にも武漢入りする予定だったが、中国側がメンバーへのビザを交付しなかったため延期された。調査団にはオーストラリアの専門家など各国専門家が入っている。オーストラリアと中国の関係は、アフガニスタンにおいて多国籍軍に参加している豪州兵がアフガニスタンの少年をナイフで威嚇している写真を中国側がツイッターに載せたことから、豪州側が激怒し、相互の貿易制限にも発展し、悪化しているなど、政治外交的理由とみられている。

 1、国際協力を阻む中国

 新型コロナウイルスは、2019年12月に武漢で発生し、翌1月に武漢市で感染拡大が始まった。中国政府が市民への情報公表が遅れたことが対応の遅れとなった。新華社通信によると、同年2月3日、習主席は、感染拡大への対応について共産党政治局常務委員会を開き、患者やその家族に対しお見舞の言葉を述べる一方、政府の対応の欠陥や至らなかった点を教訓として、党、政府ともに国を挙げて予防対策に取り組む考えを示した。

 中国の国内的対応の遅れが、世界への情報提供、公表の遅れとなった。世界が無防備の中で、武漢に滞在していて外国人や中国人が同地を去りそれぞれ本国に戻ることを黙認したことが、コロナウイルスの世界的拡大の要因となった。1月15日現在、世界全体の感染者数 9,243万人、 死者198万人以上となっている。更に増え続けており、世界経済への影響も甚大で、職を失い、困窮する者も多い。中国はこの現実を他人事のように発言しているが、中国は情報の遅れを世界に謝罪すべきであろう。

 しかも中国は、WHO調査団による発生地武漢での調査を1年以上遅らせ、コロナウイルス対策の上で重要な発生源や伝染経路などの調査を遅らせた。感染源は、コウモリ又はこれから伝染した動物とされており、武漢の生鮮市場が媒体とされている。また武漢にはウイルスを研究する中国科学院武漢病毒研究所があり、ここで長年に亘りコウモリを研究している専門家がおり、コウモリを媒体とするウイルス等については可なりの研究がなされているとみられている。従って、生鮮市場や武漢病毒研究所の研究状況、及び現在の伝染状況や変異種の存在と中国側の対応などを調査し、その結果を速やかに世界が共有することが、コロナウイルスへの効果的な対応には不可欠だ。

 その調査を1年以上引き延ばし、更に調査団の武漢入りを遅らせることは、パンデミックに取り組む世界への協力の意志の欠如としか言いようがない。これは単に中国だけの問題では無く、世界の人々の健康の問題であるので、中国の真摯な協力と情報の速やかな公開を望みたい。

 中国政府は、コロナウイルスが世界的に拡大し始めた際、一方で途上国に対しマスクの供給など支援するとし、また最近では中国でワクチン開発を行い、ワクチン供給などにより‘健康のシルクロード’を作るとしているが、他方でコロナウイルス撲滅への鍵となる発生源の国際調査を1年以上も遅らせ、国際協力を阻んでいる。

 中国はまた、2020年5月に開催された国連保健機関(WHO)の年次総会に際し、台湾のオブザーバー参加を「1つの中国」政策に反するとして反対し、更に同年11月の総会においても台湾の参加を阻止した。コロナウイルスは台湾だけで無く、国境を越えて世界70億人の健康に関するものであり、台湾のオブザーバー参加に反対することは世界の健康、国際協力を軽視する姿勢と言えよう。中国はコロナウイルスの発生源であり、国、地域を問わず世界70億人の健康に責任がある。

 


 2、問われる国際社会での中国の姿勢と情報公開

 中国は、香港において民主化運動が活発になっている情勢を受けて、反政府活動や香港独立活動などの取り締まりを強化するため、香港に対し香港国家安全維持法を導入することを決定し、2020年6月30日、交付された。

 同法に基づき、2020年7月以降30人程度が逮捕され、その他多数が拘束などされたが、2021年1月6日には、国家や政権転覆をねらった同法違反の疑いがあるとして、香港立法会の民主派の前議員や区議会議員など53人が警察に逮捕された。

 香港は、1997年6月30日に99年間の英国の租借期限を迎え、翌7月1日より中国の領土、主権となった。その際香港住民の要請を背景として、英国と中国との交渉の結果、同年より50年間、香港特別行政区として「高度の自治」を許され、1国2制度となった。その後香港はある程度の自治を許され、一定の政治的自由、民主的制度を得ていたが、徐々に中国化が進み、中国本土より多数の中国人が流入し、また香港人の自由や民主主義に制約が課されるようになった。多くの富裕層等は、事業は香港に残し、自らは英国、豪州、米国などに移住する一方、若い世代を中心として民主活動が活発に行われるようになった。

 自由で民主的だった香港が中国の主権下に戻り、中国化が進み、中国的な制約や仕組みが課され、自由が失われて行くことは非常に残念なことだ。しかし、現在の国家制度においては、香港は中国の領土、主権の下に服せざるを得ない。

 中国に対し香港の自治権、自由と民主主義を維持せよと言っても、中国にとってそれは「内政問題」であり、応じることはないであろう。中国は、将来の国家転覆、反政府活動を防ぐために「香港国家安全維持法」を施行したのだ。香港の返還時に高度の自治を認める英国との国際約束についても、中国としては、安全維持法は香港行政府も承認したものであり、いずれにしても内政干渉などと反論するであろう。

 中国自体が変わらない限り香港の状況を改善することは困難と思われるが、香港は中国の本質を世界の前に映し出しており、正に中国本土内では香港で行われているような政治的抑圧・強制が行われていることを示している。新疆ウイグルやチベットでも同じようなことが行われているのだろう。それは世界の誰の目でも分かることである。

 中国はまた、南シナ海にある南沙諸島などについて領有権を主張しているが、ベトナムやフィリピンなど6か国が領有権を主張しているにも拘わらず、軍事転用できる施設などを構築している。ベトナムなどの訴えに対し、2016年7月、ハーグの常設仲裁裁判所は、中国が南シナ海のほぼ全域で領有権を主張し独自に設定した境界線(いわゆる「九段線」)には、国際法上「歴史的権利を主張する法的根拠はない」と認定した。しかし中国はこれに応じず、逆に南沙諸島に人工島や滑走路など、軍事使用出来る施設等を増設し、南シナ海及びその周辺海域での軍事活動を強化している。

 中国は、香港の自由は認めない、台湾の国際活動は認めない、国際仲裁裁判には従わない。それで多国間主義や国際協力などと言えるのだろうか。中国至上主義、拡張主義としか映らない。

 


 3、中国が真に国際社会の良き構成員となることを期待

 しかし中国を外部から変えようとしても無理があろう。今日の国際秩序は、領土、領海で区切られた国家群、地域群で構成され、各国家には主権が付与されており、内政への干渉は行わないこととされ、それで秩序が保たれている。

  それを破れば戦争に発展する恐れがあるが、戦争は避けなくてはならない。

 中国が自ら変わることを期待したいが、それまでは各国は、中国の各種の規制・制約、国営企業等への優遇措置、国際協調拒否などに応じ、中国の国外の活動を規制・制限等する権利を留保すると共に、国際場裏の場で粘り強く訴えることが必要であろう。中国が国際社会の良き構成員となることが望ましい。

 また軍事面では、北東アジア地域における軍備拡充競争のこれ以上の激化を抑えるため、軍備縮小交渉と信頼醸成措置の協議を早急に開始することが望ましい。対象国は、中国、南・北朝鮮及び米国、ロシアが中心となろう。

(2021.1.15. All Rights Reserved.)

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新型コロナウイルス克服には検査と医療体制の拡充・整備が基本 (再掲)

2021-06-28 | Weblog

新型コロナウイルス克服には検査と医療体制の拡充・整備が基本 (再掲)

 現在世界で猛威を振るっている新型コロナウイルス肺炎は、感染力と致死率が高く、世界の感染者総数は215万人超、死亡者は14万人超(4月17日現在)に達している。日本も、国内感染者9,297人、死亡者136人(同日現在)となっている。
 このような伝染病を克服するためには、2つの対応が必要だ。
 1つは、伝染病の罹患者(陽性者)を早期に特定した上、隔離し、治療することが基本であろう。
 第2は、伝染病が急速に広がり、罹患者が急増し、死者が増えることにより、社会活動、経済活動全般が停滞し、国民生活に大きな影響を与えるので、そのための救済、救援処置が必要となることである。
1、新型コロナウイルス肺炎の封じ込めに何が必要か
(1)早期発見と情報の迅速な伝達、共有
 新型コロナウイルス肺炎は、中国武漢市で発生が確認され伝染が拡大したが、武漢市を初めとする中国の対応と情報の内外への発信の遅れが、中国国内での対応ばかりではなく、世界への伝染拡大を招いたと言えよう。
 また国連の専門機関である世界保健機関(WHO)の世界的伝染病(パンデミック)とする宣言が遅かったと言えよう。
 今回のコロナウイルス肺炎は、「新型」であったので未知なことも多く、対応が遅れたとしても誰の責任でもなく、仕方が無いことと思われる。しかし中国の地方組織を含め、情報統制を行っていることが遅れの一因であり、遺憾であるが、中国が猛省し、今後発生源の特定や何故対応が遅れたかの検証、病原菌の特性などにつき、国連はじめ関係各国への迅速な情報や資料の提供を望みたい。
 (2)検査の充実と罹患者(陽性者)の特定、隔離、治療が対応の基本
 このような感染力の強い伝染病への対応については、速やかに罹患者を特定し、隔離、治療するのが基本中の基本であろう。少なくてもそのように学んだ。
 今回の場合、新型であったため、検査キットの準備がなく、1月下旬の初期段階では1日800件程度しか検査できない状況であったので、武漢等への渡航経験者などを除き、検査は受けられず、‘自宅療養’の状態となったことは仕方なかったとしても、その後迅速に検査体制の拡充・整備、陽性者を症状を選別した上で隔離・治療体制の拡充、整備を優先的に進めるべきであった。そのために予備費などを含め予算を優先的に充てるべきであったと思われる。
 一部に、検査して陽性患者が増えると病院が受け入れられないようになり、イタリアなどのように「医療崩壊」を起こすとの意見があった。何もしなければそうであろう。検査を前提として、陽性者の症状に応じ、症状がないか軽微な者の隔離場所(第1次隔離)、重度でないが治療を要する患者(第2次隔離)、及び重度者(第3次隔離)などに分けて、収容場所を新・増設する。場所は、廃校となった学校や施設や場合により適当場所に簡易施設を建設するなど対応は出来るはずだ。また医療用マスク、防護着衣や人工呼吸器類を拡充・整備すると共に、検査キットやワクチン、治療薬等の開発を図る。そのために予算を優先的に使用すべきだ。
 医師、看護師等の人材については、まず医療従事者が感染しないよう配慮する一方、OBの再リクルート、研修医の動員や、必要に応じ医大生をボランテイアー・ベースで募り、緊急・危険手当を含め然るべく報酬を支給して手当てするなど、対応は可能であろう。予備費を当てると共に予算手当を優先的に行うべきであろう。
 現在のように、無症状の保菌者が自由に行動できる状態ではコロナウイルスの伝染を克服することは出来ない。コロナウイルス禍は長期に残存する可能性が高いが、将来、緊急事態宣言を解除、緩和する時には、無症状の保菌者への対応が必要となろう。そのためにも検査の充実は不可欠だ。
 2、経済社会活動、国民生活への影響をどう緩和、救済するか
 経済的被害については、個人にせよ企業・団体にせよ、誰もが被害者であるので、まずはそれぞれの経済的能力に従って耐え、対応し克服する努力が必要だろう。そのような個々の意識と努力がなければ克服は難しい。財源が限られている以上、政府や地方自治体が行えることには限度がある。
 公的な経済的支援を必要とするのは、職業が安定していない人や解雇される人であり、企業・団体では中小零細企業・団体や観光・飲食・娯楽・サービス業などの分野で、コロナウイルス禍で著しく影響、被害を受けるところが中心となろう。仕事を失った者に対しては、雇用保険によるセーフテイーネットがあるものの、その対象となっていない人々や地域、分野によって被害は一律ではない。重要なことは、経済・社会活動が制限、縮小され、生活が困窮し、被害を受けている人々に支援が迅速に届くような措置が望まれる。
(2020.4.17.)
 現在世界で猛威を振るっている新型コロナウイルス肺炎は、感染力と致死率が高く、世界の感染者総数は215万人超、死亡者は14万人超(4月17日現在)に達している。日本も、国内感染者9,297人、死亡者136人(同日現在)となっている。
 このような伝染病を克服するためには、2つの対応が必要だ。
 1つは、伝染病の罹患者(陽性者)を早期に特定した上、隔離し、治療することが基本であろう。
 第2は、伝染病が急速に広がり、罹患者が急増し、死者が増えることにより、社会活動、経済活動全般が停滞し、国民生活に大きな影響を与えるので、そのための救済、救援処置が必要となることである。
1、新型コロナウイルス肺炎の封じ込めに何が必要か
(1)早期発見と情報の迅速な伝達、共有
 新型コロナウイルス肺炎は、中国武漢市で発生が確認され伝染が拡大したが、武漢市を初めとする中国の対応と情報の内外への発信の遅れが、中国国内での対応ばかりではなく、世界への伝染拡大を招いたと言えよう。
 また国連の専門機関である世界保健機関(WHO)の世界的伝染病(パンデミック)とする宣言が遅かったと言えよう。
 今回のコロナウイルス肺炎は、「新型」であったので未知なことも多く、対応が遅れたとしても誰の責任でもなく、仕方が無いことと思われる。しかし中国の地方組織を含め、情報統制を行っていることが遅れの一因であり、遺憾であるが、中国が猛省し、今後発生源の特定や何故対応が遅れたかの検証、病原菌の特性などにつき、国連はじめ関係各国への迅速な情報や資料の提供を望みたい。
 (2)検査の充実と罹患者(陽性者)の特定、隔離、治療が対応の基本
 このような感染力の強い伝染病への対応については、速やかに罹患者を特定し、隔離、治療するのが基本中の基本であろう。
 今回の場合、新型であったため、検査キットの準備がなく、1月下旬の初期段階では1日800件程度しか検査できない状況であったので、武漢等への渡航経験者などを除き、検査は受けられず、‘自宅療養’の状態となったことは仕方なかったとしても、その後迅速に検査体制の拡充・整備、陽性者を症状を選別した上で隔離・治療体制の拡充、整備を優先的に進めるべきであった。そのために予備費などを含め予算を優先的に充てるべきであったと思われる。
 一部に、検査して陽性患者が増えると病院が受け入れられないようになり、イタリアなどのように「医療崩壊」を起こすとの意見があった。何もしなければそうであろう。検査を前提として、陽性者の症状に応じ、症状がないか軽微な者の隔離場所(第1次隔離)、重度でないが治療を要する患者(第2次隔離)、及び重度者(第3次隔離)などに分けて、収容場所を新・増設する。場所は、廃校となった学校や施設や場合により適当場所に簡易施設を建設するなど対応は出来るはずだ。特に、現在無症状者や軽症者は自覚のないまま活動し、また1人暮らしや片親だけで幼児のいる家庭は別として、複数家族での陽性者の家庭内隔離は非常に困難であるので、陽性者は症状に応じ原則として隔離施設で療養させることが感染防止の鍵となろう。企業や団体等で不安無く活動を継続したいのであれば、原則として全員を検査し、陽性者は速やかに隔離施設で療養させることが出来れば、感染を防止と組織活動の継続が両立出来る。ワクチンと併行して検査の民間への拡大と第1次隔離施設の拡充が不可欠と言える。

 また医療用マスク、防護着衣や人工呼吸器類を拡充・整備すると共に、検査キットやワクチン、治療薬等の開発を図る。そのために予算を優先的に使用すべきだ。
 医師、看護師等の人材については、まず医療従事者が感染しないよう配慮する一方、OBの再リクルート、研修医の動員や、必要に応じ医大生をボランテイアー・ベースで募り、緊急・危険手当を含め然るべく報酬を支給して手当てするなど、対応は可能であろう。予備費を当てると共に予算手当を優先的に行うべきであろう。
 現在のように、無症状の保菌者が自由に行動できる状態ではコロナウイルスの伝染を克服することは出来ない。コロナウイルス禍は長期に残存する可能性が高いが、将来、緊急事態宣言を解除、緩和する時には、無症状の保菌者への対応が必要となろう。そのためにも検査の充実は不可欠だ。
 2、経済社会活動、国民生活への影響をどう緩和、救済するか
 経済的被害については、個人にせよ企業・団体にせよ、誰もが被害者であるので、まずはそれぞれの経済的能力に従って耐え、対応し克服する努力が必要だろう。そのような個々の意識と努力がなければ克服は難しい。財源が限られている以上、政府や地方自治体が行えることには限度がある。
 公的な経済的支援を必要とするのは、職業が安定していない人や解雇される人であり、企業・団体では中小零細企業・団体や観光・飲食・娯楽・サービス業などの分野で、コロナウイルス禍で著しく影響、被害を受けるところが中心となろう。仕事を失った者に対しては、雇用保険によるセーフテイーネットがあるものの、その対象となっていない人々や地域、分野によって被害は一律ではない。重要なことは、経済・社会活動が制限、縮小され、生活が困窮し、被害を受けている人々に支援が迅速に届くような措置が望まれる。
(2020.4.17.2021.2.5.一部加筆)

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オリンピック・パラリンピック、アスリートファーストか国民の健康ファーストか!

2021-06-28 | Weblog

オリンピック・パラリンピック、アスリートファーストか国民の健康ファーストか!

 東京オリンピック開催まで3ヶ月ほどに迫った2021年2月17日、東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の新会長に橋本聖子前オリンピック・パラリンピック担当大臣(参議院議員)が就任した。

 橋本新会長はスピードスケートや自転車で3回オリンピックに参加し、オリンピックの精神、規則を理解しており、また参議院議員活動やオリンピック・パラリンピック担当大臣として東京での開催準備を手掛けており、新会長の手腕に期待したい。

 他方、実際問題としてコロナウイルスを抱えての開催準備であるので厳しい選択を迫られることも予想される。

(1)アスリートファーストか国民の健康・命ファーストか

 橋本新会長は、就任に当たり、安全・安心な大会開催を最優先課題としつつ、アスリートファーストの大会としたいと述べている。通常のオリンピック・パラリンピックであればその通りであり、練習に練習を重ねて来たアスリートの皆さんの活躍を心から期待したい。また日本のみならず、参加予定国・地域の全てのアスリートに公平な競争条件を確保することもアスリートファーストと言える。しかしコロナウイルス問題はまだ克服の見通しはまだ立っていない。

 コロナウイルスの拡大は、日本を含め世界全体でややおさまりつつあると見られ、またワクチンが開発、実施され始め、収束に向けた活動が各国で加速するものと思われる。だが日本を含め世界全体で感染者1億1千万人 、死亡245万人強にも及んでおり、収束にはまだ相当の期間を要すると見られる。ワクチンについては、生産能力に加え、接種に膨大且つ慎重な作業が必要で隅々まで実施には相当の期間を要すると予想されている。

 更に、変異種が英国、南ア、カナダ、ブラジルなどで発生し、日本にも事例が見られ始めており、伝染力が強く、抗体を弱めるなどと伝えられているものの、未知の部分も多く、国際的な拡大を抑制する必要性が新たに出てきている。

 そのような中での東京でのオリンピック・パラリンピックの開催で、2020年の時点で206の国・地域の参加が予定されており、2021年7月にこれらの国・地域が出席すると仮定すると、各国から多数の選手、関係者、更に海外よりの観客を認めるといろいろの地域から多数の人が訪日する。

 選手その他の外国人に3日以内の陰性証明またはワクチン接種証明を求めるのか、変異種発生国の入国を認めるか否かの他、空港でのチェックと検査体制、機内に感染者が出た場合には搭乗者の一定期間の隔離、陽性反応が出た場合の隔離と治療など、入国時に相当な作業と時間を要するだろう。更に国内に入ってからの行動制限などの徹底が求められる可能性が残っている。

 206の国・地域からのこれら外国人への対応を、国内でのワクチン接種という膨大な作業に加えて実施しなくてはならない。現在医療関係者(約370万~470万人)のワクチン接種が行われており、4月からは一般国民を対象に65歳以上の年長者から順次始まるようだが、市区町村や医療関係者はこれに忙殺されると予想される。

 現実問題として、そのような中で206の国・地域からのこれら外国人への対応のために要員と施設を確保出来るのだろうか。それを怠ると、変異種を含む感染拡大のリスクがあり、その影響は来年の冬以降まで残るであろう。

 国民の健康と命を守るため、アスリートファーストとは必ずしも行かなくなるかもしれないが、アスリートを含めた感染拡大のリスクを少なくする形での対応が望ましいのではなかろうか。

(2)感染拡大リスク対経済的効果

 東京オリンピック・パラリンピック開催中止の場合、その経済損失は4.5兆円、無観客の場合でも2.4兆円とも伝えられている(関西大学宮本勝浩名誉教授の試算)。中止の場合は国民総生産の1%近くになる。

 2020年度の実質経済成長率については、2020年12月段階での政府見通しは前年度比マイナス5.2%となるので、GDP1%に相当する経済損失は小さくない。一方、もし7月の東京オリンピックが従来通りの形で開催され、感染拡大となった場合の経済全体へのリスクはそれよりも遙かに大きいことは2020年の経済成長率減退から明らかな上、国民の健康と命に与えるリスクも大きい。

 2021年1月9、10日に共同通信社が全国に電話調査した結果によると、「中止すべきだ」が35.3%、「再延期すべきだ」が44.8%と報じており、予定通りの開催に反対の意見は80%強に及ぶ。観光業、航空運輸業、飲食を含むサービス業、イベント産業を中心とする経済的打撃は大きく、大会による経済的効果を望む声は大きいし、誰しも開催に期待したいが、解雇・倒産や雇い止め等で職を失った多数の人々、そして大学、高校から小中学校まで自由な学校生活を抑制されている多くの生徒・学生の不安、更に全国的な感染への懸念や不安が強いことを物語っている。

(3)国際的なアスリートの公平な競争条件は確保出来るのか

 東京オリンピックでは、33競技が実施される予定だが、世界各国、地域で2020年2月より国境を越えた競技はほとんど抑制され、国内の競技、練習なども国によって状況が異なる。十分練習できない国、地域もあるだろう。コロナウイルス対策で参加選手に各種の条件が課される可能性もあり、選手のコンデイションが国・地域により異なる場合が出ることも予想される。

 2月中旬にメルボルンで全豪オープンテニスが開催され、オリンピック開催の1つの例となると言われており、参考にはなる。この試合に、錦織圭選手が参加したが、同じ航空機の搭乗者に陽性者がいたため濃厚接触者として2週間狭い個室に隔離され、その間練習にも外出できず、1回戦で敗退した。同選手は公には不満等を述べてはおらず、また7月までには状況はある程度改善しているものと期待したいところだが、オリンピック大会で錦織選手と同じような状況に置かれる選手が出た場合、公平でないとの批判が出ることも予想される。更にオリンピックはチーム競技を含め33競技で206の国・地域からの参加となり、毎日複数の競技が行われる。従って競技規模が圧倒的に大きく複雑になるので、世界全体としてアスリートそれぞれに公平な競争、競技条件を確保出来るのか明かではない。なお全豪女子オープンテニスでは、大坂なおみ選手が、準々決勝でセリーナ・ウイリアムズ選手、決勝でブレイデイ選手を抑え優勝した。この困難な状況での優勝は多くのアスリートに希望を与えるもので、心から祝福したい。

 國際オリンピック委員会(IOC)は、世界の何か国・地域が最終的に参加し、それぞれの競技で選手が何人参加する予定か、またそれぞれの競技で世界レベルの公平な競技条件が確保出来ているか否かを把握していなくてはならない。そのような情報が速やかに世界に提供されることが望まれる。(2021.2.21.)

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国際オリンピック委(IOC)に望まれる中止の決断

2021-06-28 | Weblog

 国際オリンピック委(IOC)に望まれる中止の決断

 6月1日より6月20日まで、日本においてコロナウイルス拡大防止のため、東京など9道府県に一部対象地域を拡大して緊急事態宣言が延長されることになった。2021年1月より第3波の感染拡大が起こり、社会経済活動の自粛、抑制を要請する緊急事態宣言が実施されたが、顕著な減少はみられず、宣言は短期間解除されたものの、半年に及ぶ緊急事態宣言となる。

 緊急事態宣言が予定通り6月20日で解除されても、東京オリンピック開催まで約1か月しか残されていない。新規感染の顕著な減少が期待される。しかし大型商業施設や映画館、スポーツ施設等については制限が緩和されたこと、及び、イギリス変異種に次いで新たにインド変異種への転換、拡大が見られることを考慮すると、ワクチン接種が進んではいるものの、1日100万回の接種が実現したとしても、8月には新たなピークが来るとの予想もある。

 1、国際オリンピック委員会(IOC)が行える開催中止の決断

 世界に目を転じると、米、英などワクチン接種が進み制限解除の動きが見られるが、世界全体として未だに感染拡大は止まっていない。

 特に3月、4月頃よりインドにおける爆発的な感染拡大によりインド変異種が国外に飛び火し、ネパールやマレイシアなどで感染が拡大し、5月にロックダウンが実施、決定されている。更にベトナムでは、イギリス変異種とインド変異種が結合し、感染力が更に強いウイルスに変異しており、空気感染の恐れもあると伝えられている。

 武漢発の新型コロナウイルスで注意を要するのは、全世界の諸国・地域に感染が拡大することに加え、感染力や重症化率を強めながら次々と変異していることだ。今後、一定地域、諸国で沈静化しても、また世界のどこから新たな変異種が広がるか分からない。グローバリゼーションは、世界の運輸・交通や物流、人流などに大きな恩恵をもたらしたが、新型コロナウイルスというパンデミックの出現により、今後国境を越えた人の往来には特別の注意を要することになった。

 日本だけでなく、世界がこのような状況の時に、世界200か国・地域からオリンピック選手約1.5万人、及び競技関係者、IOC関係者及び報道関係者7万人前後が7月23日の開会式に向けて訪日する。未だ具体的な参加国・地域数、参加者数が公表されておらず、また入国管理措置、国内での行動制限や監視体制などの「安全、安心な開催」に向けての全容は明らかにされていないが、どのような措置をとっても漏れが出る可能性がある。また措置を厳しくすればするほど、参加選手や来日者の不満、批判もつのるだろう。

 このような状態でオリンピックを開催することについては、各国で警鐘が鳴らされ初めている。

 オリンピックの実施や中止についての決定権決はIOCにある。開催都市である東京都も、その下部組織ではあるが政府の影響が大きい組織委員会も全体を支援する政府も、中止を求めれば違約金等の問題があるので言い出しにくい。

 現在日本を含め世界が直面しているのは、世界70億人の健康と命にかかわるパンデミックという例外的な事態である。国際オリンピック委員会(IOC)としても、例外的な対応として、違約金等を求めることなく中止を決定しても良いのではなかろうか。またIOC側も、米国のテレビ局等との関係で違約金や補償金の問題が生ずるだろうが、互に求めないことで調整すべきであろう。

 IOCは、開催国に実施を求める以上、各国の選手、競技関係者だけではなく、開催国日本を含め世界の全ての人々の健康と命を守る義務がある。

 

 2、日本の世論を理解していないのだろうか、IOC

 東京オリンピック7月開催についての世論調査では、2021年1月以来、一貫して70%以上が「中止、又は延期」であり、6月の時点でもその状態に変化はない。3年後にはパリ・オリンピックがあるので、再延期の可能性はないとすると、

70%以上が本年7月の開催に反対していることになる。その背景には、若い世代についても、2020年4月に大学等に進学してもキャンパス生活を送ることも出来ず、アルバイト先もなく、また解雇や雇い止めなども一般化し、学校を卒業しても就職機会は限られており、将来不安や孤独感が募っている状況がある。産業面でも、飲食業から娯楽・イベント、観光などが大打撃を受けており、1日も早い感染収束を願っている。誰しもオリンピック・パラリンピックが開催できれば良いと思っているが、今はそれどころではなく、行動制限の解除であり、日常の生活や日常の健康を取り戻したいという意識が反映されていると言えよう。世論の70%以上が1月以来一貫してオリンピック7月開催に不安を抱いている事実を理解して欲しいものだ。

 各国選手の事前合宿を受け入れ予定であった地方自治体も、ワクチン接種促進のための業務に忙殺され、また地元住民の懸念などを配慮して、既に105の自治体が辞退(6月1日現在)している。

 地方自治体が各国選手の事前合宿受け入れを辞退している理由が一つある。それは受け入れても、宿舎と競技場の間以外は行動が制限され、選手にストレスを与えるおそれがある上、地方を見たり食事を楽しんで頂くことも出来ないからだ。受け入れても、地方との交流も「お・も・て・な・し」も出来ない。

 この状況は、オリンピック本番にも当てはまる。海外からの選手他来訪者は、マスコミを含め、原則として宿舎と競技場の間のみに行動制限され、交通手段も専用バス等に限定され、市中には出られない。「お・も・て・な・し」も宿舎内だけに限定される。オリンピック参加者と開催国との交流がなくなれば、それだけオリンピックの意義は薄れてしまう。

 その上心配は尽きない。来日する選手、競技関係者はワクチンを受けてくるとしているが、マスコミ関係者を含め、一部は受けていないであろう。入国に際し厳格な検査を受け、またその後も頻繁に検査を受けることになろうが、検査が最大のおもてなしになってしまいそうだ。

 その上、行動制限を完全に実施することは難しい。世界の200近い国や地域から7万~8万人内外の来訪者があるので、言葉や慣習、価値観等の差もあり、ルールブックに従って行動制限することは難しいのではないか。そうなると相互に感染が発生し、コロナウイルス・パンデミックの大実験場となる恐れがある。それが杞憂に終われば良いが、そうなった場合に誰が責任を取るのだろうか。(2012.6.2.)

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国際オリンピック委(IOC)に望まれる中止の決断

2021-06-26 | Weblog

 国際オリンピック委(IOC)に望まれる中止の決断

 6月1日より6月20日まで、日本においてコロナウイルス拡大防止のため、東京など9道府県に一部対象地域を拡大して緊急事態宣言が延長されることになった。2021年1月より第3波の感染拡大が起こり、社会経済活動の自粛、抑制を要請する緊急事態宣言が実施されたが、顕著な減少はみられず、宣言は短期間解除されたものの、半年に及ぶ緊急事態宣言となる。

 緊急事態宣言が予定通り6月20日で解除されても、東京オリンピック開催まで約1か月しか残されていない。新規感染の顕著な減少が期待される。しかし大型商業施設や映画館、スポーツ施設等については制限が緩和されたこと、及び、イギリス変異種に次いで新たにインド変異種への転換、拡大が見られることを考慮すると、ワクチン接種が進んではいるものの、1日100万回の接種が実現したとしても、8月には新たなピークが来るとの予想もある。

 1、国際オリンピック委員会(IOC)が行える開催中止の決断

 世界に目を転じると、米、英などワクチン接種が進み制限解除の動きが見られるが、世界全体として未だに感染拡大は止まっていない。

 特に3月、4月頃よりインドにおける爆発的な感染拡大によりインド変異種が国外に飛び火し、ネパールやマレイシアなどで感染が拡大し、5月にロックダウンが実施、決定されている。更にベトナムでは、イギリス変異種とインド変異種が結合し、感染力が更に強いウイルスに変異しており、空気感染の恐れもあると伝えられている。

 武漢発の新型コロナウイルスで注意を要するのは、全世界の諸国・地域に感染が拡大することに加え、感染力や重症化率を強めながら次々と変異していることだ。今後、一定地域、諸国で沈静化しても、また世界のどこから新たな変異種が広がるか分からない。グローバリゼーションは、世界の運輸・交通や物流、人流などに大きな恩恵をもたらしたが、新型コロナウイルスというパンデミックの出現により、今後国境を越えた人の往来には特別の注意を要することになった。

 日本だけでなく、世界がこのような状況の時に、世界200か国・地域からオリンピック選手約1.5万人、及び競技関係者、IOC関係者及び報道関係者7万人前後が7月23日の開会式に向けて訪日する。未だ具体的な参加国・地域数、参加者数が公表されておらず、また入国管理措置、国内での行動制限や監視体制などの「安全、安心な開催」に向けての全容は明らかにされていないが、どのような措置をとっても漏れが出る可能性がある。また措置を厳しくすればするほど、参加選手や来日者の不満、批判もつのるだろう。

 このような状態でオリンピックを開催することについては、各国で警鐘が鳴らされ初めている。

 オリンピックの実施や中止についての決定権決はIOCにある。開催都市である東京都も、その下部組織ではあるが政府の影響が大きい組織委員会も全体を支援する政府も、中止を求めれば違約金等の問題があるので言い出しにくい。

 現在日本を含め世界が直面しているのは、世界70億人の健康と命にかかわるパンデミックという例外的な事態である。国際オリンピック委員会(IOC)としても、例外的な対応として、違約金等を求めることなく中止を決定しても良いのではなかろうか。またIOC側も、米国のテレビ局等との関係で違約金や補償金の問題が生ずるだろうが、互に求めないことで調整すべきであろう。

 IOCは、開催国に実施を求める以上、各国の選手、競技関係者だけではなく、開催国日本を含め世界の全ての人々の健康と命を守る義務がある。

 

 2、日本の世論を理解していないのだろうか、IOC

 東京オリンピック7月開催についての世論調査では、2021年1月以来、一貫して70%以上が「中止、又は延期」であり、6月の時点でもその状態に変化はない。3年後にはパリ・オリンピックがあるので、再延期の可能性はないとすると、

70%以上が本年7月の開催に反対していることになる。その背景には、若い世代についても、2020年4月に大学等に進学してもキャンパス生活を送ることも出来ず、アルバイト先もなく、また解雇や雇い止めなども一般化し、学校を卒業しても就職機会は限られており、将来不安や孤独感が募っている状況がある。産業面でも、飲食業から娯楽・イベント、観光などが大打撃を受けており、1日も早い感染収束を願っている。誰しもオリンピック・パラリンピックが開催できれば良いと思っているが、今はそれどころではなく、行動制限の解除であり、日常の生活や日常の健康を取り戻したいという意識が反映されていると言えよう。世論の70%以上が1月以来一貫してオリンピック7月開催に不安を抱いている事実を理解して欲しいものだ。

 各国選手の事前合宿を受け入れ予定であった地方自治体も、ワクチン接種促進のための業務に忙殺され、また地元住民の懸念などを配慮して、既に105の自治体が辞退(6月1日現在)している。

 地方自治体が各国選手の事前合宿受け入れを辞退している理由が一つある。それは受け入れても、宿舎と競技場の間以外は行動が制限され、選手にストレスを与えるおそれがある上、地方を見たり食事を楽しんで頂くことも出来ないからだ。受け入れても、地方との交流も「お・も・て・な・し」も出来ない。

 この状況は、オリンピック本番にも当てはまる。海外からの選手他来訪者は、マスコミを含め、原則として宿舎と競技場の間のみに行動制限され、交通手段も専用バス等に限定され、市中には出られない。「お・も・て・な・し」も宿舎内だけに限定される。オリンピック参加者と開催国との交流がなくなれば、それだけオリンピックの意義は薄れてしまう。

 その上心配は尽きない。来日する選手、競技関係者はワクチンを受けてくるとしているが、マスコミ関係者を含め、一部は受けていないであろう。入国に際し厳格な検査を受け、またその後も頻繁に検査を受けることになろうが、検査が最大のおもてなしになってしまいそうだ。

 その上、行動制限を完全に実施することは難しい。世界の200近い国や地域から7万~8万人内外の来訪者があるので、言葉や慣習、価値観等の差もあり、ルールブックに従って行動制限することは難しいのではないか。そうなると相互に感染が発生し、コロナウイルス・パンデミックの大実験場となる恐れがある。それが杞憂に終われば良いが、そうなった場合に誰が責任を取るのだろうか。(2012.6.2.)

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国勢調査2020、1票の格差解消に反映されるか!

2021-06-26 | Weblog

国勢調査2020、1票の格差解消に反映されるか!

 5年に1度の「国勢調査」が実施されている。特に2020年は10の倍数の年で、本格的な国政調査となっている。国勢調査は統計法に基づき実施される国の最も重要な調査とされ、60~70万人の調査員を雇い、多額の予算を割いて実施される。重要な国の調査であるから、その結果が行政や政治に有効に活用、反映されることが期待される。

  2016年2月、安倍晋三首相(当時)は衆院総務委員会において、衆議院議員選挙における「一票の格差」是正をめぐる質疑において、「県を越える大規模な定数是正は、10年ごとの国勢調査で行うべきだ。2015年の調査は簡易調査であって、5年後には大規模国勢調査の数字が出る。・・・」などとして、抜本的な格差是正を先送った経緯がある。

 1、国民の平等を形にするものとして、「一票の格差」是正が必要

2019年7月の参院選において、選挙区で最大3倍の「一票の格差」があったことに対し、弁護士など市民グループが全国14の裁判所に違憲として訴えていた。高松高裁は、10月16日、国民の平等を定めた憲法に違反するとして「違憲状態」と判決した。

「違憲状態」との表現は、事実上「違憲」の意味であることには変わりがない。高松高裁は、香川、愛媛、徳島・高知(合区)の3選挙区の選挙無効の訴えは棄却したが、無効とすると社会的な混乱を起こすことが懸念され、3権の一つである国会の権限を尊重し国会に対応を委ねたのであろう。しかし「違憲」は「違憲」である。裁判制度は、3権分立の中で独立の機能を持つので、本来であれば、違憲と判断するのであれば、違憲状態として対応を国会に委ねるのではなく、司法の立場から違憲は違憲とすべきであり、その上で国会の対応に委ねるべきなのであろう。

 いすれにしても、国会は3権の一つであり、同等の重みを有する司法(裁判所)の判断を厳正に受け止め、抜本的解決策を次の選挙までに出すべきであろう。これは国民の平等に立脚する基本的な権利である投票権に関するであり、基本的な政治制度であるので、衆・参両院ともに最優先事項として取り組むことが望まれる。

 国勢調査2020の調査結果が公正、適正に活用されることが望まれる。それは、与党だけの責任ではなく、野党各党の責任とも言えよう。また国勢調査は今後の日本の方向性を示す指標となるので、政府としても、その結果を内閣が一丸となって評価、共有し、就労制度、年金・医療などの福祉政策、地域行政制度、交通を含む町造、都市造りなど、行政各部の政策に反映して行くことが望ましい。

 

 2、国民の平等を前提とする民主主義、男女平等などが遅れている日本

 ところで、「平等」とは基本的には1対1の関係に近づけることが期待されるが、選挙区割り等の技術的な制約から若干の幅は仕方ないものの、原則として1.5倍以下で極力1.0に近い数値に収まるよう努力すべきだろう。1.9倍なら良い、1.6倍ならよいなど、恣意的に判断されるべきことではない。特定の選挙区が4捨5入で2倍以上の格差となることは平等概念に反すると言えよう。人口の多い地域の1票の重みが半人前になるようではもはや平等などとは言えない。また人口の少ない地方の有権者がいつまでも投票権において過度に保護される状態では、地方はいつまで経っても自立できないのではなかろうか。また議員の質を維持する上でも公正、公平な競争を確保することが望ましい。いずれにしても人口の少ない地域への若干の上乗せは残り、配慮されるが、地方の自立があってこそ発展があり、それを支援することによる効果も大きい。

  裁判所は、これまで選挙毎に争われてきている1票の格差問題で、衆議院では2倍以上、参議院では3倍以上(つい最近まで5倍以上)を違憲、違憲状態として来ているが、格差を原則1対1に近づけてこそ平等と言える。

 世界の政治民主化度 国別ランキング(出典:世銀2018年)では、世界204国・地域中で日本は41位、G-7(主要先進工業国)中最下位となっている。因みに、世界の「男女平等ランキング2020(2019年時点の数値)」では日本は121位で史上最低となっている。また2019年の労働生産性ランキングは、「経済大国」と言われながら世界187国・地域中で36位、世界の報道の自由2020では、世界187国・地域中で66位でしかない。

 世界でこのように見られていることは残念だが、戦後75年、視野を広げ、公正、公平な民主主義の構築に向けて一層の努力が必要なのだろう。(2020/10/1)

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地球温暖化対策で米国はリーダーシップを取れるか        (その2)再掲

2021-06-25 | Weblog

地球温暖化対策で米国はリーダーシップを取れるか        (その2)再掲

はじめに  厳戒態勢下のパリで開催されていた地球温暖化への対応に関する国連会議(COP21)は、12月12日、新たな枠組みを規定する「パリ協定」を採択した。温暖化の原因とされる炭酸ガス排出大国である米国や中国始め、先進工業国及び発展途上国を含む全ての国連加盟国が温室効果ガスの削減に取り組むことに同意した初めての枠組みなる歴史的な合意と言えよう。パリ協定は、米国等の不支持により形骸化した京都議定書を18年振りで塗り替えるもので、‘気温上昇を産業革命前に比べて摂氏1.5度の上昇に抑えるよう努力するとし、世界全体の温室効果ガスの排出量を減少させ、今世紀後半には実質的にゼロにするよう削減に取り組む’こととすると共に、‘途上国も含めた全ての国が5年毎に温室効果ガスの削減目標を国連に提出し、対策を進めることが義務付けている。’

 しかしこの協定は、今後世界が温室効果ガス削減、温暖化抑制に向けての出発点でしかなく、炭酸ガス排出大国である米・中両国やEU、日本などの先進工業国、インド、ロシア、ブラジルなどの新興工業国などの主要炭酸ガス排出国がどのような削減計画を策定し、現実に実施するかに掛かっている。その観点からは、G20諸国が具体的にどのようにこの協定を具体化して行くかが注目される。その上で炭酸ガス排出大国である米国や中国が重要な役割を果たすことが期待されるが、今後の動向を見る参考として、今回の合意前から掲載している本稿を引き続き掲載したい。

 現在、世界の気候は不安定な動きをする共に荒々しさと破壊力を強めている。温暖化の速度、原因などについては議論が分かれている。どの説を取るかは別として、着実に進んでいる事実がある。このブログでも述べてきたが、北極海の氷原が夏期に融けて縮小していることだ。北極海で起きていることは、南極大陸でも同様に大陸を覆う氷原や氷河が急速に融けている。それが海流の動きを変化させると共に、水温が上がり、上昇気流となり、気流に大きな変化とエネルギーを与えるのだろう。現在、日本はもとより世界各地で気流や海流の動きや温度がこれまでのパターンでは予測できない荒々しい動きを示しており、巨大なエネルギーとなって東アジアでの台風やカリブ沿岸でのハリケーン、そして南太平洋のサイクロンとして猛威を振るっている。また局地的な豪雨や突風・竜巻、日照りや干ばつ、豪雪や吹雪などにより従来の想定を越えた被害を出している。そして国連の専門家グループ(気象変動に関する政府間パネルーIPCC)により、干ばつなどによる食糧生産の減少、大都市部での洪水、異常気象によるインフラ機能の停止など、温暖化が進むリスクが指摘されている。地球環境は、近年経験したことがない局面に入っていると言えよう。

 オバマ大統領は、就任以来地球温暖化問題に積極的に取り組む姿勢を示しているが、7月30日、“きれいな発電計画(Clean Power Plan)”を発表し、発電所から排出される“二酸化炭素を2030年までに2005年を水準として32%削減”することを表明した。オバマ大統領は、この削減目標を設定する一方、“きれいな発電計画”の枠組みの下で各州が独自の実施計画を進めることが可能であるとしつつ、これまで進められている太陽電池や風力発電などの再生可能エネルギー、エネルギー効率の促進をベースとして、‘きれいなエネルギー’を更に進めるための長期的な投資などの諸措置を掲げ、米国の気候変動への対応におけるリーダーシップを継続するとしている。

 米国はブッシュ共和党政権以降、温暖化ガス削減に向けての数値目標設定に消極的であったことから、“二酸化炭素を2030年までに32%削減”する数値目標を掲げた“きれいな発電計画(Clean Power Plan)”は野心的で歴史的であるが、米国がこの計画を達成出来るのか、そして地球温暖化に対する国際的な取り組みにリーダーシップを発揮できるのかが注目されるところである。

 2015年12月、国連気候変動枠組条約締約国会議(COP21)がパリで開催予定であり、2020年以降の新しい温暖化対策の枠組みにつき審議されることになっている。温暖化ガス削減に向けての数値目標に合意している米・中両国、そして環境先進国とも言える欧州連合(EU)が中心となって新たな枠組みに合意点を見出せるのか。地球の将来は、米国をはじめとする各国のこの問題の重大性への理解と解決努力に掛かっていると言っても過言ではない。

 1、米国は“きれいな発電計画”を実施に移せるか               (その1で掲載)

 2、二酸化炭素削減に関する米・中合意の行方  

 これに先立ち米国は、2014年11月11日、訪米した中国の習近平主席との記者会見において、地球温暖化危機に対応するため、二酸化炭素削減について米・中間で合意した旨発表した。

 両国は世界の温暖化効果ガスの約44%(2012年ベース)を排出しているが、この合意により、米国は、2020年までに設定されている年1.2%の二酸化炭素削減目標を2020年以降倍増し年2.3%から2.8%削減、温室効果ガスを全体として2005年比で2025年までに26~28%削減することが必要となる。そして米国は今回、“二酸化炭素を2030年までに32%削減”する目標を発表し、米・中合意を上回る温室効果ガス削減に努める方針を示し、この問題で主導権を発揮しようとしている。

 他方、中国は2030年から二酸化炭素の排出が増加しないようにすることを初めて約束した。これにより中国は、2030年までに総エネルギー消費の20%を温室効果ガス排出ゼロのエネルギー源から確保することを目標として、風力、太陽エネルギー及び原子力から1,000ギガワットに相当する発電を実現することが求められる。これは現在の中国の全ての石炭火力による発電量に相当する。これが現実に実施されれば、北京を含む中国の主要都市において深刻になっているPM2.5などの大気汚染問題に大きな効果が期待され、中国国民の健康被害だけでなく越境公害の縮小に繋がるものと期待される。

 世界の温室効果ガス排出比率は、米(約16%)、中(約28%)に加え、インド(5%)、ロシア(5%強)及び日本(4%弱)を加えると、5か国で60%近くになるので、米・中両国の削減比率合意により、今後国際社会が温室効果ガス、炭酸ガス排出削減、気候変動改善に向けて協議し、国別削減目標に国際的合意されることが現実的なものになって来たと言えよう。

 3、注目される日本の環境対策             (その3に掲載)

(2015.8.27.)(All Rights Reserved.)

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 地球温暖化対策で米国はリーダーシップを取れるか       (その1)再掲

2021-06-25 | Weblog

 地球温暖化対策で米国はリーダーシップを取れるか       (その1)再掲

 はじめに  厳戒態勢下のパリで開催されていた地球温暖化への対応に関する国連会議(COP21)は、12月12日、新たな枠組みを規定する「パリ協定」を採択した。温暖化の原因とされる炭酸ガス排出大国である米国や中国始め、先進工業国及び発展途上国を含む全ての国連加盟国が温室効果ガスの削減に取り組むことに同意した初めての枠組みなる歴史的な合意と言えよう。パリ協定は、米国等の不支持により形骸化した京都議定書を18年振りで塗り替えるもので、‘気温上昇を産業革命前に比べて摂氏1.5度の上昇に抑えるよう努力するとし、世界全体の温室効果ガスの排出量を減少させ、今世紀後半には実質的にゼロにするよう削減に取り組む’こととすると共に、‘途上国も含めた全ての国が5年毎に温室効果ガスの削減目標を国連に提出し、対策を進めることが義務付けている。’

 しかしこの協定は、今後世界が温室効果ガス削減、温暖化抑制に向けての出発点でしかなく、炭酸ガス排出大国である米・中両国やEU、日本などの先進工業国、インド、ロシア、ブラジルなどの新興工業国などの主要炭酸ガス排出国がどのような削減計画を策定し、現実に実施するかに掛かっている。その観点からは、G20諸国が具体的にどのようにこの協定を具体化して行くかが注目される。その上で炭酸ガス排出大国である米国や中国が重要な役割を果たすことが期待されるが、今後の動向を見る参考として、今回の合意前から掲載している本稿を引き続き掲載したい。

 

 現在、世界の気候は不安定な動きをする共に荒々しさと破壊力を強めている。温暖化の速度、原因などについては議論が分かれている。どの説を取るかは別として、着実に進んでいる事実がある。このブログでも述べてきたが、北極海の氷原が夏期に融けて縮小していることだ。北極海で起きていることは、南極大陸でも同様に大陸を覆う氷原や氷河が急速に融けている。それが海流の動きを変化させると共に、水温が上がり、上昇気流となり、気流に大きな変化とエネルギーを与えるのだろう。現在、日本はもとより世界各地で気流や海流の動きや温度がこれまでのパターンでは予測できない荒々しい動きを示しており、巨大なエネルギーとなって東アジアでの台風やカリブ沿岸でのハリケーン、そして南太平洋のサイクロンとして猛威を振るっている。また局地的な豪雨や突風・竜巻、日照りや干ばつ、豪雪や吹雪などにより従来の想定を越えた被害を出している。そして国連の専門家グループ(気象変動に関する政府間パネルーIPCC)により、干ばつなどによる食糧生産の減少、大都市部での洪水、異常気象によるインフラ機能の停止など、温暖化が進むリスクが指摘されている。地球環境は、近年経験したことがない局面に入っていると言えよう。

 

 オバマ大統領は、就任以来地球温暖化問題に積極的に取り組む姿勢を示しているが、7月30日、“きれいな発電計画(Clean Power Plan)”を発表し、発電所から排出される“二酸化炭素を2030年までに2005年を水準として32%削減”することを表明した。オバマ大統領は、この削減目標を設定する一方、“きれいな発電計画”の枠組みの下で各州が独自の実施計画を進めることが可能であるとしつつ、これまで進められている太陽電池や風力発電などの再生可能エネルギー、エネルギー効率の促進をベースとして、‘きれいなエネルギー’を更に進めるための長期的な投資などの諸措置を掲げ、米国の気候変動への対応におけるリーダーシップを継続するとしている。

 

 米国はブッシュ共和党政権以降、温暖化ガス削減に向けての数値目標設定に消極的であったことから、“二酸化炭素を2030年までに32%削減”する数値目標を掲げた“きれいな発電計画(Clean Power Plan)”は野心的で歴史的であるが、米国がこの計画を達成出来るのか、そして地球温暖化に対する国際的な取り組みにリーダーシップを発揮できるのかが注目されるところである。

 

 2015年12月、国連気候変動枠組条約締約国会議(COP21)がパリで開催予定であり、2020年以降の新しい温暖化対策の枠組みにつき審議されることになっている。温暖化ガス削減に向けての数値目標に合意している米・中両国、そして環境先進国とも言える欧州連合(EU)が中心となって新たな枠組みに合意点を見出せるのか。地球の将来は、米国をはじめとする各国のこの問題の重大性への理解と解決努力に掛かっていると言っても過言ではない。

 

 1、米国は“きれいな発電計画”を実施に移せるか

 

 オバマ政権のこのような二酸化炭素削減目標に対し、主として電力・石炭業界や共和党を中心として根強い反対がある。オバマ大統領の本件目標が発表された直後に、共和党系のウエスト・ヴァージニア州の検事総長から強い異議が唱えられており、共和党系の15州は共同して反対する姿勢が示されている。またブッシュ政権において米国環境保護庁の法律顧問を務めたR. マーテラ・グループなども活動を開始している。

 

 既に2014年には、30余りの関係企業法律顧問やロビイスト、共和党戦略担当がワシントンにある米国商工会議所で定期的に会合し、オバマ政権から提案されるであろう温暖化防止規制の廃止に向けて法的戦略を検討して来ているようだ。オバマ政権は、2016年11月の大統領選挙まで残すところ1年数か月となっており、新たな法案を実現する期間が限られている上、米国議会は上下両院とも共和党が多数を占めているので“二酸化炭素を2030年までに32%削減”する数値目標を具体化するのは容易ではない。

 

 もっとも、環太平洋経済連携協定(TPP)の大統領への交渉権限付与につき、民主党内で労働組合支持勢力が反対の姿勢を示していたのに対し、オバマ政権は共和党の支持勢力を取り込んで実現しているので、同大統領がリーダーシップを発揮する余地はある。この点は日本の国会運営においても、両院協議会などの弾力的な活用によって与野党間の協議を通じ対立点を調整することが望まれるところであり、学ぶべき点がありそうだ。

 

 明年の米国の大統領選挙で共和党候補が勝利し、共和党政権が誕生することになれば地球温暖化問題への取り組みは振り出しに戻る可能性が強いので、オバマ大統領が残る1年強の任期において、どこまでリーダーシップを発揮できるか注目されるところである。

 

 他方、温暖化防止規制に反対する業界や共和党グループとしても、激甚化する気候変動やその原因とされる地球温暖化への対応策を示す社会的責任があると共に、恐らく2016年11月の米国の大統領選挙の現実的な争点の一つとなって行くと見られるので、共和党としても対応が迫られることになろう。

 

 2、二酸化炭素削減に関する米・中合意の行方      (その2に掲載)

 

 3、注目される日本の環境対策             (その3に掲載)

 

(2015.8.27.)(All Rights Reserved.)

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地球温暖化ー融ける氷海、氷河と荒れる気候変動は止められるか <その2 再掲 >

2021-06-25 | Weblog

地球温暖化ー融ける氷海、氷河と荒れる気候変動は止められるか <その2 再掲 >
 2015年3月14日から18日まで、第3回国連防災世界会議が仙台で開催された。東北大地震・大津波から5年目を迎えるこの時期に、大震災の経験と教訓をこの地から世界へ伝え、対応を考えることは大変意義があったと言えよう。他方、折しも南太平洋のバヌアツを大型サイクロン「パム」が襲い大きな被害を出していたが、根本的な原因の一つである荒れる気候変動、温暖化への対応については、途上国側は先進工業国の責任を強調し、国際的な対応を主張する先進工業国と対立し、抜本的な対応については平行線のままで終わった。しかしその間にも海水温は上がり、海流は変化し、地球の気候は悪化している。地殻変動は止められず、被害を防ぐしかないが、気候の劣化については世界が協力すれば止められる。気候の劣化に大きく影響する海や海流の温度や流れは、温度差に敏感な漁業資源にも影響する。何時までも平行線の議論をしている時ではなく、世界が具体的に行動する時期ではないのだろうか。世界のリーダーがこの問題に真剣に向き合うべき時のようだ。
 国連の「気象変動に関する政府間パネル(IPCC)」の第2作業部会は、横浜で地球温暖化の影響を検討し、2014年3月31日、報告書を取りまとめた。その中で「全ての大陸と海洋で、温暖化の重要な影響が観測されている」との認識の下で、“北極海の海氷や世界各地域における珊瑚礁は後戻り困難な影響を既に受けている”などとして生態系や人間社会への影響を指摘している。そして温暖化が進むリスクとして、世界的な気温の上昇、干ばつなどによる食糧生産の減少、大都市部での洪水、異常気象によるインフラ機能の停止などを盛り込んでいる。当コラムも、北極海の海氷の融解と縮小ブログでもこのような状況を2008年頃から指摘して来ているが、それが国際的に理解され始めたと言えよう。
日本の地球温暖化への取り組みについては、環境省は、日本の温室効果ガスの削減目標を2020年度までに2005年度比で3.8%減とする方針である。温室効果ガスの削減目標については、民主党政権が2020年度までに“1990年度比で25%削減”との目標を提示し、国連総会でも表明している。環境省の上記の目標は、基準年を2005年としているが、1990年度比で換算すると逆に約3%増となるとされており、後退感が否めない。政府当局は、‘原子力発電が再稼働されれば高い目標に修正する’としている趣であるが、果たして原子力発電頼みで良いのであろうか。
1、意見が分かれる地球温暖化の原因       <その1で掲載>
2、荒れる世界の気候 <その1で掲載>
3、国際的な保護を必要とする北極圏と南極大陸 <その1で掲載>
4、必要とされる政府レベルの対応と生活スタイルの転換
それ以上に、地球温暖化の進行や気候変動の激化を食い止め、地球環境を保護、改善する必要性に今一度目を向けることが緊要ではないだろうか。それはこの地球自体を人類共通の遺産として保全することを意味する。
地球環境は、政府に委ねておけば良いというものではなく、家庭や産業自体が工夫、努力しなくては改善できない。比喩的に言うと、家庭で使用する電球を10個から7個にすれば日常生活にそれほど不自由することなく節電できる。企業やオフィスビルなどについても同様で、節電を図ればコスト削減にもなり、企業利益にもプラスとなる。レジ袋や必要以上の過剰な食物などを少なくして行けば生産に要するエネルギーの節約となる。また日本が環境技術先進国と言うのであれば、自然エネルギーの組織的な開発、活用や節エネ技術の更なる開発などで温室効果ガスの削減にそれぞれの立場から努力、貢献することが出来るのではないだろうか。またそのような努力から、地球環境にもプラスとなる生活スタイルやビジネスチャンスが生まれることが期待される。
しかし、政府や産業レベルでの対応は不可欠であろう。経済成長についても、温室効果ガスの減少を目標とし、再生可能エネルギーに重点を当てた成長モデルを構築する事が望まれる。原子力発電については、段階的に廃止することを明確にすると共に、再稼働に関しては、施設の安全性を確保する一方、各種の膨大な原子力廃棄物の最終的な処理方法を確立することがまず必要であろう。
 その上でリーダーシップが期待されるのは、環境問題に関心が強い欧州諸国であるが、温暖化ガス排出量が世界の1位、2位を占める中国と米国の積極的な姿勢と取り組みが不可欠である。特に2期目を目指すトランプ米大統領が、地球環境問題について具体的な取り組み姿勢を示すべきと言えよう。
5、途上国開発援助の在り方の抜本的見直しの必要性
また途上国援助においても、従来型の重厚長大なインフラ開発・整備ではなく、再生可能エネルギーを使用するなど、温室効果ガスの排出が少ない経済社会の構築を目標とする開発モデルや政府開発援助(ODA)モデルとして行くことが望まれる。
国連自体も、経済社会理事会を中心として、アフリカ諸国の安定を含め必ずしも成功とは言えない「開発の10年」の見直しなど、途上国援助の在り方を抜本的に見直すと共の、世界食糧計画や難民高等弁務官など各種の専門機関を通じて相対的に潤沢に行われて来た人道援助や食糧援助についても、人口抑制の側面を含め抜本的、総合的に再検討する必要がありそうだ。そもそも援助する側もこれまでの高成長の維持は困難であり、経済的体力が低下しているので、これまでのような援助を継続して行くことは困難であろう。それに加え、温暖化問題への対応が必要となるので、国際的な調整が必要になっている。
各国ごとの援助姿勢についても、現在中国が、アジアインフラ投資銀行(AIIB)が設立され、中国主導の「一帯一路」政策が推進される体制が整った。それが途上国における従来型の長大重工型、大量のエネルギー消費型のインフラ建設に投資されていくとすると地球環境の悪化に繋がることになるので、温室効果ガスの減少につながる環境改善インフラへの投資促進となることが望ましい。「一帯一路」政策もその在り方が再検討される必要があろう。中国自体も、これまでのような高成長、高エネルギー消費の経済成長を継続すれば、いずれ住めない大陸となる恐れもある。(2014.3.31./15.4.3.改定/19. 6.12.再改定)(All Rights Reserved.)

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地球温暖化ー融ける氷海、氷河と荒れる気候変動は止められるか <その1 再掲>

2021-06-25 | Weblog

地球温暖化ー融ける氷海、氷河と荒れる気候変動は止められるか <その1 再掲>
 2015年3月14日から18日まで、第3回国連防災世界会議が仙台で開催された。東北大地震・大津波から5年目を迎えるこの時期に、大震災の経験と教訓をこの地から世界へ伝え、対応を考えることは大変意義があったと言えよう。他方、折しも南太平洋のバヌアツを大型サイクロン「パム」が襲い大きな被害を出していたが、根本的な原因の一つである荒れる気候変動、温暖化への対応については、途上国側は先進工業国の責任を強調し、国際的な対応を主張する先進工業国と対立し、抜本的な対応については平行線のままで終わった。しかしその間にも海水温は上がり、海流は変化し、地球の気候は悪化している。地殻変動は止められず、被害を防ぐしかないが、気候の劣化については世界が協力すれば止められる。気候の劣化に大きく影響する海や海流の温度や流れは、温度差に敏感な漁業資源にも影響する。何時までも平行線の議論をしている時ではなく、世界が具体的に行動する時期ではないのだろうか。世界のリーダーがこの問題に真剣に向き合うべき時のようだ。
 国連の「気象変動に関する政府間パネル(IPCC)」の第2作業部会は、横浜で地球温暖化の影響を検討し、2014年3月31日、報告書を取りまとめた。その中で「全ての大陸と海洋で、温暖化の重要な影響が観測されている」との認識の下で、“北極海の海氷や世界各地域における珊瑚礁は後戻り困難な影響を既に受けている”などとして生態系や人間社会への影響を指摘している。そして温暖化が進むリスクとして、世界的な気温の上昇、干ばつなどによる食糧生産の減少、大都市部での洪水、異常気象によるインフラ機能の停止などを盛り込んでいる。当コラムも、北極海の海氷の融解と縮小ブログでもこのような状況を2008年頃から指摘して来ているが、それが国際的に理解され始めたと言えよう。
日本の地球温暖化への取り組みについては、環境省は、日本の温室効果ガスの削減目標を2020年度までに2005年度比で3.8%減とする方針である。温室効果ガスの削減目標については、民主党政権が2020年度までに“1990年度比で25%削減”との目標を提示し、国連総会でも表明している。環境省の上記の目標は、基準年を2005年としているが、1990年度比で換算すると逆に約3%増となるとされており、後退感が否めない。政府当局は、‘原子力発電が再稼働されれば高い目標に修正する’としている趣であるが、果たして原子力発電頼みで良いのであろうか。
1、意見が分かれる地球温暖化の原因
温暖化の速度、原因などについては議論が分かれている。スイスを本拠とする民間団体「世界自然保護基金」(WWF)は、2013年から40年までに、北極圏の氷は夏期には全て消えるとの報告を出している。国連の「気候変動に関する政府間パネル」が出した07年の第4次評価報告書でも、“ヒマラヤの氷河は2035年までに解けてなくなる可能性が強い”と指摘している。同グループはゴア米元副大統領と共にノーベル賞を受賞したが、氷河学者からは300mもの厚さの氷河がそんなに早くは融けないとの疑問が呈され、同グループがそれを認めるなど、信憑性が疑われている。地球がミニ氷河期に入っているとの説もある。
 
 2、荒れる世界の気候
どの説を取るかは別として、着実に進んでいる事実がある。北極海の氷原が夏期に融けて縮小していることだ。衛星写真でも、08年においては6月末頃までは陸地まで氷海で覆われていたが、8月20日頃前後から氷海は陸地を離れ、海路が開け、砕氷船を使用すれば年間5ヶ月内外は航行可能となる。その期間は毎年伸びている。8月中旬には2-3週間程度砕氷船無しでも航行可能のようだ。6、7年前には、氷海が最も小さくなる8月下旬でも氷海は陸まで張り出ていた。また南極大陸などでは氷原がとけ、南極海に流れ出し海洋の水位を上げている。
これは今起きている現実である。短期的には夏の一定期間航行が可能になり、商業航路や観光、北極圏開発のビジネスチャンスが広がる。
 他方それは温暖化への警告でもある。北極の氷海縮小は、気流や海流による冷却効果を失わせ、地球温暖化を早め、海流や気流が激変し気候変動を激化させる恐れがある。氷海が融ければ白熊や微生物などの希少生物も死滅して行く。取り戻すことは出来ない。北極圏の環境悪化は、米、露など沿岸5か国のみの問題では無く、この地球の運命にも影響を与えている。
 現在、日本はもとより世界各地で気流や海流の動きや温度がこれまでのパターンでは予測できない荒々しい動きを示しており、局地的な豪雨や突風・竜巻、日照りや干ばつ、豪雪や吹雪などにより従来の想定を越えた被害を出している。それが世界各地で今起こっている。地球環境は、近年経験したことがない局面に入っていると言えよう。
 
 3、国際的な保護を必要とする北極圏と南極大陸
同時に忘れてはならないのは、反対側の南極大陸でも氷河、氷原が急速に融けているという事実だ。またヒマラヤやアルプス、キリマンジェロ等の氷河も融け、後退しているので、これらの相乗効果を考慮しなくてはならない。
 北極圏も南極同様、人類の共通の資産と位置付け、大陸棚の領有権や「線引き」の凍結や北極圏の一定の範囲を世界遺産に指定するなど、国際的な保護が必要だ。
 
4、必要とされる政府レベルの対応と生活スタイルの転換  <その2 に掲載>
 
5、途上国開発援助の在り方の抜本的見直しの必要性    <その2 に掲載>
(2014.3.31./15.4.3.改定/19. 6.12.再改定)(All Rights Reserved.)

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首都東京、生かされていない東日本大震災の教訓!

2021-06-25 | Weblog

首都東京、生かされていない東日本大震災の教訓!

 2021年3月11日、東日本大地震・津波災害から10年を迎えた。東京電力福島原発事故への対応を含め、政府関連予算は2020年度までの10年間で約38兆円にのぼり、また日本各地からの応援や寄付等を受け、地元の人々により懸命に復興活動がなされた結果、地区差があるものの、復興はかなりの進展を見せている。地元の方々や支援活動をされた各方面の方々のご苦労に心から感謝し、称えたい。またこの災害により、命を失った方15,899人、行方不明者2,528人となっており、心からのご冥福と行方不明者が1日も早く家族の元に返ることをお祈りしたい。

 復興は進んでいるものの、10年経っても42,685人が避難者にのぼり、当時の巨大地震と津波、そして福島原発の炉心メルトダウンなどの状況を振り返ると、改めてその被害の甚大さを痛感する。

 政府の関連行事やメデイアの報道は、どうしても追悼と被災地の復興活動の継続に焦点が当てられる。しかし大震災は、東日本だけでなく、関東でも首都直下地震や東海、近畿、四国地方では南海トラフ地震による被害が今後30年前後に発生する可能性が高いと伝えられている。日本列島を巻き込む大災害は、その他火山の噴火や異常気象による大洪水などの恐れがあるので、東日本の復興継続と共に、その他の地域、特に諸機能が集中し、人口密度の高い首都東京の震災への備えがこれで良いのかに注目しなくてはならない。

 1、教訓が未だ活かされていない首都東京

 東京を中心とする首都圏については、東日本大地震の教訓を受けて、道路・歩道の渋滞、帰宅難民などへの対策として、一時避難所や備蓄、耐震補強のほか、緊急対応のための道路規制、ハザード・マップの作成など、一定の対応が行われている。しかしこれらの措置は、多くの努力を要しているものの、東日本大地震規模の巨大災害にはほとんど無力とも予想される。

 東京には、1,300万の人々が生活し、近隣から数百万の人々が東京に往来している。また日本経済の中枢部門をはじめ、学校、文化・スポーツなど多くの民間機能が集中している。更に、国会、裁判所の中枢機能に加え、緊急時には東京都などと共にその対応に当たるべき全ての中央官庁が集中している。また国民統合の象徴として皇居があり、その安全を確保しなくてはならない。

 大災害が発生した際には、行政はこれら全ての安全を確保するために膨大な救援、救出活動を集中的、同時並行的にしなくてはならない。シュミレーションなどするまでもなく、とても手が回らないと予想される。何かを守り、何かを座視するしかない。相手は、「経験したことがない大災害」であるので、旧来の常識や既成概念では対応し切れないことを、福島原発事故を含む東日本大災害から学ぶべきであろう。

 政府による『東京一極集中解消』2020年目標は断念された。ある意味で東日本大地震の教訓の風化の象徴とも言えないだろうか。

 2、政府委員会が大規模災害に警鐘

 2014年、政府の地震調査委員会は首都直下地震が「今後30年で70%」との予測を公表している。その後この予測は繰り返し述べられる毎に発生確率は高くなっており、首都直下地震はもはや過去のものや遠い将来のものではなく、今生活している国民の生涯において起こりうる現実となっていることを示している。

 首都圏を中心としたマグニチュード7相当以上の過去の地震は、1703年の「元禄関東地震」(M8.28)と1923年の「関東大震災(大正関東地震)」(M7.9)を挟んで次のように発生している。

1703年12月   「元禄関東地震」(M8.28)

1855年11月 安政江戸地震      (M6.9)

1894年 6月 明治東京地震       (M7.0)

同年10月   東京湾付近の地震   (M6.7)

1895年 1 月茨城県南部の地震   (M7.2)

1921年12月茨城県南部の地震   (M7.0)

1922年 4月 浦賀水道付近の地震(M6.8)

1923年9月  「関東大震災」  (M7.9)

  関東地方は、東西に太平洋プレートとユーラシア・プレート、これを挟んで南北に北米大陸プレートとフィリピン海プレートがあり、元禄関東地震と関東大震災はフィリピン海プレートの境目の相模トラフで発生した大地震とされている。首都圏に関係する地震、津波の誘因としては、この他に東日本大震災に関係する日本海溝や東海地方から四国沖に伸びる南海トラフなどがある。

 関東、東海地方については火山爆発も注意を要する。

 3、政府組織・制度においてシンボリックな抜本的措置が必要

 民間組織・団体や東京都及び市区町村において、それぞれ対策を検討し備えることは不可欠であろう。それは誰のためでも無い、自分達や家族、関係者の安全、安寧のためだ。

 しかし東日本大震災レベルの直下地震等が首都圏で発生し、大型津波が発生すると、1995年1月の阪神・淡路地震を上回る被害、混乱が起こるものと予想されている。2011年3月の東日本大地震の際にも首都圏で震度6を超える揺れを経験したが、道路は車道、歩道共に渋滞し、公共交通は止まり、電話・携帯による通信は繋がらず、多数の帰宅難民が発生し、その状況は翌朝まで続いた。電気、ガス、水道などのライフラインが被害を受けていれば被害は更に拡大し、回復には更に時間を要することになる。

 最大の問題はライフラインの確保であるが、大災害に対応し、司令塔となるべき中央官庁の機能をどの程度確保出来るかである。物理的被害は予想もつかないが、災害が深夜や早朝、祝祭日に発生した場合、必要な人的資源の確保は困難で時間を要することになっても仕方が無いであろう。‘経験したことがない大災害’に遭遇し、‘経験したことがない混乱等’が起こったとしても、自然のなせること、誰も責めることは出来ない。それぞれの立場で被害に備え、耐え、命を守る努力が求められるであろう。それも相当期間に及ぶ可能性がある。

 (1)そうなると危険の分散を図ることが最も効果的となる。政府はこれまで幾度となく、東京一極集中を避けるため、中央省庁や大学の地方移転を試みてきたが、部分的な専門部局の分散に留まり、一極集中解消にはほど遠い。

 米国の他、ブラジルや豪州などのように、政治・行政機能を密集地域から切り離し、新たに政治・行政都市を造ることも考えられるが、日本にはそれにふさわしい安全な地域を確保することは難しそうだ。しかし1つの有効な選択肢ではある。

 もう1つの選択肢としては、日本独特の国民統合の象徴機能である皇居を宮内庁と共に京都など近畿地方に戻すことであろうか。天皇の象徴機能については憲法に明記され定着しており、皇居を移転しても機能自体に何ら影響しない一方、ご公務については憲法上国会の召集など10項目に限定されているので、移転は相対的に容易と見られる。更に、京都等に戻ることは歴史的に理解されやすく、また地方に新たな息吹をもたらし、地方活性化にも繋がる可能性がある。

 憲法上公務とされる10の業務については、現在では交通・運輸、通信が飛躍的に便利になっており、国会召集時など限られた折りに東京に行幸されることは可能であろう。宿泊が必要な場合には、年数回しか使用されていない迎賓館(赤坂離宮)に所要の宿泊施設をご用意するなど、対応は可能のようだ。また外国使節(各国大使等)の接受等については、京都の御所にて行うこととすれば、京都や近畿地方の歴史や文化等を外国使節に紹介する機会ともなろう。

 また考えたくはないが、もし将来首都圏がミサイル等で攻撃されると、政治・行政機能と象徴機能が同時に被害を受ける恐れがあるので、これを分離しておくことが安全保障上も意味があろう。

 無論どの選択肢にしても、現状を変更することには困難があろう。しかし、政府地震調査委員会が東京直下地震など経験したことがない大災害が現実に起こりうると考えているのであれば、これまでのような対応では不十分と見られるので、これまで実施されたこともないような措置を本気で検討、実施する必要があるのではないだろうか。

 (2)江戸城趾の活用方法については、城趾内の「江戸の自然」の保護を図りつつ、可能な範囲で復元を行い、歴史観光施設として整備し、また一部を国民の憩いの場として開放すると共に、大災害時や緊急時の避難場所となるよう整備するなどが考えられよう。特に江戸城趾には四方に門があるので、災害時、緊急時には門を開放し、四方から城趾内に避難が出来る。また緊急車両が災害時、緊急時に通行できるよう、城趾内の通路等を整備しておけば、渋滞が予想される一般道を通らずに迅速に移動できるなど、災害時、緊急時への活用も期待できる。

(2021.3.31. All Rights Reserved.)

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地球環境保護、日本の真価が問われる

2021-06-25 | Weblog

地球環境保護、日本の真価が問われる

‎ 10月26日開催された臨時国会において、菅義偉首相は就任後初めての所信表明を行い、「温室効果ガスの排出量を2050年までに全体としてゼロにする」との目標を表明した。 そして「グリーン社会の実現」を成長戦略の柱と位置付けた。‎

 「温室効果ガス排出量の2050年までの実質ゼロ」目標は、前政権当時の「50年までに80%削減」を一歩進めたもので、管政権の温室効果ガス削減の促進を期待したい。

 しかし、その目標は30年も先のものである上、EUな主要各国が2030年までの目標を設定しており、これに比して削減速度が遅い。

 1、温室効果ガス実質ゼロ目標に向け2030年、2040年の中間目標設定が必要

(1)不可欠な温室効果ガス削減と激甚化する気候変動への対応

‎ 地球温暖化により、北極圏の氷海や南極を覆う氷原・氷河、ヒマラヤやアルプスなどの氷河が融け、海温と共に大気温が上がり、大量の水蒸気を空中に巻き上げ、地球温暖化が進み、世界各地で今までにはないような荒々しい気候変動に見舞われている。 更にこのまま温暖化が進み臨界点に達すれば、止めることの出来ない極限的な激しい気候に見舞われる恐れがある。 これは理論でも学説でもなく、現実に体験している現実なのである。‎

 それを止めるためには、産業革命以来増え続けている温室効果ガスを削減し、地球温暖化を止めなくてはならない。

‎ 30年先は長すぎる。 加速努力が必要のようだ。 地球が壊れてからでは遅い。‎

 (2)具体的な中間目標設定とそれぞれの指針が不可欠

‎ 温暖化効果ガスについては、世界の主要国が2030年までの削減目標を設定している。 EUは40%削減(1990年比)、インド33~35%削減(GDP当たりのCo2排出、2005年比)、中国60~65%削減(同、2005年比)と具体的な目標を設定している。 特にEUは1990年比での削減目標であり、今日に比べて炭酸ガスなどの排出量の少ない時代との比較であり、問題意識の高さを示している。 中国についても目標達成を期待したい。‎

‎ これに対し日本は、これまで2030年までの削減目標を26%としており、その上2013年比と問題が深刻化し始めてからの基準で、基準年自体を甘くしており、2005年比では25.4%削減となる。 この目標も断念されている。 因みに、米国はオバマ政権時代に2025年までに26~28%削減(2005年比)として行政府の目標を設定しており、バイデン候補が新大統領となり民主党政権となれば、このラインで推進されるであろう。 またロシアは同年までに70~75%抑制(25~30%削減、1990年比)としている。‎

 日本は2050年までの実質ゼロが表明され、その実現に期待したいが、2030年、2040年の中間目標が具体的に示されると共に、どの分野でどのように進めるかの指針が示されることが期待される。

 2、福島原発解体処理による放射能汚染水の海洋放流は望ましくない

‎ 2011年3月に発生した東北大地震の津波により炉心融解を含む爆発事故を起こした福島原発の解体処理が長期化する中、放射能汚染水が貯水槽に大量に貯蔵され、限界を迎えていることから、その放出が検討されている。 放射能はほぼ取り除かれ、濃度の薄いトリウム残っているものの放射線レベルは低いので、海洋への放水が検討されている。 放射能は「飲んでも健康に影響はない」とされているが、福島の漁業関係者は風評被害などを懸念し、海洋投棄反対を表明している。‎

‎ これに対し行政当局は、賠償等を検討するなどとしているが、この問題は賠償や風評被害だけの問題ではない。 国際的信頼、国家としての信用の問題となろう。‎

‎ 日本は、国際環境グループに毎年のように「化石賞」を受けている。 発電等に石炭、石油などの化石燃料が使われているからだ。 失礼な話ではあるが、不名誉なことだ。 韓国が、福島産の野菜や魚類を放射能汚染の恐れありとの風評を流し続けたが、今回は国全体に関わることになる。‎

 もしこの放射線汚染水が処理をされ「飲んでも大丈夫」なレベルとなっているのであれば、日本国内で処理できるし、そうすべきであろう。

‎ 確かに海洋は広い。 だから海洋投棄も良いということにはならない。 領海内でも海は続いており外洋に広がる。 現在、海洋のプラステイックごみの問題が深刻化している。 世界中で投棄されてきたプラステイックごみは、毎年増えると共に、風化し微粒子化し世界の海洋を漂い、海底に蓄積し続けており、それを魚類が食べ、人間の口にも入るようになる。 十分希釈されたとしても放射線汚染水が放流され、これが世界で常態化する恐れもあり、その悪影響は計り知れない。‎

‎ 放射線汚染水の処分は、日本国内で行うことを前提として真剣に検討されるべきであろう。 例えば、国立公園内の人里離れた場所や硫黄島などの離島に貯水池を作り、適正に管理するなどを検討してはどうだろうか。 それが国家としての責任ではなかろうか。 (2020. 11. 4. )‎

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国際オリンピック委(IOC)に望まれる中止の決断

2021-06-25 | Weblog

 国際オリンピック委(IOC)に望まれる中止の決断

 6月1日より6月20日まで、日本においてコロナウイルス拡大防止のため、東京など9道府県に一部対象地域を拡大して緊急事態宣言が延長されることになった。2021年1月より第3波の感染拡大が起こり、社会経済活動の自粛、抑制を要請する緊急事態宣言が実施されたが、顕著な減少はみられず、宣言は短期間解除されたものの、半年に及ぶ緊急事態宣言となる。

 緊急事態宣言が予定通り6月20日で解除されても、東京オリンピック開催まで約1か月しか残されていない。新規感染の顕著な減少が期待される。しかし大型商業施設や映画館、スポーツ施設等については制限が緩和されたこと、及び、イギリス変異種に次いで新たにインド変異種への転換、拡大が見られることを考慮すると、ワクチン接種が進んではいるものの、1日100万回の接種が実現したとしても、8月には新たなピークが来るとの予想もある。

 1、国際オリンピック委員会(IOC)が行える開催中止の決断

 世界に目を転じると、米、英などワクチン接種が進み制限解除の動きが見られるが、世界全体として未だに感染拡大は止まっていない。

 特に3月、4月頃よりインドにおける爆発的な感染拡大によりインド変異種が国外に飛び火し、ネパールやマレイシアなどで感染が拡大し、5月にロックダウンが実施、決定されている。更にベトナムでは、イギリス変異種とインド変異種が結合し、感染力が更に強いウイルスに変異しており、空気感染の恐れもあると伝えられている。

 武漢発の新型コロナウイルスで注意を要するのは、全世界の諸国・地域に感染が拡大することに加え、感染力や重症化率を強めながら次々と変異していることだ。今後、一定地域、諸国で沈静化しても、また世界のどこから新たな変異種が広がるか分からない。グローバリゼーションは、世界の運輸・交通や物流、人流などに大きな恩恵をもたらしたが、新型コロナウイルスというパンデミックの出現により、今後国境を越えた人の往来には特別の注意を要することになった。

 日本だけでなく、世界がこのような状況の時に、世界200か国・地域からオリンピック選手約1.5万人、及び競技関係者、IOC関係者及び報道関係者7万人前後が7月23日の開会式に向けて訪日する。未だ具体的な参加国・地域数、参加者数が公表されておらず、また入国管理措置、国内での行動制限や監視体制などの「安全、安心な開催」に向けての全容は明らかにされていないが、どのような措置をとっても漏れが出る可能性がある。また措置を厳しくすればするほど、参加選手や来日者の不満、批判もつのるだろう。

 このような状態でオリンピックを開催することについては、各国で警鐘が鳴らされ初めている。

 オリンピックの実施や中止についての決定権決はIOCにある。開催都市である東京都も、その下部組織ではあるが政府の影響が大きい組織委員会も全体を支援する政府も、中止を求めれば違約金等の問題があるので言い出しにくい。

 現在日本を含め世界が直面しているのは、世界70億人の健康と命にかかわるパンデミックという例外的な事態である。国際オリンピック委員会(IOC)としても、例外的な対応として、違約金等を求めることなく中止を決定しても良いのではなかろうか。またIOC側も、米国のテレビ局等との関係で違約金や補償金の問題が生ずるだろうが、互に求めないことで調整すべきであろう。

 IOCは、開催国に実施を求める以上、各国の選手、競技関係者だけではなく、開催国日本を含め世界の全ての人々の健康と命を守る義務がある。

 

 2、日本の世論を理解していないのだろうか、IOC

 東京オリンピック7月開催についての世論調査では、2021年1月以来、一貫して70%以上が「中止、又は延期」であり、6月の時点でもその状態に変化はない。3年後にはパリ・オリンピックがあるので、再延期の可能性はないとすると、

70%以上が本年7月の開催に反対していることになる。その背景には、若い世代についても、2020年4月に大学等に進学してもキャンパス生活を送ることも出来ず、アルバイト先もなく、また解雇や雇い止めなども一般化し、学校を卒業しても就職機会は限られており、将来不安や孤独感が募っている状況がある。産業面でも、飲食業から娯楽・イベント、観光などが大打撃を受けており、1日も早い感染収束を願っている。誰しもオリンピック・パラリンピックが開催できれば良いと思っているが、今はそれどころではなく、行動制限の解除であり、日常の生活や日常の健康を取り戻したいという意識が反映されていると言えよう。世論の70%以上が1月以来一貫してオリンピック7月開催に不安を抱いている事実を理解して欲しいものだ。

 各国選手の事前合宿を受け入れ予定であった地方自治体も、ワクチン接種促進のための業務に忙殺され、また地元住民の懸念などを配慮して、既に105の自治体が辞退(6月1日現在)している。

 地方自治体が各国選手の事前合宿受け入れを辞退している理由が一つある。それは受け入れても、宿舎と競技場の間以外は行動が制限され、選手にストレスを与えるおそれがある上、地方を見たり食事を楽しんで頂くことも出来ないからだ。受け入れても、地方との交流も「お・も・て・な・し」も出来ない。

 この状況は、オリンピック本番にも当てはまる。海外からの選手他来訪者は、マスコミを含め、原則として宿舎と競技場の間のみに行動制限され、交通手段も専用バス等に限定され、市中には出られない。「お・も・て・な・し」も宿舎内だけに限定される。オリンピック参加者と開催国との交流がなくなれば、それだけオリンピックの意義は薄れてしまう。

 その上心配は尽きない。来日する選手、競技関係者はワクチンを受けてくるとしているが、マスコミ関係者を含め、一部は受けていないであろう。入国に際し厳格な検査を受け、またその後も頻繁に検査を受けることになろうが、検査が最大のおもてなしになってしまいそうだ。

 その上、行動制限を完全に実施することは難しい。世界の200近い国や地域から7万~8万人内外の来訪者があるので、言葉や慣習、価値観等の差もあり、ルールブックに従って行動制限することは難しいのではないか。そうなると相互に感染が発生し、コロナウイルス・パンデミックの大実験場となる恐れがある。それが杞憂に終われば良いが、そうなった場合に誰が責任を取るのだろうか。(2012.6.2.)

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