内外政策評論 TheOpinion on Global & Domestic Issues

このブログは、広い視野から内外諸問題を分析し、提言を試みます。
Policy Essayist

 参議院選挙の意義 ―見直されるべき参議院のあり方-

2007-07-29 | Weblog
   参議院選挙の意義
        ―見直されるべき参議院のあり方-
 7月29日、参議院議員選挙において有権者の各政党、政策への審判が下される。
今回の参院選は、半数改選ではあるが、6年間の任期があり、野党が実質的に過半数を確保する場合には、その間に政権交代の可能性が強くなり、日本の議会制民主主義の今後にとって重要な選挙である。逆に、今回の参院選で、与党が、郵政造反組などを取り込むことを含め、過半数を維持する場合は更に長期の与党政権を温存することになる。有権者、国民としても、今回の参院選はそのような戦後政治の節目ともなり得るような大切な選挙であることを認識し、政策選択、政党選択を行う必要がある。
結果はどうあれ、投票の結果は尊重されなくてはならない。ところが今回の参院選の公示前から、与党内で、参院選挙は半数改選であり、いわば「中間評価」であるので、過半数割れでも総理は辞任する必要はないとの発言がなされた。選挙であるので、結果が出るまではそのような発言は尚早だ。
しかし、このような発言がなされると、参議院の意義が疑問となる。参議院は、総選挙が無く、常に3年毎に半数が改選されることになるので、「中間評価」でしかない、だから与党が敗北し、参議院が過半数割れとなっても、責任を取る必要がないということであれば、参議院の議員数を100から150議席程度に削減し、道州制を念頭に置いて、中選挙区制(各選挙区2~3名程度)と選挙区に縛られない比例代表若干名とするなど、衆議院とは異なる選挙制度にしてはどうであろうか。現在は、選挙制度を見る限り、参議院は衆議院のクローンでしかない。本来、参院選も民意を問う国政選挙であり、総体として民意が公正に反映されるよう改善すべきであろう。
参議院については、一票の格差が5倍以上の選挙区が今なお存在しており、最高裁では、一応合憲とされているものの、改善意見や反対意見が複数付されている。国民の間でも、長期に亘る大幅な一票の格差に対する不公平感は根強い。ある地域の有権者の一票の価値が、2分の1程度でも良い、ましてや5分の1程度でも良いと考えるのは、余りにも鈍感であり、不公正ではないだろうか。選挙区により有権者が、衆院選挙では最大2票、参院選では最大5票の投票権を持っているというのに等しい。そのような不公正さが、参議院の評価と国民の代表としての正当性を大いに低めており、また、都市部の投票率が低いのは、一票の価値への幻滅感、無力感からではなかろうか。地方都市を含め、大都市の人口の多くは地方出身者であり、都市部の有権者は、地方の発展にも大きな関心と期待を持っている。
公正な「民主主義」と言うのであれば、また、国会が国民を代表すると言うのであれば、衆・参両院とも、1票の格差を出来るだけ1に近づけるよう、少なくても1.5倍以内に収める努力が不可欠であろう。不公正な選挙から公正な国会は望みようがない。
参院選も国政選挙であり、有権者の選択、民意は反映されなくてはならない。今回の参院選の隠れた争点は「参議院の意義」であったとも言えよう。
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あなたは許す、許さない? 年金問題

2007-07-22 | Weblog
 ―参議院選挙の争点と選択肢-
 7月29日の参議院議員選挙は、終盤の論戦に移っている。
今回の参院選は、半数改選ではあるが、6年間の任期があり、野党が実質的に過半数を確保する場合には、その間に政権交代の可能性が強くなり、日本の議会制民主主義の今後にとって重要な選挙である。逆に、今回の参院選で、与党が、郵政造反組などを取り込むことを含め、過半数を維持する場合は更に長期の与党政権を温存することになる。有権者、国民としても、今回の参院選はそのような戦後政治の節目ともなり得るような大切な選挙であることを認識し、政策選択、政党選択を行う必要がある。
公示前後の世論調査の政党支持では、調査主体により若干の差はあるものの、約5割を自民と民主が分け合う形で、民主党が若干優勢なって来ていると伝えられているが、無党派層が4割前後となっており、正に無党派層がキャステイング・ボートを握っていると言える。
 1割強を占める2大政党以外の諸党については、共産主義など、特定のイデオロギーを信奉し、或いは、特定の宗教組織を支持団体としているなど、広く国民政党として政権の中核を担うような支持は得られないと考えられるので、自民、民主のいずれが政権の中核を担うとしても、安定政権とするためには、単独での過半数を確保し、または過半数に近づけられるかが鍵となろう。今回の選挙は、無党派層を含め、有権者が、2大政党を軸とする政権交代を選ぶか否かの選挙でもあり、有権者の選択は大きな意味合いを持っている。
1.年金失政― 長期政権政党の温存 vs. 政権交代による緊張感ある行政か
 公的年金は、国民、企業の拠出した保険料で成り立っており、それは国民の財産権でもあり、国民の将来不安の原因となっており、当面の最大の関心事であり、多くを語る必要はなさそうだ。
 まず取り組まなくてはならないのは、記録漏れや記録ミスの潜在的対象者へ記録の回復、訂正などの救済措置であろう。しかし、安易な救済策を講じれば、善良な納付者へのモラルハザード(心理的阻害要因)になる上、増税や料率の引き上げとして国民の新たな負担になる可能性があり、拙速を排し、十分な検討が必要だ。
いずれにしても、あれだけの半端でない記録漏れやミスであるので、職員レベルでも誰かが気付いていなくてはならないし、管理職レベルに何らかの形で報告されていた可能性が強い。それなのに何故今日まで放置されていたのか、また、そもそも何故記録漏れ等に気付いた時点で一つ一つ調査し、訂正して来なかったのかなど、十分に検証し、今後の対応を検討する必要があるのであろう。それをうやむやにして、新たな組織を発足させても信頼は回復出来ない恐れがあり、公務員制度全体の信頼性にも係わって来る。
 このような状況で社保庁を解体し、新組織を発足させる法案が強行採択された。新組織の発足は2011年となるが、長期に信頼できる年金制度を再構築する上でも、戦後の年金制度の下で、何故このような基礎的且つ膨大なミスを長期に亘り放置して来たかなど、制度上の不備や管理・運営上の問題につき十分に検証する必要があろう。厚生労働関係では、社保庁以外にも、雇用能力促進事業団が全国に多くの勤労者保養・研修施設等を建設したが、経営難等から投売り状態にするなど、雇用保険料(旧失業保険)を浪費している問題がある。雇用保険の一定の資金が「事業団」に流れる仕組みになっているが、同「事業団」は1999年10月に解散し、行政独立法人雇用・能力開発機構が新設されている。
 更に、記録漏れとなっている5千万件以上の保険料納付総額は大体いくらなのか、また、その金額はどのように取り扱われたのかが未だに明らかにされていない。収支記録は合致していなくてはならない。少なくても毎年収支決算を行っていれば、記録漏れやミスは発見出来たはずであろう。
 総務省の下で「検証委員会」が原因などを検討しているが、人事院などもこれらの記録漏れやミスが発生した時点(オンライン化と基礎年金番号実施時)に遡り、原因をきちんと調査し、対応を検討すべきなのであろう。現行の公務員制度にはいわば想定されていない事態であるが、現実に起きている大規模な不適正業務であるので、十分な検討と対応を必要としている。公務員制度を責任ある制度とする上でも検討が必要だ。
政府答弁書によっても、「1964年9月以前から年金記録ミスがあった」との趣旨が明らかにされている。職員の意識や人事制度と共に、労働組合のオンライン化への消極姿勢などが背景として指摘されており、それぞれ反省を要しようが、年金積立金の適正な運用・管理を含め、制度全体の長期に亘る管理・監督責任は免れられないところだ。
救済措置については、民間機関の協力を得たとしても、事務処理だけで数百億から千億円内外の費用が必要との報道もある。その上、記録漏れの納付保険料が年金積立金に組み入れられていなかった場合や救済範囲によっては、国民への追加的な負担となる可能性がある。
 政府や与党の税制調査会においても、増税はいわば規定の路線で、参議院選挙への影響を考え、選挙後に検討を先送りしているだけだと見られている。
 政権交代により、行政に緊張感と責任感や透明性を取り戻す必要も時にはあるのではないか。それは、今回の参院選で有権者が明確に選択しなくてはならない。
 なお、公的年金は、すべての国民の将来の生活に関係するものである上、基本的には保険料納付を原則とし、納付者の財産権であるので、与野党もそれぞれ提案している年金カードか手帳は別として、次の2点を提案したい。
(1) 毎年の保険料納付件数・納付金額と年金支給人数・支給額合計、及び、年金積立金の増減・収支を含む、分かり易い「年金収支報告」の公表、公告。
また、年金積立金の運用状況については、上記を含め、少なくても年2回公表。
(2) 「年金収支報告」の公認会計士団(3年毎程度に複数名を任命)、またはその他第三者機関による監査の実施。
2.行政改革は終わっていない ー既得権益擁護・抵抗勢力 vs. 改革路線の継続か
 公務員の天下り規制等に関する公務員改革関連法案は、国会を通過し、公務員の再就職を集中的に斡旋等する「官民人材交流センター」を新設することになり、与党側はそれを成果としている。確かに、各省庁別の斡旋(事実上の派遣)を禁止すること自体は前進と言える。
 しかし、官側の強い抵抗への配慮から、参院選を控え、参院与党は「実践可能なもの」とする必要があるとし、各省庁別の斡旋慣行から、中央管理とすることにしたものであり、法律で公認される「国家管理の公務員の再就職斡旋機関」になるのではないかなどの疑問が各方面から出されている。現実問題として、形式的に「人材交流センター」は通すが、実態は変わらない可能性が強い上、法律で公認されることになる。
 「天下り」が談合慣行や公費の浪費の温床となっていることが明るみに出ている現在、税その他の公費の効率的使用・節約という国民の利益を優先するのか、公務員の既得権益を温存する形で「実践可能性」や「現実論」を優先し、妥協するかの選択となる。
 行政改革は、天下り問題に限らない。年金改革もその一つであり、また、「公務員」の削減に加え、天下りの受け皿となっている独立行政法人その他の政府関係組織や補助金・委託金の整理は、引き続き今後の重要な課題だ。少子高齢化社会に備え、簡素で効率的な政府を着実に実施して行くことが不可欠である。そうでなければ、政府組織は更に肥大化し、国民の負担は増加して行く可能性が強い。それも国民の選択次第である。
 現在「格差」や労働貧困(ワーキング・プアー)などの問題が指摘されている。バブル経済崩壊後の長い資産デフレを脱却し、都市銀行はほぼ不良債権処理を了し、堅調な輸出に支えられ、現在、輸出産業・製造業を中心に景気は回復しつつある。その間、産業界は厳しい再編・改革努力を強いられており、正規社員の圧縮、派遣社員・一時雇いへの振り替え、給与水準の抑制などを行って来ている。その結果、一部産業や地域は回復し、経済的「セレブ」が台頭して来ている一方、しわ寄せが労働市場や社会的弱者に向かっていることも事実である。厳しい「改革」や産業再編が行われれば、効果もあるが痛みも大きいのが常である。従って、「改革」や産業再編に際しては、社会的弱者への救済措置を可能な限り実施することが望ましい。1997年7月よりのアジアの通貨危機でも経験済みだ。
 また、「景気回復」に伴う利益、恩恵の配分の問題がある。景気の先行きに慎重な経営側は、従業員への賃金や株主への利益配分が抑制され、遅れる傾向がある。政府支出についても、「景気に回復」に伴い、救済されて無い分野への公的資源の再配分が必要となる。公的資源の再配分については、国民の政治的選択によるところが大きい。
3.国会議員の「資質」―既得権益・特権擁護 vs. 国家・国民の利益優先か
同様に、議員事務所費に関する政治資金規制法の問題がある。5万円以上の支出に
ついて領収書を付し、「資金管理団体」のみに適用され、その他の関係事務所には適用しないのでは、誰が見ても「ざる法」だ。気の毒に現職大臣が一人自殺している問題である。その後任の赤城農水大臣が同様の問題に直面している。このような安易な妥協で済ませて良いのであろうか。
 確かに、議員として、選挙区や東京に、中核となる「資金管理団体」の他に、後援会や各種関係事務所がなくては継続的な活動は困難になる。その中には、事実上選挙期間中にのみ活動し、票の取り纏めなどを行っている事務所などもあるのであろう。しかし、政治資金という公的な活動を支える資金である以上、その収入の透明性と共に、支出の透明性がなければ適正な管理や規制なども出来ないであろう。所得税などについては、収支が厳密に精査され、違反があれば課徴金や脱税容疑などで厳しく罰せられる。そのような法律を審議、採択する立場にある国会が、自らの政治資金の管理は甘いというのでは国は治まらない。繰り返される政治と金の問題は、国民の政治不信や政党離れの大きな要因になっている。各種の「抵抗」を前にして、安易な妥協の積み重ねがシステム自体を劣化させて来ているのではないだろうか。個々の対応においては、一定の形は整えられ、抵抗も少なく、いわば「丸く」解決出来るし、「現実的な」解決とも言えよう。しかし、それだけでは問題を先送るだけであり、将来また問題が生じよう。「国家、国民の利益」という大義を忘れてはならない。
 このような不明瞭なことが続くのであれば、政治活動への公費補助を原則廃止する一方、違反者の一定期間の立候補資格停止や罰金の大幅な引き上げなど、罰則の強化を図るべきではないだろうか。
 この他、議員宿舎の問題がある。赤坂の新議員宿舎(3LDK、82㎡、月額約92,000円)の料金の問題と必要性の問題がある。日当たりの良い100戸内外は埋まっているが、同じ家賃で他の200戸も埋まるのであろうか。現在、衆院議員宿舎は、赤坂(300戸)、九段(125戸)、青山(40戸)と高輪(131戸)の合計596戸あり、旧赤坂宿舎(150戸)は売却予定の趣だ。それでも東京都出身や東京に自宅がある議員を除くと100戸以上余る計算になる。高輪その他の議員宿舎から赤坂に移った議員もいるようだが、議院宿舎の占有率も問題となろう。
 参議院についても、麹町、清水谷、神宮前に議員宿舎があり、その一つが建替えられる計画となっており、同様の問題がある。議員数は決まっているので、衆参両院が別々に議員宿舎を持っている必要も無いのかもしれない。少なくても、総議員数を上回る戸数は必要ないし、家賃も市場相当額の半額にするなど、国民負担を軽減する対応が望まれる。
 また、参議院については、一票の格差が5倍以上の選挙区が今なお存在しており、最高裁では、一応合憲とされているものの、改善意見や反対意見が複数付されている。国民の間でも、長期に亘る大幅な一票の格差に対する不公平感は根強い。ある地域の有権者の一票の価値が、2分の1程度でも良い、ましてや5分の1程度でも良いと考えるのは、余りにも鈍感であり、不公正ではないだろうか。選挙区により有権者が、衆院選挙では最大2票、参院選では最大5票の投票権を持っているというのに等しい。そのような不公正さが、参議院の評価と国民の代表としての正当性を大いに低めており、また、都市部の投票率が低いのは、一票の価値への幻滅感、無力感からではなかろうか。地方都市を含め、大都市の人口の多くは地方出身者であり、都市部の有権者は、地方の発展にも大きな関心と期待を持っている。
公正な「民主主義」と言うのであれば、また、国会が国民を代表すると言うのであれば、衆・参両院とも、1票の格差を出来るだけ1に近づけるよう、少なくても1.5倍以内に収める努力が不可欠であろう。不公正な選挙から公正な国会は望みようがない。
 今回選出する参議院議員は6年間の任期がある。既得権益・特権擁護 を主張する議員を選出するか、国家・国民の利益を優先する議員を参議院に送るか大きな選択となる。
 更に、今回の参議院選挙は、昨年9月の衆院総選挙後初めての半数改選である。昨年9月の衆院総選挙は、参議院が郵政民営化法案を否決したことに端を発し、衆議院が解散され、衆議院の場を借りて民意が問われた。今回は、半数改選ではあるが、郵政民営化に象徴される改革路線に抵抗を継続するか、或いは改革を支持するかが直接参議院で問われるという意味合いもある。郵政民営化反対議員の「復党」問題やそれら議員等との連携の模索も、「和」を保つと言えばそうであるが、参院選挙を念頭に置いた理念の無い妥協、数合わせと映る。
 その意味で今回の参院選挙は、議員の資質や公正さを問う選挙とも言えそうだ。
それにしても、問題は、参議院選挙の意義だ。参議院は、総選挙が無く、常に3年毎に半数が改選されることになるので、「中間評価」でしかないとの見方もある。そうであれば、参議院の議員数を100から150議席程度に削減し、道州制を念頭に置いて、中選挙区制(各選挙区2~3名程度)と選挙区に縛られない比例代表若干名とするなど、衆議院とは異なる選挙制度にしてはどうであろうか。現在は、選挙制度を見る限り、参議院は衆議院のクローンでしかない。
4.憲法改正、教育改革 -復古主義 vs. 国家、国民全体としての利益か
国民投票法や教育基本法、教育関連3法が国会を通過した。国民投票法は、憲法改正に向けて具体的な道を開くものであり、大きな成果と言えよう。しかし、法律が成立しても、何をどう改正し、誰のための改正かなどが響いて来ない。少なくても、現実味は遠のいたように見える。国民投票法は、与党の多数で強行採決された。多数決原則であるので仕方が無い。しかし、憲法やその改正は、国家、国民全体の体制や権利・義務などを規定するものであり、政権が交代しても国民に支持される普遍性、安定性が不可欠であり、対決法案というよりは、国民各層、各分野の協議を十分重ね、国民的合意を得るプロセスが重要ではないだろうか。教育改革についても同様だ。対決法案としてしまえば、残念ながら広い支持は得にくくなる。
 自民党が憲法改正案を纏めている。戦後の連合軍支配下で憲法が制定された経緯から、独自性やナショナリズム意識が強く、健全なナショナリズムは良いが、やや復古調となっている。しかし、最大の焦点は憲法9条の解釈と改正問題であろう。如何なる主権国も自衛権を放棄することはないし、国連憲章でも認められているが、国際紛争を解決する手段として「国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は放棄する」としても、自衛力の範囲や集団的自衛権を含む自衛権の範囲、そして国連等の下での国際平和維持活動などへの参加、協力のあり方については、解釈が分かれるところがある。
 本来であればもっと分かり易く規定すべきであろうが、議論は、かたくなな護憲論から大幅な改憲論まであり、自公の政権与党内のみならず、広く野党との協議、検討を通じ、出来るだけ広い国民的合意を形成して行くべきであろう。4割前後の無党派層はもとより、野党支持層も等しく日本国民であり、それを束ねるのが憲法であることを忘れてはならない。
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社保庁ボーナスの「自主返還の変」

2007-07-06 | Weblog
社保庁ボーナスの「自主返還の変」
 7月5日、国会は閉会となったが、終盤の最大の争点となった社保庁改編関連法案は、与党の多数で既に国会を通過している。参院選でも年金問題が争点となろうが、ややもすると忘れ勝ちになるのが社保庁職員のボーナス自主返還の問題で、どの程度実施されるかが疑問視され始めている。
 1.そもそも、5千万件を越える年金保険料の支払い記載漏れやミスという未曾有の不適正業務が明るみに出て、何故「勤勉」手当であるボーナスが満額支給されるのか大いに疑問であり、このような世論の批判をかわすために「自主返還」ということになったのであろう。国民の反応は、「当然」から「筋違い」までまちまちであるが、「あれで済まされるものではない」という点では意見はほぼ一致しているようだ。
確かに、あれだけの記載漏れやミスが長期に放置されてきたことは、管理職はもとより、職員全体の組織としての怠慢、責任であり、その責任の表現の一つとして、「自主返還」は評価して良いのであろう。多くの年金加入者が実害を受けている以上、当面、ボーナス満額は国民感情に反する。
「自主返還」が、表明されている通り実施されれば、10億円内外にも達するとの報道もあり、国民としてはある程度溜飲を下げる結果になっている。総理始め関係要路も返納することになっているが、「自主的」であるので、社保庁全体としてどの程度返還されるかが問われ始めている。しかし、あれだけの公的な表明をした以上、きちんと返還しなければ、参院選前の口宣伝となり、更に不信が募る恐れがあるので、結果が注目される。
社保庁の職員約1万6千人、ボーナス一人平均約60万円強としても、合計100億円内外となり、「返還」が表明されている通り実施されても、ボーナス総額の10%程度にしかならない。しかし、今後これらの記載漏れやミスを精査し、訂正するとなると、その事務処理費だけで200億円を超える費用が必要とも報道されている。それは全て国民の新たな負担になることを認識する必要があろう。更に、記録漏れの人の救済のための相当額の費用の問題があり、国民の追加的負担の問題となる可能性がある。
2.他方、公務員についてはあれだけの本業での落ち度がありながら、そもそも何故ボーナスが満額支給されるのかという、制度上の問題が残る。民間企業では到底ありえない。
あれだけの半端でない記録漏れやミスであるので、職員レベルでも誰かが気付いていなくてはならないし、管理職レベルに何らかの形で報告されていた可能性が強い。それなのに何故今日まで放置されていたのか、また、そもそも何故記録漏れ等に気付いた時点で一つ一つ調査し、訂正して来なかったのかなど、十分に検証し、今後の対応を検討する必要があるのであろう。それをうやむやにして、新たな組織を発足させても信頼は回復出来ない恐れがあし、公務員制度全体の信頼性にも係わって来る。
総務省の下で「検証委員会」が原因などを検討しているが、人事院もこれらの記録漏れやミスが発生した時点(オンライン化と基礎年金番号実施時)に遡り、原因をきちんと調査し、対応を検討すべきなのであろう。現行の公務員制度にはいわば想定されていない事態であるが、現実に起きている大規模な不適正業務であるので、十分な検討と対応を必要としている。公務員制度を責任ある制度とする上でも検討が必要だ。
3.更に、これまで明確には答えられていない点がある。記録漏れやミスは、オンライン化と基礎年金番号実施時を中心として合計で5千万件以上と伝えられているが、それに対応する保険料納付総額は大体いくらなのか。また、その金額はどのように取り扱われたのかという点である。収支記録は合致していなくてはならない。少なくても毎年収支決算を行っていれば、記録漏れやミスは発見出来たはずであろう。その額が全て年金積立金に繰り入れられていれば、救済はより容易になろう。救済の基準等は、「第三者委員会」が検討することになっており、納付したと者は救済されなくてはならないが、それはまた国民の新たな負担となる可能性もあるので、公正な基準が望まれる。
公的年金は、すべての国民の将来の生活に関係するものである上、基本的には保険料納付を原則とし、納付者の財産権であるので、次の3点を提案したい。
(1) 毎年の保険料納付件数・納付金額と年金支給人数・支給額合計、及び、年金積立金の増減・収支を含む、分かり易い「年金収支報告」の公表、公告。
また、年金積立金の運用状況については、上記を含め、少なくても年2回公表。
(2) 「年金収支報告」の公認会計士団(3年毎程度に複数名を任命)、またはその他第三者機関による会計検査の実施。
(3) 年金納付者が、それぞれ保険料納付歴を、また、受給者が給付状況を点検出来る制度(カードか手帳方式)の確立。
 「年金収支報告」の公表、公告は、これまでも行われていても良かったことであり、速やかな実施が望まれる。
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