内外政策評論 TheOpinion on Global & Domestic Issues

このブログは、広い視野から内外諸問題を分析し、提言を試みます。
Policy Essayist

消費税増税案― 行政肥大化、浪費のツケを国民に転嫁すべきではない -

2007-10-25 | Weblog
消費税増税案
― 行政肥大化、浪費のツケを国民に転嫁すべきではない -
  10月17日、福田内閣の下で開催された経済財政諮問会議において、内閣府が年金、健保、介護の社会保障3分野の給付・医療サービスと国民負担に関する将来的な収支試算を提出し、増税論が本格化する兆しだ。同試算によると、経済成長率や給付水準、負担率などの条件にもよるが、高齢化による社会保障費増と肥大化した公的債務の利払いなどを賄うため、2025年度において8兆円から最大29兆円もの財源不足となり、これを埋めるため8%から17%にも及ぶ消費税の増税が必要としている。
1.欠ける歳出削減に対するシナリオ
政府は既に、2010年までに14.3兆円の歳出削減をし、11年度に政府予算のプライマリー・バランスを達成するとしている。これらの歳出削減努力をしても、経済成長が2.1%程度の低成長であれば、現在の給付水準を維持すると約29兆円の財源不足になると試算されている。
それでは長年に亘りの肥大化して来た行政のツケを国民に転嫁するに等しい。試算であるので、条件の設定次第で色々のシナリオが考えられるが、政府目標としている「最大の歳出削減」をすることを前提としているものの、歳出削減への新たな努力は提示されておらず、ひたすら増税のシナリオを詳細に説明している。その上、政府が目標としている2010年までの14.3兆円の歳出削減については、経済成長(名目)が、07年の2.3%から2010年の3.1%へとなだらかに改善することを前提としており、自然増収が期待されるにも拘わらず、14.3兆円程度の削減では、自然増収分の「節約」でしかなく、純減にはなっていない上、上記の試算では、2.1%程度の低成長を前提として税収を低く見積もっており、増税幅を大きくするよう設定をしている。
この試算を前提としても、本来であれば、社会保障費の財源不足や国債等の元利支払いに要する歳出削減のシナリオと削減する項目等を国民に提示し、国民の選択を求めるべきであろう。太田経済財政担当大臣は、歳出削減努力に関する記者の質問に対し、財政に関する「骨太方針2006」でも「歳出、歳入の一体改革」を提示しており、今回の増税試算はそれに沿うものである旨反論する場面も見られた。そうであれば、増税のシナリオと同様に、財源不足に対応する歳出削減のシナリオも提示し、国民の選択を求めるべきではなかろうか。
2.行政側の責任
特に、年金については、行政側の管理責任と政権・与党の監督責任が問われなくてはならない。
厚生年金会館の建設など「福祉施設費」に約3兆5千億円、グリーンピアの建設や住宅融資などへの出資が約2兆円など、少なくても合計6兆8千億円近くが年金給付以外に流用、浪費されていることが伝えられている。多くの施設については投売り状態であり、また、この金額にこれら施設の人件費、管理費への補填額を含めれば流用額は更に膨らむ恐れがある。
また、年金保険料の着服・横領は、これまでに明らかになっているだけでも、社保庁職員によるものが52件(約1億7千万円)、市区町村職員等によるものが101件(約2億4千万円)、合計約4億1千万円となる。金額は少ないが、年金業務の遂行におけるずさんさを象徴している。
年金積立金の運用面においても、国民の拠出金であり、財産権でもある資金が適正且つ有利に運用されてきたか否かにつき、年金給付以外への転用と共に、価値の増殖が適正に行なわれて来たか否かにつき点検する必要があろう。
シンガポールや最近始めた中国の外貨準備の国家運用を例に引き、年金資金の国家運用を提唱する向きがあるが、年金資金は国民や企業・組織の拠出金で成り立っており、外貨準備や税金とは異なる性格のものである。また、これまでの年金業務のずさんさを考えると、民間の金融・証券投資企業にコンソーシアムなどを組ませ運用を委託するなど、民間の専門知識・経験を活用することを検討すべきではないか。その場合、運用益は非課税とし、運用額の一定比率に政府保証を付与するなど、価値の保全策を講じる必要がある。
ところで、納付記録漏れの救済については、最近、関係閣僚による会議なども持たれるようであるが、福田内閣として、08年3月までにどこまで出来るかの見通しを具体的に示すべきであろう。約5千万件(社保庁推定2兆3千億円相当)の内、524万件は「氏名なし」であり、約1割については是正困難なことが既に明らかになっている。また、記録回復のために設けられた総務省の下での「第三者委員会」での救済作業も、約1万6千件の申し立てに対し、9月末で190人程度しか記録救済できておらず、記録回復のためのシステムが開発されても、救済率は低く、明年3月までの是正、救済は何処まで出来るのか疑問視され始めている。3年ほどじっくり掛ければきっちりしたものを出せる等の発言も聞かれるが、これ以上問題の先送りをすべきではない。
3.健保・介護保険の負担
健康保険についても、少子高齢化の中で制度を維持するため、自己負担を増やすことは仕方がないが(受益者負担原則)、65歳以上の年金対象者については、単に年齢に基づき一律に引き上げるのではなく、年金を含む総所得が例えば800万円以上については現役時同様の負担、それ以下は70%負担、年収300万円以下は50%負担など、年収、支払能力の実態に沿った負担にすべきなのであろう。現在与党が検討しているのは、老齢者負担増の一定期間の猶予であるが、目先の対応でしかない上、所得機会が少なくなる75歳以上の負担を一律に引き上げるのは酷な話だ。
 更に、健康保険料の他に、いつの間にか介護保険料が付け加えられたが、実質的な健康保険料の値上げであり、年間7万円以上の追加支払いは国民年金1ヶ月分以上の場合もあり、年金生活者には負担が大きい。加えて、介護保険料が国民年金から自動的に差し引かれる仕組みとなっているため、実質的な年金給付額の引き下げに等しく、年金生活者にとっては深刻であろう。老齢者が介護福祉のために困窮することになるのは皮肉だ。
これでは、将来への年金不安に加え、所得の低い者の負担感が高くなることになり、「国民福祉」ではなく「国民酷祉」と言われても仕方がない。
年金の問題にしても、健保問題にしても、その多くは行政側の責任が大きい。また、社保庁や厚労省だけの問題に限らず、国交省や防衛庁、海外援助その他の活動において、談合等による割高な経費が支弁され、抜本的な経費節減が可能であろう。更に、各種の名目でのばら撒きや不適正な使用など、多くの浪費や不適正が報道されており、総じて見れば、財政問題は行政側の責任で引き起こされている。従って、社保庁や厚労省のみでなく、全省庁の責任の問題として、財源不足を増税により国民に転嫁するのではなく、歳出削減に取り組むべきであろう。
101にも及ぶ独立行政法人への補助金は、総額3兆5千億円に及ぶが、その整理・民営化は行政側の抵抗で作業が進んでいないなど、行政改革は遅々として進んでいない。これら独法の役員約650名の内、公務員出身者は3割弱を占めており、行政組織と一体化して「官業」ビジネスとなっているからであろうか。だからと言って、そのツケを増税により国民に転嫁することは安易な選択肢と言えよう。
また、長期の経済停滞から脱し、景気回復の兆しが見え始めているが、米国のサブプライム・ローン問題の影響が懸念されているところに、消費税増税が行なわれれば、個人消費は更に抑制され、景気の足を引っ張ることになるので、税収増は望み薄となり、財政再建の道は逆に遠のく恐れが強い。
 今、世代を問わず、年金問題や医療負担増が将来不安の最大の要因になっていることを理解すべきであろう。
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消費税増税案― 行政肥大化、浪費のツケを国民に転嫁すべきではない -

2007-10-25 | Weblog
 消費税増税案
― 行政肥大化、浪費のツケを国民に転嫁すべきではない -
  10月17日、福田内閣の下で開催された経済財政諮問会議において、内閣府が年金、健保、介護の社会保障3分野の給付・医療サービスと国民負担に関する将来的な収支試算を提出し、増税論が本格化する兆しだ。同試算によると、経済成長率や給付水準、負担率などの条件にもよるが、高齢化による社会保障費増と肥大化した公的債務の利払いなどを賄うため、2025年度において8兆円から最大29兆円もの財源不足となり、これを埋めるため8%から17%にも及ぶ消費税の増税が必要としている。
1.欠ける歳出削減に対するシナリオ
政府は既に、2010年までに14.3兆円の歳出削減をし、11年度に政府予算のプライマリー・バランスを達成するとしている。これらの歳出削減努力をしても、経済成長が2.1%程度の低成長であれば、現在の給付水準を維持すると約29兆円の財源不足になると試算されている。
それでは長年に亘りの肥大化して来た行政のツケを国民に転嫁するに等しい。試算であるので、条件の設定次第で色々のシナリオが考えられるが、政府目標としている「最大の歳出削減」をすることを前提としているものの、歳出削減への新たな努力は提示されておらず、ひたすら増税のシナリオを詳細に説明している。その上、政府が目標としている2010年までの14.3兆円の歳出削減については、経済成長(名目)が、07年の2.3%から2010年の3.1%へとなだらかに改善することを前提としており、自然増収が期待されるにも拘わらず、14.3兆円程度の削減では、自然増収分の「節約」でしかなく、純減にはなっていない上、上記の試算では、2.1%程度の低成長を前提として税収を低く見積もっており、増税幅を大きくするよう設定をしている。
この試算を前提としても、本来であれば、社会保障費の財源不足や国債等の元利支払いに要する歳出削減のシナリオと削減する項目等を国民に提示し、国民の選択を求めるべきであろう。太田経済財政担当大臣は、歳出削減努力に関する記者の質問に対し、財政に関する「骨太方針2006」でも「歳出、歳入の一体改革」を提示しており、今回の増税試算はそれに沿うものである旨反論する場面も見られた。そうであれば、増税のシナリオと同様に、財源不足に対応する歳出削減のシナリオも提示し、国民の選択を求めるべきではなかろうか。
2.行政側の責任
特に、年金については、行政側の管理責任と政権・与党の監督責任が問われなくてはならない。
厚生年金会館の建設など「福祉施設費」に約3兆5千億円、グリーンピアの建設や住宅融資などへの出資が約2兆円など、少なくても合計6兆8千億円近くが年金給付以外に流用、浪費されていることが伝えられている。多くの施設については投売り状態であり、また、この金額にこれら施設の人件費、管理費への補填額を含めれば流用額は更に膨らむ恐れがある。
また、年金保険料の着服・横領は、これまでに明らかになっているだけでも、社保庁職員によるものが52件(約1億7千万円)、市区町村職員等によるものが101件(約2億4千万円)、合計約4億1千万円となる。金額は少ないが、年金業務の遂行におけるずさんさを象徴している。
年金積立金の運用面においても、国民の拠出金であり、財産権でもある資金が適正且つ有利に運用されてきたか否かにつき、年金給付以外への転用と共に、価値の増殖が適正に行なわれて来たか否かにつき点検する必要があろう。
シンガポールや最近始めた中国の外貨準備の国家運用を例に引き、年金資金の国家運用を提唱する向きがあるが、年金資金は国民や企業・組織の拠出金で成り立っており、外貨準備や税金とは異なる性格のものである。また、これまでの年金業務のずさんさを考えると、民間の金融・証券投資企業にコンソーシアムなどを組ませ運用を委託するなど、民間の専門知識・経験を活用することを検討すべきではないか。その場合、運用益は非課税とし、運用額の一定比率に政府保証を付与するなど、価値の保全策を講じる必要がある。
ところで、納付記録漏れの救済については、最近、関係閣僚による会議なども持たれるようであるが、福田内閣として、08年3月までにどこまで出来るかの見通しを具体的に示すべきであろう。約5千万件(社保庁推定2兆3千億円相当)の内、524万件は「氏名なし」であり、約1割については是正困難なことが既に明らかになっている。また、記録回復のために設けられた総務省の下での「第三者委員会」での救済作業も、約1万6千件の申し立てに対し、9月末で190人程度しか記録救済できておらず、記録回復のためのシステムが開発されても、救済率は低く、明年3月までの是正、救済は何処まで出来るのか疑問視され始めている。3年ほどじっくり掛ければきっちりしたものを出せる等の発言も聞かれるが、これ以上問題の先送りをすべきではない。
3.健保・介護保険の負担
健康保険についても、少子高齢化の中で制度を維持するため、自己負担を増やすことは仕方がないが(受益者負担原則)、65歳以上の年金対象者については、単に年齢に基づき一律に引き上げるのではなく、年金を含む総所得が例えば800万円以上については現役時同様の負担、それ以下は70%負担、年収300万円以下は50%負担など、年収、支払能力の実態に沿った負担にすべきなのであろう。現在与党が検討しているのは、老齢者負担増の一定期間の猶予であるが、目先の対応でしかない上、所得機会が少なくなる75歳以上の負担を一律に引き上げるのは酷な話だ。
 更に、健康保険料の他に、いつの間にか介護保険料が付け加えられたが、実質的な健康保険料の値上げであり、年間7万円以上の追加支払いは国民年金1ヶ月分以上の場合もあり、年金生活者には負担が大きい。加えて、介護保険料が国民年金から自動的に差し引かれる仕組みとなっているため、実質的な年金給付額の引き下げに等しく、年金生活者にとっては深刻であろう。老齢者が介護福祉のために困窮することになるのは皮肉だ。
これでは、将来への年金不安に加え、所得の低い者の負担感が高くなることになり、「国民福祉」ではなく「国民酷祉」と言われても仕方がない。
年金の問題にしても、健保問題にしても、その多くは行政側の責任が大きい。また、社保庁や厚労省だけの問題に限らず、国交省や防衛庁、海外援助その他の活動において、談合等による割高な経費が支弁され、抜本的な経費節減が可能であろう。更に、各種の名目でのばら撒きや不適正な使用など、多くの浪費や不適正が報道されており、総じて見れば、財政問題は行政側の責任で引き起こされている。従って、社保庁や厚労省のみでなく、全省庁の責任の問題として、財源不足を増税により国民に転嫁するのではなく、歳出削減に取り組むべきであろう。
101にも及ぶ独立行政法人への補助金は、総額3兆5千億円に及ぶが、その整理・民営化は行政側の抵抗で作業が進んでいないなど、行政改革は遅々として進んでいない。これら独法の役員約650名の内、公務員出身者は3割弱を占めており、行政組織と一体化して「官業」ビジネスとなっているからであろうか。だからと言って、そのツケを増税により国民に転嫁することは安易な選択肢と言えよう。
また、長期の経済停滞から脱し、景気回復の兆しが見え始めているが、米国のサブプライム・ローン問題の影響が懸念されているところに、消費税増税が行なわれれば、個人消費は更に抑制され、景気の足を引っ張ることになるので、税収増は望み薄となり、財政再建の道は逆に遠のく恐れが強い。
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   消費税増税案
― 行政肥大化、浪費のツケを国民に転嫁すべきではない -
  10月17日、福田内閣の下で開催された経済財政諮問会議において、内閣府が年金、健保、介護の社会保障3分野の給付・医療サービスと国民負担に関する将来的な収支試算を提出し、増税論が本格化する兆しだ。同試算によると、経済成長率や給付水準、負担率などの条件にもよるが、高齢化による社会保障費増と肥大化した公的債務の利払いなどを賄うため、2025年度において8兆円から最大29兆円もの財源不足となり、これを埋めるため8%から17%にも及ぶ消費税の増税が必要としている。
1.欠ける歳出削減に対するシナリオ
政府は既に、2010年までに14.3兆円の歳出削減をし、11年度に政府予算のプライマリー・バランスを達成するとしている。これらの歳出削減努力をしても、経済成長が2.1%程度の低成長であれば、現在の給付水準を維持すると約29兆円の財源不足になると試算されている。
それでは長年に亘りの肥大化して来た行政のツケを国民に転嫁するに等しい。試算であるので、条件の設定次第で色々のシナリオが考えられるが、政府目標としている「最大の歳出削減」をすることを前提としているものの、歳出削減への新たな努力は提示されておらず、ひたすら増税のシナリオを詳細に説明している。その上、政府が目標としている2010年までの14.3兆円の歳出削減については、経済成長(名目)が、07年の2.3%から2010年の3.1%へとなだらかに改善することを前提としており、自然増収が期待されるにも拘わらず、14.3兆円程度の削減では、自然増収分の「節約」でしかなく、純減にはなっていない上、上記の試算では、2.1%程度の低成長を前提として税収を低く見積もっており、増税幅を大きくするよう設定をしている。
この試算を前提としても、本来であれば、社会保障費の財源不足や国債等の元利支払いに要する歳出削減のシナリオと削減する項目等を国民に提示し、国民の選択を求めるべきであろう。太田経済財政担当大臣は、歳出削減努力に関する記者の質問に対し、財政に関する「骨太方針2006」でも「歳出、歳入の一体改革」を提示しており、今回の増税試算はそれに沿うものである旨反論する場面も見られた。そうであれば、増税のシナリオと同様に、財源不足に対応する歳出削減のシナリオも提示し、国民の選択を求めるべきではなかろうか。
2.行政側の責任
特に、年金については、行政側の管理責任と政権・与党の監督責任が問われなくてはならない。
厚生年金会館の建設など「福祉施設費」に約3兆5千億円、グリーンピアの建設や住宅融資などへの出資が約2兆円など、少なくても合計6兆8千億円近くが年金給付以外に流用、浪費されていることが伝えられている。多くの施設については投売り状態であり、また、この金額にこれら施設の人件費、管理費への補填額を含めれば流用額は更に膨らむ恐れがある。
また、年金保険料の着服・横領は、これまでに明らかになっているだけでも、社保庁職員によるものが52件(約1億7千万円)、市区町村職員等によるものが101件(約2億4千万円)、合計約4億1千万円となる。金額は少ないが、年金業務の遂行におけるずさんさを象徴している。
年金積立金の運用面においても、国民の拠出金であり、財産権でもある資金が適正且つ有利に運用されてきたか否かにつき、年金給付以外への転用と共に、価値の増殖が適正に行なわれて来たか否かにつき点検する必要があろう。
シンガポールや最近始めた中国の外貨準備の国家運用を例に引き、年金資金の国家運用を提唱する向きがあるが、年金資金は国民や企業・組織の拠出金で成り立っており、外貨準備や税金とは異なる性格のものである。また、これまでの年金業務のずさんさを考えると、民間の金融・証券投資企業にコンソーシアムなどを組ませ運用を委託するなど、民間の専門知識・経験を活用することを検討すべきではないか。その場合、運用益は非課税とし、運用額の一定比率に政府保証を付与するなど、価値の保全策を講じる必要がある。
ところで、納付記録漏れの救済については、最近、関係閣僚による会議なども持たれるようであるが、福田内閣として、08年3月までにどこまで出来るかの見通しを具体的に示すべきであろう。約5千万件(社保庁推定2兆3千億円相当)の内、524万件は「氏名なし」であり、約1割については是正困難なことが既に明らかになっている。また、記録回復のために設けられた総務省の下での「第三者委員会」での救済作業も、約1万6千件の申し立てに対し、9月末で190人程度しか記録救済できておらず、記録回復のためのシステムが開発されても、救済率は低く、明年3月までの是正、救済は何処まで出来るのか疑問視され始めている。3年ほどじっくり掛ければきっちりしたものを出せる等の発言も聞かれるが、これ以上問題の先送りをすべきではない。
3.健保・介護保険の負担
健康保険についても、少子高齢化の中で制度を維持するため、自己負担を増やすことは仕方がないが(受益者負担原則)、65歳以上の年金対象者については、単に年齢に基づき一律に引き上げるのではなく、年金を含む総所得が例えば800万円以上については現役時同様の負担、それ以下は70%負担、年収300万円以下は50%負担など、年収、支払能力の実態に沿った負担にすべきなのであろう。現在与党が検討しているのは、老齢者負担増の一定期間の猶予であるが、目先の対応でしかない上、所得機会が少なくなる75歳以上の負担を一律に引き上げるのは酷な話だ。
 更に、健康保険料の他に、いつの間にか介護保険料が付け加えられたが、実質的な健康保険料の値上げであり、年間7万円以上の追加支払いは国民年金1ヶ月分以上の場合もあり、年金生活者には負担が大きい。加えて、介護保険料が国民年金から自動的に差し引かれる仕組みとなっているため、実質的な年金給付額の引き下げに等しく、年金生活者にとっては深刻であろう。老齢者が介護福祉のために困窮することになるのは皮肉だ。
これでは、将来への年金不安に加え、所得の低い者の負担感が高くなることになり、「国民福祉」ではなく「国民酷祉」と言われても仕方がない。
年金の問題にしても、健保問題にしても、その多くは行政側の責任が大きい。また、社保庁や厚労省だけの問題に限らず、国交省や防衛庁、海外援助その他の活動において、談合等による割高な経費が支弁され、抜本的な経費節減が可能であろう。更に、各種の名目でのばら撒きや不適正な使用など、多くの浪費や不適正が報道されており、総じて見れば、財政問題は行政側の責任で引き起こされている。従って、社保庁や厚労省のみでなく、全省庁の責任の問題として、財源不足を増税により国民に転嫁するのではなく、歳出削減に取り組むべきであろう。
101にも及ぶ独立行政法人への補助金は、総額3兆5千億円に及ぶが、その整理・民営化は行政側の抵抗で作業が進んでいないなど、行政改革は遅々として進んでいない。これら独法の役員約650名の内、公務員出身者は3割弱を占めており、行政組織と一体化して「官業」ビジネスとなっているからであろうか。だからと言って、そのツケを増税により国民に転嫁することは安易な選択肢と言えよう。
また、長期の経済停滞から脱し、景気回復の兆しが見え始めているが、米国のサブプライム・ローン問題の影響が懸念されているところに、消費税増税が行なわれれば、個人消費は更に抑制され、景気の足を引っ張ることになるので、税収増は望み薄となり、財政再建の道は逆に遠のく恐れが強い。
 今、世代を問わず、年金問題や医療負担増が将来不安の最大の要因になっていることを理解すべきであろう。
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― 行政肥大化、浪費のツケを国民に転嫁すべきではない -
  10月17日、福田内閣の下で開催された経済財政諮問会議において、内閣府が年金、健保、介護の社会保障3分野の給付・医療サービスと国民負担に関する将来的な収支試算を提出し、増税論が本格化する兆しだ。同試算によると、経済成長率や給付水準、負担率などの条件にもよるが、高齢化による社会保障費増と肥大化した公的債務の利払いなどを賄うため、2025年度において8兆円から最大29兆円もの財源不足となり、これを埋めるため8%から17%にも及ぶ消費税の増税が必要としている。
1.欠ける歳出削減に対するシナリオ
政府は既に、2010年までに14.3兆円の歳出削減をし、11年度に政府予算のプライマリー・バランスを達成するとしている。これらの歳出削減努力をしても、経済成長が2.1%程度の低成長であれば、現在の給付水準を維持すると約29兆円の財源不足になると試算されている。
それでは長年に亘りの肥大化して来た行政のツケを国民に転嫁するに等しい。試算であるので、条件の設定次第で色々のシナリオが考えられるが、政府目標としている「最大の歳出削減」をすることを前提としているものの、歳出削減への新たな努力は提示されておらず、ひたすら増税のシナリオを詳細に説明している。その上、政府が目標としている2010年までの14.3兆円の歳出削減については、経済成長(名目)が、07年の2.3%から2010年の3.1%へとなだらかに改善することを前提としており、自然増収が期待されるにも拘わらず、14.3兆円程度の削減では、自然増収分の「節約」でしかなく、純減にはなっていない上、上記の試算では、2.1%程度の低成長を前提として税収を低く見積もっており、増税幅を大きくするよう設定をしている。
この試算を前提としても、本来であれば、社会保障費の財源不足や国債等の元利支払いに要する歳出削減のシナリオと削減する項目等を国民に提示し、国民の選択を求めるべきであろう。太田経済財政担当大臣は、歳出削減努力に関する記者の質問に対し、財政に関する「骨太方針2006」でも「歳出、歳入の一体改革」を提示しており、今回の増税試算はそれに沿うものである旨反論する場面も見られた。そうであれば、増税のシナリオと同様に、財源不足に対応する歳出削減のシナリオも提示し、国民の選択を求めるべきではなかろうか。
2.行政側の責任
特に、年金については、行政側の管理責任と政権・与党の監督責任が問われなくてはならない。
厚生年金会館の建設など「福祉施設費」に約3兆5千億円、グリーンピアの建設や住宅融資などへの出資が約2兆円など、少なくても合計6兆8千億円近くが年金給付以外に流用、浪費されていることが伝えられている。多くの施設については投売り状態であり、また、この金額にこれら施設の人件費、管理費への補填額を含めれば流用額は更に膨らむ恐れがある。
また、年金保険料の着服・横領は、これまでに明らかになっているだけでも、社保庁職員によるものが52件(約1億7千万円)、市区町村職員等によるものが101件(約2億4千万円)、合計約4億1千万円となる。金額は少ないが、年金業務の遂行におけるずさんさを象徴している。
年金積立金の運用面においても、国民の拠出金であり、財産権でもある資金が適正且つ有利に運用されてきたか否かにつき、年金給付以外への転用と共に、価値の増殖が適正に行なわれて来たか否かにつき点検する必要があろう。
シンガポールや最近始めた中国の外貨準備の国家運用を例に引き、年金資金の国家運用を提唱する向きがあるが、年金資金は国民や企業・組織の拠出金で成り立っており、外貨準備や税金とは異なる性格のものである。また、これまでの年金業務のずさんさを考えると、民間の金融・証券投資企業にコンソーシアムなどを組ませ運用を委託するなど、民間の専門知識・経験を活用することを検討すべきではないか。その場合、運用益は非課税とし、運用額の一定比率に政府保証を付与するなど、価値の保全策を講じる必要がある。
ところで、納付記録漏れの救済については、最近、関係閣僚による会議なども持たれるようであるが、福田内閣として、08年3月までにどこまで出来るかの見通しを具体的に示すべきであろう。約5千万件(社保庁推定2兆3千億円相当)の内、524万件は「氏名なし」であり、約1割については是正困難なことが既に明らかになっている。また、記録回復のために設けられた総務省の下での「第三者委員会」での救済作業も、約1万6千件の申し立てに対し、9月末で190人程度しか記録救済できておらず、記録回復のためのシステムが開発されても、救済率は低く、明年3月までの是正、救済は何処まで出来るのか疑問視され始めている。3年ほどじっくり掛ければきっちりしたものを出せる等の発言も聞かれるが、これ以上問題の先送りをすべきではない。
3.健保・介護保険の負担
健康保険についても、少子高齢化の中で制度を維持するため、自己負担を増やすことは仕方がないが(受益者負担原則)、65歳以上の年金対象者については、単に年齢に基づき一律に引き上げるのではなく、年金を含む総所得が例えば800万円以上については現役時同様の負担、それ以下は70%負担、年収300万円以下は50%負担など、年収、支払能力の実態に沿った負担にすべきなのであろう。現在与党が検討しているのは、老齢者負担増の一定期間の猶予であるが、目先の対応でしかない上、所得機会が少なくなる75歳以上の負担を一律に引き上げるのは酷な話だ。
 更に、健康保険料の他に、いつの間にか介護保険料が付け加えられたが、実質的な健康保険料の値上げであり、年間7万円以上の追加支払いは国民年金1ヶ月分以上の場合もあり、年金生活者には負担が大きい。加えて、介護保険料が国民年金から自動的に差し引かれる仕組みとなっているため、実質的な年金給付額の引き下げに等しく、年金生活者にとっては深刻であろう。老齢者が介護福祉のために困窮することになるのは皮肉だ。
これでは、将来への年金不安に加え、所得の低い者の負担感が高くなることになり、「国民福祉」ではなく「国民酷祉」と言われても仕方がない。
年金の問題にしても、健保問題にしても、その多くは行政側の責任が大きい。また、社保庁や厚労省だけの問題に限らず、国交省や防衛庁、海外援助その他の活動において、談合等による割高な経費が支弁され、抜本的な経費節減が可能であろう。更に、各種の名目でのばら撒きや不適正な使用など、多くの浪費や不適正が報道されており、総じて見れば、財政問題は行政側の責任で引き起こされている。従って、社保庁や厚労省のみでなく、全省庁の責任の問題として、財源不足を増税により国民に転嫁するのではなく、歳出削減に取り組むべきであろう。
101にも及ぶ独立行政法人への補助金は、総額3兆5千億円に及ぶが、その整理・民営化は行政側の抵抗で作業が進んでいないなど、行政改革は遅々として進んでいない。これら独法の役員約650名の内、公務員出身者は3割弱を占めており、行政組織と一体化して「官業」ビジネスとなっているからであろうか。だからと言って、そのツケを増税により国民に転嫁することは安易な選択肢と言えよう。
また、長期の経済停滞から脱し、景気回復の兆しが見え始めているが、米国のサブプライム・ローン問題の影響が懸念されているところに、消費税増税が行なわれれば、個人消費は更に抑制され、景気の足を引っ張ることになるので、税収増は望み薄となり、財政再建の道は逆に遠のく恐れが強い。
 今、世代を問わず、年金問題や医療負担増が将来不安の最大の要因になっていることを理解すべきであろう。
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 消費税増税案― 行政肥大化、浪費のツケを国民に転嫁すべきではない -

2007-10-24 | Weblog
   消費税増税案
― 行政肥大化、浪費のツケを国民に転嫁すべきではない -
  10月17日、福田内閣の下で開催された経済財政諮問会議において、内閣府が年金、健保、介護の社会保障3分野の給付・医療サービスと国民負担に関する将来的な収支試算を提出し、増税論が本格化する兆しだ。同試算によると、経済成長率や給付水準、負担率などの条件にもよるが、高齢化による社会保障費増と肥大化した公的債務の利払いなどを賄うため、2025年度において8兆円から最大29兆円もの財源不足となり、これを埋めるため8%から17%にも及ぶ消費税の増税が必要としている。
1.欠ける歳出削減に対するシナリオ
政府は既に、2010年までに14.3兆円の歳出削減をし、11年度に政府予算のプライマリー・バランスを達成するとしている。これらの歳出削減努力をしても、経済成長が2.1%程度の低成長であれば、現在の給付水準を維持すると約29兆円の財源不足になると試算されている。
それでは長年に亘りの肥大化して来た行政のツケを国民に転嫁するに等しい。試算であるので、条件の設定次第で色々のシナリオが考えられるが、政府目標としている「最大の歳出削減」をすることを前提としているものの、歳出削減への新たな努力は提示されておらず、ひたすら増税のシナリオを詳細に説明している。その上、政府が目標としている2010年までの14.3兆円の歳出削減については、経済成長(名目)が、07年の2.3%から2010年の3.1%へとなだらかに改善することを前提としており、自然増収が期待されるにも拘わらず、14.3兆円程度の削減では、自然増収分の「節約」でしかなく、純減にはなっていない上、上記の試算では、2.1%程度の低成長を前提として税収を低く見積もっており、増税幅を大きくするよう設定をしている。
この試算を前提としても、本来であれば、社会保障費の財源不足や国債等の元利支払いに要する歳出削減のシナリオと削減する項目等を国民に提示し、国民の選択を求めるべきであろう。太田経済財政担当大臣は、歳出削減努力に関する記者の質問に対し、財政に関する「骨太方針2006」でも「歳出、歳入の一体改革」を提示しており、今回の増税試算はそれに沿うものである旨反論する場面も見られた。そうであれば、増税のシナリオと同様に、財源不足に対応する歳出削減のシナリオも提示し、国民の選択を求めるべきではなかろうか。
2.行政側の責任
特に、年金については、行政側の管理責任と政権・与党の監督責任が問われなくてはならない。
厚生年金会館の建設など「福祉施設費」に約3兆5千億円、グリーンピアの建設や住宅融資などへの出資が約2兆円など、少なくても合計6兆8千億円近くが年金給付以外に流用、浪費されていることが伝えられている。多くの施設については投売り状態であり、また、この金額にこれら施設の人件費、管理費への補填額を含めれば流用額は更に膨らむ恐れがある。
また、年金保険料の着服・横領は、これまでに明らかになっているだけでも、社保庁職員によるものが52件(約1億7千万円)、市区町村職員等によるものが101件(約2億4千万円)、合計約4億1千万円となる。金額は少ないが、年金業務の遂行におけるずさんさを象徴している。
年金積立金の運用面においても、国民の拠出金であり、財産権でもある資金が適正且つ有利に運用されてきたか否かにつき、年金給付以外への転用と共に、価値の増殖が適正に行なわれて来たか否かにつき点検する必要があろう。
シンガポールや最近始めた中国の外貨準備の国家運用を例に引き、年金資金の国家運用を提唱する向きがあるが、年金資金は国民や企業・組織の拠出金で成り立っており、外貨準備や税金とは異なる性格のものである。また、これまでの年金業務のずさんさを考えると、民間の金融・証券投資企業にコンソーシアムなどを組ませ運用を委託するなど、民間の専門知識・経験を活用することを検討すべきではないか。その場合、運用益は非課税とし、運用額の一定比率に政府保証を付与するなど、価値の保全策を講じる必要がある。
ところで、納付記録漏れの救済については、最近、関係閣僚による会議なども持たれるようであるが、福田内閣として、08年3月までにどこまで出来るかの見通しを具体的に示すべきであろう。約5千万件(社保庁推定2兆3千億円相当)の内、524万件は「氏名なし」であり、約1割については是正困難なことが既に明らかになっている。また、記録回復のために設けられた総務省の下での「第三者委員会」での救済作業も、約1万6千件の申し立てに対し、9月末で190人程度しか記録救済できておらず、記録回復のためのシステムが開発されても、救済率は低く、明年3月までの是正、救済は何処まで出来るのか疑問視され始めている。3年ほどじっくり掛ければきっちりしたものを出せる等の発言も聞かれるが、これ以上問題の先送りをすべきではない。
3.健保・介護保険の負担
健康保険についても、少子高齢化の中で制度を維持するため、自己負担を増やすことは仕方がないが(受益者負担原則)、65歳以上の年金対象者については、単に年齢に基づき一律に引き上げるのではなく、年金を含む総所得が例えば800万円以上については現役時同様の負担、それ以下は70%負担、年収300万円以下は50%負担など、年収、支払能力の実態に沿った負担にすべきなのであろう。現在与党が検討しているのは、老齢者負担増の一定期間の猶予であるが、目先の対応でしかない上、所得機会が少なくなる75歳以上の負担を一律に引き上げるのは酷な話だ。
 更に、健康保険料の他に、いつの間にか介護保険料が付け加えられたが、実質的な健康保険料の値上げであり、年間7万円以上の追加支払いは国民年金1ヶ月分以上の場合もあり、年金生活者には負担が大きい。加えて、介護保険料が国民年金から自動的に差し引かれる仕組みとなっているため、実質的な年金給付額の引き下げに等しく、年金生活者にとっては深刻であろう。老齢者が介護福祉のために困窮することになるのは皮肉だ。
これでは、将来への年金不安に加え、所得の低い者の負担感が高くなることになり、「国民福祉」ではなく「国民酷祉」と言われても仕方がない。
年金の問題にしても、健保問題にしても、その多くは行政側の責任が大きい。また、社保庁や厚労省だけの問題に限らず、国交省や防衛庁、海外援助その他の活動において、談合等による割高な経費が支弁され、抜本的な経費節減が可能であろう。更に、各種の名目でのばら撒きや不適正な使用など、多くの浪費や不適正が報道されており、総じて見れば、財政問題は行政側の責任で引き起こされている。従って、社保庁や厚労省のみでなく、全省庁の責任の問題として、財源不足を増税により国民に転嫁するのではなく、歳出削減に取り組むべきであろう。
101にも及ぶ独立行政法人への補助金は、総額3兆5千億円に及ぶが、その整理・民営化は行政側の抵抗で作業が進んでいないなど、行政改革は遅々として進んでいない。これら独法の役員約650名の内、公務員出身者は3割弱を占めており、行政組織と一体化して「官業」ビジネスとなっているからであろうか。だからと言って、そのツケを増税により国民に転嫁することは安易な選択肢と言えよう。
また、長期の経済停滞から脱し、景気回復の兆しが見え始めているが、米国のサブプライム・ローン問題の影響が懸念されているところに、消費税増税が行なわれれば、個人消費は更に抑制され、景気の足を引っ張ることになるので、税収増は望み薄となり、財政再建の道は逆に遠のく恐れが強い。
 今、世代を問わず、年金問題や医療負担増が将来不安の最大の要因になっていることを理解すべきであろう。
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国民生活を圧迫する年金・健保問題― 将来不安の最大要因 -

2007-10-11 | Weblog
国民生活を圧迫する年金・健保問題
― 将来不安の最大要因 -
1、 膨大な年金納付の記録漏れ問題自体だけでも年金制度の信頼性を揺るがすところで
あるのに、更に年金保険料着服・横領事件が数多くあったことが表面化し、横領した職員の刑事告発を巡って、国(厚労省・社保庁)と市町村など地方自治体とが対立している。
 これまでに明らかになっている着服・横領は、社保庁職員によるものが52件(約1億7千万円)、市区町村職員等によるものが101件(約2億4千万円)。これらの事件に対する社保庁と自治体の対応は、国民が納付した保険料の着服・横領であったにも拘わらず、免職や退職などの懲戒処分で、刑事告発されているのは1件程度しかない。それも横領事件の時効は7年となっているので、現在告発できるのは9件しかない。舛添厚労相は、これに対し、盗人は刑事告発し、法に基づき処罰するとの当たり前といえば当たり前の姿勢を明らかにし、関係自治体に告発を要請した。
しかし、告発するのは東京都日野市のみで、大崎、池田、田村の3市は告発せず、その他は未定。その上、鳥取県倉吉市長など、着服が行われていない自治体から厚労相の言動に抗議がなされている。厚労相が就任当初、この問題で「社会保険庁は信用ならない。市町村はもっと信用ならない」と言ったのが背景にあり、その後の「小人の戯言」発言も反発を買っている。
それはそうだ。社保庁自体も52件、約1億7千万円の横領があるし、市区町村の横領事件の多くは何らかの形で同庁に報告してあったであろうし、そもそも厚労省・社保庁には監督責任があり、他人事のように地方自治体を批判する立場にはないのだろう。
増田総務相が、各自治体の対応につき、「適切かどうか最終的には住民が決める話」と述べたと伝えられているが、法治国家においては、横領その他の刑法上の犯罪は法に基づき判断されるべきであり、公務員については告発すべきことが定められているので(刑事訴訟法)、自治体や住民が判断することではないはずではないのか。住民が判断するのは、その上で自治体や政府の施策に対し下されるのであろう。
このように長期に亘り多数の年金横領・着服を許したことは、歴代内閣、政権与党の行政に対する監督能力が問われるところでもある。また、会計検査院の検査体制や不正者の処分についての人事院の役割も問われるところであり、行政の適正化のための監視制度のあり方も課題となりそうだ。
2、年金記録漏れについても、08年3月までに是正するとしているが、約5千万件(社保庁推定2兆3千億円相当)の内、524万件は「氏名なし」であり、丸々払い損となる。また、記録回復のために設けられた総務省の下での「第三者委員会」での救済作業も、約1万6千件の申し立てに対し、9月末で190人程度しか記録救済できておらず、記録回復のためのシステムが開発されても、救済率は低く、明年3月までの是正、救済が疑問視され始めている。それでも保険料を納付した国民の権利であるので1人でも多く救済されるべきであろうが、残りは払い損となる。もっとも、納付された約2兆円超の資金が年金基金に積み立てられていない場合の問題は残る。
このようにずさんな管理をしている上、厚生年金会館の建設など「福祉施設費」に約3兆5千億円、グリーンピアの建設や住宅融資などへの出資が約2兆円など、少なくても合計6兆8千億円近くが年金給付以外に流用、浪費されていることが民主党の質問で明らかになったと伝えられている。多くの施設については投売り状態であり、また、この金額にこれら施設の人件費、管理費への補填額を含めれば流用額は更に膨らむ恐れがある。
その上、ボーナスからの年金料徴収や給付年齢の引き上げ、給付額の引き下げが行なわれ、それでも足りないとして消費税などの引き上げが議論されている。それに有料高速道路の料金やタクシー料金、その他ガソリン、食料品などの値上げもある。
この年金問題は、老齢者だけでなく、若い世代にとっても将来不安の最大の要因となっており、消費抑制の背景ともなっている。
可能な限り多くの記録回復を速やかに行なうと共に、上記の「氏名なし」を含め、不明のまま残るものが可成り出ると予想されるので、時間を掛けて、給付申請時における確認はもとよりのこと、加入者全員に対し納付記録を通知し、記録の回復・是正作業を継続するなど、救済策を継続して行くべきであろう。また、特に問題の多い国民年金については、抜本的な制度改革を検討すると共に、基礎年金カード(仮称)を発給し、納付者や受給者が納付記録などを常時点検出来るよう改善を図るべきであろう。
3、健康保険についても、少子高齢化の中で制度を維持するため、自己負担を増やすことは仕方がないが(受益者負担原則)、65歳以上の年金対象者については、単に年齢に基づき一律に引き上げるのではなく、年金を含む総所得が例えば800万円以上については現役時同様30%負担、それ以下は25%負担、年収300万円以下は20%負担など、年収、支払能力の実態に沿った負担にすべきなのであろう。現在与党が検討しているのは、老齢者負担増の一定期間の猶予であるが、目先の総選挙目的と見られている上、所得機会の少なくなる75歳以上の負担を一律に30%に引き上げるのは酷だ。
 更に、健康保険料の他に、いつの間にか介護保険料が付け加えられたが、実質的な健康保険料の値上げであり、年間7万円以上の追加支払いは国民年金1ヶ月分以上の場合もあり、年金生活者には負担が大きい。加えて、介護保険料が国民年金から自動的に差し引かれる仕組みとなっているようであり、実質的な年金給付額の引き下げとなり、年金生活者にとっては深刻であろう。老齢者が介護福祉のために困窮することになる。
これでは、将来への年金不安に加え、所得の低い者の負担感が高くなることになり、「国民福祉」ではなく「国民酷祉」と言われても仕方がないのではないだろうか。
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国民生活を圧迫する年金・健保問題― 将来不安の最大要因 -

2007-10-11 | Weblog
国民生活を圧迫する年金・健保問題
― 将来不安の最大要因 -
1、 膨大な年金納付の記録漏れ問題自体だけでも年金制度の信頼性を揺るがすところで
あるのに、更に年金保険料着服・横領事件が数多くあったことが表面化し、横領した職員の刑事告発を巡って、国(厚労省・社保庁)と市町村など地方自治体とが対立している。
 これまでに明らかになっている着服・横領は、社保庁職員によるものが52件(約1億7千万円)、市区町村職員等によるものが101件(約2億4千万円)。これらの事件に対する社保庁と自治体の対応は、国民が納付した保険料の着服・横領であったにも拘わらず、免職や退職などの懲戒処分で、刑事告発されているのは1件程度しかない。それも横領事件の時効は7年となっているので、現在告発できるのは9件しかない。舛添厚労相は、これに対し、盗人は刑事告発し、法に基づき処罰するとの当たり前といえば当たり前の姿勢を明らかにし、関係自治体に告発を要請した。
しかし、告発するのは東京都日野市のみで、大崎、池田、田村の3市は告発せず、その他は未定。その上、鳥取県倉吉市長など、着服が行われていない自治体から厚労相の言動に抗議がなされている。厚労相が就任当初、この問題で「社会保険庁は信用ならない。市町村はもっと信用ならない」と言ったのが背景にあり、その後の「小人の戯言」発言も反発を買っている。
それはそうだ。社保庁自体も52件、約1億7千万円の横領があるし、市区町村の横領事件の多くは何らかの形で同庁に報告してあったであろうし、そもそも厚労省・社保庁には監督責任があり、他人事のように地方自治体を批判する立場にはないのだろう。
増田総務相が、各自治体の対応につき、「適切かどうか最終的には住民が決める話」と述べたと伝えられているが、法治国家においては、横領その他の刑法上の犯罪は法に基づき判断されるべきであり、公務員については告発すべきことが定められているので(刑事訴訟法)、自治体や住民が判断することではないはずではないのか。住民が判断するのは、その上で自治体や政府の施策に対し下されるのであろう。
このように長期に亘り多数の年金横領・着服を許したことは、歴代内閣、政権与党の行政に対する監督能力が問われるところでもある。また、会計検査院の検査体制や不正者の処分についての人事院の役割も問われるところであり、行政の適正化のための監視制度のあり方も課題となりそうだ。
2、年金記録漏れについても、08年3月までに是正するとしているが、約5千万件(社保庁推定2兆3千億円相当)の内、524万件は「氏名なし」であり、丸々払い損となる。また、記録回復のために設けられた総務省の下での「第三者委員会」での救済作業も、約1万6千件の申し立てに対し、9月末で190人程度しか記録救済できておらず、記録回復のためのシステムが開発されても、救済率は低く、明年3月までの是正、救済が疑問視され始めている。それでも保険料を納付した国民の権利であるので1人でも多く救済されるべきであろうが、残りは払い損となる。もっとも、納付された約2兆円超の資金が年金基金に積み立てられていない場合の問題は残る。
このようにずさんな管理をしている上、厚生年金会館の建設など「福祉施設費」に約3兆5千億円、グリーンピアの建設や住宅融資などへの出資が約2兆円など、少なくても合計6兆8千億円近くが年金給付以外に流用、浪費されていることが民主党の質問で明らかになったと伝えられている。多くの施設については投売り状態であり、また、この金額にこれら施設の人件費、管理費への補填額を含めれば流用額は更に膨らむ恐れがある。
その上、ボーナスからの年金料徴収や給付年齢の引き上げ、給付額の引き下げが行なわれ、それでも足りないとして消費税などの引き上げが議論されている。それに有料高速道路の料金やタクシー料金、その他ガソリン、食料品などの値上げもある。
この年金問題は、老齢者だけでなく、若い世代にとっても将来不安の最大の要因となっており、消費抑制の背景ともなっている。
可能な限り多くの記録回復を速やかに行なうと共に、上記の「氏名なし」を含め、不明のまま残るものが可成り出ると予想されるので、時間を掛けて、給付申請時における確認はもとよりのこと、加入者全員に対し納付記録を通知し、記録の回復・是正作業を継続するなど、救済策を継続して行くべきであろう。また、特に問題の多い国民年金については、抜本的な制度改革を検討すると共に、基礎年金カード(仮称)を発給し、納付者や受給者が納付記録などを常時点検出来るよう改善を図るべきであろう。
3、健康保険についても、少子高齢化の中で制度を維持するため、自己負担を増やすことは仕方がないが(受益者負担原則)、65歳以上の年金対象者については、単に年齢に基づき一律に引き上げるのではなく、年金を含む総所得が例えば800万円以上については現役時同様30%負担、それ以下は25%負担、年収300万円以下は20%負担など、年収、支払能力の実態に沿った負担にすべきなのであろう。現在与党が検討しているのは、老齢者負担増の一定期間の猶予であるが、目先の総選挙目的と見られている上、所得機会の少なくなる75歳以上の負担を一律に30%に引き上げるのは酷だ。
 更に、健康保険料の他に、いつの間にか介護保険料が付け加えられたが、実質的な健康保険料の値上げであり、年間7万円以上の追加支払いは国民年金1ヶ月分以上の場合もあり、年金生活者には負担が大きい。加えて、介護保険料が国民年金から自動的に差し引かれる仕組みとなっているようであり、実質的な年金給付額の引き下げとなり、年金生活者にとっては深刻であろう。老齢者が介護福祉のために困窮することになる。
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― 将来不安の最大要因 -
1、 膨大な年金納付の記録漏れ問題自体だけでも年金制度の信頼性を揺るがすところで
あるのに、更に年金保険料着服・横領事件が数多くあったことが表面化し、横領した職員の刑事告発を巡って、国(厚労省・社保庁)と市町村など地方自治体とが対立している。
 これまでに明らかになっている着服・横領は、社保庁職員によるものが52件(約1億7千万円)、市区町村職員等によるものが101件(約2億4千万円)。これらの事件に対する社保庁と自治体の対応は、国民が納付した保険料の着服・横領であったにも拘わらず、免職や退職などの懲戒処分で、刑事告発されているのは1件程度しかない。それも横領事件の時効は7年となっているので、現在告発できるのは9件しかない。舛添厚労相は、これに対し、盗人は刑事告発し、法に基づき処罰するとの当たり前といえば当たり前の姿勢を明らかにし、関係自治体に告発を要請した。
しかし、告発するのは東京都日野市のみで、大崎、池田、田村の3市は告発せず、その他は未定。その上、鳥取県倉吉市長など、着服が行われていない自治体から厚労相の言動に抗議がなされている。厚労相が就任当初、この問題で「社会保険庁は信用ならない。市町村はもっと信用ならない」と言ったのが背景にあり、その後の「小人の戯言」発言も反発を買っている。
それはそうだ。社保庁自体も52件、約1億7千万円の横領があるし、市区町村の横領事件の多くは何らかの形で同庁に報告してあったであろうし、そもそも厚労省・社保庁には監督責任があり、他人事のように地方自治体を批判する立場にはないのだろう。
増田総務相が、各自治体の対応につき、「適切かどうか最終的には住民が決める話」と述べたと伝えられているが、法治国家においては、横領その他の刑法上の犯罪は法に基づき判断されるべきであり、公務員については告発すべきことが定められているので(刑事訴訟法)、自治体や住民が判断することではないはずではないのか。住民が判断するのは、その上で自治体や政府の施策に対し下されるのであろう。
このように長期に亘り多数の年金横領・着服を許したことは、歴代内閣、政権与党の行政に対する監督能力が問われるところでもある。また、会計検査院の検査体制や不正者の処分についての人事院の役割も問われるところであり、行政の適正化のための監視制度のあり方も課題となりそうだ。
2、年金記録漏れについても、08年3月までに是正するとしているが、約5千万件(社保庁推定2兆3千億円相当)の内、524万件は「氏名なし」であり、丸々払い損となる。また、記録回復のために設けられた総務省の下での「第三者委員会」での救済作業も、約1万6千件の申し立てに対し、9月末で190人程度しか記録救済できておらず、記録回復のためのシステムが開発されても、救済率は低く、明年3月までの是正、救済が疑問視され始めている。それでも保険料を納付した国民の権利であるので1人でも多く救済されるべきであろうが、残りは払い損となる。もっとも、納付された約2兆円超の資金が年金基金に積み立てられていない場合の問題は残る。
このようにずさんな管理をしている上、厚生年金会館の建設など「福祉施設費」に約3兆5千億円、グリーンピアの建設や住宅融資などへの出資が約2兆円など、少なくても合計6兆8千億円近くが年金給付以外に流用、浪費されていることが民主党の質問で明らかになったと伝えられている。多くの施設については投売り状態であり、また、この金額にこれら施設の人件費、管理費への補填額を含めれば流用額は更に膨らむ恐れがある。
その上、ボーナスからの年金料徴収や給付年齢の引き上げ、給付額の引き下げが行なわれ、それでも足りないとして消費税などの引き上げが議論されている。それに有料高速道路の料金やタクシー料金、その他ガソリン、食料品などの値上げもある。
この年金問題は、老齢者だけでなく、若い世代にとっても将来不安の最大の要因となっており、消費抑制の背景ともなっている。
可能な限り多くの記録回復を速やかに行なうと共に、上記の「氏名なし」を含め、不明のまま残るものが可成り出ると予想されるので、時間を掛けて、給付申請時における確認はもとよりのこと、加入者全員に対し納付記録を通知し、記録の回復・是正作業を継続するなど、救済策を継続して行くべきであろう。また、特に問題の多い国民年金については、抜本的な制度改革を検討すると共に、基礎年金カード(仮称)を発給し、納付者や受給者が納付記録などを常時点検出来るよう改善を図るべきであろう。
3、健康保険についても、少子高齢化の中で制度を維持するため、自己負担を増やすことは仕方がないが(受益者負担原則)、65歳以上の年金対象者については、単に年齢に基づき一律に引き上げるのではなく、年金を含む総所得が例えば800万円以上については現役時同様30%負担、それ以下は25%負担、年収300万円以下は20%負担など、年収、支払能力の実態に沿った負担にすべきなのであろう。現在与党が検討しているのは、老齢者負担増の一定期間の猶予であるが、目先の総選挙目的と見られている上、所得機会の少なくなる75歳以上の負担を一律に30%に引き上げるのは酷だ。
 更に、健康保険料の他に、いつの間にか介護保険料が付け加えられたが、実質的な健康保険料の値上げであり、年間7万円以上の追加支払いは国民年金1ヶ月分以上の場合もあり、年金生活者には負担が大きい。加えて、介護保険料が国民年金から自動的に差し引かれる仕組みとなっているようであり、実質的な年金給付額の引き下げとなり、年金生活者にとっては深刻であろう。老齢者が介護福祉のために困窮することになる。
これでは、将来への年金不安に加え、所得の低い者の負担感が高くなることになり、「国民福祉」ではなく「国民酷祉」と言われても仕方がないのではないだろうか。
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国民生活を圧迫する年金・健保問題― 将来不安の最大要因 -

2007-10-11 | Weblog
国民生活を圧迫する年金・健保問題
― 将来不安の最大要因 -
1、 膨大な年金納付の記録漏れ問題自体だけでも年金制度の信頼性を揺るがすところで
あるのに、更に年金保険料着服・横領事件が数多くあったことが表面化し、横領した職員の刑事告発を巡って、国(厚労省・社保庁)と市町村など地方自治体とが対立している。
 これまでに明らかになっている着服・横領は、社保庁職員によるものが52件(約1億7千万円)、市区町村職員等によるものが101件(約2億4千万円)。これらの事件に対する社保庁と自治体の対応は、国民が納付した保険料の着服・横領であったにも拘わらず、免職や退職などの懲戒処分で、刑事告発されているのは1件程度しかない。それも横領事件の時効は7年となっているので、現在告発できるのは9件しかない。舛添厚労相は、これに対し、盗人は刑事告発し、法に基づき処罰するとの当たり前といえば当たり前の姿勢を明らかにし、関係自治体に告発を要請した。
しかし、告発するのは東京都日野市のみで、大崎、池田、田村の3市は告発せず、その他は未定。その上、鳥取県倉吉市長など、着服が行われていない自治体から厚労相の言動に抗議がなされている。厚労相が就任当初、この問題で「社会保険庁は信用ならない。市町村はもっと信用ならない」と言ったのが背景にあり、その後の「小人の戯言」発言も反発を買っている。
それはそうだ。社保庁自体も52件、約1億7千万円の横領があるし、市区町村の横領事件の多くは何らかの形で同庁に報告してあったであろうし、そもそも厚労省・社保庁には監督責任があり、他人事のように地方自治体を批判する立場にはないのだろう。
増田総務相が、各自治体の対応につき、「適切かどうか最終的には住民が決める話」と述べたと伝えられているが、法治国家においては、横領その他の刑法上の犯罪は法に基づき判断されるべきであり、公務員については告発すべきことが定められているので(刑事訴訟法)、自治体や住民が判断することではないはずではないのか。住民が判断するのは、その上で自治体や政府の施策に対し下されるのであろう。
このように長期に亘り多数の年金横領・着服を許したことは、歴代内閣、政権与党の行政に対する監督能力が問われるところでもある。また、会計検査院の検査体制や不正者の処分についての人事院の役割も問われるところであり、行政の適正化のための監視制度のあり方も課題となりそうだ。
2、年金記録漏れについても、08年3月までに是正するとしているが、約5千万件(社保庁推定2兆3千億円相当)の内、524万件は「氏名なし」であり、丸々払い損となる。また、記録回復のために設けられた総務省の下での「第三者委員会」での救済作業も、約1万6千件の申し立てに対し、9月末で190人程度しか記録救済できておらず、記録回復のためのシステムが開発されても、救済率は低く、明年3月までの是正、救済が疑問視され始めている。それでも保険料を納付した国民の権利であるので1人でも多く救済されるべきであろうが、残りは払い損となる。もっとも、納付された約2兆円超の資金が年金基金に積み立てられていない場合の問題は残る。
このようにずさんな管理をしている上、厚生年金会館の建設など「福祉施設費」に約3兆5千億円、グリーンピアの建設や住宅融資などへの出資が約2兆円など、少なくても合計6兆8千億円近くが年金給付以外に流用、浪費されていることが民主党の質問で明らかになったと伝えられている。多くの施設については投売り状態であり、また、この金額にこれら施設の人件費、管理費への補填額を含めれば流用額は更に膨らむ恐れがある。
その上、ボーナスからの年金料徴収や給付年齢の引き上げ、給付額の引き下げが行なわれ、それでも足りないとして消費税などの引き上げが議論されている。それに有料高速道路の料金やタクシー料金、その他ガソリン、食料品などの値上げもある。
この年金問題は、老齢者だけでなく、若い世代にとっても将来不安の最大の要因となっており、消費抑制の背景ともなっている。
可能な限り多くの記録回復を速やかに行なうと共に、上記の「氏名なし」を含め、不明のまま残るものが可成り出ると予想されるので、時間を掛けて、給付申請時における確認はもとよりのこと、加入者全員に対し納付記録を通知し、記録の回復・是正作業を継続するなど、救済策を継続して行くべきであろう。また、特に問題の多い国民年金については、抜本的な制度改革を検討すると共に、基礎年金カード(仮称)を発給し、納付者や受給者が納付記録などを常時点検出来るよう改善を図るべきであろう。
3、健康保険についても、少子高齢化の中で制度を維持するため、自己負担を増やすことは仕方がないが(受益者負担原則)、65歳以上の年金対象者については、単に年齢に基づき一律に引き上げるのではなく、年金を含む総所得が例えば800万円以上については現役時同様30%負担、それ以下は25%負担、年収300万円以下は20%負担など、年収、支払能力の実態に沿った負担にすべきなのであろう。現在与党が検討しているのは、老齢者負担増の一定期間の猶予であるが、目先の総選挙目的と見られている上、所得機会の少なくなる75歳以上の負担を一律に30%に引き上げるのは酷だ。
 更に、健康保険料の他に、いつの間にか介護保険料が付け加えられたが、実質的な健康保険料の値上げであり、年間7万円以上の追加支払いは国民年金1ヶ月分以上の場合もあり、年金生活者には負担が大きい。加えて、介護保険料が国民年金から自動的に差し引かれる仕組みとなっているようであり、実質的な年金給付額の引き下げとなり、年金生活者にとっては深刻であろう。老齢者が介護福祉のために困窮することになる。
これでは、将来への年金不安に加え、所得の低い者の負担感が高くなることになり、「国民福祉」ではなく「国民酷祉」と言われても仕方がないのではないだろうか。
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テロ特措法の「条件付」延長を提案する (その3)<不許無断転載・引用> 

2007-10-02 | Weblog
テロ特措法の「条件付」延長を提案する (その3)    <不許無断転載・引用>
―A Proposal for a Qualified Extension of the Law on the Special Measures against Terrorism ―
                                                                   2007.9.22.

1.日米同盟優先か、国連の枠組み重視か (その1.参照)
2.集団的自衛権の制限的行使か、国際貢献か (その2.参照)
3.テロ特措法の「条件付」延長を提案する
 アフガニスタンにおける国際テロ制圧活動は、米国の「テロとの戦争」の一環として「不朽の自由作戦(OEF)」の作戦名で開始されたものであり、これに友邦国が加わった多国籍の枠組みの活動であるが、基本的には米国始め参加各国の主権国としての行動である。無論、国連は、各国の自衛活動を妨げるものではない。
 他方、国連安保理もこのようなテロ活動を「国際の平和と安全への脅威」との認識を明らかにし、取締りの強化などの防止措置等を世界に求めており、各国はテロの撲滅に向けての協調、貢献を求められている。また、アフガン領内については、「国際治安部隊(ISAF)」が編成されている。従って、安保理は、インド洋における軍事行動や軍事的措置を求めているわけではないが、インド洋における艦船行動を含め、現在のアフガンに対する行動はテロ制圧を目的とした国際的な協調行動と言って良いのであろう。
問題は、インド洋における活動を含め、テロ掃討活動を既に6年間継続し、また、アフガンのタリバン勢力を政権の座から降ろし、暫定政権を経て、2004年10月の大統領選挙でカルザイ大統領の下に新政権を樹立してから3年余になるにも拘わらず、従来のインド洋での海上行動を継続すべきか否かである。01年9月の安保理決議(1368号)において、「あらゆる措置を取る用意がある」とされているにも拘わらず、その後、インド洋における「海上阻止行動」については、上述したアフガン領内での国際治安部隊の継続決議の前文で言及されているものの、何らの「措置」も取られていない。アフガニスタンにカルザイ政権が樹立されて3年が経過している一方、タリバン勢力は山岳地帯などで一定の勢力を維持し、また、イスラム過激派アル・カイーダ・グループは、アフガンやパキスタン領内だけでなく、イラクや英国その他の国においてネットワークを拡大していると見られている。選挙に基づくカルザイ政権が樹立されていることを前提として、国連安保理は、同国の治安維持能力の強化を含め、国連としての新たな「措置」と国際的な支援、協力の枠組みを検討すべき時期であろう。
 このような考え方を背景として、次の通り、テロ特措法の「条件付」延長を提案したい。
(1) テロ特措法を1年を限度として延長するが、イント洋における給油と給水活動
を削減することとし、「計画」を変更する。「計画」は、6カ月後に更なる削減を念頭に再検討する。その他の措置は実施しない。
インド洋における日本の補給活動は、参加各国の責任において実施しているものである
が、「国際の平和と安全への脅威」として国連安保理が認定している国際テロ撲滅のための米国を中心とする国際的な協調行動の一環である。ブッシュ大統領など米国の要路のみならず、メルケル独首相やハワード豪首相などよりも、日本の活動を評価し、給油継続の要請がなされている。また、米国については、ブッシュ共和党政権のみならず、民主党が多数を握る下院において、イラク、アフガニスタンにおける「テロとの戦争」に対する日本の支援に謝意を表明する決議が採択されており、政権内外から一定の評価がなされている。
このような状況の中で直ちに活動を停止することは、どの政権であれ、日本政府の国際的信用を傷付けるだけでなく、国連等による次の「措置」を検討する機会も与えないこととなり、国際テロ撲滅への圧力を低下させる恐れがある。他方、アフガンに対する活動は6年余になり、また、同国には選挙に基づく政権が樹立されており、従来の活動の恒常化には弊害が予想されるので、1年を限度に延長し、補給量・頻度の削減を行う。
 なお、安倍総理が9月のAPEC首脳会議後の記者会見において、インド洋における給油は「国際公約」になったとし、また、福田康夫総理も自民総裁選挙中に同趣旨のことを述べ、給油継続の必要性に言及している。しかし、行政措置で済む話ではなく、テロ特措法の延長のため国会の承認を要する事柄である一方、7月の参院選で参議院は与野党が逆転しており、参院第一党の民主党が同法延長に反対している以上、国会での見通しの無いまま、「対外約束」することは、国会軽視等との指摘を受けても仕方が無い。しかし、自国総理の発言であるので、日本政府の国際的信用の維持の観点から、国会としても一定の配慮をする必要があろう。
 削減して浮いた予算は、明年日本でG8サミットが開催されることを念頭に置いて、空港、港湾等における国際テロ対策の強化などに充当する。
(2) その上で、国連安保理が新たな「措置」を検討するよう、政府より米国他関係
諸国及び国連安保理に要請する。
具体的には、参加国のイニシアテイヴと責任において実施されている現在のインド洋における多国籍活動の枠組みに代えて、国連の「指揮統制(Command & Control)」の下での平和維持活動とする枠組みを検討すると共に、アフガン領内で実施されている国際治安部隊(ISAF)についても同様の枠組みとするよう要請する。
また、アフガン政府の統治能力や治安維持能力の向上を中心とした支援措置を検討することが望まれる。日本としても、政府の統治能力などの向上のための研修生や学生の受け入れや第三国での研修支援など、協力し得る分野は多い。警察や場合により治安部隊の治安維持能力の向上についても、「国連の枠内での活動」であれば、研修を中心として支援方法を検討すべきであろう。
 要すれば、同法「延長」に伴い、与野党協議の上、国連安保理による新たな「措置」の検討を求める国会決議を採択するのも一案であろう。
 因みに、現在アフガニスタンにおいて、米国を含む北大西洋条約機構(NATO )諸国等37カ国で構成する国際治安部隊(ISAF)が設立され(01年12月、安保理決議1386号)、首都カブール及び周辺地域において治安維持活動を行っているが、26カ国が同盟関係にあるNATO諸国であることもあり、指揮系統はNATOが担っている(当初は参加国輪番制)。従って、参加部隊の「指揮統制」は、基本的にNATOと参加各国に委ねられており、日本は、憲法上の制約から自衛隊は派遣していない。また、ISAFが地方展開するようになってから、地方復興チーム(PRT)が設置され(安保理決議1510号)、地方における国際援助活動の実施のための治安環境の改善などを目的とした小規模の部隊が展開され、米英等27カ国が参加しているが、武力衝突が起こった場合の対応は参加部隊に委ねられることから、同様の理由で日本は派遣していない。アフガニスタンでは、「ブーツを大地に(Boots on the Ground)」とは行かなかったのである。
 しかし、国際治安部隊(ISAF)やその他の国際平和維持活動が、国連安保理において、国連の「指揮統制(Command & Control )」の下で各国から派遣される部隊が編成、展開されることになれば、日本が自衛隊を派遣しても、国連の「指揮統制」に従い、日本の「国権の発動としての武力の行使や威嚇」を伴う海外派遣とはならないので、参加は可能となる。もっとも、国連の「指揮統制」の下に服することになるので、派遣される要員は、命令ではなく、自主的な参加となるので、参加を希望する要員の事前登録など、体制整備に向けての準備が必要であろう。
 なお、国連憲章は、安保理の下に軍事参謀委員会を設置し(憲章第46、47条)、国連の「指揮」に服する正規の「国連軍」の編成を予定しているが(憲章43条)、米国等が軍隊の「指揮統制」を自国の主権のもとに保持することを望んでおり、これまで一度も組織されていない。東西冷戦も終わり、地域的な紛争や部族対立、そして国家ではない国際テロ・グループとの戦いなどが中心となっているので、正規の「国連軍」の編成も検討されて良い時期であろう。日本としても、憲法改正問題はそれとして検討するとして、「国連軍」、又は、それに類似する国連の「指揮」の下での平和維持活動の編成を検討するよう要請するなど、実質的な国連機能の強化、改革にもっと努力すると共に、実現した際の参加に向けた環境作りなどの検討に着手すべきであろう。
(3) 同法の延長ではなく、給油・給水活動に絞った新法の提出については、新法提出
後、支援の根拠や憲法解釈という基本概念からの審議が必要となり、そもそも論で行き詰るおそれがある。その上、テロ特措法の「延長」が断念されれば、現行の給油活動は中断されることになる上、新政権の国際的信用に影を落とすなど、デメリットが大きいと予想される。現存のテロ特措法であれば、既に国会の審議を経た既存の法律であり、且つ、上記(1)、(2)の「条件付」の延長であるので、歯止めは掛けられていると言えよう。
 「条件付延長」が困難な見通しであれば、給油、給水に限定した新法の提出ということになるが、現行法は失効することになり、改めて給油、給水のみを行う新たな情勢の変化や新たな大義などを国民に示す必要があろう。国際貢献の必要性については、多くの国民の理解を得れるであろうが、それを「国連の枠組み」の下で実施するか、或いは、憲法上の制約はあるが、「集団的自衛権の制限的行使」や「同盟国との関係」を重視して行うかの選択であり、本質的な検討が必要となろう。
 他方、対イラク支援特別措置法の再延長については疑義が残る。
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