内外政策評論 TheOpinion on Global & Domestic Issues

このブログは、広い視野から内外諸問題を分析し、提言を試みます。
Policy Essayist

転期にあるNHK「公共放送」のあり方 -NHK改革案ー

2007-05-19 | Weblog
                         <不許無断転載・引用>
 転期にあるNHK「公共放送」のあり方  
  -NHK改革案ー                    
                          2007年5月15日
 NHKデイレクターの不正経理問題に端を発し、受信料不払い等が70万件にも達すると言われている中で、2007年度NHK事業を含む政府予算案が、衆議院の審議を終え、参議院での審議に移る。他方、今国会に提出が予定されている放送法改正案に関し、菅義偉総務大臣は、2月27日、閣議後の会見で、NHKが受信料値下げの方針などを示さない限り、放送法改正案に「義務化」を盛り込まない可能性に言及した。同大臣は、先に、2割程度の受信料値下げを求めていた。
07年度事業予算は、6,350億円規模となっており、従来より若干削減されてはいるが、受信料徴収に要する費用は約760億円に達しており、所管する総務大臣が「約6,000億円徴収するのに800億円近く掛けるのは異常」と指摘し、外部委託の活用による経費削減策を求める発言を行うなど、国民感情を考慮しての発言と見られる。
 その事業費総額は、総額約6,000億円を超える膨大な規模となっており、そのほぼ全額が国民よりの受信料、補助金から賄われている。2004年の日本テレビ放送網(株)の放送・文化事業の総売上高(連結決算額)は、3,300億円弱であるので、放送事業として、NHK事業がいかに巨額であるかが分かる。その上、集金人などに800億円近く(総事業費の約13%)も掛けている事実を見ても、テレビが日本の隅々まで普及しているのに、テレビ化、IT化時代に対応した事業形態ではないこと物語っている。
NHKは、テレビ放送が未だ普及せず、娯楽等も少なかった時代から、その普及、発展を目的とする公共放送事業を展開し、この分野の発展に大きな貢献をして来ている。しかし、今日では、各種の民放テレビ、ラジオは日本全国に顕著に普及すると共に、核家族化と相まって、受信料支払い対象者も飛躍的に増加し、受信料も増加の一途を辿って来た。同時に、情報通信手段や番組等も、国際衛星放送やインターネットによるものなど視聴者が自由に選択出来る時代になっており、NHKがこれまで公共放送として担ってきた役割の多くは達成されていると言える。
現在、視聴者が義務的に受信料を支払い、放送事業を普及・振興していた時代から、視聴者が自由に番組等を選択し、この視聴者のニーズに各メデイアが答える時代になっている。不祥事を契機として、不払い者が加速しているが、それは不祥事そのものへの幻滅よりも、視聴者が時代の変化に気付いたということなのでもあろう。
 このように、放送事業や情報通信事業・手段の飛躍的な発展と共に、視聴者のニーズの変化や選択の多様性に対応し、NHKも概ね次のように抜本改革して行くことが望まれる。  
放送法を改正するのであれば、国民から受信料を徴収してまで維持しなくてはならない「公共放送」の番組・事業の分野や役割などを明確に示し、国民の理解が得ることが必要なのであろう。
1. NHK放送は、放送事業の普及・振興という本来の役割を概ね果たした今日、BS放送を含め、視聴を希望する者に対する「有料個別契約」とすることが最も望ましい。例えばBS放送が何故3チャンネルも必要かなども説明を要する。総合受信料とは別に、BS料金を徴収する必要性も良く分からない。テレビ放送のデジタル化に伴い、視聴希望者には受像解読装置を提供し、有料とすることは十分可能だ。
 「有料個別契約」とすることが当面困難な場合には、芸能・娯楽、スポーツ部門等を切り離すと共に、テレビ放送については、総合放送、教育放送、及びBS放送の3つのチャンネルにするなど、ラジオ放送等を含め簡素な形に再編・統合する。「公共放送」の対象とすべき事業・番組などを十分精査の上、事業予算も大幅に削減する。
切り離した芸能・娯楽、スポーツ部門は、コマーシャル等を認め、民放化するか、時間帯を売却出来ることとする。それにより、文化、芸能、スポーツなどの分野で新たな事業が生まれ、また、各地方それぞれの特色や創造性が出て来る可能性があり、この分野が活性化される可能性がある。重要なことは、NHKの番組・事業を単に縮小するということではなく、「公共放送」として残すべきは残し、それ以外は、民営化を含め、それぞれ適当な形態で発展させて行くということであり、また、残すべき「公共放送」につき国民の理解を得て置くということであろう。
2. NHKの「公共放送」事業については、そもそもの原点に立ち返り、コマーシャル・ベースでは困難な教育番組(幼児向けや老齢者向けやコミュニテイ活動を含む)と報道番組(日本語海外放送を含む)を中心として、ドキュメンタリーや歴史的、地理的、社会的な取材番組、史実に則った長編ドラマや伝統的芸能文化・工芸など、芸術性の高い番組と放送技術に関する研究・開発などに特化して行くべきであろう。 
 特にニュース番組については、日本の各地方の産業、地方議会、の動きなど、地域に密着したニュースも充実させると共に、在留邦人や旅行者の多い各国など、世界各地の情報も充実させる。
 地震、台風その他の緊急な放送については、公共放送の大きな役割ではあるが、放送事
業やインターネットなどが多様化している今日では、緊急時に多くの人がNHK以外の放送を見聞きしている可能性が高く、民放各社やインターネット・携帯での配信がより重要になっているので、緊急報についての民放・プロバイダー各社の協力に関し、現実的な改善も必要になって来ている。
3. 受信料(有料個別契約)については、現在の5分の1程度に引き下げ、年1回の徴収(分割払い可)とし、振込み制を原則にするなど、集金体制を簡素化する。
有料個別契約制とすることが困難な場合には、報道番組を中心とする新たな独立行政法人型事業体とし、政府予算の委託事業とすることも検討する。これだけで、800億円もの集金費が節約出来る。但し、報道の中立性は確保する。
上記に述べた通り、外国語海外放送は、別途NHKの関係部局他、民放各社等との「海外放送事業体」とし、アジアの本格的な放送発信局を構築する。
日本放送協会(NHK)は、1950年に設立され、58年にテレビ放送が開始されてからは、ラジオとテレビの受信契約がそれぞれ行われていたが、ラジオの一般化とテレビ事業が軌道に乗った1968年には、ラジオ受信料は廃止されている。そしてテレビ受信契約件数は、オリンピックなどを契機としてテレビが普及していた68年の2,248万件強に、そして2004年には3,815万件強に飛躍的に増加しており、この間事業予算も倍近くに膨らんでいる。他方、テレビ放送等の開発・普及のための全国的な基盤投資はほぼ完了していると言ってもよいであろう。本来であれば、68年以降にNHKの役割を再検討し、受信料を引き下げて行くべきであったのであろう。
他方、テレビの普及率は99%を越えおり、また、平均的の一家に2台以上となっているので、テレビ受信者は契約件数の2~2.5倍に達すると見込まれる。潜在的な未払い者に対する集金活動を強化すれば、契約者数、従って受信料徴収額は更に増加する可能性が強い。ましてや支払いを「義務化」すれば一挙に増える可能性がある。逆に言えば、受信料未納者から徴収出来ないほどテレビが一般化しており、戸別集金の制度自体が時代に取り残されているとも言える。
そもそも公共放送に、6,000億円を越える事業費が必要なのであろうか。ましてや支払いを「義務化」して事業費を更に増やす必要があるのであろうか。2割程度の値下げでは不十分で、その程度で「義務化」すれば、実際の徴収額は増える可能性もありそうだ。法律により国民の受信料支払いを「義務化」し、他方でNHK側の「報道の自由」を認めよとの主張は、どうもしっくりしない。国民の側の表現、思想、信条の自由や選択の自由は認められないのであろうか。「義務化」するのであれば、「契約」の概念が不可欠だ。
 各種の情報、特に娯楽、音楽・演芸、スポーツ、演芸その他の趣味などについては、選択が限られていた戦後直後の時代とは異なり、今日では、視聴者が「選ぶ」時代であり、「与える」時代ではないのではないか。 
                     Copy Right Reserved

コメント (1)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 「日本版」NSCって何? | トップ | 「天下り」原則禁止は何のた... »
最新の画像もっと見る

1 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
シャネルコピー (シャネルコピー)
2014-04-11 19:51:40
最もトップクラスのブランドシャネルコピーは世界が公認して、幾多有名な令嬢はその愛用者になりました。あらゆる荷物がザクザク入るのシャネル肩掛けバッグです。シックなブラックカラーに持ち手がCHANELらしさ溢れるデザインとなっており、デザイン性だけなく、機能性にも十分にご満足頂けるキャビアスキンマトラッセ肩掛けバッグ。どんなファッションにも合わせやすく、シャネルコピーコーディネートしやすいデザインが魅力です。長年の経験を充分に生かし、最新技術も応用して出来上がった優れたシャネル模造品なので、品質に対する顧慮はいりません。様々なコーデと合わせてお楽しみくださいませ。ハイセンスなデザインと主役級の存在感が特徴です。人気商品シャネルショッピングバッグレディースショルダーバッグ牛革を贅沢に使ってお仕立てしたシャネルコピーショッピングバッグは、持った瞬間に、その手触りに驚く方も多いはず。
返信する

コメントを投稿

Weblog」カテゴリの最新記事