内外政策評論 TheOpinion on Global & Domestic Issues

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Policy Essayist

バイデン米民主党新政権で円高ドル安再燃か!?

2021-01-27 | Weblog

バイデン米民主党新政権で円高ドル安再燃か!?

 米国の大統領選2020は2期目を目指すトランプ大統領と民主党のバイデン前副大統領との間で州毎の熾烈な選挙人争奪戦を展開し、ペンシルベニア、ジョージアなど残された4州の郵便投票数の票読みに絞られた。郵便投票の開票が進むにつれ、バイデン候補が2016年にトランプ側に制されたウイスコンシンとミシガン両州を制し、更に残る4州でも僅差ではあるが優勢が伝えられ、ペンシルベニア州を制し、過半数を超える279の選挙人を獲得したことから、2020年11月7日夜、地元デラウエア州において勝利宣言を行った。

  トランプ大統領は、落胆の色は隠せず、共和党支持者からの支援も受け、投票、特に約6,500万票に及ぶ郵便投票に不正があったとして裁判で争うことを表明している。この点は今後法廷で争われることになろうが、2021年1月20日にはバイデン新大統領のもとで民主党政権が発足する見通しとなった。

  1、オバマ民主党政権時代の政策への回帰

  バイデン新大統領が就任すれば、29歳から上院議員として活動し、オバマ大統領の下で8年間副大統領を務め、国際的にも各国要人に幅広い知己を持つベテラン政治家として、安定した政策運営を行うものと予想される。国内的には、当面コロナウイルス対策と経済の維持が最大の課題となり、国内融和と共和党との協調を念頭に置きつつ、オバマケアーや環境重視の‘グリーン経済’政策などオバマ政権時代の政策が進められると共に、経済活力維持の軸として、脱温暖化効果ガス削減を目指すグリーン経の済推進(グリーン・ニューデイール)と1929年の世界大恐慌対策として進められたニューデイールで建設された米国全土のインフラ施設の更新などが進められ、経済の牽引を推し進めるものと予想される。しかしこれらに必要な予算措置は、米国議会、特に共和党勢力が強い上院の承認を必要とするため、調整が必要となろう。

  また外交面では、対立から国際協調路線に回帰することが予想され、既に新政権発足後に世界保健機構(WHO)に復帰する方針が示唆されており、気候変動に関するパリ条約やイランとの核合意への復帰などが検討されることになろう。しかし一旦国家、行政府として脱退等したものであり、また上院との関係もあるので、復帰に当たり何らかの注文を付ける場合もあろう。

  主要国・地域との関係においては、特に中国、ロシア、そして中東、北朝鮮などとの関係、特に中国とロシアとの関係修復が当面の外交上の最大の課題となろうが、国際協調路線が事なかれ主義に陥れば、問題解決にはならず、米国のリーダーシップを発揮することにはならない可能性がある。

 

  2、日米関係は経済分野では利害調整の必要性

 日米2国間関係において、外交・安保分野での同盟関係は基本的に良好に維持されよう。民主党は自由、民主主義、人権においてリベラルな立場であり、多くのアフリカ系、ヒスパニック、アジア系の支持を得ており、日本人にとってはなじみやすい政党であるが、台湾問題、対中、対ロ関係のほか、特に貿易分野や温暖化ガス削減等の経済関係では利害の調整が必要になる可能性が高い。

 オバマ前民主党政権のもとでは、次の通り1ドル80円を割る大幅で急激な円高となり、日本経済を圧迫した。

 オバマ政権時代(2008年―2016年)の円/ドル為替相場の推移

2008年

2009年

2010年

2011年

2012年

2013年

2014年

2015年

2016年

2017年

103.36

            

単位円

93.57

87.78

79.81

79.79

97.60

105.94

121.04

108.79

112.17

                         (各年中央値 出典:IMF)

同時期の人民元/ドル為替相場の推移

2008年

2009年

2010年

2011年

2012年

2013年

2014年

2015年

2016年

2017年

0.1440

単位元

0.1464

0.1477

0.1548

0.1584

0.1614

0.1628

0.1606

0.1506

0.1480

                         (各年中央値 出典:IMF)

 円/ドル レートは、当時やや円高傾向にあったが、208年1月にオバマ大統領が就任後、急速に円高が進み、2011年及び2012年秋には1ドル80円を割る大幅な円高となった。日本は、2011年3月11日に東日本大地震とそれに伴う巨大津波により東北地方に甚大な被害があり、加えて福島原発の爆発、炉心融解によって大きな被害が出て、この地方からの部品、物資供給が途絶えるなど、日本経済に大きな影響を与えていた時期であっただけに、この時期の急激な円高は輸出に大きく影響し、日本経済の停滞に拍車を掛けた。この円高は翌2012年秋頃まで2年間続いた。因みに、中国の人民元はこの間、対ドルでやや元安になっており、円の独歩高の様相を呈していたと言えそうだ。

 そしてこの間、中国の対米輸出、米国の対中直接投資は増加し、中国経済の成長を加速させる一方、米国市場には中国製品が溢れ、難民や移民の受け入れ増と相まって、米国労働者層の職の機会を縮小させ、このような背景がトランプ共和党政権を生み、対中貿易抑制策や国境管理強化等を推進した要因となった。しかし大統領選挙の年、2020年1月、中国武漢発のコロナウイルスが米国を含む世界各国に伝染し、米国で3千万人を超える罹患者を出し、経済活動を大幅に阻害し、トランプ大統領敗退の大きな要因となったことは皮肉とは言える。もっともトランプ大統領は、約7,100万票(バイデン候補約7,400万票、郵便票集計中にて暫定値)を得ており、拮抗した根強い支持を得ていると言えよう。バイデン新大統領の下で厳しい政策運営が予想される。

 東日本大地震後、バイデン副大統領(当時)や米軍が東北地方を訪問し、復旧支援活動を行い、‘トモダチ作戦’として称えられ、心温まる日米友好の表明として記憶に残っている。しかしそれは軍事的政治的判断からであり、経済が疲弊した日本にとっては急速な円高は望ましくなかった。2012年10月に筆者は急激な円高は日本の経済には望ましく無く、早急に是正すべきことを指摘した。同年11月よりやや円安傾向とはなったが、目に見える円安は2012年1月から日銀が「異次元の金融緩和」策を実施して後であり、2013年には1ドル97.6円に回復した。

 その後トランプ政権の下では、ほぼ1ドル100円から115円の間で推移しているが、米大統領選でバイデン候補優勢との情報が流れると1ドル104円台の円高に振れる場面もあり、104、5円台で推移している。

 2021年1月にバイデン民主党政権が発足すると、コロナウイルス対策と併行して経済活動の維持・回復、雇用の確保が最大の課題となろうが、日本も程度の差こそあれ同様であり、経済問題で調整を要する局面があることを認識しつつ対応することが必要となろう。(2020.11.12.All Rights Reserved.)


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