内外政策評論 TheOpinion on Global & Domestic Issues

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Policy Essayist

国際テロ対策で問われる日本の国際貢献 -シリーズ3(最終章 提言)-

2007-12-09 | Weblog
国際テロ対策で問われる日本の国際貢献 -シリーズ3(最終章 提言)-
― 自衛隊のインド洋での給油・給水活動は国際貢献か憲法違反か -
 “Japan’s International Contribution to Anti-Terrorism Activities under Question”                    (不許無断引用・転載)

3、 より積極的な国際貢献に向けての新たな選択肢を提案する
 アフガニスタンにおける国際テロ制圧活動は、米国の「テロとの戦争」の一環として「不朽の自由作戦(OEF)」の作戦名で開始されたものであり、これに友邦国が加わった多国籍の枠組みの活動であるが、基本的には米国始め参加各国の主権国としての行動である。無論、国連は、各国の自衛活動を妨げるものではない。
 他方、国連安保理もこのようなテロ活動を「国際の平和と安全への脅威」との認識を明らかにし、取締りの強化などの防止措置等を世界に求めており、各国はテロの撲滅に向けての協調、貢献を求められている。また、アフガン領内については、「国際治安支援部隊(ISAF)」が編成されている。従って、安保理は、インド洋における軍事行動や軍事的措置を求めているわけではないが、インド洋における艦船行動を含め、現在のアフガンに対する行動はテロ制圧を目的とした国際的な協調行動と言って良いのであろう。
問題は、インド洋における活動を含め、テロ掃討活動を既に6年間継続し、また、アフガンのタリバン勢力を政権の座から降ろし、暫定政権を経て、2004年10月の大統領選挙の結果カルザイ大統領の下に新政権が樹立されてから3年余になるにも拘わらず、従来のインド洋での海上行動を継続すべきか否かである。01年9月の安保理決議(1368号)において、「あらゆる措置を取る用意がある」とされているにも拘わらず、その後、インド洋における「海上阻止行動」については、上述したアフガン領内での国際治安支援部隊の継続決議の前文で言及されているものの、何らの「措置」も取られていない。一方、アフガニスタンにおいてはタリバン勢力が山岳地帯などで一定の勢力を維持し、また、イスラム過激派アル・カイーダ・グループはアフガンやパキスタン領内だけでなく、イラクや英国その他の国においてネットワークを拡大していると見られている。選挙に基づきカルザイ政権が樹立されていることを前提として、国連安保理は、同国の治安維持能力の強化を含め、国連としての新たな「措置」と国際的な支援、協力の枠組みを検討すべき時期であろう。
 このような考え方を背景として、次の通り新テロ対策特措法の「条件付」採択と、より積極的な国際貢献のための新たな選択肢を提案したい。
(1)新テロ対策法案を再延長しないことを条件として承認することとするが、補給計
画を削減すると共に、6カ月毎に実施状況を国会に報告する。
インド洋における日本の補給活動は、上述の通り、国際的な協調行動の一環と見ること
が出来る。ブッシュ大統領など米国の要路のみならず、メルケル独首相やハワード豪首相などよりも、日本の活動を評価し、給油継続の要請がなされている。また、米国については、ブッシュ共和党政権のみならず、民主党が多数を握る下院において、イラク、アフガニスタンにおける「テロとの戦争」に対する日本の支援に謝意を表明する決議が採択されており、政権内外から一定の評価がなされている。
このような状況の中で直ちに活動を停止することは、どの政権であれ、日本政府の国際的信用を傷付けるだけでなく、国連等による次の「措置」を検討する機会も与えないこととなり、国際テロ撲滅への圧力を低下させる恐れがある。他方、アフガンに対する活動は6年余になり、また、同国には選挙に基づく政権が樹立されており、従来の活動の恒常化には弊害が予想されるので、1年を限度として補給活動を認め、補給量・頻度の削減を行う。
 なお、安倍総理が9月のAPEC首脳会議後の記者会見において、インド洋における給油は「国際公約」になったとし、また、福田康夫総理も自民総裁選挙中に同趣旨のことを述べ、給油継続の必要性に言及している。行政措置で済む話ではなく、国会の承認を要する事柄である一方、7月の参院選で参議院は与野党が逆転しており、参院第一党の民主党が同法延長に反対していた以上、国会での見通しの無いまま、「対外約束」することは、国会軽視等との指摘を受けても仕方が無い。しかし、自国総理の発言であるので、日本政府の国際的信用の維持の観点から、国会としても一定の配慮をする必要があろう。
(2)その上で、国連安保理が新たな「措置」を検討するよう、政府より米国他関係諸国及び国連安保理に要請する。
具体的には、参加国のイニシアテイヴと責任において実施されている現在のインド洋における多国籍活動の枠組みに代えて、何らかの形で国連の「指揮統制(Command & Control)」の下での海上阻止行動の枠組みとすることを検討すると共に、アフガン領内で実施されている国際治安支援部隊(ISAF)についても、指揮権をNATOから、何らかの形で国連の枠組みに移すことを検討するよう要請する。
ISAFへの自衛隊の派遣については、与党内で反対論が強い一方、民主党の小沢代表は、ISAFは国連安保理の決議に基づく国際治安支援部隊であり、派遣の可能性にも言及している。しかし、国連は、憲章第7章に基づく軍事的措置について、加盟各国よりの兵力、援助等の提供について安保理と「特別協定」を締結することし、各自の「憲法上の手続きに従って批准する」ことを求めており(43条)、各国の憲法の範囲内での貢献を前提としている。従って、現状におけるISAFへの自衛隊派遣は、「国連の枠組み」はあるが不十分であり、「国権の発動としての武力の行使や威嚇」を禁止している日本国憲法に反するものと言えよう。
因みに、アフガニスタンにおける国際治安支援部隊(ISAF)は、01年12月に安保理決議(1386号)基づき設立され、6ヶ月ごとに更新されている。現在、米国を含む北大西洋条約機構(NATO )諸国等37カ国で構成され、首都カブール及び周辺地域において治安維持活動を行っているが、26カ国が同盟関係にあるNATO諸国であることもあり、指揮系統はNATOが担っている(当初は参加国輪番制)。従って、参加部隊の「指揮統制」は、基本的にNATOと参加各国に委ねられており、日本は、憲法上の制約から自衛隊は派遣していない。また、ISAFが地方展開するようになってから、地方復興チーム(PRT)が設置され(安保理決議1510号)、地方における国際援助活動の実施のための治安環境の改善などを目的とした小規模の部隊が展開され、米英等27カ国が参加しているが、武力衝突が起こった場合の対応は参加部隊に委ねられることから、同様の理由で日本は派遣していない。アフガニスタンでは、「ブーツを大地に(Boots on the Ground)」とは行かなかったのである。
 しかし、国際治安支援部隊(ISAF)やその他の国際平和維持活動が、国連安保理において、国連の「指揮統制(Command & Control )」の下で各国から派遣される部隊が編成、展開されることになれば、日本が自衛隊を派遣しても、国連の「指揮統制」に従い、日本の「国権の発動としての武力の行使や威嚇」を伴う海外派遣とはならないので、参加は可能となる。もっとも、国連の「指揮統制」の下に服することになるので、派遣される要員は、国連指揮下の部隊への派遣の形となるので、参加を希望する要員の事前登録など、体制整備に向けての準備が必要であろう。
 なお、国連憲章は、安保理の下に軍事参謀委員会を設置し(憲章第46、47条)、国連の「指揮」に服する正規の「国連軍」の編成を予定しているが(43条)、米国等が軍隊の「指揮統制」を自国の主権のもとに保持することを望んでおり、これまで一度も組織されていない。東西冷戦も終わり、地域的な紛争や部族対立、そして国家ではない国際テロ・グループとの戦いなどが中心となっているので、常設の「国連軍」の編成も検討されて良い時期であろう。また、常設の「国連軍」の創設が直ちには困難としても、国際テロ撲滅のためのアフガニスタンのケースなど、世界が共有する目的達成のため、個々のケース毎に一定期間「国連治安支援部隊」(仮称)を創設することを検討すべきであろう。日本としても、憲法改正問題はそれとして検討するとして、「国連軍」は困難としても、それに類似する国連の「指揮」の下での平和維持部隊の編成を検討するよう要請するなど、実質的な国連機能の強化、改革にもっと努力すると共に、実現した際の参加に向けた環境作りなどの検討に着手すべきであろう。
(3)アフガン領内での国際治安支援部隊(ISAF)は、治安維持の他、復興ニーズの調査支援や人道支援なども任務としている。日本としては、憲法上の制約から、国連の指揮の下での支援部隊が創設されるまでは自衛隊を派遣することは困難であろうが、ISAF等への食料、水、衣料品等の物資を提供することは可能であろう。また、首都カブールにおいて、良質の医薬品等が不足していると言われており、アフガニスタン政府に対する医薬品や食料などの物資を支援することは十分可能である。その際、自衛隊機による空輸なども検討する。
また、アフガニスタン政府が実施上の責任を持ち、一定の安全措置を講じる場合には、日本としても、実施機関の指導のための要員(自衛隊要員を含む)の派遣や政府の統治能力などの向上のための研修生・学生の受け入れ、第三国での研修支援など、協力し得る分野は多い。警察や場合により治安部隊の治安維持能力の向上についても、「国連の枠内での活動」であれば、研修や資器材供与を中心とした支援方法を検討すべきであろう。
 従来、日本の政府開発援助(ODA)においては、軍事物資や軍事目的への転用が可能な汎用品を含め軍隊や警察等への支援は行なわないこととされているが、国連の枠組みの下での国際的な治安支援活動への物資の提供等については、国連からも各国の支援が期待されており、憲法上の制約はないので、新たな国際貢献のあり方として実施することを検討すべき時期にあろう。武器禁輸3原則との関係もあろうが、国連の枠組みの下での活動については物資提供等を可能にすべきであろう。
(4)要すれば、新法承認に伴い、与野党協議の上、国連安保理による「新たな措置」の検討を求めることなどを内容とする国会決議を採択するのも一案であろう。

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