内外政策評論 TheOpinion on Global & Domestic Issues

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Policy Essayist

社保庁ボーナスの「自主返還の変」

2007-07-06 | Weblog
社保庁ボーナスの「自主返還の変」
 7月5日、国会は閉会となったが、終盤の最大の争点となった社保庁改編関連法案は、与党の多数で既に国会を通過している。参院選でも年金問題が争点となろうが、ややもすると忘れ勝ちになるのが社保庁職員のボーナス自主返還の問題で、どの程度実施されるかが疑問視され始めている。
 1.そもそも、5千万件を越える年金保険料の支払い記載漏れやミスという未曾有の不適正業務が明るみに出て、何故「勤勉」手当であるボーナスが満額支給されるのか大いに疑問であり、このような世論の批判をかわすために「自主返還」ということになったのであろう。国民の反応は、「当然」から「筋違い」までまちまちであるが、「あれで済まされるものではない」という点では意見はほぼ一致しているようだ。
確かに、あれだけの記載漏れやミスが長期に放置されてきたことは、管理職はもとより、職員全体の組織としての怠慢、責任であり、その責任の表現の一つとして、「自主返還」は評価して良いのであろう。多くの年金加入者が実害を受けている以上、当面、ボーナス満額は国民感情に反する。
「自主返還」が、表明されている通り実施されれば、10億円内外にも達するとの報道もあり、国民としてはある程度溜飲を下げる結果になっている。総理始め関係要路も返納することになっているが、「自主的」であるので、社保庁全体としてどの程度返還されるかが問われ始めている。しかし、あれだけの公的な表明をした以上、きちんと返還しなければ、参院選前の口宣伝となり、更に不信が募る恐れがあるので、結果が注目される。
社保庁の職員約1万6千人、ボーナス一人平均約60万円強としても、合計100億円内外となり、「返還」が表明されている通り実施されても、ボーナス総額の10%程度にしかならない。しかし、今後これらの記載漏れやミスを精査し、訂正するとなると、その事務処理費だけで200億円を超える費用が必要とも報道されている。それは全て国民の新たな負担になることを認識する必要があろう。更に、記録漏れの人の救済のための相当額の費用の問題があり、国民の追加的負担の問題となる可能性がある。
2.他方、公務員についてはあれだけの本業での落ち度がありながら、そもそも何故ボーナスが満額支給されるのかという、制度上の問題が残る。民間企業では到底ありえない。
あれだけの半端でない記録漏れやミスであるので、職員レベルでも誰かが気付いていなくてはならないし、管理職レベルに何らかの形で報告されていた可能性が強い。それなのに何故今日まで放置されていたのか、また、そもそも何故記録漏れ等に気付いた時点で一つ一つ調査し、訂正して来なかったのかなど、十分に検証し、今後の対応を検討する必要があるのであろう。それをうやむやにして、新たな組織を発足させても信頼は回復出来ない恐れがあし、公務員制度全体の信頼性にも係わって来る。
総務省の下で「検証委員会」が原因などを検討しているが、人事院もこれらの記録漏れやミスが発生した時点(オンライン化と基礎年金番号実施時)に遡り、原因をきちんと調査し、対応を検討すべきなのであろう。現行の公務員制度にはいわば想定されていない事態であるが、現実に起きている大規模な不適正業務であるので、十分な検討と対応を必要としている。公務員制度を責任ある制度とする上でも検討が必要だ。
3.更に、これまで明確には答えられていない点がある。記録漏れやミスは、オンライン化と基礎年金番号実施時を中心として合計で5千万件以上と伝えられているが、それに対応する保険料納付総額は大体いくらなのか。また、その金額はどのように取り扱われたのかという点である。収支記録は合致していなくてはならない。少なくても毎年収支決算を行っていれば、記録漏れやミスは発見出来たはずであろう。その額が全て年金積立金に繰り入れられていれば、救済はより容易になろう。救済の基準等は、「第三者委員会」が検討することになっており、納付したと者は救済されなくてはならないが、それはまた国民の新たな負担となる可能性もあるので、公正な基準が望まれる。
公的年金は、すべての国民の将来の生活に関係するものである上、基本的には保険料納付を原則とし、納付者の財産権であるので、次の3点を提案したい。
(1) 毎年の保険料納付件数・納付金額と年金支給人数・支給額合計、及び、年金積立金の増減・収支を含む、分かり易い「年金収支報告」の公表、公告。
また、年金積立金の運用状況については、上記を含め、少なくても年2回公表。
(2) 「年金収支報告」の公認会計士団(3年毎程度に複数名を任命)、またはその他第三者機関による会計検査の実施。
(3) 年金納付者が、それぞれ保険料納付歴を、また、受給者が給付状況を点検出来る制度(カードか手帳方式)の確立。
 「年金収支報告」の公表、公告は、これまでも行われていても良かったことであり、速やかな実施が望まれる。

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