内外政策評論 TheOpinion on Global & Domestic Issues

このブログは、広い視野から内外諸問題を分析し、提言を試みます。
Policy Essayist

破綻状態の「新銀行東京」の行く末 (その1)

2008-03-25 | Weblog
破綻状態の「新銀行東京」の行く末 (その1)
 1. 経営難の原因
 新銀行東京は、2003年の都知事選において、石原慎太郎知事が設立を公約したもので、撤退を検討していたBNPパリバ信託銀行を買い取り、2004年に開業された。しかし貸付金の回収率が悪く資金難に陥っていることから、東京都による400億円の追加出資が検討されている。
 同銀行は、株式会社形態で、東京都が当初1,000億円を出資し、資本金等1,200億円弱で発足した。民間企業もNTTコミュニケーションズ、日立、あいおい損保など9社が出資しているが、84%強の株式を東京都が保有し、店舗数は9店であった。
 当時は90年代のバブル経済崩壊後、都市銀行による不良債権処理の出口がまだ見えておらず、貸し渋り等から多くの中小企業が資金調達に悩んでいた時代であり、中小企業対策として設立の意義はあったのであろう。都議会も、自民、公明、民主の3党が賛成した。それにより多くの中小企業が救われたのであろう。
 しかし、開業初年度06年3月の営業損益は209億円の赤字で、その後も赤字決算を続け、07年11月の中間決算では3年間の累積赤字が936億円にも及んでいる。08年3月期の経常損益も80億円弱の赤字が予想されており、累積赤字は1,000億円を越えることは確実視されている。また、07年9月末時点の貸出残高は約2,200億円強である一方、預金残高は4,284億円であり、貸し金が全額回収されない限り、預金元本は保証されない可能性が出てくる。と言うより、現状では貸し倒れ比率が高いので、全額は保証出来ない可能性が強い。
 経営難の原因は次の通りである。
(1) 放漫な貸付け規律。
 資金調達の難しい中小企業支援を目的としていたので、「無担保・無保証」の貸付を行ったこと自体については、ある程度仕方がなかった面がある。しかし、そのため貸し倒れの危険が高くなるので、少なくても事業所の所在を含む経営実体の把握と共に、事業の将来性がかなり期待できるか、経営内容や意識が十分信頼できるかなどが十分見極められなくてはならない。
 しかし、開業当初、融資を進めた職員に対し、融資回収の可能性の有無を問わず「最大200万円の報奨金」を出していたとの報道もあり、開業当時の経営陣(トヨタ自動車出身の代表執行役仁司泰正他、07年6月退任)の下での「乱脈融資」が回収不能や不良債権を積み上げた原因と伝えられている。この点については、3月10日、津島隆一現代表執行役(前東京都港湾局長、既に3代目)が旧経営陣の経営振りに関する調査報告書を公表したが、その中で指摘されている。同銀行が公開している資料(新中期経営計画)では、07年度の「貸し倒れ引当金」が316億円と予想しており、「乱脈融資」振りを物語っている。
 東京都が3月11日に明らかにしたところによると、07年12月末現在の融資先は約13,000社であるが、その内、経営赤字や債務超過の企業が43%の5,635社で、回収見通しの悪い融資額は415億円にも上る。その内訳は、赤字企業1,671社(約156億円)、債務超過に陥っている企業1,886社(約106億円)、赤字経営で債務超過状態の企業2,078社(約153億円)であり、債務超過企業は合計3,964社(約259億円)にも上る。それぞれの企業は、それぞれ努力をしているところではあろうが、将来への展望がある事業については支援するとしても、展望のない事業については、気の毒ではあるが転業や廃業などをアドバイスすべきではないだろうか。
 東京都にも多くの失業者、ホームレスなど生活困窮者がおり、納税者への負担となるような中小企業支援には自ずから限界があろう。それだけの資金があれば、多くの人々を救済できる。例えば、生活困窮者を対象とする小額、低利の融資(1回1万円以下、1週間以内は無利子、それ以上は期間により利子1~2%内外のマイクロ・ファイナンス。但し相応の担保又は保証人を条件等)や無利子の奨学金なども検討可能となろう。
 新銀行東京は金融ビジネスとして成り立っておらず、旧経営陣の高額の損失に対する経済的責任がまず問われると共に、株主である東京都他、従って納税者である都民に多大の損失を与えた法的な責任も問われなくてはならなそうだ。
 同時に、不払いの企業については、法的手段を含め、回収努力がなされなくてはならない。特に、経営実体がない融資先については、詐欺の疑いもあり得るので、刑事告訴を含め、徹底した回収努力がなされるべきであろう。
(2) 過大なシステム構築経費と営業費
 新銀行東京は、東京都が作成した基本計画に基づき、預金・融資などの管理システムに76億円、ATM等を取り扱うシステムに46億円など、システム構築に総額約124億円を投じ、物件費や人件費を含めると累積損失の4割近くが営業経費で、500億円規模に達していると伝えられている。それでも収益が上がれば良いが、ATM等を取り扱うシステムについては、利用率が低く、ATMの撤去に追い込まれるなど、ずさんな計画と放漫な経営が明らかになっている。    (Copy Right Reserved)

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 破綻状態の「新銀行東京」の... | トップ | 破綻状態の「新銀行東京」の... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

Weblog」カテゴリの最新記事