内外政策評論 TheOpinion on Global & Domestic Issues

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Policy Essayist

2~3%のベースアップで消費増を望めるか? (総合編)

2014-03-17 | Weblog

2~3%のベースアップで消費増を望めるか?      (総合編)

 政府は、4月1日からの8%への消費増税による消費の減少を懸念して財界に対し賃金引き上げを要請し、財界も一部産業の収益改善を反映して賃金ベースの引き上げ(ベア)を検討していると伝えられている。ベアの幅は、企業により異なるが、2~3%程度とも言われている。

 1.2~3%程度の賃上げ(ベア)で消費増を図れるか?!

 賃金が引き上げられることは歓迎されることであろうが、2~3%程度の賃上げ(ベア)では消費への効果は限定的と予想される。更に今春、ベアを行えるのは収益増が見込める輸出関連産業や一部流通産業が中心であるので、全産業平均では2~3%程度の賃上げ(ベア)に達しない可能性がある。他方一部企業はベアには慎重だが、収益に応じてボーナス・アップを検討しており、明らかに賃金所得は全体として増加するものと予想されるので、4月1日より消費増税が実施されてもある程度消費は維持されると予想される。

 もっとも、日本の一人当たりの国民所得は約4.3万ドルで世界第14位であり(OECD統計、2010年)、独、仏、英、伊等より上位であるので、定期昇給に加え、毎年ベースアップを実施する必要性は高度成長期と比べ少なくなっていると言えよう。一部企業が、ボーナスで所得アップを検討しているようであるが、日本の給与水準が欧米の水準となっている現在、ベアではなく、企業収益を勘案してボーナスで年俸ベースでの給与調整を行うことにも合理性があると言えよう。

 他方1999年以来の賃金所得の減少は、長期化する経済停滞による企業収益の減少を反映したものであるが、中小企業を含む一部企業は長引く経済停滞の中で賃金を抑制し雇用を維持するというワーク・シェアリングを選択している。いわゆる‘非正規就労者’が就労者全体の3分の1以上を占めている今日、賃金増も大切だか、安定した雇用増加も重要であろう。就職率は前年度よりもやや改善しているので、労働市場でのムードは上向いているが、中小企業を含む収益が改善していない企業の問題や就職率の改善、派遣やアルバイト等の低賃金問題などは今後の課題であると言えよう。それは安定的な消費を維持する上でも重要である。

 また賃金、雇用水準の問題と並んで、将来不安や消費節約を招いている原因として、破綻状態の国民年金を含む将来の年金不安があることを忘れてはならない。生活保護受給者の内60歳以上が40%以上を占めており、年金受給年齢に達する65歳以上も可なりの比率となっている。年金を掛けていても老後は年金では生活が出来ないかもしれないという不安を国民に与えており、これが若い世代の節約・貯蓄志向に繋がっていると言える。

 一方消費者物価は電気代などの公共料金や、ガソリン・灯油代、小麦、小麦製品、食用油、傷害保険料、外国パック旅行など、日用品・サービスが軒並み上昇している上、年金料率の引き上げと給付額の減額、医療費の引き上げなど家計を圧迫する要因が増えている。また4月から消費増税が実施されると電車代、バス代、高速道路料金など日常経費が増加することになるので、消費者とすれば1円でも安い商品を求め、消費節約を図るものと予想される。このような物価上昇は、日銀の2年間で2%のインフレ・ターゲットの達成に沿うものとなろうが、一部産業での2~3%程度の賃上げ(ベア)では不十分であり、収益に応じてボーナス・アップなどを通じ企業収益の役員を含む被雇用者、株主への分配の改善と共に、就職率の改善、派遣やアルバイト等の安定雇用化など雇用環境の改善が引き続き重要な課題となろう。インフレの中での景気停滞というスタグフレーションは避けなくてはならない。

 いずれにしても、輸出産業とその関連産業、及び観光産業等を中心とする企業収益の改善は、これら産業の賃金所得の増加に伴う消費者マインドの改善と企業消費や設備投資の増加、及び雇用環境の改善を牽引しており、当面局部的ではあるが経済成長を促すことになろう。

 2.公共事業の予算増の効果は限定的

 2014年度予算の政府原案では、公共事業費が5.9兆円強と増加しているが、最近の数年間、公共事業は、4.5兆から7兆円内外で推移して来ており、2013年度には公共事業費(当初予算)は約5.3 兆円、補正予算約5.5 兆円であり、通年合計10.8兆円であるので、前年度対比では経済成長に追加的な押上げ効果があるのは当初予算ベースでは0.4兆円分程度である。従って次年度においても補正予算という声が出ることになろうが、“第3の矢”の中核を担っている公共事業予算の成長への効果は非常に限定的になると言えよう。また公共事業を全国規模で余り増加すると、地方に工事が発注され、各地の土木産業は地元の工事の受注を優先するので、人件費を含む単価も上がり、また東北復興事業に関与するメリットが少なくなるなど、副作用として復興活動の抑制要因になる恐れがある。

 他方新規国債は若干減少するものの国債費は41兆円規模となっており、いずれ国民が税金等の形で返済しなくてはならないものであるので、国債を発行して公共事業を増加するという手法には限界が出始めている。

 3.大胆な肉付けが望まれる’第3の矢’経済成長戦略’

(2014.1.22.)(All Rights Reserved.)


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