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内外政策評論 TheOpinion on Global & Domestic Issues

このブログは、広い視野から内外諸問題を分析し、提言を試みます。
Policy Essayist

 地球温暖化ー融ける氷海、氷河と荒れる気候変動は止められるかー再掲

2019-06-29 | Weblog
 地球温暖化ー融ける氷海、氷河と荒れる気候変動は止められるかー再掲
 2015年3月14日から18日まで、第3回国連防災世界会議が仙台で開催された。東北大地震・大津波から5年目を迎えるこの時期に、大震災の経験と教訓をこの地から世界へ伝え、対応を考えることは大変意義があったと言えよう。他方、折しも南太平洋のバヌアツを大型サイクロン「パム」が襲い大きな被害を出していたが、根本的な原因の一つである荒れる気候変動、温暖化への対応については、途上国側は先進工業国の責任を強調し、国際的な対応を主張する先進工業国と対立し、抜本的な対応については平行線のままで終わった。しかしその間にも海水温は上がり、海流は変化し、地球の気候は悪化している。地殻変動は止められず、被害を防ぐしかないが、気候の劣化については世界が協力すれば止められる。気候の劣化に大きく影響する海や海流の温度や流れは、温度差に敏感な漁業資源にも影響する。何時までも平行線の議論をしている時ではなく、世界が具体的に行動する時期ではないのだろうか。世界のリーダーがこの問題に真剣に向き合うべき時のようだ。
 国連の「気象変動に関する政府間パネル(IPCC)」の第2作業部会は、横浜で地球温暖化の影響を検討し、2014年3月31日、報告書を取りまとめた。その中で「全ての大陸と海洋で、温暖化の重要な影響が観測されている」との認識の下で、“北極海の海氷や世界各地域における珊瑚礁は後戻り困難な影響を既に受けている”などとして生態系や人間社会への影響を指摘している。そして温暖化が進むリスクとして、世界的な気温の上昇、干ばつなどによる食糧生産の減少、大都市部での洪水、異常気象によるインフラ機能の停止などを盛り込んでいる。当コラムも、北極海の海氷の融解と縮小ブログでもこのような状況を2008年頃から指摘して来ているが、それが国際的に理解され始めたと言えよう。
 日本の地球温暖化への取り組みについては、環境省は、日本の温室効果ガスの削減目標を2020年度までに2005年度比で3.8%減とする方針である。温室効果ガスの削減目標については、民主党政権が2020年度までに“1990年度比で25%削減”との目標を提示し、国連総会でも表明している。環境省の上記の目標は、基準年を2005年としているが、1990年度比で換算すると逆に約3%増となるとされており、後退感が否めない。政府当局は、‘原子力発電が再稼働されれば高い目標に修正する’としている趣であるが、果たして原子力発電頼みで良いのであろうか。
 1、意見が分かれる地球温暖化の原因
 温暖化の速度、原因などについては議論が分かれている。スイスを本拠とする民間団体「世界自然保護基金」(WWF)は、2013年から40年までに、北極圏の氷は夏期には全て消えるとの報告を出している。国連の「気候変動に関する政府間パネル」が出した07年の第4次評価報告書でも、“ヒマラヤの氷河は2035年までに解けてなくなる可能性が強い”と指摘している。同グループはゴア米元副大統領と共にノーベル賞を受賞したが、氷河学者からは300mもの厚さの氷河がそんなに早くは融けないとの疑問が呈され、同グループがそれを認めるなど、信憑性が疑われている。地球がミニ氷河期に入っているとの説もある。

 2、荒れる世界の気候
 どの説を取るかは別として、着実に進んでいる事実がある。北極海の氷原が夏期に融けて縮小していることだ。衛星写真でも、08年においては6月末頃までは陸地まで氷海で覆われていたが、8月20日頃前後から氷海は陸地を離れ、海路が開け、砕氷船を使用すれば年間5ヶ月内外は航行可能となる。その期間は毎年伸びている。8月中旬には2-3週間程度砕氷船無しでも航行可能のようだ。6、7年前には、氷海が最も小さくなる8月下旬でも氷海は陸まで張り出ていた。また南極大陸などでは氷原がとけ、南極海に流れ出し海洋の水位を上げている。
これは今起きている現実である。短期的には夏の一定期間航行が可能になり、商業航路や観光、北極圏開発のビジネスチャンスが広がる。
 他方それは温暖化への警告でもある。北極の氷海縮小は、気流や海流による冷却効果を失わせ、地球温暖化を早め、海流や気流が激変し気候変動を激化させる恐れがある。氷海が融ければ白熊や微生物などの希少生物も死滅して行く。取り戻すことは出来ない。北極圏の環境悪化は、米、露など沿岸5か国のみの問題では無く、この地球の運命にも影響を与えている。
 現在、日本はもとより世界各地で気流や海流の動きや温度がこれまでのパターンでは予測できない荒々しい動きを示しており、局地的な豪雨や突風・竜巻、日照りや干ばつ、豪雪や吹雪などにより従来の想定を越えた被害を出している。それが世界各地で今起こっている。地球環境は、近年経験したことがない局面に入っていると言えよう。

 3、国際的な保護を必要とする北極圏と南極大陸
同時に忘れてはならないのは、反対側の南極大陸でも氷河、氷原が急速に融けているという事実だ。またヒマラヤやアルプス、キリマンジェロ等の氷河も融け、後退しているので、これらの相乗効果を考慮しなくてはならない。
 北極圏も南極同様、人類の共通の資産と位置付け、大陸棚の領有権や「線引き」の凍結や北極圏の一定の範囲を世界遺産に指定するなど、国際的な保護が必要だ。

 4、必要とされる政府レベルの対応と生活スタイルの転換
 それ以上に、地球温暖化の進行や気候変動の激化を食い止め、地球環境を保護、改善する必要性に今一度目を向けることが緊要ではないだろうか。それはこの地球自体を人類共通の遺産として保全することを意味する。
 地球環境は、政府に委ねておけば良いというものではなく、家庭や産業自体が工夫、努力しなくては改善できない。比喩的に言うと、家庭で使用する電球を10個から7個にすれば日常生活にそれほど不自由することなく節電できる。企業やオフィスビルなどについても同様で、節電を図ればコスト削減にもなり、企業利益にもプラスとなる。レジ袋や必要以上の過剰な食物などを少なくして行けば生産に要するエネルギーの節約となる。また日本が環境技術先進国と言うのであれば、自然エネルギーの組織的な開発、活用や節エネ技術の更なる開発などで温室効果ガスの削減にそれぞれの立場から努力、貢献することが出来るのではないだろうか。またそのような努力から、地球環境にもプラスとなる生活スタイルやビジネスチャンスが生まれることが期待される。
 しかし、政府や産業レベルでの対応は不可欠であろう。経済成長についても、温室効果ガスの減少を目標とし、再生可能エネルギーに重点を当てた成長モデルを構築する事が望まれる。原子力発電については、段階的に廃止することを明確にすると共に、再稼働に関しては、施設の安全性を確保する一方、各種の膨大な原子力廃棄物の最終的な処理方法を確立することがまず必要であろう。
また途上国援助においても、従来型の重厚長大なインフラ開発・整備ではなく、再生可能エネルギーを使用するなど、温室効果ガスの排出が少ない経済社会の構築を目標とする開発モデルや政府開発援助(ODA)モデルとして行くことが望まれる。
 現在中国が、アジアインフラ投資銀行(AIIB)の設立に向けて準備している。それが途上国における従来型の長大重工型、大量のエネルギー消費型のインフラ建設に投資されていくとすると地球環境の悪化に繋がることになるので、温室効果ガスの減少につながる環境改善インフラへの投資促進となることが望ましい。中国自体も、これまでのような高成長、高エネルギー消費の経済成長を継続すれば、いずれ住めない大陸となる恐れもある。    
(2014.3.31./15.4.3.改定)(All Rights Reserved.) 
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トランプ米大統領の対中通商交渉の基本姿勢を支持すべし!

2019-06-29 | Weblog
トランプ米大統領の対中通商交渉の基本姿勢を支持すべし!
 トランプ米大統領は、2018年3月、‘中国が米国の知的財産権を侵害している’として、最大で600億ドル(約6.3兆円)規模の中国製品に対し関税を課すことを目指す大統領覚書に署名した。またこの覚書中で、中国で米国を含め外国企業が合弁事業を行う際、現地企業への技術ライセンス供与が求められていることなどについて、世界貿易機関(WTO)に提訴するようUSTRに指示して以降、米・中間の通商交渉が継続している。
 なお、トランプ大統領(夫妻)の国賓としての訪日(5月25日ー28日)を心より歓迎し、有意義な滞在であることを期待する。
 両国間交渉において貿易分野では、2018年12月までに一定の進展があったと見られているが、中国の国営企業の中央管理や実質的補助、中国への企業進出に際する中国企業への技術ライセンス供与などについては中国側が原則の問題として反発し、膠着状態となっている。これに対し米国は、更なる協議の進展を促すため、25%の関税引き上げの対象を漸次広げほぼすべての中国製品にすることを表明し、6月1日出荷分より適用される見通しだ。更に米国は安全保障上の理由から、中国政府の影響が及ぶと見られるフアーウエイなどの電子機器を政府機関が使用しない方針を明らかにした。
これに対し中国側も、‘貿易戦争は希望しない’としつつも、‘攻められれば対抗する’として米国製品への報復関税を拡大する姿勢を示している。
 1、中国は対米貿易収支の大巾黒字を是正すべし
 米国の2018年の貿易赤字は全世界で8787億(約98兆円)と過去最大を更新したが、各国別ではその約48%が対中赤字となっている。中国は近年米国の最大の貿易相手国となっている上、米国の対中国貿易赤字が2000年に日本を抜いて以来、最大の赤字国の状態が継続しているので、米国が膨大な対中貿易赤字を是正したいとすることは当然と言えば当然であろう。
 トランプ大統領は、‘アメリカ・ファースト’を標榜し、国内の労働市場の確保を重視し、各国との通商関係において‘フェアーで相互の利益’の確保を主張している。これが行き過ぎると保護主義的な傾向に陥ることから批判の対象となっているが、‘フェアーで相互の利益’は通商関係だけでなく国家関係一般に通じる原則、基準であり、米国が膨大な貿易赤字の是正を求めるのも当然の姿勢と言えるところであるので、中国側として誠意ある対応が望まれる。
 米・中貿易交渉の動向は、中国ほどではないが対米貿易黒字国であるカナダ、メキシコ、EU、ドイツなどと共に日本への影響が直接、間接に予想されるが、中国が国内において実質的に中央統制経済を維持しつつ、世界の自由市場の利益を享受し続けることは公正でも公平でもなく、長期的に国際経済秩序を歪めることになるので、中国による是正を求める米国の姿勢を支持すべきであろう。
 しかしトランプ大統領も次の諸点は理解すべきであろう。
 1)米国のように成熟した市場経済では、物の貿易に加え、蓄積された膨大な資本を背景としてより多くの利潤が期待出来る海外に投資することが多くなり、貿易収支が赤字でも資本収支が黒字となりこれを補てんするので、貿易収支を切り離して見るのではなく、国際収支全体で考えるべきである。
 2)米国からの海外への資本投資や資本逃避は米国人ビジネスマン自身が行っているので、米国内への再投資を促すことは米国自身の問題である。
 3)米国の中国、アジア等への直接投資は、多くの場合本社機能やハイテク技術を備える生産工程全体で行われる形が多くみられ、いわば根こそぎ投資となり米国内にほとんど何も残らず、米国の企業家自身が米国労働者の雇用機会を奪っていると言える。それらの海外製品が米国にも輸出されると、米国の貿易収支の悪化要因となる一方、米国の投資家に多額の利益がもたらされていることを理解すべきであろう。
トランプ大統領は、米国内での製造活動を増進させたいというのであれば、輸出国を批判するだけではなく、米国自身の問題として企業家の投資態度の改善、転換も図るべきであろう。

 2、早すぎた中国の世界貿易機関(WTO)加入
 1990年代に入り急速に経済成長した中国は、2001年12月、WTOに加入した。当時のおおよその見方は、13億人の巨大市場である中国貿易が自由化され、世界市場が拡大する一方、中国経済自体も国際経済秩序に組み込まれ、市場経済化を加速させるものと期待された。
その期待の一部は達成されたが、WTOへの加入により最も利益を得たのが中国であり、いわば独り勝ちの状況となっている。
 中国は、WTO加入に際し金融の自由化、諸法制の整備などの是正が求められ、若干の改善は見られている。しかし中国は、体制上『社会主義市場経済』を標榜しそれを堅持しているので、先進工業諸国が採用している‘自由主義経済’や‘市場経済’とは異なり、国営基幹産業を含め、基本的に国家統制経済であり、国家の統制や国家補助、国家管理が強い。また実体上、元の為替レートや株価への統制や管理も行われ得る体制となっている。中国は、米国の通商交渉姿勢について、国際会議や記者会見等において、‘米国は保護主義的であり、自由市場を支持する’などとしているが、国内で中央統制経済を維持しつつ、世界では自由市場とは身勝手であり、中国はまだ国際市場における自由を論じる資格はなさそうだ。
 中国は、既に米国に次ぐ世界第2位の経済大国となり、成長率が低下したと言っても年率6~7%の成長を維持し、2019年の世界経済成長率3.2%(OECD予測)の倍以上の成長率が予想されている。しかし中国の経済体制は、2019年3月の全人代でも確認された通り、中国の特色ある『社会主義市場経済』であり、中央統制経済の実態は維持される。中国は、国内で中央統制経済を維持する一方、世界での自由市場を主張している。第2次世界戦争後の世界経済は、米国の経済力を軸とするものであり、70年代後半以降多極化の動きが見られるものの、基本的には米国経済が牽引力となって来た。しかしこのままでは、『社会主義市場経済』を採用している中国が、相対的に高い成長率を維持し続け、世界第1の経済大国となり、世界経済の中心となる可能性が高い。米国を中心とする国際経済秩序に、異質の経済体制を採る中国が加わり、単純化すれば、中国と米国という2つの経済圏による秩序に変容することになろう。
 トランプ政権はその変化を認識し、経済の分野のみならず、‘安全保障と外交政策’上の脅威ともなるとして、短期的な利益を犠牲にして中・長期の国際経済秩序を見据えて中国に対応し始めていると言えよう。
 米国が中国に対し、単に2国間貿易赤字の問題だけではなく、知的財産権保護や技術移転の強制問題、或いは為替管理の問題などを重要視し、中国側に是正を求めているのはそのためであろう。次世代通信5Gのトップを走る中国のファーウエイ社の通信機器の政府関係機関による購入や子会社を含め同社系列企業に電子機器部品の提供を禁止する措置も、米・中通商交渉における‘対中牽制’などという戦術的な対応ではなく、中・長期の影響を考慮しての対応であろう。
 2001年の中国のWTO加盟に際し、経済・金融改革、是正につき10年程度の期限を付すべきであった。国際社会の期待は裏切られた今日、加盟時に求められた是正・改革、諸条件につき、早急に厳密な審査を行うべきであろう。その上で、達成されていないか、不十分なものについては、5年から10年ほどの期限を付し、是正を求めるべきであろう。(2019.5.20.All Rights Reserved.)
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