内外政策評論 TheOpinion on Global & Domestic Issues

このブログは、広い視野から内外諸問題を分析し、提言を試みます。
Policy Essayist

ガソリン税暫定税率存廃問題と今後の制度設計(総合編)

2008-03-10 | Weblog
ガソリン税暫定税率存廃問題と今後の制度設計(総合編)
 2月29日、08年度予算案と争点となっているガソリン税の暫定税率維持を含む税制関連法案が、衆院本会議において自・公両党の賛成多数で可決された。審議が尽くされていないとする民主党他野党は共産党を除き欠席した。これで審議の場は参議院に移るが、野党3党は審議拒否している。予算案自体については参議院で採択されなくても、参院送付後30日以内で自然成立する。しかし、それを裏付けるガソリン税の暫定税率維持のための租税特別措置法改正案などの税制関連法案は、衆議院の優越性の規定はないので、参議院で否決された場合には、両院協議会を経て、衆議院で政府与党の3分の2の多数により再採択されなければならない。それも3月末までに採択されなければ期限切れとなるので、3月末までの与野党双方の調整努力が望まれるが、一つも選択肢として次の諸点を提案したい。
 1、道路建設のあり方と基準
 一般道路については、基本的には、今後とも国道については国が、県道他の道路については地方公共団体が、相互の調整を図りつつそれぞれの責任において進められるべきであろう。建設の基準は、利用率を含む「必要性」(ニーズ)に尽きる。必要な道路は作る、必要性の低い道路は作らないということである。国交省を中心として策定された道路整備計画では、今後10年間1万4千キロ、59兆円とし(その後6兆円程度の削減を示唆)、与党もこれを指示しているが、少子高齢化の中で高成長を望めない現在、有料高速道路の建設を含め、すべて必要なのかを改めて問う必要がある。
 今後の重点は、新規の道路を造成するよりも、従来の道路の抜本的な改善と生活環境の改善に重点を置くことが望まれる。既存道路の渋滞や開かずの踏み切りの解消(交差点・踏切の地下化、迂回路の建設など)、商店街を含む生活道路の改善、駐車場や荷降ろしエリアの改善、自転車道・駐輪場の敷設など、経済的・社会的コストの軽減、生活環境の改善等に優先度を置いた道路行政、国土計画へのシフトである。「道路」の意義は国土交通省のみに「特定」されたものではなく、「縦割り」を廃し、安全や環境、空港や鉄道、港湾との連携などと共に、有事の場合に備えたインフラの整備など、総合的、横断的な発想と制度作りが必要であろう。農水省予算となっている農道や林道なども、コミュニテイ道路として地方道路に統合されるべきであろう。
 道路特定財源でより問題が多いのは、「有料高速道路」の建設である。「有料」である以上、建設の基準は、必要性(利用率)と採算性でなくてはならない。採算性のない有料高速道路を作れば、赤字を累積して行くことになり、地域社会にとっては債務を含めお荷物を残す結果となる。第三セクター事業で多くの浪費と失敗例を見てきている。有料高速道路の運営は、民営化され「道路会社」に移っているが、赤字路線を抱えれば収入を食い、道路の維持・補修や新規道路建設のための内部資金が不十分となり、黒字路線の料金の引き上げや公的助成などを求めることとなり、ユーザーのみでなく、国民に追加的負担を掛ける恐れが強い。赤字路線は、赤字を累積するための事業に等しくなる。
 本来、有料高速道路を管理する公団が民営化されているので、将来的には新規の道路投資の少なくても一部は道路会社が担うべきであろう。
 2、道路特定財源と「暫定」税率の取り扱い
 暫定税率の下での「道路特定財源」は、約5.4兆円であるが、日本の「総道路投資額」(国、地方を含む)は、8兆円強となっている(道路特定財源はその60%強、07年度道路関係予算、国交省資料)。道路特定財源以外にも、一般道路などに「一般財源」が約1.8兆円(約22%)相当、また、財投・料金収入等が約1.2兆円(約15%)相当が使用されている。
 民主党は、新たな社会的ニーズに対応するため、「暫定税率」の廃止と「道路特定財源」の一般財源化を主張しているが、数字上は、総道路投資額の内、約3兆円は道路には特定されていない「一般財源」他であるので、道路建設は「道路特定財源」に限定すれば、約3兆円が道路以外の一般財源として使用出来る。社会的ニーズの変化を勘案すると、本来であれば、ガソリン税など、道路特定財源も一般財源化が望ましい。有料高速道路に何時までも優先度を与える必要はなく、新たな国民的なニーズと国民の負担能力を勘案し、優先度の高い施策に財源を再配分して行くことが望ましい。「道路特定財源」の弊害の一つは、努力をしなくても毎年5兆円以上の財源が入り、単年度で使い切らないと剰余は国庫に返納しなくてはならなくなるので、どうしても浪費傾向となる。
 他方、現実問題として地方を含め、財源を確保して行かなくてはならないが、「一般財源化」となるとその根拠法(「道路整備費の財源等の特例に関する法律」など)を改廃しなくてはならない。「道路特定財源」の「一般財源化」するということは、国交省など道路財源を抱えている省庁の財源が減少し、一般財源として財務省の所管財源に移されることを意味するので、法令を盾に行政側の抵抗もより強くなると予想される。この面での議論は十分尽くされなくてはならないが、3月末までという時間的制約を考慮すると、抜本的改編は衆議院解散、総選挙後の検討に委ね、当面の措置として次の諸点を踏まえ対応することを提案したい。
(1)十分議論を尽くした上、「道路整備費の財源等の特例に関する法律」など道路特定財源は当面維持することとするが、対象となるガソリン税などの「暫定税率」については、石油・物価高対策の一環として、上乗せ分の2分の1を減額(減税)する。減税効果は地方のユーザーにも及ぶ。
 残る半分を同法の趣旨を弾力的に解釈し、「交通の安全の確保とその円滑化を図るとともに、生活環境の改善に資するため」、地方道路を含め、既存道路の渋滞や開かずの踏み切りの解消、商店街を含む生活道路の改善、駐車場や荷降ろしエリアの改善など、経済的・社会的コストの軽減、生活環境の改善等により優先度を置いて配分する。本税部分についても同様の配慮を行う。なお、道路整備予算に関しては、農道、林道など、すべての道路を含めたものとする。
 一部に、日本の石油価格は高くないとの意見もある。しかし、米国の例では、1ガロン(約3.78リッター)が3ドル強であり、リッターでは90-100円内外である。日本の石油価格は暫定税率分プラスアルファーが高いことになる。英国でも1ガロン4.9 ドル程度であり、リッター140円内外となり、日本のほうが10円内外高い。使途についても、米国でも高速道路のほか、列車等の大量輸送手段や一般財源など、広く使用されている。最大の相違は、米国などにおいては、多くの場合、高速道路は一般道路として無料であるのに反し、日本の場合、燃料に高い暫定税率を支払った上、その財源で建設された高速道路に各国に比較して高い料金を支払い、いわば2重に負担する制度となっていることだ。無論、欧米にも有料区間はあるが、郡ごとの維持費徴収のための料金やニューヨーク市などに出入りする場合の架橋等の通行費などがあるが、いずれも相対的に低額である。
 (2)日本の「総道路投資額」(国、地方を含む)の8兆円強の内、「一般財源」が約22%(約1.8兆円)充当されているが、この部分は本来の「一般財源」に戻し、道路以外で優先度の高い施策に充当する。
 その他、財投・料金収入等が約15%(1.2兆円)充当されているが、上記(1)の趣旨に沿って配分することとし、特に交通事故死被害者家族の救済(子弟への無償奨学金など)の他、「生活環境の改善等」に重点を置いて配分する。財投で有料高速道路に充当する部分については、今後極力民営化された道路会社による投融資に切り替えて行くことも検討すべきであろう。
 ガソリン税の暫定税率については、石油・物価高の中で継続して追加的な負担を国民に強いるか、軽減するかの選択になる。また、道路特定財源については、これまで通りのスピードで有料高速道路や新規道路を建設するか、新たな社会的ニーズに優先度を置いて再配分するかの選択になる。年間8兆円強もの財源を当てて道路を造り続け、歳出の簡素化、再配分を行わないことになると、年金等で財源が不足することを前提として「消費税」等の国民負担を引き上げが加速することにもなりそうだ。
 この問題は、上乗せされた暫定税率部分の2兆6千万円の取り扱い以上に、制度設計の問題であり、国民生活にとっても、日本の未来予想図にとっても重要な意味合いを含んでいる。上記の提案は、時間的制約の中での現実的な選択肢の一つである。今後の日本の制度設計をどうするかとの観点から、与野党間で国民が納得する接点を模索して欲しいものだ。
 接点が得られない場合には、この問題や年金記録漏れ問題を含む年金制度のあり方、予算・行政のあり方などにつき、民意を問う必要も出てこよう。必要があれば、その間補正予算を組めばよい。民意を問うことは、政治の空白などではなく、民主主義の基礎であり、民意に沿わない政治、行政こそが民意の空白を生むことになる。                    (Copy Right Reserved)
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ガソリン税暫定税率存廃問題と今後の制度設計(総合編)

2008-03-10 | Weblog
ガソリン税暫定税率存廃問題と今後の制度設計(総合編)
 2月29日、08年度予算案と争点となっているガソリン税の暫定税率維持を含む税制関連法案が、衆院本会議において自・公両党の賛成多数で可決された。審議が尽くされていないとする民主党他野党は共産党を除き欠席した。これで審議の場は参議院に移るが、野党3党は審議拒否している。予算案自体については参議院で採択されなくても、参院送付後30日以内で自然成立する。しかし、それを裏付けるガソリン税の暫定税率維持のための租税特別措置法改正案などの税制関連法案は、衆議院の優越性の規定はないので、参議院で否決された場合には、両院協議会を経て、衆議院で政府与党の3分の2の多数により再採択されなければならない。それも3月末までに採択されなければ期限切れとなるので、3月末までの与野党双方の調整努力が望まれるが、一つも選択肢として次の諸点を提案したい。
 1、道路建設のあり方と基準
 一般道路については、基本的には、今後とも国道については国が、県道他の道路については地方公共団体が、相互の調整を図りつつそれぞれの責任において進められるべきであろう。建設の基準は、利用率を含む「必要性」(ニーズ)に尽きる。必要な道路は作る、必要性の低い道路は作らないということである。国交省を中心として策定された道路整備計画では、今後10年間1万4千キロ、59兆円とし(その後6兆円程度の削減を示唆)、与党もこれを指示しているが、少子高齢化の中で高成長を望めない現在、有料高速道路の建設を含め、すべて必要なのかを改めて問う必要がある。
 今後の重点は、新規の道路を造成するよりも、従来の道路の抜本的な改善と生活環境の改善に重点を置くことが望まれる。既存道路の渋滞や開かずの踏み切りの解消(交差点・踏切の地下化、迂回路の建設など)、商店街を含む生活道路の改善、駐車場や荷降ろしエリアの改善、自転車道・駐輪場の敷設など、経済的・社会的コストの軽減、生活環境の改善等に優先度を置いた道路行政、国土計画へのシフトである。「道路」の意義は国土交通省のみに「特定」されたものではなく、「縦割り」を廃し、安全や環境、空港や鉄道、港湾との連携などと共に、有事の場合に備えたインフラの整備など、総合的、横断的な発想と制度作りが必要であろう。農水省予算となっている農道や林道なども、コミュニテイ道路として地方道路に統合されるべきであろう。
 道路特定財源でより問題が多いのは、「有料高速道路」の建設である。「有料」である以上、建設の基準は、必要性(利用率)と採算性でなくてはならない。採算性のない有料高速道路を作れば、赤字を累積して行くことになり、地域社会にとっては債務を含めお荷物を残す結果となる。第三セクター事業で多くの浪費と失敗例を見てきている。有料高速道路の運営は、民営化され「道路会社」に移っているが、赤字路線を抱えれば収入を食い、道路の維持・補修や新規道路建設のための内部資金が不十分となり、黒字路線の料金の引き上げや公的助成などを求めることとなり、ユーザーのみでなく、国民に追加的負担を掛ける恐れが強い。赤字路線は、赤字を累積するための事業に等しくなる。
 本来、有料高速道路を管理する公団が民営化されているので、将来的には新規の道路投資の少なくても一部は道路会社が担うべきであろう。
 2、道路特定財源と「暫定」税率の取り扱い
 暫定税率の下での「道路特定財源」は、約5.4兆円であるが、日本の「総道路投資額」(国、地方を含む)は、8兆円強となっている(道路特定財源はその60%強、07年度道路関係予算、国交省資料)。道路特定財源以外にも、一般道路などに「一般財源」が約1.8兆円(約22%)相当、また、財投・料金収入等が約1.2兆円(約15%)相当が使用されている。
 民主党は、新たな社会的ニーズに対応するため、「暫定税率」の廃止と「道路特定財源」の一般財源化を主張しているが、数字上は、総道路投資額の内、約3兆円は道路には特定されていない「一般財源」他であるので、道路建設は「道路特定財源」に限定すれば、約3兆円が道路以外の一般財源として使用出来る。社会的ニーズの変化を勘案すると、本来であれば、ガソリン税など、道路特定財源も一般財源化が望ましい。有料高速道路に何時までも優先度を与える必要はなく、新たな国民的なニーズと国民の負担能力を勘案し、優先度の高い施策に財源を再配分して行くことが望ましい。「道路特定財源」の弊害の一つは、努力をしなくても毎年5兆円以上の財源が入り、単年度で使い切らないと剰余は国庫に返納しなくてはならなくなるので、どうしても浪費傾向となる。
 他方、現実問題として地方を含め、財源を確保して行かなくてはならないが、「一般財源化」となるとその根拠法(「道路整備費の財源等の特例に関する法律」など)を改廃しなくてはならない。「道路特定財源」の「一般財源化」するということは、国交省など道路財源を抱えている省庁の財源が減少し、一般財源として財務省の所管財源に移されることを意味するので、法令を盾に行政側の抵抗もより強くなると予想される。この面での議論は十分尽くされなくてはならないが、3月末までという時間的制約を考慮すると、抜本的改編は衆議院解散、総選挙後の検討に委ね、当面の措置として次の諸点を踏まえ対応することを提案したい。
(1)十分議論を尽くした上、「道路整備費の財源等の特例に関する法律」など道路特定財源は当面維持することとするが、対象となるガソリン税などの「暫定税率」については、石油・物価高対策の一環として、上乗せ分の2分の1を減額(減税)する。減税効果は地方のユーザーにも及ぶ。
 残る半分を同法の趣旨を弾力的に解釈し、「交通の安全の確保とその円滑化を図るとともに、生活環境の改善に資するため」、地方道路を含め、既存道路の渋滞や開かずの踏み切りの解消、商店街を含む生活道路の改善、駐車場や荷降ろしエリアの改善など、経済的・社会的コストの軽減、生活環境の改善等により優先度を置いて配分する。本税部分についても同様の配慮を行う。なお、道路整備予算に関しては、農道、林道など、すべての道路を含めたものとする。
 一部に、日本の石油価格は高くないとの意見もある。しかし、米国の例では、1ガロン(約3.78リッター)が3ドル強であり、リッターでは90-100円内外である。日本の石油価格は暫定税率分プラスアルファーが高いことになる。英国でも1ガロン4.9 ドル程度であり、リッター140円内外となり、日本のほうが10円内外高い。使途についても、米国でも高速道路のほか、列車等の大量輸送手段や一般財源など、広く使用されている。最大の相違は、米国などにおいては、多くの場合、高速道路は一般道路として無料であるのに反し、日本の場合、燃料に高い暫定税率を支払った上、その財源で建設された高速道路に各国に比較して高い料金を支払い、いわば2重に負担する制度となっていることだ。無論、欧米にも有料区間はあるが、郡ごとの維持費徴収のための料金やニューヨーク市などに出入りする場合の架橋等の通行費などがあるが、いずれも相対的に低額である。
 (2)日本の「総道路投資額」(国、地方を含む)の8兆円強の内、「一般財源」が約22%(約1.8兆円)充当されているが、この部分は本来の「一般財源」に戻し、道路以外で優先度の高い施策に充当する。
 その他、財投・料金収入等が約15%(1.2兆円)充当されているが、上記(1)の趣旨に沿って配分することとし、特に交通事故死被害者家族の救済(子弟への無償奨学金など)の他、「生活環境の改善等」に重点を置いて配分する。財投で有料高速道路に充当する部分については、今後極力民営化された道路会社による投融資に切り替えて行くことも検討すべきであろう。
 ガソリン税の暫定税率については、石油・物価高の中で継続して追加的な負担を国民に強いるか、軽減するかの選択になる。また、道路特定財源については、これまで通りのスピードで有料高速道路や新規道路を建設するか、新たな社会的ニーズに優先度を置いて再配分するかの選択になる。年間8兆円強もの財源を当てて道路を造り続け、歳出の簡素化、再配分を行わないことになると、年金等で財源が不足することを前提として「消費税」等の国民負担を引き上げが加速することにもなりそうだ。
 この問題は、上乗せされた暫定税率部分の2兆6千万円の取り扱い以上に、制度設計の問題であり、国民生活にとっても、日本の未来予想図にとっても重要な意味合いを含んでいる。上記の提案は、時間的制約の中での現実的な選択肢の一つである。今後の日本の制度設計をどうするかとの観点から、与野党間で国民が納得する接点を模索して欲しいものだ。
 接点が得られない場合には、この問題や年金記録漏れ問題を含む年金制度のあり方、予算・行政のあり方などにつき、民意を問う必要も出てこよう。必要があれば、その間補正予算を組めばよい。民意を問うことは、政治の空白などではなく、民主主義の基礎であり、民意に沿わない政治、行政こそが民意の空白を生むことになる。                    (Copy Right Reserved)
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 2月29日、08年度予算案と争点となっているガソリン税の暫定税率維持を含む税制関連法案が、衆院本会議において自・公両党の賛成多数で可決された。審議が尽くされていないとする民主党他野党は共産党を除き欠席した。これで審議の場は参議院に移るが、野党3党は審議拒否している。予算案自体については参議院で採択されなくても、参院送付後30日以内で自然成立する。しかし、それを裏付けるガソリン税の暫定税率維持のための租税特別措置法改正案などの税制関連法案は、衆議院の優越性の規定はないので、参議院で否決された場合には、両院協議会を経て、衆議院で政府与党の3分の2の多数により再採択されなければならない。それも3月末までに採択されなければ期限切れとなるので、3月末までの与野党双方の調整努力が望まれるが、一つも選択肢として次の諸点を提案したい。
 1、道路建設のあり方と基準
 一般道路については、基本的には、今後とも国道については国が、県道他の道路については地方公共団体が、相互の調整を図りつつそれぞれの責任において進められるべきであろう。建設の基準は、利用率を含む「必要性」(ニーズ)に尽きる。必要な道路は作る、必要性の低い道路は作らないということである。国交省を中心として策定された道路整備計画では、今後10年間1万4千キロ、59兆円とし(その後6兆円程度の削減を示唆)、与党もこれを指示しているが、少子高齢化の中で高成長を望めない現在、有料高速道路の建設を含め、すべて必要なのかを改めて問う必要がある。
 今後の重点は、新規の道路を造成するよりも、従来の道路の抜本的な改善と生活環境の改善に重点を置くことが望まれる。既存道路の渋滞や開かずの踏み切りの解消(交差点・踏切の地下化、迂回路の建設など)、商店街を含む生活道路の改善、駐車場や荷降ろしエリアの改善、自転車道・駐輪場の敷設など、経済的・社会的コストの軽減、生活環境の改善等に優先度を置いた道路行政、国土計画へのシフトである。「道路」の意義は国土交通省のみに「特定」されたものではなく、「縦割り」を廃し、安全や環境、空港や鉄道、港湾との連携などと共に、有事の場合に備えたインフラの整備など、総合的、横断的な発想と制度作りが必要であろう。農水省予算となっている農道や林道なども、コミュニテイ道路として地方道路に統合されるべきであろう。
 道路特定財源でより問題が多いのは、「有料高速道路」の建設である。「有料」である以上、建設の基準は、必要性(利用率)と採算性でなくてはならない。採算性のない有料高速道路を作れば、赤字を累積して行くことになり、地域社会にとっては債務を含めお荷物を残す結果となる。第三セクター事業で多くの浪費と失敗例を見てきている。有料高速道路の運営は、民営化され「道路会社」に移っているが、赤字路線を抱えれば収入を食い、道路の維持・補修や新規道路建設のための内部資金が不十分となり、黒字路線の料金の引き上げや公的助成などを求めることとなり、ユーザーのみでなく、国民に追加的負担を掛ける恐れが強い。赤字路線は、赤字を累積するための事業に等しくなる。
 本来、有料高速道路を管理する公団が民営化されているので、将来的には新規の道路投資の少なくても一部は道路会社が担うべきであろう。
 2、道路特定財源と「暫定」税率の取り扱い
 暫定税率の下での「道路特定財源」は、約5.4兆円であるが、日本の「総道路投資額」(国、地方を含む)は、8兆円強となっている(道路特定財源はその60%強、07年度道路関係予算、国交省資料)。道路特定財源以外にも、一般道路などに「一般財源」が約1.8兆円(約22%)相当、また、財投・料金収入等が約1.2兆円(約15%)相当が使用されている。
 民主党は、新たな社会的ニーズに対応するため、「暫定税率」の廃止と「道路特定財源」の一般財源化を主張しているが、数字上は、総道路投資額の内、約3兆円は道路には特定されていない「一般財源」他であるので、道路建設は「道路特定財源」に限定すれば、約3兆円が道路以外の一般財源として使用出来る。社会的ニーズの変化を勘案すると、本来であれば、ガソリン税など、道路特定財源も一般財源化が望ましい。有料高速道路に何時までも優先度を与える必要はなく、新たな国民的なニーズと国民の負担能力を勘案し、優先度の高い施策に財源を再配分して行くことが望ましい。「道路特定財源」の弊害の一つは、努力をしなくても毎年5兆円以上の財源が入り、単年度で使い切らないと剰余は国庫に返納しなくてはならなくなるので、どうしても浪費傾向となる。
 他方、現実問題として地方を含め、財源を確保して行かなくてはならないが、「一般財源化」となるとその根拠法(「道路整備費の財源等の特例に関する法律」など)を改廃しなくてはならない。「道路特定財源」の「一般財源化」するということは、国交省など道路財源を抱えている省庁の財源が減少し、一般財源として財務省の所管財源に移されることを意味するので、法令を盾に行政側の抵抗もより強くなると予想される。この面での議論は十分尽くされなくてはならないが、3月末までという時間的制約を考慮すると、抜本的改編は衆議院解散、総選挙後の検討に委ね、当面の措置として次の諸点を踏まえ対応することを提案したい。
(1)十分議論を尽くした上、「道路整備費の財源等の特例に関する法律」など道路特定財源は当面維持することとするが、対象となるガソリン税などの「暫定税率」については、石油・物価高対策の一環として、上乗せ分の2分の1を減額(減税)する。減税効果は地方のユーザーにも及ぶ。
 残る半分を同法の趣旨を弾力的に解釈し、「交通の安全の確保とその円滑化を図るとともに、生活環境の改善に資するため」、地方道路を含め、既存道路の渋滞や開かずの踏み切りの解消、商店街を含む生活道路の改善、駐車場や荷降ろしエリアの改善など、経済的・社会的コストの軽減、生活環境の改善等により優先度を置いて配分する。本税部分についても同様の配慮を行う。なお、道路整備予算に関しては、農道、林道など、すべての道路を含めたものとする。
 一部に、日本の石油価格は高くないとの意見もある。しかし、米国の例では、1ガロン(約3.78リッター)が3ドル強であり、リッターでは90-100円内外である。日本の石油価格は暫定税率分プラスアルファーが高いことになる。英国でも1ガロン4.9 ドル程度であり、リッター140円内外となり、日本のほうが10円内外高い。使途についても、米国でも高速道路のほか、列車等の大量輸送手段や一般財源など、広く使用されている。最大の相違は、米国などにおいては、多くの場合、高速道路は一般道路として無料であるのに反し、日本の場合、燃料に高い暫定税率を支払った上、その財源で建設された高速道路に各国に比較して高い料金を支払い、いわば2重に負担する制度となっていることだ。無論、欧米にも有料区間はあるが、郡ごとの維持費徴収のための料金やニューヨーク市などに出入りする場合の架橋等の通行費などがあるが、いずれも相対的に低額である。
 (2)日本の「総道路投資額」(国、地方を含む)の8兆円強の内、「一般財源」が約22%(約1.8兆円)充当されているが、この部分は本来の「一般財源」に戻し、道路以外で優先度の高い施策に充当する。
 その他、財投・料金収入等が約15%(1.2兆円)充当されているが、上記(1)の趣旨に沿って配分することとし、特に交通事故死被害者家族の救済(子弟への無償奨学金など)の他、「生活環境の改善等」に重点を置いて配分する。財投で有料高速道路に充当する部分については、今後極力民営化された道路会社による投融資に切り替えて行くことも検討すべきであろう。
 ガソリン税の暫定税率については、石油・物価高の中で継続して追加的な負担を国民に強いるか、軽減するかの選択になる。また、道路特定財源については、これまで通りのスピードで有料高速道路や新規道路を建設するか、新たな社会的ニーズに優先度を置いて再配分するかの選択になる。年間8兆円強もの財源を当てて道路を造り続け、歳出の簡素化、再配分を行わないことになると、年金等で財源が不足することを前提として「消費税」等の国民負担を引き上げが加速することにもなりそうだ。
 この問題は、上乗せされた暫定税率部分の2兆6千万円の取り扱い以上に、制度設計の問題であり、国民生活にとっても、日本の未来予想図にとっても重要な意味合いを含んでいる。上記の提案は、時間的制約の中での現実的な選択肢の一つである。今後の日本の制度設計をどうするかとの観点から、与野党間で国民が納得する接点を模索して欲しいものだ。
 接点が得られない場合には、この問題や年金記録漏れ問題を含む年金制度のあり方、予算・行政のあり方などにつき、民意を問う必要も出てこよう。必要があれば、その間補正予算を組めばよい。民意を問うことは、政治の空白などではなく、民主主義の基礎であり、民意に沿わない政治、行政こそが民意の空白を生むことになる。                    (Copy Right Reserved)
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 2月29日、08年度予算案と争点となっているガソリン税の暫定税率維持を含む税制関連法案が、衆院本会議において自・公両党の賛成多数で可決された。審議が尽くされていないとする民主党他野党は共産党を除き欠席した。これで審議の場は参議院に移るが、野党3党は審議拒否している。予算案自体については参議院で採択されなくても、参院送付後30日以内で自然成立する。しかし、それを裏付けるガソリン税の暫定税率維持のための租税特別措置法改正案などの税制関連法案は、衆議院の優越性の規定はないので、参議院で否決された場合には、両院協議会を経て、衆議院で政府与党の3分の2の多数により再採択されなければならない。それも3月末までに採択されなければ期限切れとなるので、3月末までの与野党双方の調整努力が望まれるが、一つも選択肢として次の諸点を提案したい。
 1、道路建設のあり方と基準
 一般道路については、基本的には、今後とも国道については国が、県道他の道路については地方公共団体が、相互の調整を図りつつそれぞれの責任において進められるべきであろう。建設の基準は、利用率を含む「必要性」(ニーズ)に尽きる。必要な道路は作る、必要性の低い道路は作らないということである。国交省を中心として策定された道路整備計画では、今後10年間1万4千キロ、59兆円とし(その後6兆円程度の削減を示唆)、与党もこれを指示しているが、少子高齢化の中で高成長を望めない現在、有料高速道路の建設を含め、すべて必要なのかを改めて問う必要がある。
 今後の重点は、新規の道路を造成するよりも、従来の道路の抜本的な改善と生活環境の改善に重点を置くことが望まれる。既存道路の渋滞や開かずの踏み切りの解消(交差点・踏切の地下化、迂回路の建設など)、商店街を含む生活道路の改善、駐車場や荷降ろしエリアの改善、自転車道・駐輪場の敷設など、経済的・社会的コストの軽減、生活環境の改善等に優先度を置いた道路行政、国土計画へのシフトである。「道路」の意義は国土交通省のみに「特定」されたものではなく、「縦割り」を廃し、安全や環境、空港や鉄道、港湾との連携などと共に、有事の場合に備えたインフラの整備など、総合的、横断的な発想と制度作りが必要であろう。農水省予算となっている農道や林道なども、コミュニテイ道路として地方道路に統合されるべきであろう。
 道路特定財源でより問題が多いのは、「有料高速道路」の建設である。「有料」である以上、建設の基準は、必要性(利用率)と採算性でなくてはならない。採算性のない有料高速道路を作れば、赤字を累積して行くことになり、地域社会にとっては債務を含めお荷物を残す結果となる。第三セクター事業で多くの浪費と失敗例を見てきている。有料高速道路の運営は、民営化され「道路会社」に移っているが、赤字路線を抱えれば収入を食い、道路の維持・補修や新規道路建設のための内部資金が不十分となり、黒字路線の料金の引き上げや公的助成などを求めることとなり、ユーザーのみでなく、国民に追加的負担を掛ける恐れが強い。赤字路線は、赤字を累積するための事業に等しくなる。
 本来、有料高速道路を管理する公団が民営化されているので、将来的には新規の道路投資の少なくても一部は道路会社が担うべきであろう。
 2、道路特定財源と「暫定」税率の取り扱い
 暫定税率の下での「道路特定財源」は、約5.4兆円であるが、日本の「総道路投資額」(国、地方を含む)は、8兆円強となっている(道路特定財源はその60%強、07年度道路関係予算、国交省資料)。道路特定財源以外にも、一般道路などに「一般財源」が約1.8兆円(約22%)相当、また、財投・料金収入等が約1.2兆円(約15%)相当が使用されている。
 民主党は、新たな社会的ニーズに対応するため、「暫定税率」の廃止と「道路特定財源」の一般財源化を主張しているが、数字上は、総道路投資額の内、約3兆円は道路には特定されていない「一般財源」他であるので、道路建設は「道路特定財源」に限定すれば、約3兆円が道路以外の一般財源として使用出来る。社会的ニーズの変化を勘案すると、本来であれば、ガソリン税など、道路特定財源も一般財源化が望ましい。有料高速道路に何時までも優先度を与える必要はなく、新たな国民的なニーズと国民の負担能力を勘案し、優先度の高い施策に財源を再配分して行くことが望ましい。「道路特定財源」の弊害の一つは、努力をしなくても毎年5兆円以上の財源が入り、単年度で使い切らないと剰余は国庫に返納しなくてはならなくなるので、どうしても浪費傾向となる。
 他方、現実問題として地方を含め、財源を確保して行かなくてはならないが、「一般財源化」となるとその根拠法(「道路整備費の財源等の特例に関する法律」など)を改廃しなくてはならない。「道路特定財源」の「一般財源化」するということは、国交省など道路財源を抱えている省庁の財源が減少し、一般財源として財務省の所管財源に移されることを意味するので、法令を盾に行政側の抵抗もより強くなると予想される。この面での議論は十分尽くされなくてはならないが、3月末までという時間的制約を考慮すると、抜本的改編は衆議院解散、総選挙後の検討に委ね、当面の措置として次の諸点を踏まえ対応することを提案したい。
(1)十分議論を尽くした上、「道路整備費の財源等の特例に関する法律」など道路特定財源は当面維持することとするが、対象となるガソリン税などの「暫定税率」については、石油・物価高対策の一環として、上乗せ分の2分の1を減額(減税)する。減税効果は地方のユーザーにも及ぶ。
 残る半分を同法の趣旨を弾力的に解釈し、「交通の安全の確保とその円滑化を図るとともに、生活環境の改善に資するため」、地方道路を含め、既存道路の渋滞や開かずの踏み切りの解消、商店街を含む生活道路の改善、駐車場や荷降ろしエリアの改善など、経済的・社会的コストの軽減、生活環境の改善等により優先度を置いて配分する。本税部分についても同様の配慮を行う。なお、道路整備予算に関しては、農道、林道など、すべての道路を含めたものとする。
 一部に、日本の石油価格は高くないとの意見もある。しかし、米国の例では、1ガロン(約3.78リッター)が3ドル強であり、リッターでは90-100円内外である。日本の石油価格は暫定税率分プラスアルファーが高いことになる。英国でも1ガロン4.9 ドル程度であり、リッター140円内外となり、日本のほうが10円内外高い。使途についても、米国でも高速道路のほか、列車等の大量輸送手段や一般財源など、広く使用されている。最大の相違は、米国などにおいては、多くの場合、高速道路は一般道路として無料であるのに反し、日本の場合、燃料に高い暫定税率を支払った上、その財源で建設された高速道路に各国に比較して高い料金を支払い、いわば2重に負担する制度となっていることだ。無論、欧米にも有料区間はあるが、郡ごとの維持費徴収のための料金やニューヨーク市などに出入りする場合の架橋等の通行費などがあるが、いずれも相対的に低額である。
 (2)日本の「総道路投資額」(国、地方を含む)の8兆円強の内、「一般財源」が約22%(約1.8兆円)充当されているが、この部分は本来の「一般財源」に戻し、道路以外で優先度の高い施策に充当する。
 その他、財投・料金収入等が約15%(1.2兆円)充当されているが、上記(1)の趣旨に沿って配分することとし、特に交通事故死被害者家族の救済(子弟への無償奨学金など)の他、「生活環境の改善等」に重点を置いて配分する。財投で有料高速道路に充当する部分については、今後極力民営化された道路会社による投融資に切り替えて行くことも検討すべきであろう。
 ガソリン税の暫定税率については、石油・物価高の中で継続して追加的な負担を国民に強いるか、軽減するかの選択になる。また、道路特定財源については、これまで通りのスピードで有料高速道路や新規道路を建設するか、新たな社会的ニーズに優先度を置いて再配分するかの選択になる。年間8兆円強もの財源を当てて道路を造り続け、歳出の簡素化、再配分を行わないことになると、年金等で財源が不足することを前提として「消費税」等の国民負担を引き上げが加速することにもなりそうだ。
 この問題は、上乗せされた暫定税率部分の2兆6千万円の取り扱い以上に、制度設計の問題であり、国民生活にとっても、日本の未来予想図にとっても重要な意味合いを含んでいる。上記の提案は、時間的制約の中での現実的な選択肢の一つである。今後の日本の制度設計をどうするかとの観点から、与野党間で国民が納得する接点を模索して欲しいものだ。
 接点が得られない場合には、この問題や年金記録漏れ問題を含む年金制度のあり方、予算・行政のあり方などにつき、民意を問う必要も出てこよう。必要があれば、その間補正予算を組めばよい。民意を問うことは、政治の空白などではなく、民主主義の基礎であり、民意に沿わない政治、行政こそが民意の空白を生むことになる。                    (Copy Right Reserved)
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ガソリン税暫定税率存廃問題と今後の制度設計(総合編)

2008-03-10 | Weblog
   ガソリン税暫定税率存廃問題と今後の制度設計(総合編)
 2月29日、08年度予算案と争点となっているガソリン税の暫定税率維持を含む税制関連法案が、衆院本会議において自・公両党の賛成多数で可決された。審議が尽くされていないとする民主党他野党は共産党を除き欠席した。これで審議の場は参議院に移るが、野党3党は審議拒否している。予算案自体については参議院で採択されなくても、参院送付後30日以内で自然成立する。しかし、それを裏付けるガソリン税の暫定税率維持のための租税特別措置法改正案などの税制関連法案は、衆議院の優越性の規定はないので、参議院で否決された場合には、両院協議会を経て、衆議院で政府与党の3分の2の多数により再採択されなければならない。それも3月末までに採択されなければ期限切れとなるので、3月末までの与野党双方の調整努力が望まれるが、一つも選択肢として次の諸点を提案したい。
 1、道路建設のあり方と基準
 一般道路については、基本的には、今後とも国道については国が、県道他の道路については地方公共団体が、相互の調整を図りつつそれぞれの責任において進められるべきであろう。建設の基準は、利用率を含む「必要性」(ニーズ)に尽きる。必要な道路は作る、必要性の低い道路は作らないということである。国交省を中心として策定された道路整備計画では、今後10年間1万4千キロ、59兆円とし(その後6兆円程度の削減を示唆)、与党もこれを指示しているが、少子高齢化の中で高成長を望めない現在、有料高速道路の建設を含め、すべて必要なのかを改めて問う必要がある。
 今後の重点は、新規の道路を造成するよりも、従来の道路の抜本的な改善と生活環境の改善に重点を置くことが望まれる。既存道路の渋滞や開かずの踏み切りの解消(交差点・踏切の地下化、迂回路の建設など)、商店街を含む生活道路の改善、駐車場や荷降ろしエリアの改善、自転車道・駐輪場の敷設など、経済的・社会的コストの軽減、生活環境の改善等に優先度を置いた道路行政、国土計画へのシフトである。「道路」の意義は国土交通省のみに「特定」されたものではなく、「縦割り」を廃し、安全や環境、空港や鉄道、港湾との連携などと共に、有事の場合に備えたインフラの整備など、総合的、横断的な発想と制度作りが必要であろう。農水省予算となっている農道や林道なども、コミュニテイ道路として地方道路に統合されるべきであろう。
 道路特定財源でより問題が多いのは、「有料高速道路」の建設である。「有料」である以上、建設の基準は、必要性(利用率)と採算性でなくてはならない。採算性のない有料高速道路を作れば、赤字を累積して行くことになり、地域社会にとっては債務を含めお荷物を残す結果となる。第三セクター事業で多くの浪費と失敗例を見てきている。有料高速道路の運営は、民営化され「道路会社」に移っているが、赤字路線を抱えれば収入を食い、道路の維持・補修や新規道路建設のための内部資金が不十分となり、黒字路線の料金の引き上げや公的助成などを求めることとなり、ユーザーのみでなく、国民に追加的負担を掛ける恐れが強い。赤字路線は、赤字を累積するための事業に等しくなる。
 本来、有料高速道路を管理する公団が民営化されているので、将来的には新規の道路投資の少なくても一部は道路会社が担うべきであろう。
 2、道路特定財源と「暫定」税率の取り扱い
 暫定税率の下での「道路特定財源」は、約5.4兆円であるが、日本の「総道路投資額」(国、地方を含む)は、8兆円強となっている(道路特定財源はその60%強、07年度道路関係予算、国交省資料)。道路特定財源以外にも、一般道路などに「一般財源」が約1.8兆円(約22%)相当、また、財投・料金収入等が約1.2兆円(約15%)相当が使用されている。
 民主党は、新たな社会的ニーズに対応するため、「暫定税率」の廃止と「道路特定財源」の一般財源化を主張しているが、数字上は、総道路投資額の内、約3兆円は道路には特定されていない「一般財源」他であるので、道路建設は「道路特定財源」に限定すれば、約3兆円が道路以外の一般財源として使用出来る。社会的ニーズの変化を勘案すると、本来であれば、ガソリン税など、道路特定財源も一般財源化が望ましい。有料高速道路に何時までも優先度を与える必要はなく、新たな国民的なニーズと国民の負担能力を勘案し、優先度の高い施策に財源を再配分して行くことが望ましい。「道路特定財源」の弊害の一つは、努力をしなくても毎年5兆円以上の財源が入り、単年度で使い切らないと剰余は国庫に返納しなくてはならなくなるので、どうしても浪費傾向となる。
 他方、現実問題として地方を含め、財源を確保して行かなくてはならないが、「一般財源化」となるとその根拠法(「道路整備費の財源等の特例に関する法律」など)を改廃しなくてはならない。「道路特定財源」の「一般財源化」するということは、国交省など道路財源を抱えている省庁の財源が減少し、一般財源として財務省の所管財源に移されることを意味するので、法令を盾に行政側の抵抗もより強くなると予想される。この面での議論は十分尽くされなくてはならないが、3月末までという時間的制約を考慮すると、抜本的改編は衆議院解散、総選挙後の検討に委ね、当面の措置として次の諸点を踏まえ対応することを提案したい。
(1)十分議論を尽くした上、「道路整備費の財源等の特例に関する法律」など道路特定財源は当面維持することとするが、対象となるガソリン税などの「暫定税率」については、石油・物価高対策の一環として、上乗せ分の2分の1を減額(減税)する。減税効果は地方のユーザーにも及ぶ。
 残る半分を同法の趣旨を弾力的に解釈し、「交通の安全の確保とその円滑化を図るとともに、生活環境の改善に資するため」、地方道路を含め、既存道路の渋滞や開かずの踏み切りの解消、商店街を含む生活道路の改善、駐車場や荷降ろしエリアの改善など、経済的・社会的コストの軽減、生活環境の改善等により優先度を置いて配分する。本税部分についても同様の配慮を行う。なお、道路整備予算に関しては、農道、林道など、すべての道路を含めたものとする。
 一部に、日本の石油価格は高くないとの意見もある。しかし、米国の例では、1ガロン(約3.78リッター)が3ドル強であり、リッターでは90-100円内外である。日本の石油価格は暫定税率分プラスアルファーが高いことになる。英国でも1ガロン4.9 ドル程度であり、リッター140円内外となり、日本のほうが10円内外高い。使途についても、米国でも高速道路のほか、列車等の大量輸送手段や一般財源など、広く使用されている。最大の相違は、米国などにおいては、多くの場合、高速道路は一般道路として無料であるのに反し、日本の場合、燃料に高い暫定税率を支払った上、その財源で建設された高速道路に各国に比較して高い料金を支払い、いわば2重に負担する制度となっていることだ。無論、欧米にも有料区間はあるが、郡ごとの維持費徴収のための料金やニューヨーク市などに出入りする場合の架橋等の通行費などがあるが、いずれも相対的に低額である。
 (2)日本の「総道路投資額」(国、地方を含む)の8兆円強の内、「一般財源」が約22%(約1.8兆円)充当されているが、この部分は本来の「一般財源」に戻し、道路以外で優先度の高い施策に充当する。
 その他、財投・料金収入等が約15%(1.2兆円)充当されているが、上記(1)の趣旨に沿って配分することとし、特に交通事故死被害者家族の救済(子弟への無償奨学金など)の他、「生活環境の改善等」に重点を置いて配分する。財投で有料高速道路に充当する部分については、今後極力民営化された道路会社による投融資に切り替えて行くことも検討すべきであろう。
 ガソリン税の暫定税率については、石油・物価高の中で継続して追加的な負担を国民に強いるか、軽減するかの選択になる。また、道路特定財源については、これまで通りのスピードで有料高速道路や新規道路を建設するか、新たな社会的ニーズに優先度を置いて再配分するかの選択になる。年間8兆円強もの財源を当てて道路を造り続け、歳出の簡素化、再配分を行わないことになると、年金等で財源が不足することを前提として「消費税」等の国民負担を引き上げが加速することにもなりそうだ。
 この問題は、上乗せされた暫定税率部分の2兆6千万円の取り扱い以上に、制度設計の問題であり、国民生活にとっても、日本の未来予想図にとっても重要な意味合いを含んでいる。上記の提案は、時間的制約の中での現実的な選択肢の一つである。今後の日本の制度設計をどうするかとの観点から、与野党間で国民が納得する接点を模索して欲しいものだ。
 接点が得られない場合には、この問題や年金記録漏れ問題を含む年金制度のあり方、予算・行政のあり方などにつき、民意を問う必要も出てこよう。必要があれば、その間補正予算を組めばよい。民意を問うことは、政治の空白などではなく、民主主義の基礎であり、民意に沿わない政治、行政こそが民意の空白を生むことになる。                    (Copy Right Reserved)
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