子どもたちに渡すな!あぶない教科書 大阪の会

大阪で教科書問題にとり組む市民運動の交流ブログ

明成社の「歴史総合」教科書は採択しないでください。

2021-06-05 18:45:54 | 高校採択2021
私たちは、大阪府内の公立高校・特別支援学校の社会科教員の皆さんあてに、以下のお願いの文章を送りました。

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明成社の「歴史総合」教科書は採択しないでください。

 突然、お便りを差し上げる失礼をお許しください。

私たちは、教科書問題に取り組んでいる市民団体です。私たちは、昨年、中学校社会科教科書の採択に取り組み、子どもたちを戦争に導く教科書である自由社・育鵬社の教科書の採択に反対しました。学校現場の先生方からも、両社の教科書には批判的な意見が多く、その結果、大阪市、東大阪市、四条畷市、河内長野市は育鵬社採択をやめました。
 高校の「歴史総合」で採択させてはならないのは明成社です。明成社の執筆者には「改憲」を強く唱える日本会議(日本最大の右翼団体)と関係の深い学者が多く、筆頭執筆者の伊藤隆氏は育鵬社教科書の執筆者でもあります。
明成社の最大の特徴は、不都合なことは書かず、都合の良いことだけを書いて、生徒に“日本はすばらしい国だ”と思わせ、「愛国心」を刷り込もうとするところにあります。しかし、このような「愛国心」は独善的で、国際社会では通用しません。
 歴史には良かったことも、反省すべきこともあります。なかでも、アジア・太平洋戦争が多くのアジアの人々を傷つけ、日本国民も傷ついたことをかえりみれば、また今なお、被害者の心と体の痛みを癒すことができていないことをかえりみれば、私たちは「つらい過去にも向き合う」という立場から、日本の近現代史を学ばなければならないはずです。
 ところが、明成社の「歴史総合」では、ヨーロッパ列強が植民地争奪戦争をしていたのだから、日本もやむをえず“自衛のために”それに加わったのだと、侵略戦争を正当化する立場から日本の近現代史を教えています。これでは生徒たちは歴史から教訓を学ぶことはできません。
 当時は「正しい」と思われていたことも、今日では「間違い」であることは多々あります。なかでも「人権」に関わることは21世紀の今日、大きく見なおされてきています。私たちは子どもたちには、平和を愛し二度と戦争をしないために、歴史を学んでほしいと考えています。
 先生方におかれましては、「人権・平和・共生」という人類普遍の価値を大切にした教科書を選んでくださいますよう心からお願いいたします。
 以下、明成社のとりわけ問題があると思われる箇所を、いくつか指摘させていただきます。

(1)外国人の口を借りて日本のすばらしさを教える(p.68)
 明治初期にイギリス人のイザベラ・バードは地方を旅して「世界中で日本ほど、婦人が危険な不作法な目にもあわず、安全に旅行できる国はない」と旅行記に書きました。バードは嘘を書いたわけではありません。しかし、彼女が安全に旅行できたのは警察が特別に保護していたことによります。幕末に起きた生麦事件によって、日本は莫大な賠償を要求され、薩摩藩はイギリス艦隊の攻撃を受けました。その後は、西洋人には決して手を出してはいけないと庶民にまで徹底され、バードの行く先々の警察にはあらかじめ連絡が行っていました。
他方で、日本に来る朝鮮人や中国人に対して、多くの日本人は差別的な対応をしました。日清・日露戦争に勝ち、朝鮮を植民地にしたことによって、アジアの人々を見下す風潮が広がったのです。しかし、明成社はそんなことは書きません。

(2)日本は戦争捕虜を大切にした国だと印象づける(p.83)
 第一次世界大戦で連合国側として参戦した日本は、ドイツが中国に持つ利権を奪い、青島に駐屯していたドイツ兵を捕虜として徳島に連れてきました。当時、世界の一等国としての地位を得ようとしていた日本は捕虜を優遇し、ドイツ兵と地域住民との交流も生まれました。
 しかし、1937年に南京に侵攻した日本軍は、中国軍の捕虜(実際には一般男性も多かった)をただちに殺害しました。日中戦争の日本軍は兵站補給が追いつかず、捕虜を養う余裕などなかったからです。ところが、明成社はそんなことは書きません。

(3)関東大震災で起きた朝鮮人・中国人の虐殺は書かない(p.95)
 1923年に起こった関東大震災では、「朝鮮人が井戸に毒を入れている」というデマが流され、各地にできた自警団が朝鮮人や中国人を虐殺しました。なかには間違われて殺された日本人もいました。しかし、明成社は浅草十二階の倒壊のことは書いても、虐殺のことは書きません。

(4)太平洋戦争を“アジアの植民地解放の戦争”だったと印象づける(p.113)
 日本は太平洋戦争の初期に東南アジアを占領し、イギリスなどの植民地に傀儡政権を作りました。1943年にはその代表を東京に集め、大東亜会議を開きました。そのなかの一人であるビルマのバー・モウの「日本ほど、アジアを白人の支配下から解放するのに尽くした国は、他にどこもない」という言葉を紹介しています。
しかし、人々に歓迎されたのは始めだけで、資源を奪い、過酷な労働を強制する日本の統治の仕方に反発した人々は、東南アジア各地で日本に対する抵抗運動を組織しました。「ロームシャ」という言葉が定着したくらいのひどい実態で、今でも教科書で「日本の支配は西欧帝国主義よりひどかった」と教えている国がいくつもあります。
日本軍はビルマでインパール作戦をはじめ、イギリス軍と死闘を繰り返しました。そのため16万人もの日本兵が死んでいます。それだけではなく、戦場となったビルマの人々にも大きな被害を与えました。けれども、明成社はそんなことは書きません。

以上、明成社の記述の問題点をほんの少しですが、紹介させていただきました。現在の政権や保守派の歴史認識をもっとも反映しているのが明成社の「歴史総合」です。ぜひよくご検討のうえ、明成社ではなく、「人権・平和・共生」を大切にしたより良い教科書を選んでくださいますよう、よろしくお願いいたします。
お読みくださりありがとうございました。

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