テスラ研究家・新戸雅章の静かなる熱狂の日々

エジソンも好きなテスラ研究家がいろいろ勝手に語っています。

『インド科学の父ボース』刊行!

2009-06-19 21:25:06 | Weblog
 以前から予告させていただいていたパトリック・ゲデス著『インド科学の父ボース』を、6月初旬、工作舎から刊行した。インド科学の開拓者として多大な功績を残したこの偉人の初の体系的紹介書となる。
 昨年末刊行予定が入稿の遅れや出版事情等により、ここまで遅れてしまった。期待してお待ちいただいた読者にはお詫びしたいと思う。
 ボースは著者のゲデスと同様、日本では無名に近い。それでもゲデスについては、E・ハワードやル=コルビジェと並ぶ「近代都市計画の父」として、その分野では名が通っている。翻訳書も鹿島出版会から一冊出ている(パトリック・ゲデス『進化する都市』鹿島出版会)。
 しかしボースについてはほとんど知る人はいないだろう。
 ボースは20世紀前半に活躍した科学者で、その業績は物理学、化学から植物生理学にまで多岐にわたっている。物理学ではテスラやロッジと並ぶ無線研究の先駆者となり、化学では物性化学や写真術の分野で業績をあげ、植物生理学では精密な観測装置「クレスコグラフ」を開発して、植物の運動研究の世界的権威となった。また科学思想を踏み外さずに、西欧とインドをたくみに融合した思想家としても秀れている。
 そしてなによりインド人初の物理学教授となり、最初の民間研究所を開き、インド科学の発展に尽くした功績は比類ない。インドの近代科学はボースに始まったといって決して過言ではないだろう。
 経歴などは訳者解説に詳しく記したので省くが、科学、科学史、植物学、神秘主義、インド、インド的世界観などに興味がある方なら、必ずおもしろく読んでいただける一書だと信じている。ぜひご一読願いたい。