闇に響くノクターン

いっしょにノクターンを聴いてみませんか。どこまで続くかわからない暗闇のなかで…。

「まかせてください!」

2012-03-20 23:29:59 | わが酒と薔薇の日々
双方のおもわくが入り交じった長~いキスのあと、ともかく身体を引き離し、態勢を整える。「ずっといろいろ見て歩いたから腹がへっただろう。すぐに食事を準備するから」と、私。買ってきた食材をひろげて準備しているあいだ、ダイちゃんは部屋のなかのいろいろなものを、おもしろそうにみている。時間をかけるとまた間があくので、ともかくオードブルを盛りつけ、簡単なサラダだけつくる。それをテーブルに乗せ、食器を並べてあっという間に夕食の準備完了だ。席につき、キャンドルに火をつけ、スペイン産の発泡酒をあけて、まずは乾杯。
それから互いに、一日中ためこんでいたいろいろなおもいを、奔流のようにぶつけあった。食事の方はというと、「最近古都では、まともなものを全然食べていなかったと」言いながら、おいしそうに次々とたいらげていく。
一呼吸おいて、「この間春物の洋服を出していたら、もう着そうにないものがかなり出てきたので、ぜひ着て欲しい」ともちかけると、また大喜び。実は、私の洋服はカレシモドキにもときどきあげているのだが、カレシモドキは、基本的に私の洋服が似合わないのだ。
ひととおり洋服チェックが済んで、夕食再開。オーソブッコを暖めたら、ローズマリーがとてもよい香りがする。ワインは、私としては奮発して、ルロワのポマール。オーソブッコとポマールの相性がとてもよかったので、これをネタにまた話がはずむ。いったん話し出せば、テーブルの上の食器のデザインのこと(彼は、わが家のグラスのデザインの装飾と実用性のかね合いを、とても気に入ってくれた)、私が選んだBGMのこと、どんなささいなことでも楽しく話せる。そして、こうして飲んだり話したりしているうちにとても気持ちがよくなって、もう、ヤルとかヤラナイとかはどうでもよくなってきた。
しかし、そうこうしているうちに、約束の、別れの時間がしだいに近づいてきた。
そのとき、もう着ることはないとおもいながら愛着があって大事にしていた洋服がまだあるのをおもいだして、追加でそれももらってくれるかと言うと、ダイちゃんはすなおに大喜び。それは、丈の長いエスニック調のシャツと、それと合わせて着れるエンジ色のトッパー(スプリングコート)。それを見せるととても気に入って、すぐに着てみたいという。私の洋服に着替えたダイちゃんを見ると、それがとても似合っていて、惚れ直してしまう。
別れ際に、この間椅子を買ったのであまった椅子があり、それももらってくれるかというと、目を輝かしている。「どうやって送ろうか」ときくと、「せっかくだから、古都までかついで行きます」と、ダイちゃん。結局、私があげた洋服を着て、椅子をかついて古都に帰ることになった。
最後に私が、「今日はギャラリー巡りとか、食事だけだったけど、次に合うときはエロオヤジになりきるぞ」と言うと、「まかせてください」とにやりと笑う。
それからもう一度だきあって、着いたときよりも、もっともっと長いキス。
こうして夢のような一日が終わった。