青空、ひとりきり

鉄路と旅と温泉と。日々の情景の中を走る地方私鉄を追い掛けています。

たまにはこんな夜も ~大深温泉その4~

2005年08月19日 21時59分51秒 | 日常
(写真:朝5時のオンドル小屋)

小屋掛けのオンドルの中で、灯りを消して眠る。
静かで真っ暗で、眠るにはとてもよい環境である。しかし、蛾とか羽虫みたいなのが体にペチペチと当たってくるのと、さすがオンドルの効果か、下から遠赤外線であぶられているかのようにホコホコと熱が伝わって来て、単純に言うと私には熱くて寝苦しい(笑)。
たまにそよそよと窓から入る山の風が実にありがたいのだが、寝返りを打ちながらの浅い眠りには耐え切れない。むっくりと起き上がって炊事場で冷たい水を思い切り飲み、思い切って風呂場へ。素っ裸で洗面器を枕に寝ることにする。
お湯の木の樋をこのようにふさぐと、お湯は湯船には入らずに床を流れる。ちょうどそのあたりに寝転ぶと適度に冷えたお湯が背中をサラサラと流れて実に具合が良い。木の床の肌触りも良く、おかげでぐっすりと眠れたのであった。

5時になると周りも明るくなり、駐車場で泊まっていると言うオヤジが浴室に入って来て起こされた。千葉から来ているらしい。まあはっきり言ってこのオヤジはタダ湯を貰っているだけの不貞の客だろう(笑)。
しかし小屋の裏へ回ってみると、もうもうと噴煙を上げる谷間からお湯は捨てるほど湧いていて、まあタダ湯を貰うくらいはどうでもいいんじゃね?と思わせる。大きな自然のエネルギーである。

朝は昨晩の鍋を煮返して、パックご飯で雑炊を作って食べる。再びネコ車を事務所から引っ張り出して、いそいそと片付け。最後にオッサンを呼んでお勘定。
オッサンが古びたカーボン紙に書き込んだ明細書には、
宿泊料が1,800×2=3,600円
ガス代が300円
毛布が1枚100円
入湯税が150×2=300円
2人で計4,300円でした。

「お世話になりました」と車に乗り込む。
一応お見送りのつもりなのだろうが、オッサンは受付の前で直立不動。やっぱり最後までシャイな根っからの東北人、何のリアクションもせずその姿は兵隊さんのようだ(笑)。
大深とお別れ。オッサンとお別れ。今日も雨だ。砂利道を上がる車のフロントガラス越しに思い切って手を振ったら、最後にチラッとだけオッサンが小首をかしげて会釈をしてくれたように見えた。アスピーテラインに出ると、色とりどりの車が向かいの「ふけの湯」の駐車場に見えて、それだけで何となく世間に戻ったような気がする。

山の清水、裸電球、古びた小屋の一夜。
値段以上の何かを貰えたような、こういう場所もたまにはいいかもしんないね。
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