青空、ひとりきり

鉄路と旅と温泉と。日々の情景の中を走る地方私鉄を追い掛けています。

幸せな45分

2016年01月16日 22時19分31秒 | 長野電鉄

(お手製路線図@長野電鉄長野駅)

長野駅から早速エスカレーターで地下に降りて、長野電鉄の改札口までやって来ました。もはや何回目の訪問か数えるのも面倒になって来ましたが、ある意味勝手知ったる鉄道会社としてもはや身近に思える存在になっています(笑)。週末パスは長野電鉄も乗車出来るからいいよねえ。湯田中まで往復すると2,320円かかるんでねえ。あんまり損得勘定で話すのもアレだけどお得なんじゃないかなって。駅の窓口横に掲示してあったお手製路線図のPOP、昔はこんなのなかったと思うんだけど、鉄道の現業職の中にも最近は女性的な感性が目に付くようになりました。夜間瀬駅が猫駅長と言うのは公式見解なんですね(笑)。

  

券売機で100円の特急券を購入し、長野電鉄の長野駅地下ホームへ。小さいながらも2面3線の頭端式・櫛形のターミナル的配線です。まーだお目当ての列車は入線してませんけど、ガッツリ前展取りたいから並びますよ。先発の信州中野行きはおなじみの鯨2連、少し前のダイヤ改正から長野~湯田中の直通の普通列車はなくなって、基本的には信州中野か須坂までになりました。日比谷線から平成5年にやって来た3500系も長野でだいぶ長くなりまして、トータルの車歴が50年選手になった個体もいるとか。そろそろ後継の車両の噂が聞こえて来そうな気配だねえ。


わざわざ勿体付ける必要もないけれど、長野電鉄の「特急ゆけむり」こと元小田急10000系のロマンスカーHiSE。この前面展望席(最前列)を取るためにわざわざ発車30分前に長野駅の地下ホームに降りてウダウダやってる訳です。ゆけむりも長野に移ったのが平成17年だから今年で移籍10周年のメモリアルイヤー。本家からは消えたあのワインレッドのロマンスカーが、まだまだ元気で活躍しているのが嬉しい限り。

  

中線に12Aゆけむりが到着し、折り返しての長野15:37発15Aゆけむり。時間帯的にも今宵の宿を湯田中温泉・渋温泉方面に取っている温泉客にはちょうど頃合いのダイヤ。そして日本人以上にNAGANOに目立つ海外勢の姿…善光寺や小布施の街並み、そして地獄谷温泉のスノーモンキーと志賀高原。豊富な沿線の観光資源をバックに、昨今話題のインバウンド需要にも弾みがついているようです。そして海外勢を抑えてガッチリと最前列を確保した我々親子w

  

定刻に長野駅2番ホームを発車した15Aゆけむり。地下線内の権堂を出るとあっという間に地上に出て、長野市の北側の市街地を東へ。傾き始めた冬の陽射しを浴びて、キラリと光る8500とは信濃吉田の手前で交換。

  

朝陽で複線区間が終わると、附属中学校前までは名撮影地の朝陽田んぼ。附属中学校のポプラ並木の向こうに遠く見遙かす万座方面の山並みがきれいですねえ。村山橋で千曲川を渡ると、長野電鉄の運行の中心を司る須坂で上りの14Aスノーモンキーとすれ違い。まあ、何度も乗った区間であるのでこちらとしては目新しさはないのだけど、それだけに隣の子供に見どころとポイントをしっかり解説してあげられたのが良かった(笑)。

 

展望席から眺める長野盆地の風景。小布施を過ぎ、都住のストレート。タタン、タタン、タタンと言う連接台車特有のジョイント音がいいんだなあ。すっかり晴れ渡った空の下を信州中野へ。一番左側はかつての木島線ホームですが、ずーっと昔に一回だけ乗車したことがあります。夏の暑い日だったなあ。非冷房の鯨が窓全開、乗客は2~3人しかいなかったと思う。

  

信州中野から線路は大きく右にカーブし、いよいよ湯田中への上りにかかります。真正面にはうっすらと雪を纏った高社山、本来であればこの時期は雪で覆われていなければならない扇状地のリンゴ畑の中を、フランジ音を響かせて右に左にスラロームしながら上がって行く。信濃竹原で中野~湯田中の区間列車と最後の交換。夜間瀬川の橋梁から志賀高原の山々。

 

湯田中と中野の街を分ける箱山に、夕日が今まさに沈もうとしています。最後の光が照らす夜間瀬のリンゴ畑、今日は乗り鉄だけど、実にいい光を浴びて山ノ内の風景の中を走っているこの日のゆけむり号の姿を、ぜひカメラにも収めておきたかったねえ。上条を通過して夕日は山の端に沈み、まさに物語の幕が下りたという感じで13Aは湯田中のホームに滑り込みました。

  

「美わしの志賀高原」の流麗な古賀メロディーが響くホーム、華やかな特急列車は暮れなずむ湯田中の駅に。温泉客を迎える宿の従業員、海外勢に向けて手書きのメッセージボードを掲げてのお出迎え。いつの間にやら長野電鉄も国際色豊かになったものですが、二階建て吹き抜けの明かり取りの窓の連なり美しく、湯田中の駅の佇まいは変わらず。使われなくなって未だに昔のまま、ホーロー引きの看板残る旧ホームの雰囲気が好き。


残照の高社山をバックに。長野から小一時間、街から山へ美しく景色移ろう様を眺め、子供も満足のゆけむり号の旅。これが100円の特急券で乗れるのだから何とも太っ腹な話だ。小田急のロマンスカーも近年はMSEの増備ばかりで正直面白みがかけてきた感じもするんだけど、HiSEは長野で、RSEは富士急で、それぞれ第二の人生を送れているし、こうして会いに来ることが出来る。そのありがたさに感謝しなきゃいけませんなあ。


それと同時に、製造から30年近く経ってもこの車両たちが持っている華やかな魅力って言うんですかねえ…やっぱ小田急沿線民にとってロマンスカーの「展望車」って思い入れが違うんよね。その中でもスタイリッシュで一番ロマンスカーらしいロマンスカーと言うイメージが強いHiSEが好きだったからねえ。今も元気でいる事と、色褪せる事なくファンを引きつけてやまない事、改めて感じた幸せな親子の45分でありました。
コメント
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