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青空、ひとりきり

鉄路と旅と温泉と。写真はおおめ、文章はこいめ、コメントはすくなめ。

田中雪中譜

2019年01月13日 17時00分00秒 | 飯山線

(雪の轍を踏んで@津南~越後田中間)

確か、去年も雪の時期に飯山線を訪れて、この田中の軽俯瞰からSカーブを見下ろしていた。その時も、飯山色は164Dに充当されていた。あの日と同じか。いや、雪の降り方だけは今日の方が激しいかな。手早く履いている長靴でガンガンと雪壁に足場を作り、二丁のカメラでターゲットを待つ。いつもなら風に乗って聞こえて来るはずのジョイント音が全く頼りにならないので、Sカーブの先の雪の森に目を凝らす。気温がそこまで低くないせいか、降る雪はすぐにべちゃべちゃとカメラやコートを濡らして鬱陶しいことこの上ない。雪が強いので遅れを持ってくるか…と心配していたのだが、これしきの雪は飯山線ではものの数ではないらしい。定刻きっちりに、飯山色がSカーブに姿を現しました。


雪の進軍、氷を踏んで…と言うのは大袈裟だけれども、大人の肩以上は確実に積もっているであろう雪の中を進む164D。秋の暮れ行く山々を眺めながら、ススキ輝く道を撮影したのがついこの間なのが信じられない。一面の銀世界である。雪壁の中を進む列車は足元までなかなか抜きにくいのが難点だけど、それも深雪の里を行く雰囲気と捉えればさもありなん。集落の道も至るところで繰り返し行われた除雪の結果、うず高く積もった雪の壁が迷路のように続いているのであった。


森宮野原を越え、雪はどんどん深くなっていく。これだけの雪に閉ざされる日々の暮らし。冬の間の雪国の、特に農業に生きる人は何をして生きているのだろうと不思議に思ってしまう。昔のように、春になったら農作業で使う草鞋や菅笠を編んで、秋に漬けた野沢菜を噛んで暮らしている訳でもないだろう。それこそ国鉄の時代には、冬場の沿線農家の人々はほうぼうで除雪要員として駆り出され、それが貴重な冬場の現金収入になっていたそうだが。

除雪の来ない道へ、カメラを抱えて腰まで埋まりながらの雪中行軍。
カンジキ買って来れば良かったぜ。
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土市雪映

2019年01月12日 17時00分00秒 | 飯山線

(雪の森を抜けて@十日町~土市間)

こってりと前面に雪を付けて、164Dが土市の駅に続く森を抜けて来ました。雪の中での撮影は、不慣れなせいもあるけどピントが合っているんだか合っていないんだか分からない写真になってしまうなあ…(笑)。見た感じどうも降る雪にピントが合っちゃっているような気もしますが雰囲気重視でご容赦いただきたく。平野部でも雪深い妻有地域(十日町盆地)ですが、妻有の「つまり」とは、越後平野から信濃川を遡って来た平野部の行き止まりであることの「詰まり」から来ているものだそうだ。


屋敷森を抜け、土市の駅に滑り込む164D。どうも追い掛けとなると「とりあえず撮る」事が主眼になってしまってアングルが平凡になってしまう。これ、いっつも凄く反省点なんだけど、もうちょっと撮影するポイント絞って「選りすぐりの一枚ィィィィ!」みたいな練り込み方をしないとなかなか次のステップに進めないんじゃないのかな、と思わなくもない(笑)。飯山色を見ると、脊髄反射でシッポを振ってワンワンと喜びながらパシャパシャ考えなしに雪の中を追っ掛け回しているだけなんて、まるで犬のようではないか。そう、私は飯山色に飼いならされた犬なのである。


粉雪を巻き上げて走って来た飯山色、下回りから車体にかけてこびり付いた雪が凛々しい。日本有数の豪雪地帯を走る飯山線は、ある意味雪と戦うことを宿命付けられている路線だ。それだけに、冬場の運行は厳しい自然との戦いとなる。だけど、飯山色のちょっと派手目なカラーリングは、極彩色のゲレンデウェアのように、寒く厳しい雪景色に華を添えてくれる。飯山色の冴えたパープルとレインボーのラインは、雪国の重苦しさがふわっと軽くなるような素敵なカラーリングだ。
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妻有奮冬

2019年01月11日 22時00分00秒 | 飯山線

(雪道に気を付けて@栄村某所)

さて、本日の飯山色は1123D森宮始発の、長岡返しで1122D→十日町から164Dで戸狩という運用。で、森宮から追い掛けるつもりでした。でしたけどね、やーっちまいました。1123Dを撮影しようと調子こいて、森宮の駅近くの路地で車を転回させたら、雪に隠れて見えない段差にズルリ。雪の中の脱輪。超低速でハマったので、車両被害もホイールの破損も何にもなかったんですけど、FF車で駆動輪が落ちてしまってはいくらもがいても上がらない。早朝では近くの民家に救援を頼み込むのも気が引けるし…と思ったところに、近くの路地に除雪のため栄村役場のドーザーが入って来た。作業員の若い方に事情を話したところ、「これは人力じゃ上がらない。すぐ近くにウインチ持っているクルマ屋さんがある。この時間なら起きてるはずだから」と的確な指示。わざわざ電話まで掛けていただき、栄村の皆さんの優しさに救われたのでありました。


何だかんだで1時間くらい時間をロスってしまい、1123→1122Dの追っ掛けは断念。気を取り直して164Dを土市から始めます。土市の駅は、雪ん子のかぶる菅笠のようなトンガリ屋根に、矢印と小窓で目鼻口がついたユニークなデザイン。十日町の隣の駅ですから、国道沿いに集落も形成されていて、駅の前には商工会議所もあったりする。噂だと土市の近くに美味しいジェラート屋さんがあるらしいんだが、どこなのかな。まあこの時間では空いてないだろうけど。


雪は小やみになったり強まったりを繰り返す。そんな中で、桑名川で撮影した163Dをお迎え。いつの間にか抜かしていたようだ。十日町へお出掛けのオジサマ1名乗車。こんな天気にこんな場所でカメラを構えているヨソモノにビビっていた。すまぬすまぬ。


雪の中を、そろりそろりと足元を確かめながら終着の十日町へ向かう163D。雪国の足として奮闘する頼もしいキハの姿。しかしながら、十日町~津南までは並走する国道に南越後観光バスが1時間に1本と言うなかなかの高頻度で走っていて、利便性についてかなうべきものがないのが実情。津南方面で駅が街の中心部から離れていたりするのも惜しいんですよねえ…バスは津南町の中心部である大割野へダイレクトでアクセスしてますから。

津南までの料金では鉄道が320円に対してバスが430円とやや鉄道に分があるものの、地元の高校生も十日町の高校へはバス利用も多く、通学時間には街道沿いのバス停で待っている姿を見かけることもしばしば。逆に言えば、日本国中の地方交通がほころびと限界を迎える中で、北越急行を含めて妻有地区は今もなお公共交通の選択肢が案外と充実しているように思う。国の特別豪雪地帯という事で、公共交通に対する補助も手厚かったりするのだろう。
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白鳥厳凍

2019年01月08日 22時00分00秒 | 飯山線

(凍て付く@信濃白鳥駅)

体感的な寒さはさほどでもなかったのだが、水分を含んだ重い雪が降り続いていた北信の夜明け前。R117には断続的に除雪が入っていましたが、降っては降ってはずんずん積もる…という童謡の歌詞がぴったりくるような重い重い雪にクルマが足元を取られます。北信の最奥、栄村の集落にある小さな駅を訪ねると、降る雪の中で駅名標が凍り付いていました。


まだ夜も明け切らぬうちから、雪国の集落の朝は、ジャリジャリという除雪車のチェーンの音で始まるようだ。それを合図にしてか知らずか、集落に住む人々が三々五々と道へ出て来て、マイ除雪車で家の周りの雪を器用に遠くに飛ばしている。雪国では、自宅の周りの雪かきは近所付き合いの礼儀の一つと言うけれど、朝もはよからの重労働には頭が下がります。まだ誰も踏み入れていないうっすらと新雪の積もったホームに、ヨソモノが傍若無人に足跡を付けてしまった罪悪感。


123D。時間は朝の6時40分くらい。朝の川口方面の一番列車が、音もなく近づいて来た。本当に雪の中では物音と言う物音は雪に吸収されてしまうなあ。いつも撮影ポイントに選ぶ大門踏切を、今日は白鳥の駅のホームから狙ってみると、線路際に積もった雪がキハの前照灯で朱く照らされて、優しい色合いを結びます。そろそろ日の出の時間なのだけど、この薄暗さはどうだろう。重く垂れ込める北信の雪雲のせいなのか、はたまた平成最後の皆既日食のせいだったのか。


幌と下回りに、巻き上げて来た雪が軽く白粉をはたいたようになっているキハ110のバックショット。パッと見は色気の少ない機能重視の箱型デザインですけれども、平成の世においてJR東日本管内の非電化ローカル線における車両の近代化に寄与したことは疑いの余地はありません。


雪の朝、日曜日という事もあり、車内に乗客の姿はなし。そして信濃白鳥、123Dへの乗客なし。それでも丁寧に北信の村々を結びながら、今日も飯山線が走り出します。軽く雪を巻き上げて走り去る123D。都会人は雪の持つ美しさ、純白さ、そしてその儚さに夢を見るけれども、雪国の人々は、降る雪に恨めしく空を見上げながら、遠い遠い春を待っている。
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千曲墨流

2019年01月08日 22時00分00秒 | 飯山線

(水墨画の世界@国道403号・市川橋)

夜が明けても、北信国境の谷あいは、未だ暗がりの中にありました。雪の中を堂々と流れる、日本の大河・千曲川。触ると切れてしまいそうな、鋼(ハガネ)の色をしたその水は、何物をも寄せ付けないような不気味な迫力がありました。国道117号線から桑名川の照岡の集落を結ぶ市川橋。この橋も国道403号というローカル国道に指定されておるのでありますが、この国道403号、長野県は松本市を出て、麻績村から姨捨、千曲、旧屋代線に沿って須坂、中野と河東地方を行く裏国道。国道と言うにはちょっと格落ちの、古い街道筋を繋ぎながらここ桑名川で千曲川を渡り、人跡未踏の開田山地を伏野峠という名もなき峠で越えて安塚に至ります。


とっぷりと雪に沈む桑名川の集落。つい先日の秋の日に輝いていた駅のイチョウを遠くに。今や立派に枝々に雪を纏い、それはそれで美しい雪のオブジェと化している。立派な屋根を持つ、北信地方らしい旧家。寄棟の屋根のてっぺんに、家紋が付いているのがカッコいい。比較的桑名川の駅周辺の集落は消パイ(消雪パイプ)が入っている方だと思うのですが、それでも家々の路地には行き渡っておらず、家の周りに池から引いた水を流して積雪を防止しています。


雪に閉ざされた、茫漠たる千曲川の河岸段丘。時折通る除雪車の大きなモーター音の他は静謐極まりない、完全なるモノクロームの世界だ。この辺り、千曲川の右岸は野沢温泉村、左岸は飯山市になっていて、飯山線は飯山市側を、国道は野沢温泉村側を走っている。国道のバイパスが通じるまでは、飯山線側から千曲川の対岸に渡る橋は少なくて、対岸の七ケ巻や虫生の集落へは、渡し船を使っていたのはご承知の通り。


落雪覆いの下を、雪を蹴散らしながら163Dが走り去る。この日は日中の131Dと136Dを戸狩~森宮間で運休させて除雪を入れるという話になっていたので、この163Dが長野側から十日町に抜ける午前の最終列車。次の下り列車は午後1時過ぎになるのですが…除雪によって運休する列車の代行バスもないあたりが、この区間の流動が極めて少ない閑散区間である事の証なのかもしれません。
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