青空、ひとりきり

鉄路と旅と温泉と。日々の情景の中を走る地方私鉄を追い掛けています。

白鳥厳凍

2019年01月08日 22時00分00秒 | 飯山線

(凍て付く@信濃白鳥駅)

体感的な寒さはさほどでもなかったのだが、水分を含んだ重い雪が降り続いていた北信の夜明け前。R117には断続的に除雪が入っていましたが、降っては降ってはずんずん積もる…という童謡の歌詞がぴったりくるような重い重い雪にクルマが足元を取られます。北信の最奥、栄村の集落にある小さな駅を訪ねると、降る雪の中で駅名標が凍り付いていました。


まだ夜も明け切らぬうちから、雪国の集落の朝は、ジャリジャリという除雪車のチェーンの音で始まるようだ。それを合図にしてか知らずか、集落に住む人々が三々五々と道へ出て来て、マイ除雪車で家の周りの雪を器用に遠くに飛ばしている。雪国では、自宅の周りの雪かきは近所付き合いの礼儀の一つと言うけれど、朝もはよからの重労働には頭が下がります。まだ誰も踏み入れていないうっすらと新雪の積もったホームに、ヨソモノが傍若無人に足跡を付けてしまった罪悪感。


123D。時間は朝の6時40分くらい。朝の川口方面の一番列車が、音もなく近づいて来た。本当に雪の中では物音と言う物音は雪に吸収されてしまうなあ。いつも撮影ポイントに選ぶ大門踏切を、今日は白鳥の駅のホームから狙ってみると、線路際に積もった雪がキハの前照灯で朱く照らされて、優しい色合いを結びます。そろそろ日の出の時間なのだけど、この薄暗さはどうだろう。重く垂れ込める北信の雪雲のせいなのか、はたまた平成最後の皆既日食のせいだったのか。


幌と下回りに、巻き上げて来た雪が軽く白粉をはたいたようになっているキハ110のバックショット。パッと見は色気の少ない機能重視の箱型デザインですけれども、平成の世においてJR東日本管内の非電化ローカル線における車両の近代化に寄与したことは疑いの余地はありません。


雪の朝、日曜日という事もあり、車内に乗客の姿はなし。そして信濃白鳥、123Dへの乗客なし。それでも丁寧に北信の村々を結びながら、今日も飯山線が走り出します。軽く雪を巻き上げて走り去る123D。都会人は雪の持つ美しさ、純白さ、そしてその儚さに夢を見るけれども、雪国の人々は、降る雪に恨めしく空を見上げながら、遠い遠い春を待っている。
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