食品問題を聞いての雑感

2014-07-27 | ビジネス業界
先々週から韓国~ベトナムと出張しておりますが、その最中に飛び込んできた「中国加工肉」の話しと「ベトナム水産物への汚物混入」の話し。。 丁度いいことに海外にいますので、今のところテレビでの報道を見ないで済んでいます。きっとかなりの偏向ぶりなんでしょう。
なんとなく思うままに書いてみました。

私がベトナムで行っている業務は、日本市場向けの水産物加工、特に、切り身や寿司ネタ、フライ商品を、「安い労働力」を利用して生産しています。もともとは日本で生産していたものを、コストが合わない、あるいは、日本では技術的に生産できない、ということから、海外加工にシフトしているわけです。

ここで、「技術的に生産できない」ということについて、?? と思われるかもしれません。簡単な例を挙げれば、「骨とり」作業。 日本の労働者にはかなり厳しい作業です。高齢者が働く現場では、「目が悪い」ために、骨を取り除くような緻密な作業ができないわけです。(もちろん多少の骨残りを、「魚は骨があるものだから・・」と言っていただけない昨今の事情もかなり影響しています)

ご存知の方も多いと思いますが、三陸の水産加工場、労働者の確保にかなり苦労しています。箱(=生産設備)があっても動かすことができない、という状況は珍しくありません。

さらには市場性。とにかく「価格、価格」を追い求める市場。これは消費者の立場になれば仕方ないのですが、度を越した「価格訴求」は、安全の根幹を揺るがします。今回の件で、また国産回帰の話しがでてくるかもしれませんが、労働力が確保できず、また、コストが倍以上になるような商品を市場が受け入れられるとは思いません。

もっと突っ込めば、「日本産なら安心なのか?」という点。 賞味期限の問題や産地の問題、はたまた異物の混入など、日本でも同じ問題は発生しています。 牛乳や肉、お菓子、最近では冷食もしかり。

今回の話しは海外でも日本でも起こりうる問題です。そして、海外製品なしには成り立たないのが日本市場、これも事実です。海外での生産は継続せざるを得ない中、どうやってこのような問題を未然に防ぐか、という点が我々の業務のまさに「核心」といえるかもしれません。今回の問題で、すでに日本の客先(あくまで弊社の先の先・・レベルです)から、工場内に監視のカメラの設置はしてあるか? などの質問が来ています。こんな話しは何年も前からあることですが、カメラで監視=誰かが作業時間中ずっとワッチしているか? ということでしょうか。もちろん抑止力の一つにはなりえますが、それですべてが解決するわけではありません。

問題を整理して考えないといけないのですが、そもそも生産現場にとっては、
* 異物混入 (汚物や殺鼠剤)
* 衛生問題 
は、別の話しです。
異物混入に対する対策一つとっても、その原因によって対策は千差万別。作業ミスによって意図しないところで起きてしまうものもあれば、人為的なものもあります。
工員が人為的に入れることを防ぐためには、物理的に「持ち込ませない」ことが重要ですが、それも私は不可能だと考えています。

最近よく聞く論理構成に、
 工員に気持ちよく働いてもらう(工員に不満を持たせない) ➢ 福利厚生の充実
というものがあります。(もちろんお金がかかることです) テレビでもよくこの手の話しが報道されています。食事の改善からカラオケ大会や運動会などなど。。
 ただ、もっとも根っこの一番大事な部分はなかなか伝わりません。我々が日々行っていることは、まさに「工場といかに信頼関係を築くか」、この点に集約されます。

工場との信頼関係、かなり漠然としています。これは一言では言えません。
約束を守ること、実際に工場を頻繁に訪問しお互いの顔を見て話しをすること、工員さんに「この客の商品を作っているんだ」と思ってもらうこと、一緒に作業をしたり、たまには工員さんたちと飯を食うことも・・・時には何時間もかけて生産や市場についての講義をしたり(内容そのものを理解してもらえるとは思っていません。ただ、こいつがこんなに言うにはなにか事情があるのだ、と思ってもらうことが重要です)しますが、すべては信頼関係を築くためのこと。 そしてそれはトップ同士が行うだけではなく、現場も行うものでなくては意味がありません。しかも継続的に。
人を常駐させたって、その「人」が信頼関係を築けなければ、意味がありません。「日本人が常駐しています」ということをうたい文句にしている工場もありますが、果たしてそれだけでいいのか? と思ってしまいます。日本国内の工場は、100%日本人常駐ですが、それでも問題はおきます。会社から派遣されてきた駐在の方々を見ると、現地の人間と一緒になり頑張っている方もいる反面、腰掛程度に海外暮らしを満喫し、「日本の大会社」の後ろ盾で横暴な要求をつきつけ、運転手やお手伝いさんを侍らせてゴルフ三昧、という方もいらっしゃいます。

工場と信頼関係をつくること。この仕事に、「マニュアル」などありません。現場で汗をかいたことのない方々に限って机上の論理を展開されますが、現場はそんな簡単なものではありません。商品は「人」が作っています。中国やベトナムから自動的にでてくるものではありません。海外工場を視察された方はたくさんいらっしゃいますが、観光に毛の生えた程度の訪問をベースにわかったつもりで現場にあれこれ「要望」を突きつけられても困ります。正直、この手の問題がかなり現場を苦しめ、信頼関係を損なう原因となること、当人たちは気づいていません。

ベトナムの街では、生きたニワトリやアヒルなど、よく見かけます。日本ではすでに食肉加工されたものばかり。誰かがその「大変な」仕事を担っていますが、それを感じることはありません。
食品工場も一緒です。原料を海外へ送れば自動的に商品ができるわけではありません。 「人」がその仕事を担っているわけですが、これもまた感じてもらえなくなっています。根本問題はそのあたりではないか、と、思うわけです。 

人が人のために物を作っている、買う方にも売る方にも、「その意識」が欠けているのではないかな、と、思うわけです。作った工場を責めることも一つですが、工場が「人のためにこれを作っているんだ」と、感じなければ、このようなことになるのかもしれません。
日本の消費者と工員を会わせることはできません。その役目を担っているのが、まさに我々なのかな、と、思うわけです。そしてそう思って毎月海外へ飛んできます。工場へ入り、工員や幹部と会い、現場で一緒に汗を流し、少しでも日本の市場を理解してもらい、この商品の先には消費者がいるのだ、ということを伝えていくわけです。

もちろん日本で販売している方々には、生産者を消費者へ繋ぐ役割を担っている、という自負と責任を持って仕事をしてもらいたいものです。ここが我々からするとかなり不満な部分でもありますが、その話しはまた後日。

ベトナム ダナンにて。