TAOコンサル『市民派・リベラルアーツ』

「エッセイ夏炉冬扇独り言」
「歴史に学ぶ人間学」
「僕流ニュースの見方」
「我が愛する映画たち」

大発会の日経平均741円高、今年の株価と経済は上昇基調

2018年01月05日 | 僕流ニュースの読み方
2018年最初の取引である4日の大発会の終値が昨年末より741円上昇、2万3500円を回復した。
年明けの取引としては26年ぶりのことだ。株高のきっかけは年始に発表された米国と中国の良好な景気指標にあったようだ。



世界経済は2008年のリーマンショック以来低迷が続き、米欧や中国の成長率も減速となったが、先進国の大規模な金融緩和もあって
回復しつつある。国際通貨基金(IMF)による2018年世界経済の成長率予測は3.7%、日本の景気も2017年度2%近い回復を
見込んでおり、拡大基調となっている。日米大発会の大幅株価上昇からすると、日経平均も本格上昇に入りそうな気配である。
最も、北朝鮮情勢やイスラエル情勢などカントリーリスクは要注意であるが・・。

小生、株式投資は長くやってきたが、89年のバブル崩壊以来いいとこ無しである。
しかし、今年は久しぶりに期待できそうだ。本年の干支は戌年、相場の格言は❝いぬ笑う❞である。

「プレイス・イン・ザハート」・・しみじみ心に残る映画

2017年09月12日 | 我が愛する映画たち

久しぶりにテレビの映画を見た。「クレイマー・クレイマー」のロバート・ベントン監督・脚本作品、地味だが感動的な映画である。アカデミー主演女優賞に輝いたサリー・フィールドの自然な演技が素晴らしい。脇役は「二十日鼠と人間」などのジョン・マルコヴィッチ、しみじみとした演技がとてもいい。綿畑作りを指導する「ダニー・グローバーは、メル・ギブソンの「リーサル・ウェポン」でいい脇役を演じていたが、この作品での暖かいキャラクターも心に残る。
夫である保安官の葬儀風景
   (私事になるが、ここで流れたのが妻が好きだった讃美歌488番であった)

舞台は1930年代のテキサス。主人公は保安官の夫と二人の子供と幸せに暮らす平凡な主婦エドナ。ある朝酔っ払いの黒人に夫を射殺され、途方に暮れる。貯金もなく家を売るしかない。そんな絶望の中で、仕事を探していた黒人を雇って綿畑作りを始めることを思い付くのだが・・・。
 
血みどろの綿畑作りに挑戦するエドナ

エドナの人に媚びることも厳しくもない真っ直ぐな性格と、そのひたむきな生き方が感動を誘う。物語の背景に流れるのは人種差別問題。綿畑作りでエドナを助けた黒人も白人からの暴力により街を出て行くことになるなどハッピーエンドではないが、ラストシーンが実にいい。死んだ夫も夫を射殺した黒人も、旅立って行ったダニー・クローバーも微笑みながらエドナの家族と共に礼拝を守るシーンだ。
 息子とダンスするエドナ

 ジョン・マルコヴィッチとダニー・グローバー


「折々のうた」の大岡信を送る会に参列・献花!

2017年06月29日 | 東西の詩人詠みくらべ

親友Rieさんに誘われ詩人・評論家大岡信を送る会に参列、献花もさせていただいた。会場は明治大学記念館。
詩人が好きだったという大振りの紫陽花が印象的な立派な祭壇であった。

大振りの紫陽花で飾られた祭壇

文芸評論家粟津則雄氏の「大岡、今や別れの時だ。おっつけ俺も駆けつける。・・」や、明治大学学長土屋恵一郎氏の、全共闘に参画していた学生時代、「君たちが世界の全てを否定するなら、僕は全世界を肯定する。」と言われた思い出話など、心に残る弔辞であった。
詩人谷川俊太郎氏が自らの詩を朗読。俳優白石加代子は大岡信の詩「水底の吹笛」など4作を披露したが、力の籠った朗読に圧倒されてしまった。作曲家一柳慧氏のポロポロとピアノを叩く演奏も素晴らしかった。

奥様大岡かね子氏の「今日は涙の粒のような雨の中、皆様に送られて幸せと思います」のご挨拶も心に沁みた。

谷川俊太郎氏など大岡信氏の知人たちが歓談

送る会のあと、Rieさんとへぎ蕎麦と焼酎で献杯。
大岡信が残した言葉の数々は我々の精神の糧として生き続けるに違いない。

  自宅本棚で見つけた「折々のうた」・・1980年発行、定価380円とある。

マーティン・スコセッシが28年かけて制作して来た遠藤周作の「沈黙」、いよいよ完成

2017年01月18日 | 我が愛する映画たち
マーティン・スコセッシ監督が原作に出会って心を動かされ、28年かけて制作してきた映画「沈黙」が完成、近日中に上映とのこと。
私も遠藤周作が好きで、若い頃から幾つかの作品に触れ、いずれ長崎の記念館も訪ねたいと思っている。だから、ここに「沈黙」のことや遠藤周作のことを何か書きたいと思ったが、重い題材なので何も書けない。やむなく、小説「沈黙」の遠藤周作の言葉のさわりを書き記すこととする。

画像はNHK特集番組より
「その時、踏むがいいと銅版のあの人は司祭にむかって言った。
踏むがいい。お前の足の痛さをこの私が一番知って入る。

 画像はNHK特集番組より
踏むがいい。私はお前たちに踏まれるため、この世に生まれ、
お前たちの痛さを分かつため、十字架を背負ったのだ。
こうして司祭が踏絵に足をかけた時、朝が来た。
鶏が遠くで鳴いた。」

大事にしていた沈黙の単行本が見つからない、やむなく文庫本を購入

ジャズベースの王者ロン・カーター率いるノネット(9重奏団)の演奏に痺れる

2016年11月30日 | 宗教音楽など心に響く音楽
息子夫婦の招待で、ブルーノートに出かけて来た。演奏は巨匠ロンカーターだよ、嬉しいねー。
そもそも、息子にモダンジャズを教えたのは僕だ。確か高校生の頃、「親父、たまにはロックでも聞いてみろよ」と言う息子に、「ロックもいいが、若い頃はモダンジャズをよく聞いたもんだよ」とか言いながら、バド・パウエルやマイルス・ディビスを聞かせたら、親父のこと一目置くようになった(笑)。それ以来ミルト・ジャクソン来日時には僕と妻を招待してくれたり、NYのブルーノートにも何回か一緒に行っている。
 

ロン・カーターと言えば、ジャズベースの王者。50年代から活動を始め、63年にマイルス・デイビスのバンドに参加して名声を確立。もう79歳になるというのに、演奏活動を続けている。


特に今回は、ノネット(9重奏団)を率いての来日であった。演奏は4人のチェロ奏者と、ピアノとベース、ドラムス、パーカッションのリズムセクションというユニークなもの。しかもロンが弾くのは70年代から演奏を始めたピッコロ・ベースだ。4人のチェロ奏者は高齢の女性たちであったが、ジーンと来るような演奏に魅了されてしまった。ピアノも、ベースも、パーカッションの激しく時に緩やかな演奏も素晴らしい。勿論、ロン・カーターの気品あふれるベース演奏は凄い。ウイスキーのオンザロックも旨く、楽しい夜であった。





映画・・雨降りなり、小栗康平の「泥の河」を見る、何度観てもいい

2016年11月11日 | 我が愛する映画たち
今日は雨降りだ、植木の剪定も草取りもできない。こんな日は我が草庵での読書か映画に限る。
先日、恵比寿の写真美術館へ行ったら、イベント企画に小栗康平の名があり、気になっていた。そうだ、今日は「泥の河」を見よう。
小説「泥の河」は宮本輝の太宰治賞を受賞した作品であるが、1981年に小栗康平が映画化した。監督デビュー作品である。しかも自主制作映画というのに、この年のキネマ旬報ベストテンの第1位に選ばれ、日本アカデミー賞の優秀作品賞や監督賞なども受賞した。

水汲みをする少年喜一
舞台は日本が高度成長時代を迎えようとしている昭和31年頃の大阪。安治川の河口近くに住む少年と対岸に繋がれた小舟で暮らす姉弟との出会いと別れ、社会の底辺で生きる人々の姿をきめ細かく描いている。悲しい物語だ。しかし、子役たちの演技が素晴らしい。

 信雄と姉弟

安治川の河口付近で安食堂を営む板倉晋平(田村高廣)と妻(藤田弓子)の小学3年生の息子信雄はある日、対岸に繋がれたみすぼらしい小舟の姉弟と知り合い友達になる。母(加賀まりこ)はこの舟で売春しながらひっそり暮らしている。いわゆる廓舟だ。暫らくして11才の姉銀子と信雄と同い年の弟喜一は食堂に遊びにやって来る。喜一は用意された夕食をこんな旨いもの食べたことないと喜び、笑うことの無かった銀子は風呂に入らせて貰ってはじめて笑顔を見せる。喜一がお礼に歌う軍歌「ここはお国の何百里・・」を晋平はしみじみ聞いている。彼はシベリアからの引揚者だったのだ。

手品でせいいっぱい歓迎する晋平 

悲しい話がいくつか挿入されている。銀子は晋平の妻が用意してくれたワンピースが似合って嬉しそうにするが、受け取るのを断って帰っていく。自分は幸せになってはいけないと言い聞かせているのであろうか。はかなげな少女が悲しい。天神祭りの日、喜一と信雄は小遣いを貰って出かけるのだが、喜一のズボンのポケットに穴が空いていて落としてしまう。・・以下、物語は省略するが、・・ある日、突然の別れがやって来る。別れの言葉もなく、姉弟の乗った舟が急に岸を離れ、動き出す。信雄は慌てて舟を追いかけ、川岸や橋の上を走り続けるのだが、姉弟は最後まで姿を見せることはない。信雄が涙を流しながら「きっちゃん、きっちゃん」と呟くように喜一を呼ぶ声には、人生で初めて出会った悲しみ・切なさが滲んでいる。しみじみいい映画だ。
 去って行く小舟と見送る信雄

映画「ハドソン川の奇跡」・・イーストウッド監督の映画作りと機長の勇気に感服

2016年11月02日 | 我が愛する映画たち
クリント・イーストウッド監督作品のファンなのに、なかなか時間がとれず、この映画、やっと観てきた。さすがである。
映画評論家の芝山幹郎が「短い。無駄がなく、力強くて優雅だ」と評していたが、まったく同感である。
イーストウッドが今回新作に選んだ題材は、全世界が奇跡と称賛したハドソン川に不時着した航空機事故だ。映画タイトルは機長サレンバーガーの愛称「サリー」、機長を演じるのはトム・ハンクスである。副操縦士を演じるアーロン・アッカートの演技も、とてもいい。



2009年1月15日、厳寒のニューヨーク。ラガーディア空港を旅だったUSエアウェイズ1549便は離陸2分後に鳥の群れと衝突、左右のエンジンが停止状態に陥り、この儘では墜落するしかない。こんな時、如何なる判断を下すべきなのか。機長は管制塔も驚くハドソン川への緊急着陸を試みる。しかも、無事な不時着、乗客・乗員155人全員の救出に成功させたのであった。

この航空機事故のニュースはその日のうちに世界中を駆け巡り、機長は英雄として称賛された。私も翌日の新聞を読んで、機長の冷静な対応やこういうことに遭遇した時のアメリカ人のタフネスに感動、早速ブログに感想を記したものだ。


機長を演じるトム・ハンクスと副操縦士を演じるアーロン・エッカート

しかし、この映画は機長の英雄物語ではない。その裏に隠された真実を描いている。映画は国家運輸安全委員会(NTSB)の調査官による追及シーンから始まる。まるで、法廷劇のようだ。我々は知らなかったが、155人を救ったはずの英雄は容疑者とされていたのである。本当に両エンジンとも推力を失っていたのか、何故ニュージャージーの空港に向かわなかったのかなど18カ月に及ぶ調査が続いていたらしい。そして映画では、繰り返し行ったシミレーションからすると、この飛行には問題があると調査官は機長を追い詰める。コンッピュータデータをもとに、飛行機は近距離にある空港に着陸可能だったと主張する調査官と機長・副操縦士の闘いが繰り広げられる。こういう視点からの映画作りがイーストウッド監督の凄いところだ。その他、この航空機不時着を知った民間の船舶が数隻が脱出した乗客救出に向かったというのも素晴らしい話で、これら勇敢な船長たちを映画に出演させていた。心憎い演出である。

クリント・イーストウッドの作品のテーマは常に人間である。「許されざる者」は引退して久しい賞金稼ぎが再び立ち上がる物語、「グラントリノ」は朝鮮戦争で心に傷を負った偏屈で孤独な老人の人生最後の賭け、「ミリオンダラーベイビー」は実の娘と疎遠になったトレーナーが貧しい女性ボクサーを育てながら心を通わせる話だ。さらっとした映画作りなのに、どれも見る者に考えさせる。

 中央がサレンバーガー機長

この作品、来年のアカデミー賞の候補にノミネートされるに違いない。楽しみだ。

僕流ニュースの見方・・東京をどういう都市にしたいのか、夢や展望が見えない都知事選

2016年07月20日 | 僕流ニュースの読み方
いよいよ都知事選も中盤へ。特定の候補者を応援しているという訳ではないが、ひと言。

野党推薦の鳥越俊太郎氏の立候補第一声は都民のガン検診受診率100%であったが、そうではないだろう。そんな個人的体験からの発想ではなく、著名なジャーナリストらしい首都東京への夢と展望を語ってほしかった。参院選で野党が敗北するのを見て立候補を思い立った、安倍首相のことは嫌いだなどとテレビで語っていたが、都知事選の何たるかがわかっているのだろうか。安倍政治に問題があると語るのはけっこうだが、そういう問題意識をぶつけたいのなら国政選挙に出るべきであった。都知事の仕事は、東京をどう構造改革しどういう近代都市に発展させて行くかの戦略の構想と実行である。その後の選挙公報を見ると、選挙参謀からアドバイスがあったのか方向修正しているように見えるが、期待外れの出馬であった。現政権への批判は野党党首に任せておけばいい。

自民・公明推薦の増田寛也氏はいささか迫力に欠ける。いかにも官僚出身らしい配慮ばかりが目に付き、存在感が薄い気がする。そもそもが自民党執行部は、早くから立候補を宣言した小池百合子氏に冷たい対応であった。それも事前根回しがなかったなどというつまらない理由で推薦しなかったようだが、後悔することになるのではなかろうか。ドイツのメルケル首相に続きイギリスのメイ新首相など、世界的に女性活躍の時代到来かも知れない。小池氏は選挙公報に東京大改革宣言を掲げているが、頼もしいではないか。頑張って欲しい。

さて、批判ばかりするのはよくないよね(笑)。仮に僕が立候補するなら、どんな公約を掲げるであろうか。
ニューヨークは世界の政治経済の中心都市、ロンドンは金融やビジネスの中心、パリは文化・芸術の伝統ある都市であるが、東京には特徴がない。いや、食の文化や緑の自然などニューヨークにも負けない美しい都市であると思う。そもそも東京は優れた江戸の庶民文化を受け継いだ都市であり、この東京を本格的な❝庶民文化と観光立国の都市❞に発展させるというのは如何であろう。政府は日本を観光立国にすべく既に取り組んでおり、今年は2000万人の観光客誘致が実現するだろうとのこと。しかし、各国の外国人旅行者数は1位のフランスが8000万人以上、2位がアメリカで、日本は22位だ。観光立国は経済効果も大きく、全力で取り組んでいい施策である。その為には京都や古都にだけに頼るのでなく、東京を魅力的な都市に大改造すべきだと思う。偶々今週は星野リゾートが丸の内に本格的和風旅館を開業したが、こういう民間の動きを支える基盤作りこそ、都の役割と思うのだが・・。

都庁を裏から見る・・何故かどんよりと曇り空だ。
 画像はWebより借用

僕流ニュースの見方・・アベノミクス批判に終始し、経済政策提案なき野党連合

2016年07月10日 | 僕流ニュースの読み方
本日は参院選投票日である。勝敗はまだ不明であるが、盛り上がりに欠ける選挙戦であった。支持政党のことはさて置き、いささか感想を・・。

1、民進党、共産党など4党の野党共闘とは何だったのか。岡田氏や志位氏・小澤氏などが壇上に並んで立つ姿を支持する人は多くないであろう。所詮は選挙に勝つだけの妥協の産物、そんなことで国民の為の政治ができるのだろうか。

2、民進党をはじめ野党はアベノミクスの失敗を叫んでいる。確かにこのところ、日本経済は順調とは言えない。しかし、これは英国のEU離脱に関する国民投票を受けての円高及び株価下落、或いは昨年来の中国経済動向に左右されての結果であり、外部要因によるものである。アベノミクスの第一の矢である金融緩和は円安と資産価格上昇及び有効求人倍率の改善をもたらしている。全ての問題を時の政権の責任とするかのような政党を国民は支持するであろうか。安倍政権の消費税値上げはタイミング的に失敗であったと思うが、これとて、民主党政権時代に意志決定した政策であり、自民党に責任を押し付けることは出来ない。国家財政を考えれば方向は間違っていないのであって、共同して取り組むべきである。

3、問題は第3の矢である成長戦略が機能していないことにあり、規制緩和など本気で取り組む必要がある。また選挙戦の争点にはなっていないが、自民党の原子力発電政策については見直しが必要ではなかろうか。使用済み核燃料への対応は国の危機に繋がりかねない。

毎日新聞WEBより

笛吹川を散策しながら、深沢七郎の作品「笛吹川」や「楢山節考」に思いを馳せる

2016年07月06日 | 我が愛する映画たち
特にここ数年は、高校時代の友人たちとの付き合いが深まり、郷里での旧交を温めている。この4月も武田神社から舞鶴公園・小瀬公園を経て石和温泉へと皆でドライブ。宿泊した石和温泉常盤ホテルから直ぐのところを笛吹川が流れており、朝早く目覚めたので、一人で笛吹川の土手を散策。旅館の前を流れる疎水沿いは桜が満開、少し歩くと桃の花も咲いている。いい気分だ。笛吹川というと、この地出身の深沢七郎のことを思い出す。長野の姥捨伝説を描いた小説「楢山節考」で世に出たが、「笛吹川」も有名である。

笛吹川のもの悲しい枯れススキやヨシの風景

笛吹川は甲武信岳(こぶしだけ)と国師ケ岳(こくしがだけ)に源を発し釜無川に合流、富士川にいたる河川である。笛吹川とは美しい名である。その由来は、かつて鎌倉幕府に追放された日野一族の武将藤原氏の嫡男権三郎が洪水で流された母を偲んで吹いた笛に因んで付けられたらしい。土手から見渡すと冬枯れのヨシやススキが風にそよいで何処か寂しげな風景である。

小説「笛吹川」は、信玄から勝頼に至る武田家の盛衰と共に生きた笛吹川沿いの農民一家の何代かにわたる物語である。生まれては殺されて行く農民たちの無慈悲な運命を土俗的な語りで描いた問題作で、1960年木下恵介監督によって映画化された。出演は高峰秀子・田村高廣。「楢山節考」は今村昌平により映画化されカンヌ映画祭でパルムドール賞を受賞、年老いた母を背負い真冬の山に捨てに行く悲しい物語だ。
WEB画像より・・木下恵介映画笛吹川

初めての地を訪ね、こうしてその歴史や小説に思いを馳せる、これぞ旅の醍醐味である。






スティーブ・ジョブスの名演説「Stayhungryハングリーであれ、Stayfoolish愚かであれ」に、改めて感動

2016年06月23日 | 歴史に学ぶ人間学
10年位前に話題となったスティーブ・ジョブスのスタンフォード大学卒業式でのスピーチについては、経済雑誌で流し読みした程度であった。しかし、今回、中学生の孫がスピーチコンテストで発表した演説文を丁寧に読んでいる内に、改めて心に響くものがあった。

このスピーチは生い立ちなどにも触れながら自らの人生観を語ったもので、多くの人に感動を与えたようだ。この中でジョブスは三つのことを語っている。その一つは❝点と点をつなげるということ❞。生みの親が未婚であったので養子に出されるが、この両親が豊かでなかったこともあり大学を中退、この時潜り込んで聞いたのが❝カリグラフの講義❞であった。ジョブスは伝統的で芸術的な文字のとりこになったようだ。そして10年後マッキントッシュの設計をしていた時、このカリグラフの知識が蘇り、あの美しいフォントを持つコンピュータが誕生したのだと言う。将来を見据えて点と点を繋ぎ合わせることは出来ない。我々は今やっていることがいずれ人生のどこかで実を結ぶであろうと信じて取り組むしかない。・・蓋し名言である。

二つ目は、アップル社を追われた経験を踏まえた❝愛と敗北❞について、三つめは❝死について❝である。ジョブスは17歳の時、「毎日、それが人生の最後の一日だと思って生きればその通りになる」という言葉に出会った。その日を境に33年間、毎朝鏡を見ながら、「もし、今日が最後の日だとしても、今からやろうとしていることをするだろうか」と自らに問いかけることにしているとのこと。・・私も妻を亡くして以来、人間はいつか死ぬということを強く意識した人生を送ってはいるが、ここまでの覚悟はない。一日一日をもっと緊張感を持って、大切に生きねばと改めて考えてしまった。

スティーブ・ジョブスについては、その厳しすぎる仕事振りや、優秀な人は重用するがそうでない人はすぐクビにする、いい仕事をしても褒めないなど様々な評価があるようだ。しかしここまで成功を遂げた人物の生き方については、心して耳を傾ける必要があると思うのである。孫のお陰でいい勉強が出来た(笑)。


スティーブ・ジョブス画像はWebより


桜の季節になると、西行終焉の地、河内の弘川寺の山桜を思い出す

2016年04月16日 | 東西の詩人詠みくらべ
 桜の季節になると西行を思い出す。毎年似たような雑文を書いているが、そのくらい西行のことが好きということか・・・。

 何年か前、西行終焉の地、大阪河内の弘川寺を訪ねた。弘川寺は奈良・葛城山の麓にあり、天智天皇の時代に開創された寺である。西行は桜が好きだったとみえ、あちこち桜の花が美しい地に庵を構えたが、晩年はこの寺の座主空寂上人を慕って訪ね、ここで暫らく暮らしたようだ。しかし、翌年の文治6年2月に没した。あの歌、『願わくは花のもとにて春死なむ・・』のとおり、きさらぎの16日のことであった。これはお釈迦さまが入滅した日へのあこがれを詠んだ歌であり、その望んだ時期に亡くなったので人々はおおいに驚いた。



 弘川寺の本堂の右手の山桜咲きこぼれる小道を進むと、西行座像を祀る「西行堂」があり「西行墳」がある。そうか、西行の墓はここにあったのだ。墓の手前の歌碑には、『願わくは花のもとにて春死なむ そのきさらぎの望月の頃』の歌が刻まれている。脇には『仏には桜の花を奉れ わが後の世を人とぶらはば』の歌碑もある。この時、小生、感無量であった。

「願わくは・・」の歌碑の前で

 西行は平安時代末期の歌人であり、鳥羽上皇の警護にあたる北面武士であった。23歳の時、突然出家するのだが、その理由はよくわからない。しかし、この弘川寺の桜山を散策しながら、ふと、出家するしかなかったであろう、やみにやまれぬ思いがわかる気がした。西行墳より東方の小高い山には、たくさんの山桜が咲き誇り、薄桃色の花が満開であった。私は、西行の庵跡のある桜山を歩きながら、妻子を捨て、ただ一人旅をつづけた西行の人生に思いを馳せた。

≪その他、西行の歌を二つ≫

①出家するに当たって詠んだ歌・・・『惜しむとて惜しまれぬべきこの世かは 身を捨ててこそ身をも助けめ』

②桜の美しい地に庵を構えて詠んだ歌・・・『とふ人も思い絶えたる山里は さびしさなくば住み憂からまし』

  webより借用


『僕流ニュースの見方』・・日本総研・寺島実郎氏のニューヨークでの発言にエール

2016年03月29日 | 僕流ニュースの読み方
時事通信によれば、日本総合研究所の寺島実郎理事長が28日、NYで開かれた時事トップセミナーで講演し、
『米大統領選の共和党候補指名争いで首位に立つ不動産王ドナルド・トランプ氏が在日米軍撤退の可能性に言及したことについて、「事の本質があぶり出され、ごまかしの利かない議論をしなくてはいけない状況になってきた」との見方を示した。寺島理事長は「トランプ氏の主張はかつての『防衛ただ乗り論』の蒸し返しで、無知に基づく」と指摘。「世界の米軍基地の中で(受け入れ国が)7割もの駐留経費を負担しているのは日本だけだ・・・」等の論を展開した。



同感である。(以下、私見)
・・戦後の日米同盟は日本に経済成長や民主主義定着など多くの利益をもたらしたが、元々、日本を共産主義勢力の盾とすべく結ばれたものであり、日本も沖縄の基地問題を背負いながらここまでやって来た。従って、必要なくなったから米軍を日本から撤退させる等の論理は勝手過ぎる。だが、我々はそういう見解をも含め、トランプ氏を支持する米国人が多いという事実を知る必要がある。

偶々、本日、安保法が施行となり、日本の安保政策の大転換の日となった。世論の一部は戦争条項反対と安保法破棄を叫んでいるが、こういう米国の世論をどう考えているのであろう。今一度、日本の平和をどう守るか真剣に考える必要があると思うのである。私も憲法9条は守るべき立場であるが、平和を望むだけで、平和が実現できる訳ではない。日本人は戦後、米国の傘の下で、自立すること、自分で自分の国を守る気概を無くしてしまったように思う。そういう意味でトランプ氏の主張は、自らの国をどう守って行くべきか考えるいい機会であると思う。

なお、日本は団体も個人もロビー活動が不得手であるが、寺島氏のようなこういった活動をもっとすべきと思う。アメリカでもヨーロッパでも、日本のこと、日本の置かれている状況など知らない人は大勢いる。寺島氏の発言は時事通信主催のセミナーでのことであったようだが、より影響力のある場で語っていただきたく思う次第である。



復活祭(イースター)は、キリスト教における最も重要な祭典である

2016年03月27日 | エッセイ・夏炉冬扇独り言
本日は復活祭・イースターである。小生、年に数えるほどしか行かないのだが、この日は朝早く起きて、亡き両親が通っていたM教会の礼拝に出かける。
パイプオルガンによる前奏が美しい。曲はG・Aホミリウスの曲「主は死につながれ(讃Ⅱ-100)」。


この日の聖書はマタイによる福音書28章16~20、「復活の主が共にいます」と題したK牧師の説教がとてもよかった。復活したイエスから「ガリラヤに行きなさい・・」と言われて、11人の弟子は出かける聖書のシーンであるが、ここに「信じられないものがいた」の言葉がある。私など、キリストの復活を信じるかと問われたら、なんと答えるであろうか。情けない話であるが、信じますと即答できるであろうか。そういうふとどき者をも含め我々を救うために、キリストは復活したことを忘れてはならないということであろう。

お誘いいただき、礼拝の後の祝賀会にも出席、皆さんと一緒に食事をいただき楽しいひときを持った。感謝である。
 祝賀会風景

ところで、イースターと言えば、まず色鮮やかなゆで卵を思い浮かべるのだが・・これは四旬節の間の節制が終わることを祝う為のものであり、その起源はいろいろあるようだ。
 教会の少女が作ったイースターエッグ

実はイースターエッグの原点はイースターを祝う時、赤く染めた卵を友人に送るとことによる。これはマグダラのマリアが、キリスト昇天の後、ローマ皇帝の元に赴き、赤い卵を贈ってイエスが天に昇られたことを示したことに由来するのだそうだ。
 イースターエッグの原点、赤色の卵(画像はwebより)

映画「NYの眺めのいい部屋売ります」・・大人の男と女の物語

2016年02月08日 | 我が愛する映画たち
この映画、舞台がブルックリンと聞いて嬉しくなって観に行って来た。NYでも特に好きな街だ。しかも主演が「許されざる者」「インビクタス・負けざる者たち」のモーガン・フリーマンとウッディ・アレン映画で活躍して来たダイアン・キートン。地味そうな映画だが、見逃したくないではないか。



主人公は黒人と白人の結婚に偏見があったであろう時代に一緒になり、40年間苦楽を共にして来た画家アレックスと妻ルース。その住まいはブルックリンの余り豪華ともいえないアパートメントだが、部屋は美しい景色を一望できる最上階にある。屋上の家庭菜園でトマトを作り、愛犬と三人で暮らしている。二人にとっては最高の住まいだ。しかしアレックスも愛犬も相当高齢となり5階までの階段が辛い。そんな姿に心を痛めるルースはアパートを売って転居しようと提案する。そんな夫婦の物語である。



二人のさりげない演技が実にいい。アパートの売却交渉が一気に進展しそうになった物語の後半、アレックスは橋の上のテロ騒ぎに大騒ぎする人々の喧噪を見て、ふと不動産ブームに振り回される自らの姿に虚しさを感じる。そして「とんだ空騒ぎだったな」と我に帰り、妻に「ここに住み続けようじゃないか」と語るシーンは心を打つ。監督は「人生の価値は所有する資産では測れない」ことを言いたかったのであろうか。

ラストシーンに流れるヴァン・モリソンの曲「Have I Told You Lately」が実にいい。
・・歌詞は「Have I Told You Lately that I Love You 」、「最近、僕は君に愛してると言ったかな・・」、ジーンと来る。