TAOコンサル『市民派・リベラルアーツ』

「エッセイ夏炉冬扇独り言」
「歴史に学ぶ人間学」
「僕流ニュースの見方」
「我が愛する映画たち」

映画「NYの眺めのいい部屋売ります」・・大人の男と女の物語

2016年02月08日 | 我が愛する映画たち
この映画、舞台がブルックリンと聞いて嬉しくなって観に行って来た。NYでも特に好きな街だ。しかも主演が「許されざる者」「インビクタス・負けざる者たち」のモーガン・フリーマンとウッディ・アレン映画で活躍して来たダイアン・キートン。地味そうな映画だが、見逃したくないではないか。



主人公は黒人と白人の結婚に偏見があったであろう時代に一緒になり、40年間苦楽を共にして来た画家アレックスと妻ルース。その住まいはブルックリンの余り豪華ともいえないアパートメントだが、部屋は美しい景色を一望できる最上階にある。屋上の家庭菜園でトマトを作り、愛犬と三人で暮らしている。二人にとっては最高の住まいだ。しかしアレックスも愛犬も相当高齢となり5階までの階段が辛い。そんな姿に心を痛めるルースはアパートを売って転居しようと提案する。そんな夫婦の物語である。



二人のさりげない演技が実にいい。アパートの売却交渉が一気に進展しそうになった物語の後半、アレックスは橋の上のテロ騒ぎに大騒ぎする人々の喧噪を見て、ふと不動産ブームに振り回される自らの姿に虚しさを感じる。そして「とんだ空騒ぎだったな」と我に帰り、妻に「ここに住み続けようじゃないか」と語るシーンは心を打つ。監督は「人生の価値は所有する資産では測れない」ことを言いたかったのであろうか。

ラストシーンに流れるヴァン・モリソンの曲「Have I Told You Lately」が実にいい。
・・歌詞は「Have I Told You Lately that I Love You 」、「最近、僕は君に愛してると言ったかな・・」、ジーンと来る。 


日銀マイナス金利政策に市場は動揺、今後の動向は如何に

2016年02月07日 | 僕流ニュースの読み方
日銀が先月29日に発表したマイナス金利政策に市場が動揺している。日銀にとっては原油安や中国経済不安に対し市場心理が悪化しないための追加金融緩和策であったのだが、その後2月3日に発表された米国経済景況感の悪化を受け、FRBの利上げペースが遅れるであろうとの見方が広がったためである。マイナス金利政策には日米間の金利差が広がる効果があり、円相場の押し下げが期待できたのだが、逆に円高・ドル安が進み、2日間で800円以上上昇した日経平均も大幅下げとなってしまった。



そもそも、今回のマイナス金利政策とは銀行が日銀の当座預金に預けるお金にマイナス金利を付けるというもの。マイナス金利とはお金を預ける方が金利を支払う仕組みであり、マイナス0.1%ということは1億円預けても9.990万円に預金が目減りすることを意味する。つまり、銀行は日限に預けて預金を減らすより、資金を融資や株式投資などに振り向けるようになるはずで、景気回復や物価上昇が期待できるというものである。

市場は、かつて経験のない今回の政策に混乱しているようであるが、既に欧州では実施しており一定の効果もでている。勿論、金融政策には限界もあり、政府の経済政策に期待することになるのであるが、世界的不況リスクの可能性も含め、米国の金利動向など不測の事態への見極めが必要となりそうだ。
さて、今週の株式市場はどう反応するのか。(夏炉冬扇)

映画「クリード」・・あのロッキーが帰って来た

2016年02月03日 | 我が愛する映画たち
老境に入り、自分が既に過去の人間であることを受け入れて静かに生きるロッキー。そこに現れるのはかつてのライバルであり親友であった元チャンピョン、アポロの息子アドニス・クリードだ。偉大な父を持ったが故のコンプレックスと葛藤しながらも、進行性難聴の恋人ビアンカに支えられて生きている。こうして、自らのアイデンティティを見出すための闘いに挑もうとする若者アドニスと、これを受け入れ自らの病とも闘いながら生きるロッキーの物語が始まる。





ロッキーシリーズの流れを継承しながらのきめ細かいした物語作りはファンを感動させる。お人好しで純粋なロッキーが健在はあり、お馴染みのテーマ曲が随所に散りばめられた音楽作り、フィラデルフィア美術館でのシーンなどファンにはたまらない。しかし、貧しさとは違う現代社会の悩みに葛藤する若者の姿、老いて成長し全てを受け入れる優しいロッキー、そして重い病を持ちながらアドニスを支えるビアンカなど、斬新な物語が描かれている。単なるリバイバルではない。そして何より素晴らしいのは、物語の根底を流れる人間と人間の絆であり、自らの限界に挑戦しようとする若者の生き方への賛歌であろう。