嫁はとんでもない悪女なのか?
* * * * * * * * * * * *
ベストセラー作家、雫井脩介による「究極のサスペンス」
この美しき妻は、夫の殺害を企んだのか。
息子を殺害した犯人は、嫁である想代子のかつての恋人。
被告となった男は、裁判で「想代子から『夫殺し』を依頼された」と主張する。
犯人の一言で、残された家族の間に、疑念が広がってしまう。
未亡人となった想代子を疑う母親と、信じたい父親。
家族にまつわる「疑心暗鬼の闇」を描く、静謐で濃密なサスペンスが誕生!
* * * * * * * * * * * *
とある家族の疑心暗鬼の物語
鎌倉近くの陶磁器店「土岐屋吉平」を経営する久野貞彦。
今は妻と2人暮らし。
ひとり息子・康平は結婚し、妻・想代子(そよこ)とまだ幼い息子が1人。
近所で暮らしていて、店の後を継ぐべく、𠮷平の経営を手伝っています。
そんなある日、康平が殺害されてしまいます。
犯人はすぐ捕まりましたが、その男は
以前康平の妻・想代子につきまとっていたストーカーだった・・・。
想代子にとっては全く迷惑な話。
しかし本作、主に父・貞彦とその妻・暁美の視点から描かれているのです。
暁美は思う。
息子の死に際して嫁はどうも本当に悲しんでいるように見えない。
わざとらしく目にハンカチを当てているけれど、まるで嘘泣きのようだ・・・。
と、本作の題名「クロコダイル・ティアーズ」が「嘘泣き」の意味であることが提示されます。
嫁と姑の関係であることから、元々あまりしっくりいった感じがしていなかった暁美。
そして息子がときおり想代子に暴力を振るっていたことを薄々感じてもいたのです。
そしてまた孫は引っ込み思案で大人しく、活発だった息子に似ていない・・・。
極めつきは、裁判の時に、被告となった男が
「想代子から『夫殺し』を依頼された」と主張。
なんの証拠があるわけでもないのに、それを聞いて暁美の疑惑はどんどん深まっていきます。
あげくには、孫は康平の子供ではないのではないか?とまで思う。
果たして想代子は、とんでもない悪女なのか。
それとも・・・。
ついつい引き込まれてしまいますね。
一方的な思い込みは慎まなければ・・・。
個人的には、DV夫がさっさと死んでくれて良かった・・・などと思ったりします。
<図書館蔵書にて>
「クロコダイル・ティアーズ」雫井脩介 文藝春秋
満足度★★★★☆