映画と本の『たんぽぽ館』

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ヴィヴィアン・マイヤーを探して

2016年05月16日 | 映画(あ行)
貧しく孤独な名もなき人が成し遂げたこと



* * * * * * * * * *

ドキュメンタリー作品なのですが、まさにアンビリーバブルな話。
2007年、シカゴの青年ジョン・マルーフが
オークションで大量の古い写真ネガを入手します。
すべてヴィヴィアン・マイヤーという一人の女性が撮影したものなのですが、いい写真に思える。
そこで一部を自身のブログで紹介したところ、世界中から絶賛の声が届きます。
そこで彼はこのヴィヴィアン・マイヤーという女性に興味を抱くのです。
これまでに写真を公表した形跡が全くない。
しかし、驚くべき枚数の写真で、しかもレベルが相当高い・・・。
一体彼女はどんな女性だったのか?


調べてわかったのは、彼女はニューヨークでナニー(乳母)をして生活していたということ。
そして、ほんの少し前に他界していること。
本作はそんなヴィヴィアンと関わった人たちにインタビューをし、
彼女の人間像を探っていきます。





浮かび上がるのは、一人の貧しく孤独な女性です。
身寄りがなく、大抵は住み込みの乳母として子供たちの世話をし、
いろいろな家を転々としていた。
でもどの家でも自室に決して他人を踏み込ませようとしなかった。
ある時、家の人がこっそり覗いてみると、
部屋中に新聞紙やら何かの入った箱がびっしりと積み上げられていたという・・・。
彼女がいつもカメラを持って歩いていたことは知っていても、
その写真を見たことはなかったようなのです。
彼女自身もため込むばかりで、それを人に見せたりどこかに発表しようとは思っていなかったらしい。
写真ばかりでなく、新聞記事やレシート、何かの小物など、
あらゆるものを彼女はため込んでいたのです。
自身の記録として、そばに置いておくだけで満足だったのかもしれませんが、
それにしてもそれは殆ど「執着」というべきものだったことが伺われます。
孤独を埋めようとする心が、そちらに行き場を求めたのかもしれません。





それにしても、彼女の写真の良さは素人の私にも十分伝わります。
ニューヨークの街角の人々の様子。
モノクロでちょっぴりノスタルジックな味わいもありますが、
何より人物一人ひとりの人生を切り取ったかのような、表情が素晴らしい。
それぞれの人が身構えることもなく、
悲哀に満ちていたり、幸せそうであったり・・・。
どうしてそんな表情を写し取ることが出来たかというと、
その古い二眼レフのカメラにも秘密はあるようなのですが・・・。



彼女の顔写真は、残っていた写真の中にあったものですが、
この強い眼差しは魅力的ですね。
ヴィヴィアンの亡き後に、こんなふうに評価が高まったというのは皮肉ですが、
彼女が亡くなったからこそ、ネガがオークションに出品されたというわけなので、
当然の成り行きでもあるのですね。
そしてまた、ブログで不特定多数の人たちの評価を得た、というのがいかにも現代的。
おまけに身寄りが全くなさそうなヴィヴィアンの母親の故郷を、
ジョン・マルーフが彼女の残した写真から、ネットで特定した、
という話がまた、今だからこそできることなので、恐れ入ってしまいます。
何にしても興味深い話でした。
人間って凄いな・・・。





ところでヴィヴィアン・マイヤーを見出したジョン・マルーフ本人が監督を務めたこの作品。
いやはや、この人もすごい。
(ナニモノ?!)

ヴィヴィアン・マイヤーを探して [DVD]
ヴィヴィアン・マイヤー,ジョン・マルーフ,ティム・ロス,ジョエル・マイロウィッツ,メアリー・エレン・マーク
バップ


「ヴィヴィアン・マイヤーを探して」
2013年/アメリカ/83分
監督:ジョン・マルーフ
出演:ヴィヴィアン・マイヤー、ジョン・マルーフ

人物発掘度★★★★★
満足度★★★★★



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