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RAILWAYS 愛を伝えられない大人たちへ

2019年12月17日 | 映画(ら行)

熟年離婚と在宅死

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RAILWAYS 49歳で電車の運転士になった男の物語」に続くシリーズ第二作。

富山地方鉄道で運転士として42年勤め、
1ヶ月後に定年退職する予定になっている徹(三浦友和)。
そんなある日、妻・佐和子(余貴美子)が緩和ケアサービスの看護師の仕事に就きたいと言い出します。
よく話も聞かずに一蹴する徹に反発し、佐和子は家を出てしまうのです。
仕事一筋だった男の人生にとって、妻とはどういう存在だったのか。

定年を迎えるとき、人生をも見つめ直すことになる男の物語・・・。

 

私、前作で「自宅で死にたい」と言っていた老女が
病院でしか死を迎えられなかったことに対して愚痴を言ってしまったのですが、
それが聞こえたかのような本作の展開に、いささか驚いてしまいました。
本来「鉄道」のストーリーなのですが、サイドストーリーに反応してしまって申し訳ないですが、
また、触れさせてもらいます・・・。

 

佐和子はもともと看護師の資格は持っていたのですが、
結婚してから子育てや親の介護に明け暮れ、
いつか仕事に戻りたいと思っていたのが、ついにこれまでかなわなかったのです。

それでこのたび緩和ケアの看護師の仕事を見つけて是非やりたいと思う。

緩和ケア、すなわちガンなどで死に向かう人のケア、
しかもここでは訪問看護、自宅で死にたいと願う人々をケアする仕事なのです。

尽くした結果が治癒して終わりではないので、心理的にハードルの高い仕事ではありますが、
佐和子は多分自らの介護経験から、意味のある仕事だと思ったのでしょう。

作中に登場するのは、在宅死を望む女性(吉行和子)。
おひとりさまではなく、娘、孫と住んでいます。
あるときいよいよ不調で病院に運ばれますが、本人のたっての希望でまた自宅へ戻ります。
このときのハードルは医師なんですね。
医師は帰すのは無理と主張しますが、佐和子はご本人の気持ちを汲んで、医師を説得します。

 

先に読んだ上野千鶴子さんの本の中でも、
「在宅看護・介護のシステムの中では医師の関わりは極力少なくていい、
看護師こそがイニシアチブをとるべき」
とありましたが、そのことを思い出させるシーンでした。

 

さて、余談ばかりですみません。
映画本題に戻れば、ひたすら夫に従い、内助の功的存在に徹してきた佐和子が、
夫の退職を間近にして自分の人生を顧みたのでしょう。
自分のやりたいことは何もしてこなかった・・・。

そんないろいろな気持ちを素直に夫に話せばよかったのでしょうけれど、
そもそも夫は全く妻の言葉を真剣に受け取ろうともしないし、
妻の人格なんて考えてみたこともない。
まあ、古いタイプといえばそれまでですが、これでは愛想を尽かされても仕方ないです・・・。
まともに話す気力もなくなります。

しかしドラマはいろいろ紆余曲折があり、
最後にやっと徹は妻の気持ちを理解します。

そして彼のとった行動は、妻から預かっていた離婚届を役所に提出すること。
なんだか意外だったのです、これが。
なんだかんだと言っても、実は佐和子は夫を待っていたように見受けられたのですが・・・。
すると、ラストには思いがけない展開が!!

それがナイスでした。
この年代の男性にしてはなんともしゃれています。
さすが三浦友和!!(そういう問題じゃないけど)

 

自分が似たような年代だからこそかもしれませんが、とても興味深かった。

まさに、愛を伝えられない大人たちの物語。

RAILWAYS 愛を伝えられない大人たちへ(豪華版 2枚組)数量限定生産 [DVD]
三浦友和,余貴美子,小池栄子,中尾明慶,吉行和子
松竹

WOWOW視聴にて>

RAILWAYS 愛を伝えられない大人たちへ」

2011/日本/123

監督:蔵方政俊

出演:三浦友和、余貴美子、小池栄子、中尾明慶、吉行和子、塚本高史、西村雅彦

夫婦の意思疎通度★★☆☆☆

在宅死を考える度★★★☆☆

満足度★★★★☆

 



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