11歳少年と家族の話
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万両店の廻船問屋『飛鷹屋』の末弟・鷺之介は、齢十一にして悩みが尽きない。
かしましい三人の姉――お瀬己・お日和・お喜路の
お喋りや買い物、芝居、物見遊山に常日頃付き合わされるからだ。
遠慮なし、気遣いなし、毒舌大いにあり。
三拍子そろった三姉妹の傍にいるだけで、
身がふたまわりはすり減った心地がするうえに、
姉たちに付き合うと、なぜかいつもその先々で事件が発生し……。
そんな三人の姉に、鷺之介は振り回されてばかりいた。
ある日、母親の月命日に墓参りに出かけた鷺之介は、
墓に置き忘れられていた櫛を発見する。
その櫛は亡き母が三姉妹のためにそれぞれ一つずつ誂えたものと瓜二つだった――。
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西條奈加さんの時代小説。
江戸のかなり大手の廻船問屋の末息子、鷺之介11歳が主人公。
かしましい3人の姉が、うるさいし自分に過干渉でもあるので、
早くお嫁に出てくれまいかといつも願っています。
実は長姉は嫁に出ていたのですが、出戻ってきてしまった
というのが冒頭の話。
前途多難ですね。
ともあれ、相当裕福な家なのですが、鷺之介は貧しい暮らしのこともよくわかっていて、
自分だけがこんな良い暮らしをしていることを後ろめたく思ったりもする聡明な子です。
3人の姉もそれぞれ個性があって、この家の身の回りの様々な出来事が語られて行きますが、
次第に、この鷺之介の身の上についての話が中心になっていくあたりが、
物語として優れていますね。
彼らのお母さんはすでに亡くなっていますが、実はそのお母さんの実子は長兄のみ。
3人の娘たちはつまりこのお店の主人がよそで作った子供たち・・・。
生後この家のおかみさんが引き取って育てたので、
皆、このすでに亡きお母さんを心から慕っていたのでした。
でも、そういえば、では鷺之介の母親は・・・?
というところが語られていないのです。
つまり、そのことこそが本作のキモなのでした。
いい物語です。
好きです。
図書館蔵書にて
「とりどりみどり」 西條奈加 祥伝社
満足度★★★★☆
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