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運び屋

2019年03月11日 | クリント・イーストウッド

男の筋の通し方

* * * * * * * * * *


さて、お楽しみのクリント・イーストウッド監督作品です。
監督兼主演を務める作品としては「グラン・トリノ」以来10年ぶりですって。
うわ~、あのときでもご高齢にかかわらず・・・と思ったのだけれど、
 それからさらに10年経ってるというのもすごいよねえ。
 実話に基づく作品で、でもなるほど、なぜこの歳で今なのか、なぜこのストーリーなのか、
 というのは見れば実に納得だよね。

はい。ストーリーは、デイリリーを育てる仕事一筋で、
 家族をないがしろにしてきたアール・ストーン(クリント・イーストウッド)ですが、
 社会の変化に乗り遅れ、農場が失敗。
 住む家も差し押さえられて、元妻のところを頼ろうと思っても、けんもほろろ。
 行き詰まってしまいます。


デイリリーはこちらでは「ヘメロカリス」と呼ばれているよね。
 一日花だけど、次々に咲くので、一日花とは思えないくらいのユリに似た華やかな花。
 日本の感覚だとこういう仕事って家族で行うことが多いと思うんだけどなあ・・・。
だよね。日本ならふつう家族力を合わせてだよね・・・。
みんなで取り組めば良かったのに。
まあまあ・・・、はじめからそんなことで異議申し立てしても仕方ないじゃん。
とにかく、彼は家族を立ち入らせなかったってことだよ。


はいはい。そんな時、車の運転さえすれば稼げるという仕事を紹介されて、引き受けることにするんだね。
気楽に引き受けたその仕事は、思いの外報酬がたんまり。
 実は、メキシコの麻薬カルテルの「運び屋」の仕事だったわけ。
荷物のカバンは見ないほうがいいと言われて、アールも始めはあえて見ようとはしなかったのだけれど、
 3回目くらいの仕事のときに、あまりの高額報酬を不審に思って見てしまうと、なんと鞄の中は麻薬だった!!
これまで一応真っ当に生きてきた彼は、とても狼狽してしまうんだね。


だけど、始めの報酬は孫娘の結婚式の費用に、つぎの報酬は退役軍人施設への寄付に使ってしまった。
 お金はいくらあっても困らない。
 農場も買い戻したいし・・・。
 というようなことで、覚悟を決めて続けて仕事を引き受けます。

でも相変わらずどこか気楽で、途中で寄り道をしたり、パンクで困っている人に手を貸したりしちゃう。
 老人であることと予測不能の動きをすることで、捜査当局の網に引っかからないわけなんだ。
 意外にも好成績を上げるので、メキシコのボスの邸宅に招かれさえするんだよね。
しかしある時、運搬の仕事中、どうしても大きく逸脱しなければならないことが起きる・・・。
いくらなんでもこの仕事はいい加減にすると命にかかわるということは承知の上だよね。
そこがね、やっぱり男の筋の通し方というか、イーストウッドらしさなんだなあ・・・。
老いてもやっぱりカッコイイよー!



私が好きだったのは、ベイツ捜査官(ブラッドリー・クーパー)とアールがカフェで話をする場面。
 捜査官は必死で「運び屋」を探しているのだけれど、目の前の老人がそうだとは夢にも思わない。
 そんな彼にアールは「仕事よりも家族が大事だ」と諭したりする。
自分に言い聞かせてもいるわけだなあ・・・。
 ・・・というわけで、この役はイーストウッド監督が、今、この歳でなければできなかったということなんだ。
88歳!!
出演は無理としても、まだまだ監督としては頑張ってもらいたいところだねえ。


ところで、本作のアールの長女役アリソン・イーストウッドは、実のイーストウッドの娘さんですって。
ああ、他にもイーストウッド作品で何回か出演したことがあったような・・・。
仕事一筋で家族を顧みない父・・・というあたりで、
 結構本作と似たような家族関係だったのかも、なーんて想像しちゃいます。
 女性関係の出入りの多いイーストウッド氏でもありますし・・・ね。
まあ、それはさておき、実にイーストウッドらしい感動作ではありました。

<シネマフロンティアにて>
「運び屋」
2018年/アメリカ/116分
監督:クリント・イーストウッド
出演:クリント・イーストウッド、ローレンス・フィッシュバーン、マイケル・ペーニャ、ダイアン・ウィースト、アンディ・ガルシア、アリソン・イーストウッド

老人力度★★★★★
満足度★★★★★



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