映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

最高の花婿

2016年05月13日 | 映画(さ行)
グローバル家族、バンザイ!



* * * * * * * * * *

フランスの地方都市シノン。
ヴェルヌイユ夫妻には4人の娘がいますが、
上の3人がそれぞれアラブ人、ユダヤ人、中国人の男性と結婚。
特別に差別するつもりはないけれど、
宗教も文化も違う相手にどう接して良いものやら、戸惑いを隠せません。
せめて、末の娘は自分たちと同じカトリック教徒と結婚して欲しいと願います。
ところが末娘と付き合っているのは確かにカトリック教徒ではありますが、
コートジボワール出身の黒人青年。
二人は婚約するのですが、そのことがまた、
夫妻や他の家族たちにも大きな波紋を呼び起こします。



今やフランスは多種多様な人種や宗教が混在するグローバル社会。
これがパリならば、そして若い人たちなら、もっと簡単に馴染めるのかもしれません。
けれども、本作はパリを離れた地方都市。
そして夫妻はそれなりの年齢。
差別はよくないとわかってはいても、つい身構えてしまう、
そういう気持ちはよくわかります。



いきなり紹介された娘の恋人が黒人だったら・・・、
それはやはり動揺しますよね。
けれど、妻マリーのほうが、ある時気づくのです。
「差別」というよりも、「よく知らないから怖い」のではないかと。
こういうのはやはり男性よりも女性のほうが柔軟性があるような気がします。
ここでも、夫クロードがいつまでもこの黒人青年を受け入れられません。


ところが、コートジボワールの青年の父親もまた、この結婚には断固反対。
コートジボワールはかつてのフランスの植民地。
独立後もまた、フランスには虐げられてきた苦い思いが彼にはあるようです。
だから、フランス人と結婚だなどととんでもない、
テヤンデエ、ベラボウメ・・・って、
江戸っ子じゃないですが、そういう頑固オヤジ風。



しかしこの相容れない同士の父親が、若い二人の結婚式の前日、二人で出かけていきます。
それは決裂のための話し合いのようでしたが・・・。
お互いに本音で話し合うこと。
「理解」こそが「共感」の糸口なのだろうなあ。
宗教や文化、肌の色、そういうものが違っても、
同じ人間で、人を愛することや家族が大事なことは変わらないのだと、
身を持って理解できれば、それでいい。



4人の娘がみな外国人と結婚。
いかにもドラマで、現実にはあり得ないことかもしれないけれど、
人々の心のありようは凄くリアルで、納得できてしまう作品でした。
始めのうちは婿同士も険悪だったのですが、
一つの目的のために一致団結していくところはすごく楽しい。
ユーモラスな語り口の中にも、大切なメッセージが込められていました。
それぞれの子供達も可愛くて、グローバル家族、いいじゃないですか~。
こんなことが進めば、戦争もなくなるかも・・・。

「最高の花婿」
2013年/フランス/97分
監督:フィリップ・ドゥ・ショーブロン
出演:クリスチャン・クラビエ、シャンタル・ロビー、アリ・アビタン、メディ・サドゥン、フレデリック・チョウ
2013年/フランス/97分

グローバル度★★★★☆
満足度★★★★☆


最新の画像もっと見る

コメントを投稿