映画と本の『たんぽぽ館』

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パリへの逃避行

2018年12月10日 | 映画(は行)

「妻」でも「母」でもない自分を求めて

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第31回東京国際映画祭において、
WOWOWの「W座からの招待状」として公開録画&ジャパンプレミア上映されたものです。

ロンドン郊外。
専業主婦タラはビジネスマンの夫マークとまだ幼い娘、息子と暮らしています。
暮らし向きはまあ困らない程度に豊か。
夫にも愛されていて、はたから見ればとても幸福そう。
・・・けれども、家事と育児に追いまくられる生活に
タラは何か満たされない思いを抱いているのです。
次第に夫とは気持ちもすれ違っていき、
ある日、子どもたちの喧騒と子供の気を引こうとする夫の猫なで声に絶えられなくなり、
衝動的にパリ行きの列車に飛び乗ります・・・。

本作は男性にとっては理解不能かもしれません。
一体何が不満だというのか、わがままな!と怒る人もいそうです。
でもまあ、タラの気持ちは割と女性にとっては古典的なテーマで、
共感を持つ人は多いのではないかと思います。


「妻」と「母親」という立場ばかり要求される日々。
特にここの夫は子供二人を作りながらも更に性欲旺盛で、
「体」を要求されることも多いのです。
そんな中で、タラは自分自身としての存在は一体どこにあるのだろう・・・と
不安になってしまうわけです。
何者にも侵されない個人としての「自由」、「尊厳」が、
消えてしまいそうに彼女は感じている。


もちろん結婚においてすべての女性がそんなふうに感じるわけではありません。
子育てに幸せを感じる人はもちろんいます。
大抵は、満ち足りた生活の中にしっかり根を張ろうと思うはず。
けれど、そうではない人もいるわけですよね。
それこそが個性。


家にいるときのタラ。
そしてロンドンの街へでかけた時やパリを訪れた時のタラ。
その表情が明らかに違うのです。
彼女は、自分自身の時間を大切にしたいと心から願っている。
でもそれを貫き通すことの代償はもちろん大きい。
でも、選び取ることができること、それこそが「自由」であります。
世間的には彼女の行動は非難の的かもしれないけれど、
いろいろな生き方があってもいいのではないかな・・・と、私は密かに思う。
でも、おばちゃんから言わせてもらえば、やがて子供は大きくなって出ていくし、
しばし我慢すれば「その時」はやってくるとも言えるのだけれど・・・。
あ、自分で書きながら気付きましたが、
タラは、夫がすっかり「嫌い」になってしまっていたのではないでしょうか。
愛情が持てないのではなく、はっきりとした「嫌悪」に変わっていたように思う。
だから共に暮らすことはできない。
どちらかというとこちらの意味合いの方が強かったのかもしれません。
であれば、しばしの我慢というのも無理ですね・・・。

 

<WOWOW視聴にて>
「パリへの逃避行」
2017年/イギリス/102分
監督:ドミニク・サベージ
出演:ジェマ・アータートン、ドミニク・クーパー、ジャリル・レスペール、フランシス・バーバー、マルト・ケラー
女性の生き方を考える度★★★★★
満足度★★★.5

 



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