映画と本の『たんぽぽ館』

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幸福路のチー

2020年09月25日 | 映画(か行)

故郷で考える、人生の岐路

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台北郊外に実在する「幸福路」を舞台にしたアニメです。

台湾の田舎町で必死に勉強し、大学を出て渡米。
アメリカで仕事に就き、結婚したチー。
ある日、祖母の訃報を受け、故郷の幸福路へ久々に帰ってきます。
チーは、子ども時代の思い出を振り返りながら、自分の人生や家族の意味について思いを巡らせます。
そして同時に、私たちは台湾の近代史をたどることにもなります。

台湾の近代史もなかなか興味深いところですが、
それを抜きにしても、十分に私たちにも共感できる大人のストーリー。
例えば地方出身の女性が東京に出て仕事に就き結婚する。
慌ただしい毎日。
子どもはまだいなくて、結婚生活もこれでいいのか少し疑問に思えてくる。
そんな時、久しぶりに故郷へ帰って・・・、
と、これも日本が舞台でも全然不自然ではない物語なんですね。

元々両親は娘に、女性でも十分に稼げる「医者」になることを望んでいました。
彼女もそのつもりではあったけれど、途中で文学とか哲学とか、
そういう方面を学びたくなったのです。
そこで路線変更をして・・・結果、その学習は特に何の役にも立たない。
アメリカへ渡って仕事についても、特にやりたかった仕事というわけでもない。
好きな相手と結婚はしたけれど・・・、なりたかった自分とはずいぶん違う。
この先どうなるのだろう。
本当は、自分はどうしたいのだろう・・・?

いつも自分に味方してくれた大好きだったおばあちゃん。
その存在はもはやなく、両親はいつの間にか年老いていかにも頼りない。
・・・さてさて、いかにも人生の岐路。

誰にでもありそうな話で、異国の話ではありながらすごく身近な気がします。
日本の文化とかなり近いところがあるからかもしれません。

無邪気だった子どもの頃のエピソードもとてもいいし、
そんな子どもの頃抱いていたイメージが「アニメ」の特性を生かして、
変幻自在なのがまた楽しいのです。

心に染み入る作品でした!!

<WOWOW視聴にて>

「幸福路のチー」

2017年/台湾/101分

監督・脚本:ソン・シンイン

声:グイ・ルンメイ、ウェイ・ダーション、リャオ・ホエイチェン、チャン・ボージョン

 

女性の生き方度★★★★☆

懐かしさ★★★★★

満足度★★★★★

 

 



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