映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

PLAN75

2022年06月24日 | 映画(は行)

後期高齢者は生き続けてはいけない?

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75歳以上の者が自らの生死を選択できる制度が施行された近未来の日本。

 

一人暮らしの78歳、角谷ミチ(倍賞千恵子)は、ホテルの客室清掃の仕事で生活しています。
ある日、高齢を理由に解雇され、住居も退去を言い渡されています。
職も、住居も、この年齢ではどこも新たには受け入れてもらえません。
やむなく、75歳以上であれば安楽死をさせてくれる「プラン75」の申請をしますが・・・。

一方、市役所の「プラン75」窓口で働くヒロム(磯村勇斗)は、
普通に仕事として真面目に取り組んでいましたが、
ある時、叔父が申請したことを知り・・・。

そしてまた、死を選んだお年寄りに、
その日が来るまでサポートするコールセンターのスタッフである瑤子(河合優実)。
規定を犯し、角谷ミチと実際に対面してしまい・・・。

この日、上映初日でしたがかなり人が入っていました。
私同様、年配の方がほとんどです。
やはり本作の衝撃的設定が、気になるのでしょう。

 

高齢者が長生きすることにより、若年層に多大な負担がかかっている。
そのため若者が高齢者を「狩る」事件が多発している・・・というような世の中。
そんなことの解決のために「プラン75」がうち立てられたのです。

死を選ぶかどうかは全く自由意志。
とはいうものの、長く生きている人は肩身が狭いというか、
まるでいつまでも死なないわがままな人と思われているような気がしてしまう。
というか、実際その通りなのでしょう。

しかし、りっぱな施設に入所し、思うさま介護を受けて過ごす人もいる。
その経済効果もバカにはならないという・・・。

つまりはこれ、お金持ちはより快適に、お金のない人は否応なく死を選ぶしかない、
と、そういう制度であることが浮かび上がってきます。

なんとも殺伐とした近未来・・・。
そんななかでも、わずかに人間性を取り戻し、抗おうとする人々の物語であるわけです。

現代の姥捨て山物語。
でも、そんな風に年寄りを施設に隔離してしまうのではなく、
いろいろな年代の人が混じり合い、それぞれできることをして互いに補い合う・・・
そういう世の中ならいいな、と常々思う。

私はこれ以上世の中の悲惨を見たくないので、
こんな制度があればさっさと申し込んであの世に行きたい、
などと思うのですが、
いやいや、こういうヤツこそいぎたなくいつまでも生きていそう・・・

<シネマフロンティアにて>

「PLAN75」

2022年/日本・フランス・フィリピン・カタール/112分

監督・脚本:早川千絵

出演:倍賞千恵子、磯村勇斗、たかお鷹、河合優実、ステファニー・アリアン

 

戦慄の未来度★★★★☆

満足度★★★★☆

 



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