現れたり消えたりする遺体
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マンションで発見した独居老人の死の謎に
中年男と高校生のコンビが挑む、心温まるミステリー。
鶴川佑作は動揺を隠せなかった。
引っ越しの準備をする佑作がマンションの同じ階に暮らす串本を訪ねると、
彼はこと切れていたのだ。
来客対応中だったらしい。
老齢ながら彼は友人だった。
通報もせず逃げ出す佑作。
だが、その様子を高校生の佐々木紘人に撮影され、部屋に戻れと脅迫される。
翌朝、動画の消去を条件に佑作は紘人と再訪するが
――今度は遺体が消えていた!
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マンションで起こる“事件”を描きます。
中年・独身・失業中の鶴川が、同じマンションに住み親しくしている老人・串本を訪ねてみると、
串本は部屋で倒れ、こと切れていました。
通報もせず逃げ出した鶴川。
しかしその後また引き返してみると、遺体は消え失せていた!!
串本の背中にナイフがつき立っていたりはせず、
死因は間違いなく心臓疾患の突然死。
ということでマンション内の連続殺人事件などではないのにホッとしますが、
それにしてもあったはずの遺体が消失というのはなかなかにショッキングです。
鶴川は同マンションの祖母の家に身を寄せているという高校生・紘人と共に
この謎を解くことになります。
死体はその後、串本の姪が訪ねてきたときにまた発見されました。
1度消えてまた戻ったわけですね。
謎が深まりますが、とりあえずはその間の謎は表沙汰にならず、無事に葬儀が行われることに。
ところが、どう見ても気のいい穏やかな老人串本が、
マンション内で“変質者”と思われているらしいことも発覚。
それにはそれなりの根拠もあるのですが、
彼がそんな行為をするとは鶴川には信じられない。
今度は串本の行動について、調べ始めます。
ということでこの物語、一人の老人が気づき、
その後を継いでその友人鶴川が、大きな事件を解き明かすという流れになっているわけです。
中年男と高校生のへんてこコンビも良いのですが、
次第にマンション内の人々が連携していくのもいい感じ。
学校や職場でたとえうまくいかなくても、
同じマンション内住民のコミュニティが居場所になるというのはいいですね。
いろいろな人がいて、時には助け合う。
今時、となりにどんな人が住んでいるのかも分からないということも多いのですが、
こうしたつながりを大事にしていくように変わっていくのもいいと思う。
<図書館蔵書にて>
「ドアを開けたら」大崎梢 祥伝社
満足度★★★★☆
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