どん底のとき
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山間の小さな町。
40歳目前、独身の美咲(篠原ゆき子)は、半身不随の母(高畑淳子)の介護をしながら、
地域の学童保育所で働いています。
美咲は東京の大学を出てから仕事も恋愛もうまくいかず、実家に戻ってきていたのです。
母は、そんな美咲を否定し、罵詈雑言を浴びせ続けます。
美咲の現在の心のよりどころは、
今の恋人と、親友である養蜂家・香織(倉科カナ)のみ。
ところがある日突然恋人は離れていき、香織は・・・!
かなりトーンは暗いです。
特に脳卒中だったらしい母を演じる高畑淳子さんの、
身の不自由さがものすごくリアル。
口がうまく回らず、けれどそのうまく回らない口で娘に対しての叱責の言葉・・・。
ひ~、なんとも辛いです。
実は美咲の父はまだ若いうちに自殺して亡くなっているのです。
美咲は母が父を追い詰めたと思っているし、
母は大金をかけて大学まで出したのに、なんの役にも立たない疫病神、
と娘を呪います。
毎日がギスギスとして地獄のようです。
一方、養蜂業を営む香織も、心に問題を抱えていて・・・。
誰も彼もが心に重荷を抱えている。
何もかもうまくいかないこの世界は、果たして生きるに値するのだろうか・・・???
こんな女たちと対照的に登場するのが、
訪問介護の仕事をしている外国人のマリアム(サヘル・ローズ)。
美咲の母の介護のため、ほぼ毎日この家を訪問します。
明るく仕事熱心。
この家のうまくいかない母娘関係もなんとなく嗅ぎ取っています。
ただ一人、マトモに「生」へと向かっている、まぶしく心強い存在。
彼女だってここまでになるまでにどれだけ辛い思いをしたことか、と思うわけですが、
そうした経験が彼女を強くしているのかも知れません。
気持ちも状況もどん底の時は、未来を考えてはいけないような気がします。
香織は考えてしまったのですね・・・。
けれど、なんとかそこをしのいでみよう。
ほんの一人でもいい。
自分の思いを共感してくれる人がいれば。
すぐそばにそのぬくもりがあれば。
状況は変わらなくても、なんとなく日が差し込むような気持ちになれる。
劇的な「いいこと」なんて本当は必要ないんですね。
そんな気がしました。
<WOWOW視聴にて>
「女たち」
2021年/日本/97分
監督:内田伸輝
出演:篠原ゆき子、倉科カナ、高畑淳子、サヘル・ローズ、筒井茄奈子
行き詰まり度★★★★★
満足度★★★.5
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