映画と本の『たんぽぽ館』

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ファッション・リイマジン

2023年09月26日 | 映画(は行)

サステナブルなファッションへ

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ファッション業界に一石を投じるドキュメンタリー。

2017年4月、英国ファッション協議会とVOGUE誌は、
「Mother of Pearl」のクリエイティブディレクターである
エイミー・パウニーをその年の英国最優秀新人デザイナーに選出しました。

エイミーは大量消費が当たり前のファッション業界に危機感を抱いていました。
そのため、彼女はこの新人賞10万ポンドの賞金を元に、
「Mother of Pearl」をサステナブルなブランドに変革することを決意します。
デビューまで18か月。
このタイムリミットの中、エイミーと仲間たちは様々な困難に遭遇しながら、
理想の素材を求めて旅をします。

元々エイミーは環境活動家の両親の元で育ちました。
だからこそ、極力環境に負荷をかけない、サステナブルな
ファッションブランドを目指そうと考えたわけです。
ファッションがそんなに環境に負荷をかけているのか?と思いますよね。

今、途方もない量の洋服が生産、販売されているけれど、
そのうちの多くが一年以内に廃棄されている。

ナノプラスチックの海洋汚染が言われていますが、
それは化学繊維の被服を洗濯することで発生するモノがほとんどだそうです。
知らなかった!
また、ウールやコットンの自然素材の場合でも、
それを繊維にしたり染色したりする際に使う化学薬品も相当な量になります。

布を扱う多くの問屋も、その原材料がどこから来たものなのかよく分かっていない。

羊を飼う牧場。
綿花を作る畑。
そこから、糸となって、染色され、織物となる。
その間、何カ国もを渡り歩き、最後にはどこをどうたどって
ここに届いたのかも分からなくなってしまっている。

エイミーはその道筋をはっきり分かるものにしたいと思い、
まずは生産者の所から訪ね歩くのです。

このようなあげくにできあがった被服は、当然通常よりも価格が高くなります。
けれど、素性が知れて良質なモノを長く着るのはいいですね。
私も、できるならそうしたデニムなどを身につけてみたい・・・。

 

けれどファッションブランドでそうしたことに取り組んでいるのはごくわずか。
結局は、このエイミーのブランドも、大量消費の中の
ちょっと毛色の変わったものの一つにしか過ぎない・・・なんてことになってしまいそう。

もっと全体的な意識が変わらないとダメですね。
でも実際問題として、高級なモノは手を出しにくいし・・・。

作中でもほんの少し触れられていましたが、
とんでもなく安い賃金で女性たちが縫製作業に従事している国のこと・・・、
それだからわたし達はとんでもなく安いTシャツなどを手に入れることができる、
というような社会のひずみも知っていなければなりません。

もはや一国だけでなくて、地球上のすべてを巻き込んで、
こんなおかしなことがまかり通っているわけで。

いろいろ考えさせられるのでした。

 

<サツゲキにて>

「ファッション・リイマジン」

2022年/イギリス/100分

監督:ベッキー・ハトナー

出演:エイミー・パウニー。クロエ・マークス、ペドロ・オテギ

社会問題提示度★★★★★

満足度★★★★☆



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