映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

インセプション

2010年07月25日 | 映画(あ行)
シュールな世界に遊ぶ



           * * * * * * * *

人が眠っているうちに潜在意識に潜入し、アイデアを盗む。
コブ(レオナルド・ディカプリオ)はチームでそういう仕事をしていますが、
特に彼はその中でもスペシャリスト。
潜在意識に潜入とは・・・つまりは人の夢の中に進入する。
潜在意識の奥底に、当人のアイデアがひっそりとしまわれているというのです。
このストーリーでは、盗み出すのではなく、
さらにそこにアイデアを植え付けようとするもの。
ターゲットの心の奥底にあるアイデアを忍び込ませて、
それは元々自分で考えついたことだと思わせるのです。
それが“インセプション”という最高難度のミッション。



さあ、このミッションではなんと、夢と、夢の中の夢。そして夢の中の夢の中の夢。
夢が3層になっているのです。
深く潜れば潜るほど、深層心理に近づいていく。
夢の中では実際に数秒でも非常に長い時が流れる。
だから3層めではさらに長大な時を過ごすことになる。
それぞれの層を同時進行させながら、話が進むのです。
たとえば一層めで、車が橋から落ちるというその刹那に、
二層め、三層めではさらに別の戦いが繰り広げられている
という風で、スリルたっぷり。


このような不思議な物語を、この作品、見事に映像化してくれました。
夢というのは実際リアルなものですが、時としてその内容はシュール。
そういう雰囲気がたっぷりでした。
夢の中では私たちはそれを現実と思っています。
だから実際には起こっていないことも
その時点では現実。
マトリックスを始めとしてこの手の話はこの頃多いですね。
そういえば、つい最近、
やはり眉間にしわを寄せたディカプリオ作品「シャッターアイランド」も、
結局は脳内の仮想空間の物語ではなかったか。
考えてみたらテレビや映画も、“夢”のようなものです。
自分自身で見たわけでもないのに見たような気になってしまう。
ニュースでやっていることは本当に、本当でしょうか・・・?
この先3Dがもっと発達したら、
いよいよ現実と仮想の区別がつかなくはならないでしょうか。
この作品中では、コブの妻が、現実と夢の区別がつかなくなってしまうのです。
実際、現実であるにも関わらず、夢だと思い込んでしまう。
また、夢の中の居心地の良さにおぼれ、現実を逃避し、眠り続ける人々もいます。
アイデアを盗むとか何とかより、こちらの問題の方が切実のような気もしますね。
コブは自分自身夢と現実を区別するために、コマをいつも持っています。
いつまでもそれが回り続けたら夢。
力尽きて回転が止まれば現実。

ああ、そういえば「レポゼッションメン」のジュード・ロウも、
コマを回してみると良かったかもしれませんね!
けれど永久に冷めない夢の中で生きるってのはどうなんでしょう・・・。


この作品のキャストは、渡辺謙さんはもちろんですが、見知った人がたくさん。
渡辺謙はすっかり国際俳優の貫禄がつきましたね。
世界のナベアツ、ならぬ、世界のナベケン。
カッコイイです。
ジョセフ・ゴードン=レビットは、なんだかこの頃気になっちゃうんです。
今回のオールバックのヘアスタイルもいいなあ。
マリオン・コティヤールは、エディット・ピアフだし、エレン・ペイジはジュノ!
個性たっぷりの面々、これぞ“夢”の共演。




2010年/アメリカ/148分
監督・脚本:クリストファー・ノーラン
出演:レオナルド・ディカプリオ、渡辺謙、ジョセフ・ゴードン=レビット、マリオン・コティヤール、エレン・ペイジ


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