落語界だからといって、楽しい人、善人ばかりとは限らない。
自分の芸だけが頼りのシビアな階級社会。そこで起こる事件の解決に乗り出す、二人組み登場!
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「三人目の幽霊」 大倉崇裕 創元推理文庫
落語専門誌「季刊落語」編集部、新米記者の緑と、編集長、牧。
この二人がホームズとワトソンよろしく、さまざまな事件を解決してゆきます。
事件とは言っても、さほど血なまぐさいことは起こりません。
(三つ目の短篇「三鶯荘奇談」が、珍しくサスペンス。)
いわば日常の謎を解く連作の短編集。
ほとんどの舞台は落語界を中心に起こり、ちょっぴりですが落語の内容に触れるのも、楽しいです。
先日見た映画、「しゃべれども、しゃべれども」に出てきた、「火炎太鼓」の話も出てきたので、ごく個人的にウケました。
ここに登場する編集長の牧は、
『おむすびのようにふっくらとした顔、笑うと一直線になってしまう目。
頭は見事に禿げ上がっており、それを隠すためにグレーのベレー帽をちょこんとのせている。
白いもののまじった口髭が、上品なアクセントになっている』
という、どちらかというと冴えないおじさんですが、洞察力が鋭く、通常の人ではまずわけが分からないことも、するするとといてしまう。
頼りになるおじ様です。
私なども、なんでこれだけの手掛りで、そこまで分かっちゃうのよ~と、目が白黒してしまいますが、一つ、なんとなく答えが分かったものがありました。
それが「崩壊する喫茶店」。
ところが、この文庫の解説者、佳多山大地氏によればこの作品のトリックにはキズがあると。
おぼろげながら、「でも、無理じゃないかなー」とも思ったのですが、実際、無理のようでした。
ミステリ好きの方は、チャレンジしてみるのもよいかと思います。
しかし、解説者は、そのキズをも、予定通りとして、なお深い解釈を試みます。
すばらしい!これは、親切なのか意地悪なのか?
それこそ謎ではありますが、必ずしも100パーセントつじつまが合わないこともある・・・ということですね。
「不機嫌なソムリエ」のなかなか強烈な真相も、面白かったと思います。
満足度 ★★★
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