映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

「レインコートを着た犬」吉田篤弘

2018年07月07日 | 本(その他)

人も犬もゆるくつながる街

レインコートを着た犬 (中公文庫)
吉田 篤弘
中央公論新社

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なぜ神様は犬に笑顔を授けてくれなかったのか―
"月舟シネマ"の看板犬ジャンゴは、心密かに「笑う犬」を目指している。
そんなジャンゴの思いをよそに、雨が町を濡らし、人に事件を運ぶ。
小さな映画館と、十字路に立つ食堂を舞台に繰り広げられる雨と希望の物語。
ゆるやかに呼応する"月舟町"シリーズ三部作の完結編。

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吉田篤弘さんの"月舟町シリーズ"三部作の完結編、ということで張り切って読みました。
(その割には文庫化まで粘った・・・。)
本作の語り手は犬のジャンゴ。
著者あとがきによれば、本当は月船シネマの直青年をナレーターにしようと考えていたようなのですが、
無口な彼には似合わないと感じたそう。
それで、その足元に寝そべっている犬に目をつけた、と。
確かに、犬は傍観者的に人の営みを見ているものですし、
犬の前では人はつい本音を吐露してしまうもの。
そして、人の世が大好きなこのジャンゴはまさに語り手としてピッタリなのでした。

ジャンゴにはこのような立派な名前があるのですが、
ご近所の皆さんはそれぞれ好き勝手に彼を呼びます。
古本屋の親方は"アンゴ"だし、パン職人の初美さんは"ゴン"、
映画館の常連タモツに至っては単に"犬"だったりする。
でも直がつけたこの名前の本当の由来は、なかなかステキなものだったんですよ。
無口で少し暗くてめったに笑わない。
おまけに映画館の経営は右肩下がり・・・。
若干行き詰まった直が、少し気を取り戻してゆくまでの、ゆる~いストーリーです。

さて、レインコートを着た犬。
犬にコートやら何やら、いろいろなものを着せることに異を唱える方もありましょう。
実は私もその一人。
犬は本来服なんか着るものじゃない!! 
(ただし、レインコートは実用性から言って必要ではある、と思うのですが)
このジャンゴ自身も、かねてからそう思っていました。
けれど、初美さんがレインコートをプレゼントしてくれたのです。
いつも散歩ですれ違う柴犬だって、着ないで頑張っている。
だから自分も頑張らなくては・・・!と、
頑なに着るのを嫌がって逃れていたジャンゴでしたが・・・。
拒む裏にはちょっぴり着てみたいという気持ちもあるわけで。
新しいことに踏み込む気持ちを表すステキなエピソードでした。

「レインコートを着た犬」吉田篤弘 中公文庫
満足度★★★★★

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