映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

見えざる手のある風景

2024年01月20日 | 映画(ま行)

エイリアンをある「人種」に置き換えれば、ありそうな未来

* * * * * * * * * * * *

一風変わった近未来SF。

 

近未来の地球。
あるエイリアンの種族に占領されています。
武力ではなく、官僚主義的支配と高度なテクノロジーによって、
彼らは圧倒的な経済力を持ってこの世を支配。
地球の人々の大半が貧困と失業にあえいでいます。

そんな中、二人のティーンエイジャーがあることを思いつきます。
単性生殖のエイリアンに、人間のロマンチックな愛の姿を提供しようというのです。
二人が恋に落ちてゆく様子をリアルタイムで中継を始めます。
そうすると見た人の人数によりお金が入る仕組みなのです。
二人の狙いどおり、エイリアンの間でバズって
二人は多少のお金を得ることができます。

ところが、そもそもリアルタイムの中継というのには抵抗があります。
元々二人には良い雰囲気が流れていたのですが、次第に初々しい気持ちも冷めていって、
その様子を見たあるエイリアンが、
これは契約違反だと言って多大な賠償金を請求しようとするのです・・・。

 

 

このエイリアンというのがいかにもユニークな姿をしていまして・・・。
彼らはヘラのような手をこすり合わせることによって音を出し、
それが言語なのです。

知性も感情も地球人とよく似ているけれど、何しろビジネスライクで、
瞬く間に地球上の富を支配するようになって、
彼らにうまく取り入って彼らの元で働くようになった人々が成功者。
空中に浮くリッチな街に住むステータスを得ます。

大半の落ちこぼれた人々は、
地上にへばりついて惨めな生活を続けるしかない・・・。

と、つまりこれはSFチックに描かれているけれど、
すでにこの地球上にある「経済格差」のことを例えて描いているに過ぎない
ということに、どなたも気づくことでしょう。

 

結局主人公らは、このエイリアンを追い払うことも世界をひっくり返すこともできないけれど、
でも心の自由は誰にも奪うことはできない、と。

まあ、せめてそう思うほかないですかね・・・。

 

<Amazonプライムビデオにて>

「見えざる手のある風景」

2023年/アメリカ/105分

監督・脚本、コリー・フィンリー

原作:M・T・アンダーソン

出演:アサンテ・ブラック、ティファニー・ハディッシュ、カイリー・ロジャーズ、ブルックリン・マッケンジー

 

格差度★★★★★

ユニークなエイリアン像度★★★★★

満足度★★★☆☆



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