映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

「夢見る帝国図書館」中島京子

2021年12月20日 | 本(その他)

図書館の最大の敵は戦争

 

 

* * * * * * * * * * * *

「図書館が主人公の小説を書いてみるっていうのはどう?」
作家の〈わたし〉は年上の友人・喜和子さんにそう提案され、
帝国図書館の歴史をひもとく小説を書き始める。

日本で最初の図書館をめぐるエピソードを綴るいっぽう、
わたしは、敗戦直後に上野で子供時代を過ごし
「図書館に住んでるみたいなもんだったんだから」
と言う喜和子さんの人生に隠された秘密をたどってゆくことになる。

帝国図書館と喜和子さんの物語はわたしの中で分かち難く結びついていく……。

* * * * * * * * * * * *

 

本作は、二つの物語を同時に楽しめるステキに楽しい本でした!!

作家の<わたし>が、上野で知り合った年上の女性・喜和子さんに
「図書館が主人公の小説をかいてみない?」と言われて、
帝国図書館の歴史を紐解く小説を書き始めます。
その、時代を追った小説が少しずつ進行していくのです。

そしてまた一方、風変わりなこの喜和子さんのことが語られて行きます。
子どもの頃、上野のバラックで二人のお兄さんと暮していて、
毎日のように図書館に通っていた、という。
不思議な喜和子さんの人生が、まるでミステリのように提示され、
少しずつその秘密が解き明かされていきます。

 

まずは国立図書館の話。
単に、年表のような歴史ではなく、まるで図書館自身が語っているかのような、
思いのこもった歴史なのです。
とても興味深い。

明治の人々の、欧米の図書館に負けないような立派な図書館を作りたいという熱い思い。
その思いが政府に届き、なんとか実現しそうというときに、
いつでも立ちはだかるのは予算の問題。
とにかく予算がない。
いつも何かしらの「戦争」が起きて、予算は戦費に回されてしまう。
「ペンは剣よりも強し」とはいうけれど、
ここの図書館については、いつでも剣の方がペンよりも強いというわけなのでした・・。

また、この図書館を訪れたであろう数々の文豪たちの様子が描かれているのも楽しい。

 

帝国図書館は、現在の「国際子ども図書館」となっていますね。
いつか東京へ行くことがあったら、寄ってみたいです。

 

また、喜和子さんという女性の一生は実は辛い物語なのに、
そこを飄々と生き抜いた、いさぎよい一人の女性の物語でもあり、
深い感慨を覚えます。

読み応え満点の本でした。

 

図書館蔵書にて

「夢見る帝国図書館」中島京子 文藝春秋

満足度★★★★★



最新の画像もっと見る

コメントを投稿