映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

愛しのアイリーン

2018年09月16日 | 映画(あ行)

娼婦と嫁の違いは?

 

* * * * * * * * * *


安田顕さん出演作なので、ぜひ見ようと思っていたのですが、
内容は私的にはちょっとキビシかった。

田舎暮らし、42歳まで恋愛を知らず独身の岩男(安田顕)が、
父の葬儀の真っ最中に、フィリピン人の嫁・アイリーン(ナッツ・シトイ)を連れて帰ってきます。
それを見た母・ツル(木野花)は喪服のまま、ライフルをかまえて飛び出してきた・・・。


異文化に育った二人がぎこちないながらも結婚生活を送るうちに
次第に心が通い合って・・・などというストーリーを予想していた私ですが、
そんな甘い話では全然ありませんでした!



岩男ははっきりと妻を「買う」ためにフィリピンへのツアーに参加し、
いかにも適当に選んだ相手をいきなり連れ帰ってきたのです。
そのためには相当な出費もしており、まさしく「買った」としか言えない状況。
アイリーンも自分のためというよりは大家族の生活の助けになるから・・・
という理由で「結婚」に踏み切ったのですね。
ほとんど言葉も通じないままに・・・。
しかし、このことは岩男の母にとっては許しがたかった。
この母がまた、強烈です。
この母故に、一人息子は40すぎまで結婚できなかったのだろうと容易に想像がつきますが、
本人はそんなことには全く気づいていない。
彼女は、彼女が望む従順で初婚の女を息子にあてがおうと必死。
そこへわけのわからない娘がいきなり飛び込んでくる。
少しは折り合おうなどという気持ちもサラサラなく、
嫁を「ムシケラ」と呼び、ひたすら追い出そうと思うだけ・・・。
無邪気でまだ子供のようなアイリーンは、良い受け入れ方さえできればきっと良い家族になるのにな・・・。
アイリーンが口ずさむ歌が素敵でした。


だがしかし・・・、
娼婦と嫁の違いは・・・? 
はたまた、売春と結婚の違いは・・・?
そこにお金が動く以上、法律的なこと以上に、
なにか決定的なことが心の深みにわだかまってしまうのではないでしょうか。
だから、どう頑張ってもこの作品はほのぼのしたものになどなりようがなかったわけです。
だから悲劇は起こります。

あまりにも直接的で美しくはない性描写にはちょっと怯みますが、
内容的にはかなり納得できるものでした。
というか、ここでロマンティックなシーンを入れてもぶち壊しなので仕方ないか・・・。
そうとうにダメ男の岩男が、リアルにそこにいましたね・・・。
そして、どうしようもない格差と差別が、虚しくそこにある。

<ディノスシネマズにて>
「愛しのアイリーン」
2018年/日本/137分
監督:吉田恵輔
原作:新井英樹
出演:安田顕、ナッツ・シトイ、河井青葉、木野花、品川徹、伊勢谷友介

結婚を考える度★★★★☆
満足度★★★.5



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