映画と本の『たんぽぽ館』

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ぼくらの家路

2016年06月17日 | 映画(は行)
ドイツ版「誰も知らない」



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ドイツ版「誰も知らない」のような作品。
10歳ジャックと6歳マヌエルの兄弟は、シングルマザーの母と3人暮らし。
しかし常にいろいろな男が出入りしています。
ある事件があり、ジャックは施設に預けられることになってしまいます。
他の仲間とはなかなか打ち解けられず、
彼を目の敵にしていじめる奴もいる。
そんなだから、ジャックは施設に馴染むことができず、
ひたすら家に帰ることができる夏休みを心待ちにしていたのです。
ところがいよいよ夏休みに入るというその日、
母から「迎えに来られなくなった」との電話。
落胆したジャックは、施設を飛び出し、夜通し歩いて我が家に帰り着きます。
しかし母は不在。
鍵がないので家には入れません。
ケータイも留守電のままでつながらないのです。
翌日、弟の預け先から弟を引き取ったジャックは、
母の仕事場や以前の母の男の元を訪ね歩きますが・・・。



母親は、実際にそばにいれば明るく優しい母なのです。
しかし、保護者としての責任感が著しく欠如している。
平気で子どもを置いて家を空ける。
これがネグレクトであるという自覚もないのでしょう。
この母の姿は、「誰も知らない」の母親にとても良く似ています。
母の行先は新たな男の元だということも。



それにしても、ジャックのたくましい「生きる力」に打たれます。
こんな母だから、そうならざるを得なかったわけですが。
彼は実によく弟の面倒を見ます。
実際はまだまだ自分自身が母親に甘えたい年齢なのに・・・。
これも、母親がまったく頼りにならないということの裏返し。



本作ラストでは、兄弟はようやく帰ってきた母親と平和な一夜を明かすのですが、
その時のジャックの決断。
これが凄い。


お金も食べるものもなく、幼い弟を連れ歩き、野宿をして・・・
そうして少年は大人にならざるを得なかった。
そしてその時、
母親自身が大人になりきらない「子ども」であることが見えてしまったかのようです。


ぐさりと心に刺さる作品です。

ぼくらの家路 [DVD]
ネレ・ミュラー=シュテーフェン,エドワード・ベルガー
アルバトロス


「ぼくらの家路」
2014年/ドイツ/103分
監督:エドワード・ベルガー
出演:イボ・ピッツカー、ゲオルグ・アームズ、ルイーズ・ヘイヤー、ネル・ミュラー=ストフェン、ビンセント・レデッキ
児童虐待度★★★★☆
少年の生きる力★★★★★
満足度★★★★.5



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