人骨

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また最近聴いた音楽

2006年05月29日 | 70年代ロック雑談
連休前盗難に遭った話をした。この時現金のほか実はCDプレーヤーも盗まれてしまっている。まあプレーヤーは我らがアイワ製の安物なんで痛くも痒くもないのだが(いや、痒いくらいのことはあるかな…)、なにより痛いのが中に入れてたCDを盗られたことである。といっても別に光栄の「サウンドウェア」みたいな恥ずかしいCDが入っていたからではい。CDを盗られてしまい、結果手許に残ったのがジャケットとケースとライナーノーツである点が痛いのだ。洋楽ばかり聴くぼくは日本盤CDが好きで結構ライナーとかもコレクションする性質なのだが、「CDケースを開けると日本盤ライナーや帯が完備されているにも関わらずCDそのものが無い」というシチュエーションには、さすがに哀しみの念を禁じえないのだ。もちろんアイワのCDプレーヤーと比べればCD1枚は安いものではあるが、これは金額の問題ではないようだ。ご想像いただけないだろうか?主のいないCDケースの哀しさが。

で、盗られたのはパープルのファイアボールでした。実はその3日くらい前にディスクユニオンで中古で買ったヤツ。800円だった。
以来ずーっとリベンジを果たすべく中古でファイアボールを探しつづけたのだが、ようやく今日GETできた(値段は630円に下がっていた)。まだ開けてもいないのだが、願わくば「ライナーノーツに思いっきりコーヒーがこぼれてる」とか「ジャケットの上下の端がケースに食い込んで破けてる」ようなキズものだったら良いのになぁと妄想してみる。

しかし今日話したいのはパープルそのものではなく、第二期パープルのヴォーカリストとして歴史に名を刻むイアン・ギランのことだ。
これまた昨日ゲットしたアルバムがある。91年に彼が「ギラン」名義で発売した「ツール・ボックス」である。今日はこのアルバムについて語りたいが、長くは語らない。まだ1回しか聴いていないからだ。



ぼくはギランの「スクリーミング」のファンだ。彼のスクリーミング唄法には最大限のリスペクトを惜しまない。ちなみに「スクリーミング」の意味については「シャウト」と何が違うのか最初分からなかったが、彼独特の甲高い叫びがスクリーミングに該当するのだということが判明した。分かり易く言うとスクリーミングとは異様に高音程の金切り声であり、シャウトは音程に関わらず単なる叫び声のこと。
あえて擬音表現するならば、スクリーミングが

「ぉァァァァーーーーーーッ!」

であり、シャウトは

「ギャォッ」

というところだろうか。
もしパープルの「ハイウェイ・スター」をご存知なら、あのイントロのオーヴァーダブされた彼の第一声の雄叫びを思い出してもらいたい。あれがスクリーミングだ(「スモーク・オン・ザ・ウォーター」にはスクリーミングは出てこない、こちらはシャウトのみだ)。
彼のスクリーミングのもう一つの魅力はビブラートにある。異様に高音程の
「ぉァァァァーーーーーーッ!」

であるが、さらに精密に擬音表現するならば
「ぉァァァァーーーー~~~~~~~ッ!」
なのである

同時期に活躍したユーライア・ヒープのデビッド・バイロンはじめ同様のことをやるシンガーも多いし、それはそれで好きなのだが、やはり迫力ではイアンには及ばない。
アルバム「イン・ロック」のラストを飾る「ハード・ラヴィン・マン」を聴いていただきたい。

「I’m a ha~rd lovin ma~n、
 ィやェェェェァァーーーーーーー~~~~~~~~~~~~~~!!!

ぼくはホモではない男性だが、あの声を聞くと背筋にゾクッと来るものを隠し切れない。パープルでは有名な「チャイルド・イン・タイム」はじめ惜しみなくスクリーミングを披露するイアンだが、ぼくの中では「ハード・ラヴィン・マン」こそがベスト・オヴ・スクリーミング・ヴォイスである。

ところが、再結成後のパープルやサバスの「悪魔の落とし子」では一切それが聞かれない。スクリーミングはやらないのだ。これらを聴いたぼくは、イアンが喉を酷使したことでもはやスクリーミングが出来ない体になってしまったものだと思ってとても悲しかった。そしてそれはある程度真実だったらしい。ところがウワサによると、その後の彼のソロで全盛期に負けないくらいスクリーミングを効かせるとんでもない盤が1枚だけあると聞いていたのだ。それこそがこの「ツール・ボックス」なのである。

聞いてみた感じ、サウンドは普通にHRのノリである。再結成DPが好きなら普通に聞けるだろう。他のイアンのソロを知らない自分にとって全く違和感がないが、彼はR&Rやらポップやらカントリーなんかにも興味があったらしく、なかなかHRのアルバムを作りたがらなかったらしい。なので当盤は熱烈なファンにとっては待ち焦がれていたもののようであるし、そういう意味でも内容には申し分無いが、とにかく感動したのはウワサどおりの部分だ。

これぞイアン・ギラン!
スクリーミングの嵐!
まさにスクリーミングだけ聞いてくれといわんばかりに、叫びまくりである!はっきり言ってぶったまげた!

ミュージシャンのうち、シンガーほど年齢による経年劣化を免れない職業は無いが、当時45歳という年齢を考えればこれはもはや偉業の部類である。70年代の力強さがそのまま再現されている。しかもそれは「復活」である。30代で早くもノドの故障でなりを潜めていた特技が、もうご馳走様なくらい全曲にちりばめられているなんて!よく出来たよね…はっきり言ってこのアルバムはすごい。ぼくのようにギランの絶叫が好きな方は、是非当盤を手にとって「パーフェクト・ストレンジャー」のミイラ状のヴォーカルなんか屁でもないくらいのギラン節を堪能してほしい。ぼくもこれから聴きこむつもりだが、いやあホントたまげたよ。

ちなみに当盤は発売当初の日本盤を中古で525円で手に入れた。モノの価値というものは、蓼食う虫もと言われるとおりである。ぼくなら本盤が万一盗まれたなら、3000円出してでももう一度欲しいと思うだろう。