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集団のサイズと感染率

2008年02月17日 12時06分55秒 | HIV
 こんにちは。
 「低能流[ゲイ]文章化計画」さんのところからトラックバックです。

 よく「ゲイ・コミュニティは小さいので感染が拡大しやすい」ということを言う人がいます。これはいくつかの数値の混同か計算間違いなんじゃないかと思っています。
 狭いコミュニティのなかでHIV感染拡大が広がる結果としては、その集団内でのHIV感染率は大きな集団のなかよりもはやく増大しますが、感染者数はコミュニティのサイズに関係なく同様に増加するように思います(ここでいう集団とはお互いに自由に性行為を行う環境にある人の集まりとします。ついでに「自由に」とは「任意に」とも同義で、つまり相手を選ばずチャンスがあればセックスをするということです。セックスの濃淡まで考えるととても議論は複雑になるのでとりあえずそういう仮定をして考えるほかありませんし、条件付であるにしてもマクロで見ると一定の有用な結論は得られます)。
 たとえば、10人の集団と100人の集団にそれぞれ1人の感染者が投入された状況を考えてみる。ある人はセーファーセックスをし、ある人はしない。この条件がどちらも同じであれば、次の感染する人の期待値も同じになるはずです。たとえば100回のセックスで1回感染するとする。
 10人の集団では乱交だろうがなんだろうが100回のセックスで1回感染するとすると、この感染者が100回セックスをしたあとの感染者の集団の中の割合は10%から20%に上昇します(100回のセックスと言うのが厳密な意味で何を指すのかわからないという意見もあるでしょうが、とりあえず大雑把に考えます)。
 同様に考えて、100人の集団では感染率が1%から2%に上昇します。
 しかし、どちらも新規感染者数は1人です。

 だから、条件が同じであれば、集団の大きさに関わらず新規感染者数は変わらないように思います。

 集団中にいる非感染者が感染する機会についていうと、性行為が自由に行われると仮定すると、感染者とセックスをする機会が多くなる小さな集団の中にいる人のほうが高くなると思います。
 感染者と100回セックスをすると感染する期待値が1となるとすると、初期段階で感染者に当たる確率が0.1ですので、非感染者が100回セックスをした後にHIVに感染している期待値は0.1*1=0.1
100人の集団のほうでは、感染者に当たる確率が0.01ですので、100回セックスをしたあとに感染している期待値は0.01*1=0.01ということです。
 したがって、小さな集団にいる非感染者のほうが大きな集団にいる非感染者より感染の期待値は大きくなります。

 結論としては、他の条件が同じであれば……
①:小さな集団のほうが感染者の割合は急速に増加する。
②:小さな集団のほうが非感染者が感染する確率は高い。
③:感染者数は小さな集団も大きな集団も変わらない。

と言う風に統計学は教えます。昨今の「集団サイズ問題」についての発言では、このあたりの数値が感覚的に混同されて用いられているような印象を持っています。

つまり、感染者の多くの部分をゲイが占めているからには、やはり、ゲイは感染機会について何らかの要因で高い状況にあると言わざるを得ないのが現状であるように思います。

HIVはゲイの病気だというのは間違いですが、何らかの要因でゲイはHIVに感染しやすいファクターを抱えているとはいえると思います。

みなさんはどうお考えでしょうか?
ぼくのほうが、計算間違いしているのかな?

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4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (通りすがり)
2008-02-17 18:04:10
啓蒙活動の順序が微妙かもしれません。穿孔行為の忌避、次に防具の利用徹底かな、と。
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通りすがりさん (玉野真路)
2008-02-17 19:47:03
穿孔行為はかなり多いんですか?
ぼくは、自分が持っていったコンドームしか使わないようにしてます。

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いろいろ難しいのです (円山てのる)
2008-02-18 18:32:32
 TBを、ありがとうございました。

 >>>何らかの要因でゲイはHIVに感染しやすいファクターを抱えている>>>とのご意見、実は、僕も本当は同じように考えているのです。

 今回の僕の記事は、一般に語られていることの受け売りに留めました。
 すなわち、「ゲイ・コミュニティは小さいので感染が拡大しやすい」との考え方には、実を申しますと、ホントにそうなのかな―――と、首を傾げつつ。

 以前、ゲイのセックスライフそのものに、HIV感染を拡大させやすい要因があるのではないか―――との問題提起をしたとき、かなり激しい反論を、ゲイの皆さんから受けたことがありました。

 ”乱れたセックス”という書き方をしたところ、
「ゲイだけが乱れたセックスライフを送っているような印象を与えかねないから、引っ込めたほうがよい!」といった調子だったかと。

 こちらのブログで取り上げて下さった、”覚醒剤と……”のテーマとも、大きく関係してくるのですが、この手の問題は、とても微妙な取り扱いを要すると思われ、なかなか表現にも苦慮するところです。

 ゲイのセックスライフについての議論の中で、ある方が、パートナー制度など、ゲイにも準婚制度が与えられることで、奔放なセックスライフを抑制する効果が期待できるのではないか―――との意見を述べられました。

 それも、一理あるのではないかと思っています。

 遠回しな書き方で恐縮ですが、いずれ、この問題について、しっかり書くつもりです。

 ゲイ諸氏からのバッシングに耐える覚悟が必要かとも感じるのですが……。

 いろいろ、難しいのです。
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でもなぜか (玉野真路)
2008-02-21 04:14:08
ここにバッシングのコメントを書き込む人がいませんね。
僕も数学が苦手なので、計算間違いをしていてもまったくおかしくないので、誰かが教えてくれるだろうと思ったのですが、教えてくれません。

論証や実証を経ないで、感覚で書くとバッシングになりやすいというところはあるのかもしれませんね。

かくいう僕も、結構、そういう攻撃は恐れています。
論理的にきちんと議論できればいいなあと思っています。
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