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NHKスペシャル『女と男 第3回』評

2009年01月29日 02時43分34秒 | 携帯より
 すでに少し時間がたちますが、『NHKスペシャル 女と男 第3回』について短くコメントをしておきます。

 この回は、正直、ちょっとあおりすぎかなと思いました。
 いくつかのポイントをメモしておきます。

1:Y染色体問題について
 番組中でY染色体が急速に壊されていっている映像が印象的につかわれていました。たしかに、Y染色体は相同染色体を持たないので、傷が入ったときに修復系が働きにくく、変異のスピードが常染色体よりも早いというのはありそうです。しかし、生殖や生存に必須な遺伝子が破壊されたときには、その男性は不稔性となり子どもが作れず淘汰されていくことになります。
 そうするとそういう染色体を持たない、正常な遺伝子を保持した男性の子どもが生き残っていきますので、どこかで染色体の破壊と自然選択が平衡状態に達して、それ以上Y染色体が小さくならなくなる点が繰るのではないかという気がします。
 そのときに、必須な遺伝子が他の染色体に移って行ったら、Y染色体の消失という事態(アマミトゲネズミやトクノシマトゲネズミの例が出ていた)にいたるには、Y染色体上の遺伝子が常染色体に移動し、それが性決定に働けるような制御系を持たなければならないので、簡単ではありません。人間のY染色体がどこかでそういう変異をしないとは限りませんが、進化は偶発的なものなので、これらの棘ネズミのようにY染色体を失うとは限りません。

2:精子の質について
 番組中でチンパンジーの精子との比較がありましたが、チンパンジーは複雄複雌の群れをつくり、繁殖期には一頭の雌が複数のオスを受け入れます。そうするとその複数のオスの中で最も元気が良い精子を最もたくさん注入したオスの子どもが生まれる可能性が高いので、チンパンジーでは精子の元気が良いのは理解できます。こうして精子間で競争が起こることを精子競争といいます。チンパンジーは体重あたりの精巣の重さがかなり重いのです。立派な玉をもっていらっしゃるわけですね。
 それにたいして、体の割りに精巣が小さいのはゴリラです。彼らは一夫多妻制の社会を作っていて、他の雄が自分の群れの雌に指一本触れないよう、体力勝負のケンカをします。本気でやりあったら命の危険があり、不利なので胸をドカドカ叩くドラミングをしたりして直接対決をできるだけ避けようとする行動も取ります。
 そうするとメスの体には一頭のオスの精子しか入らないので、精子競争はあまりおこりません。
 ヒトの場合には、この中間になっていて、多少、精子競争もあるのかもしれないな、という程度です。ヒトの精子の質を心配するくらいなら、ゴリラさんのことが気になってしかたがないのです。ゴリラは生殖医療を開発しないからなあ。
 ヒトの場合も、そういう進化的な意味での精子の減少はまだ数万年は大丈夫じゃないかと思います。他の要因での精子の減少も起こっているようで、そちらのほうが問題じゃないかと思います。環境ホルモンとかいろいろありそうですが、これはおそらく単一の原因だけで効いているわけでもなくちょっと難しいです。ただし、ヒトの場合には「医療」によって、本来ならば淘汰されるはずの遺伝子が生き残ってしまうので、自然状態とはかなり異なる様相を呈することになりそうですね。
 いずれにしろ、進化的な精子の減少はさほど気にすることはないけれど、そうでない精子の減少は問題かもしれません。

3:胎盤を作る遺伝子について
 胎盤を作る遺伝子は、オスでのみ活性化していて、メスで活性化しません。
 なぜなら、メスでこの遺伝子が活性化していたら、未受精卵が着床して胎盤を作る可能性があるからです。

4:コモドオオトカゲの単為生殖について
 コモドオオトカゲはZW型の性決定をしますので、オスはZZ型、メスがZW型となります。今回、生まれたオオトカゲはみんなオスでした。しかも、2本あるZ染色体はもともと一本の染色体が倍加してできたものでした。
 これはおそらく、絶海の孤島に単独で渡ってきた雌が、単為生殖をしてオスをつくることで、有性生殖を始めるようになったんじゃないかと言われています。普通は近親婚は遺伝学上生存に不利ですが、コモド島などの孤島に渡ってきたごく小数の個体から増えられるような変異を持っていた場合にのみ適応できたのではないかというわけです。
 これは相当な特殊事情ですので、だからといってヒトが雌だけで繁殖をするようになる確率は相当に低いはずです。


取りえず気づいたことをざっくばらんに書いてみておきます。

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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
精子の濃度について (bianism)
2009-01-31 00:00:28
射精のインターバルが短いと精子の濃度が薄くなるみたいです。何日かインターバルをおいてセックスしたほう

が毎日セックスをするよりも精子の濃度が濃くなる訳です。
同じ基準で精子の濃度を調べたとしても、このような調査はもともと誤差が大きいんじゃないでしょうかねぇ?
ヒトの精子の濃度が(短い期間で)薄くなっていると騒いでいたら、それは単に射精のインターバルが短くなっていただけの話だった場合には笑い事ではありません。
返信する
精子の濃度について (bianism)
2009-01-31 00:00:29
射精のインターバルが短いと精子の濃度が薄くなるみたいです。何日かインターバルをおいてセックスしたほう

が毎日セックスをするよりも精子の濃度が濃くなる訳です。
同じ基準で精子の濃度を調べたとしても、このような調査はもともと誤差が大きいんじゃないでしょうかねぇ?
ヒトの精子の濃度が(短い期間で)薄くなっていると騒いでいたら、それは単に射精のインターバルが短くなっていただけの話だった場合には笑い事ではありません。
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