新装開店☆玉野シンジケート!

セクシュアリティ・科学・社会・映画

『ブラッド・ダイアモンド』(エドワード・ズウィック監督)

2007年04月19日 10時41分55秒 | 映画雑感
 アフリカのあまりに悲惨な現実に加担しているのは、先進諸国に住む「良識ある市民」だという事実を暴く映画が続けざまに作られている。アメリカの中でも、ことさら政治的な場所でもあるハリウッドでも、その動きが出てきた。  『ダーウィンの悪夢』で、いささか誇張気味にナイルバーチ問題が語られたかとおもったら、今度はダイアモンドの密輸問題を『ラストサムライ』のエドワード・ズウィック監督が描きあげる。  完全な . . . 本文を読む

『楊貴妃』と『ドリームガールズ』

2007年03月15日 11時34分49秒 | 映画雑感
 溝口健二監督の「楊貴妃」を見ました。  お妃樣に先立たれて悲哀にくれる皇帝が、自分を人間として見てくれたという理由で、30秒後に恋に落ちて田舎娘を妃に迎えるが、ついでに妃の楊一族を重用したため、統治の正統性に問題が生じ、人民が反乱して、結局楊貴妃は自害をするはめになって死に別れる、というあまりにベタなストーリー、そっけない室内のセット、とまぁ普通に言って駄作の要素満載な映画なんだけど、溝口は転ん . . . 本文を読む

『それでもボクはやってない』

2007年02月10日 02時33分07秒 | 映画雑感
 大学に入った年に「法学」の授業を取っていました。  その先生の言っていた一言はいまでも忘れもしない。  大学の近くで女子学生が付回され、危うく手を出されかけたところを命からがら近所の交番に駆け込んだという事件がありました。そのときに、その法学の教授は「だいたい女がちょっと肩出したりして挑発するような格好で歩いているのが悪いんだ」などといっていた。当然のことながら、大学一年生であろうとも大反発を . . . 本文を読む

『ダーウィンの悪夢』(フーベルト・ザウバー監督)

2007年01月31日 23時54分07秒 | 映画雑感
 『ダーウィンの悪夢』見ました。  アフリカはタンザニア、ビクトリア湖にバケツ一杯分だけ放たれて、増えはじめたナイルパーチ。大きくなると2mを越えて、淡泊な味で食べてもおいしい。そこに目をつけたヨーロッパや日本の水産会社はナイルパーチを安く買い叩いて輸入しはじめた。あっと言う間に、ビクトリア湖の生態系を壊して大量に増えたナイルパーチは毎日何十トンも取れる。アフリカ人の生活は1日1ドル以下。大量雇用 . . . 本文を読む

『不都合な真実』のなにがすごいのか?

2007年01月24日 04時59分50秒 | 映画雑感
 このあいだ、アル・ゴアの『不都合な真実』がすごいと書きましたが、何がすごいのか?  環境科学的なデータは環境系の教科書を見ればどこにでも出ているような、ごく当たり前の(ということは、認知度が高く多くの科学者が正しいと思っている)データです。そのあたりでいちいち感動しているようでは、完全に時代遅れです。  この映画を見て感動的なのは、アメリカの懐の深さでしょう。すごいなと思うのは選挙で負けた政治 . . . 本文を読む

『ムーシェ』

2006年12月18日 03時26分21秒 | 映画雑感
メキシコにフチタンというところがあります。ゲイやトランスジェンダーな人びとがそれを隠すことなく街の風景に同化しながら生きている。そんなステキな街のドキュメンタリー映画をみました。  なんともラテン的だ。  時はゆっくりとすぎ、ことあるごとに踊りだし、お祭りにせいを出す。ゲイ同士でも、地元の人とも、小競り合いがないわけではないが、おおむね認められて街でもゲイも女装も当たり前の風景となっている。   . . . 本文を読む

『硫黄島からの手紙』(クリント・イーストウッド監督)~強者と弱者が逆転する戦場

2006年12月16日 05時25分20秒 | 映画雑感
 二ノ宮君演じる西郷は、軍人だ。お国のためという当時の日本を完全に覆っていた世論に、硫黄島に来てもまったく流される気配がなく、「硫黄島などアメリカにくれてやればいい」などと口走っている。射撃の腕は最悪で、見るからに立派な軍人像からは程遠い。組織の中では、生きていけないタイプの人間である。上官からも目を付けられ、怒鳴られてばかりだ。  彼は、生意気なことをいうわりには、度胸のないタイプで、いざと . . . 本文を読む

『父親たちの星条旗』(クリント・イーストウッド監督)~ネタバレあり

2006年11月15日 03時56分29秒 | 映画雑感
『ミリオンダラー・ベイビー』で好評を得たポール・ハギスと、『ジャーヘッド』で戦争の悲惨さを描く言葉を磨いたウィリアム・D・ブロイルズ・Jrという2人の脚本家を従えてクリント・イーストウッドが戦争を描こうとしました。  製作が『プライベート・ライアン』でスティーブン・スピルバーグとご自身の共同で、DreamWorksが配給をしています。  戦争映画は多々あります。硫黄島をネタにしたものでも、ジョ . . . 本文を読む

『迷子』 李康生監督

2006年11月04日 02時25分27秒 | 映画雑感
 迷子になった子どもを捜す老婆を延年とらえるショットが次第に狂気を帯びていくのを見るとき、空洞化した社会の中でつながりを見出そうとする人の狂気を思わずにはいられない。  自分の家族すらどこで何をしているのか分からない。  高校生は学校をサボってネット喫茶でゲームに興じる。そこでは会話はなく、すぐとなりに座っている人とすらチャットをする。大した用もない友人たちとは簡単に携帯電話がつながるのだが、重要 . . . 本文を読む

『楽日』 蔡明亮監督

2006年11月04日 02時10分32秒 | 映画雑感
 映画館が最後を迎える日。  そこに関わる人々のほんのちょっとした交差点を描く。  ストーリーなどあってないようなものだし、会話だってほとんどない。  でも、映画を愛し、映画館と愛した人間たちの思いがそこはかとなく伝わってくるんですよ。淡々と終わりを迎えるありさまは、終わること斜陽化に美を組み入れようとしたヴィスコンティなんかとは相容れない方向だろう。しかし、貴族でも王家でもない、一般市民にとって . . . 本文を読む

『西瓜』 蔡明亮監督

2006年11月04日 02時03分57秒 | 映画雑感
 まるで本物のアダルトビデオのようなエロ描写と、馬鹿馬鹿しさ満点のミュージカルシーンは、映画を安っぽくしてしまいそうなのに、映画はあたかも天女の羽衣のように軽く、自ら浮き上がりながら進んで行き、衝撃的なラストを迎える。  たとえばブルース・ラブルースが『スキンフリック』で失敗したような領域に果敢に挑んでいくツァイ・ミンリャンの勇気と無謀を賞賛せざるを得ないだろう。いきなり、西瓜プレイを見せられる。 . . . 本文を読む

パトリス・ルコントのドゴラ

2006年10月22日 03時33分31秒 | 映画雑感
 映像とは、そこに現実にある情景、音、におい、気温、湿度などといったさまざまな情報の中から、画角に収まるある一定の光の情報だけを切り取るものだ。映像を見ることとは、そこに映された映像の中からわれわれが理解しうる情報だけを取り出してみることである。さらに映画を語るということは、さらに自分の記憶にある映像体験から、わずかな情報を語ることに過ぎない。  情報量に対して、映像は現実に敗北し、観客は映像に敗 . . . 本文を読む

思わぬつながり

2006年10月01日 00時42分08秒 | 映画雑感
夏に終わってしまっている韓国インディペンデント映画祭ってのがあったそうだ。 今までよく知らなかった。 ここのAプログラムのキムくんて、大木の映画の上映会で韓国にいったときに、会場にきていて、撮影をしたあのキムくんらしい。いま大木から電話で聞きましたよ。 まだ17歳で、カワイイ顔をして、うつむきかげんにしゃべる子だった。 ハングルが分からないので、何を言っているのかさっぱりだったんだけどね。 た . . . 本文を読む