国立新美術館で催されているのは『ルノワール展』だけではなく、『ヴェネツィア・ルネサンスの
巨匠たち(Venetian Renaissance Paintings)』も開かれているのだが、『ルノワール展』の混雑に
比べればゆっくりと観ることができたことが良いのか悪いのかはまた別の話ではある。確かに
『ルノワール展』の全体的なカラフル感と比較して『ヴェネツィア・ルネサンスの巨匠たち』展の
全体的に茶色っぽく暗い感じは人を引き寄せない原因ではある。
ヴェネツィア派(Venetian School)はヤーコポ・ベッリーニ(Jacopo Bellini)とジョヴァンニ・ベッリーニ
(Giovanni Bellini)の父子を中心とした美術の流派であるが、フィレンツェ派(Florentine School )の
レオナルド・ダ・ヴィンチ(Leonardo da Vinci)やミケランジェロ・ブオナローティ(Michelangelo
Buonarroti)のようなデッサンの緻密さと比較するならば、敢えて荒く大胆な構図を特徴としており、
ルノワールが描く顔については既に書いた通りなのだが、ヴェネツィア派の画家たちが
描く人物の顔もそれほど上手い訳ではない。
(『聖母子(Madonna of the Red Cherubims)』 ジョヴァンニ・ベッリーニ 1485)
例えば、上の作品は人物画の基本的な構図は変わらないものの、聖母子の上に描かれている
赤い頭の天使たちが「過剰」な描写の特徴を形成している。
(『動物の創造(The Creation of the Animals)』 ヤコポ・ティントレット 1550-53)
あるいはヴェネツィア派の巨匠の一人とされているヤコポ・ティントレット(Jacopo Tintoretto)
の代表作である『動物の創造』のダイナミズムは、さしずめ「硬派」なマルク・シャガール
(Marc Chagall)と形容できるであろう。年代的には逆なのだけれど。
(『ワイングラスを掲げる二人の肖像(Double Portrait with a Glass of Wine)』1917-18
本作は現在東京都美術館で催されている『ポンピドゥー・センター傑作展』で観られる)