MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

『ブルックリン』

2016-08-04 00:03:47 | goo映画レビュー

原題:『Brooklyn』
監督:ジョン・クロウリィ
脚本:ニック・ホーンビィ
撮影:イヴ・ベランジェ
出演:シアーシャ・ローナン/エモリー・コーエン/ドーナル・グリーソン/ジム・ブロードベント
2015年/アイルランド・イギリス・カナダ・アメリカ

故郷を愛せない理由について

 1950年代のアイルランドの小さな町に住む主人公のエイリシュ・レイシーには仕事が無く、日曜日だけミス・ケリーが営む雑貨屋を手伝っていたのだが、ケリー夫人の性格の悪さに辟易していた。その上、決して容姿端麗とは言えないエイリシュは友人のナンシーのようにモテる訳でもなく、姉のローズ・レイシーの勧めもあってついにアメリカのニューヨークへ移住することを決める。
 高級デパートで売り子として働き始めるものの、ホームシックにかかってしまうのであるが、フラッド神父に勧められてブルックリン大学の夜間の会計士コースで勉強することにする。イタリア系移民のアンソニー・フィオレロと1952年4月公開の『雨に唄えば』(ジーン・ケリー/スタンリー・ドーネン監督)を一緒に観に行くなどして交際するようになり、生活が安定してきた矢先に姉のローズが1952年7月1日に突然亡くなってしまう(2人の父親はその5年前に亡くなっている)。ローズは自身の病気を知っていてエイリシュを旅立たせたのだった。
 約一カ月過ぎてようやくエイリシュは地元に戻ってこれたのであるが、久しぶりに帰郷してみると成長したエイリシュに対して周囲の人々はとても優しかった。会計士の資格を取っていたエイリシュはすぐに仕事があてがわれて、再会したジム・ファレルと親密になりかけた時、ケリー夫人に呼び出され、エイリシュが既婚者であることをバラすと仄めかされる。その時、エイリシュは目が覚めるのである。所詮ここでは自分はローズの代わりでしかなく、皮肉にもケリー夫人の性格の悪さがエイリシュに、自分自身の人生を歩むためにはブルックリンに戻らなければならないことに気づかされるのである。
 『ヤング≒アダルト(Young Adult)』(ジェイソン・ライトマン監督 2011年)同様に、本作においても故郷が良く描かれない理由は、もしも居心地の良い故郷であるならば、そもそも故郷を捨てるはずがないからである。


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