原題:『Trumbo』
監督:ジェイ・ローチ
脚本:ジョン・マクナマラ
撮影:ジム・デノールト
出演:ブライアン・クランストン/ダイアン・レイン/ヘレン・ミレン/ルイ・C・K
2015年/アメリカ
70年後のアメリカの「コミュニスト」について
主人公で脚本家のダルトン・トランボが下院非米活動委員会による第1回聴聞会の裁判費用として俳優のエドワード・G・ロビンソンから資金を調達する際に、絵画コレクターのロビンソンはフィンセント・ファン・ゴッホの『タンギー爺さん(Portrait of Père Tanguy)』を売るのであるが、ゴッホが印象派の画家仲間から浮いていたように、印象派作品のコレクションの中からゴッホの作品が売り払われてしまうという行為自体が、その後のトランボの運命を暗示しているようである。
結局、トランボの再起に手を貸したのが「理屈」ではなく、当時43歳の売れっ子俳優のカーク・ダグラスと一年年下のアメリカ大統領のジョン・F・ケネディの「若さ」とオットー・プレミンジャーという「外国人」だったところは興味深い。
ヘッダ・ホッパーがどうしてあそこまで影響力を持てたのかいまひとつピンとこないのであるが、現在、2016年アメリカ合衆国大統領選挙の共和党大統領候補がロシアのプーチン大統領と相思相愛でなおかつ自身と名前が似ている(Trumbo≒Trump)ことをトランボはどのように思うのであろうか?
『ローマの休日』の原題である「Roman Holiday」には深い意味があるのだが、以下の指摘を記しておきたい。「バイロン(George Gordon Byron)の詩(『チャイルド・ハロルドの巡礼(Childe Harold's Pilgrimage)』)からとられた『他人の犠牲のうえで楽しむ娯楽』や『虚飾』という意味の慣用句 Roman Holiday をタイトルにした、ハリウッドのレッド・パージされた左翼系脚本家の教養をうかがわせる皮肉なタイトルの『ローマの休日』である。」(『新・目白雑録もっと、小さいこと』金井美恵子著 平凡社 2016.4.15 p.210)