MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

『最後の決闘裁判』

2021-10-25 00:59:14 | goo映画レビュー

原題:『The Last Duel』
監督:リドリー・スコット
脚本:ニコール・ホロフセナー/マット・デイモン/ベン・アフレック
撮影:ダリウス・ウォルスキー
出演:ジョディ・カマー/マット・デイモン/アダム・ドライバー/マートン・チョーカシュ/ベン・アフレック
2021年/イギリス・アメリカ

「モテる」男の感性について

 ストーリーを簡単に説明するならば、1386年に戦地から戻って来た主人公で騎士のジャン・ド・カルージュが、彼の留守中に親友の従騎士のジャック・ル・グリが家を訪れてジャンの妻のマルグリット・ド・カルージュを強姦したことでジャンが当時認められていた決闘裁判をフランス国王のシャルル6世に申し出て執り行われる経緯が描かれている。勝った方が神によって正しいと認められるという理屈である。
 本作と比較される作品として『羅生門』(黒澤明監督 1950年)が挙げられている。関係者の証言が異なるという理由からなのだが、『羅生門』が主観的な証言なのに対して、本作は「客観的」な証言というところが大きく違うと思う。つまり本作は私たち観客が観ていても3人の証言にそれほどの違いは見られないということであり、『羅生門』とはテーマが違うのである。
 それでは本作のテーマは何かと言うならば「モテる」ということだと思う。ジャンとマルグリットの結婚は政略的なもので、跡継ぎとなる男の子を作るために2人は毎晩頑張るものの5年経っても子供はできなかった。一方で、ジャンの親友のジャックは美男子で女性たちからチヤホヤされ、更には読書家で教養もあり同じように教養を持っていたマルグリットとは気が合ってもおかしくはないのである。
 だからジャックがジャンの留守中にマルグリットの家を訪れることは、いつもしているようなことでマルグリットに抵抗されることもいつものようなことだったのであろうし、実際にマルグリットの友人の一人は夫に内緒でジャックの子供を身ごもって喜んでおり、ジャック本人はマルグリットを強姦したという認識は本当になかったのかもしれない。つまりジャックにとってはその一連の流れが「プレイ」だったのである。だからマルグリットに告発された時にはジャックは驚愕したと思う。「えっ! この世に俺とセックスしたくない女がいるの!?」とか、「えっ! この世に俺とヤッて気持ちよくならない女がいるの!?」とか。
 マルグリットに多少の心の隙があるとするならば、当時はアクメ(オルガスムス)に達することで妊娠すると「科学的」に信じられていた時代で、ジャンしか知らないマルグリットは自分が本当に性的快楽を得られているのかどうか分からなかったのであり、ジャックで確認してみたいという気持ちが無いことも無かったのではないかと思うのだが、残念ながら個人的には彼女の表情から彼女の本心を読み取ることはできなかった。
 決闘裁判でジャンは勝利するものの、2人が育てる男の子はマルグリットとジャックの間にできた子供という皮肉も効いているのだが、本作は日本どころかアメリカでも興行的に大失敗している。「時代劇」はもうウケないということなのだろうか?
gooニュース
https://news.goo.ne.jp/article/eiga_log/entertainment/eiga_log-97623


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